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誌上コーチ 部分的トレーニング法
胸のトレーニング法

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月刊ボディビルディング1979年5月号
掲載日:2018.11.17
モデル●ダイナミック・ボディビル・センター=鷲見信彦

竹内 威
 これから3ヵ月にわたり、部分的トレーニング法を連載するが、はじめに各部分を強化するためには、どのような考え方で運動種目を採用していったらいいかについて簡単に述べておきたい。
 ボディビルの運動種目は、ごく基本的な採用目的によって、大方、身体的部位別に分類することができる。
そして、そのようにごく基本的な採用目的によって分類された各部位の運動種目は、その運動としての個性的な特性と部分的に一層細分された採用目的によって、さらに次のように大別することができる。

①基礎種目
基礎的な筋の発達を促すための基本種目。
②準基礎種目
部位的に広範囲の発達を促すための基礎種目に準ずる種目。
③補強種目
筋の全体的な発達の均衡(調和)、輪郭、デフィニション、およびカット、セパレーション等、ビルダーとしての形態的な完成を促すための強化種目。
 
 したがって、このシリーズにおいては、おおむね上述の趣旨に添って各部位のトレーニング法を解説していくことにする。
 胸部の運動におけるトレーニング上の主眼は、大胸筋の発達と胸郭の拡張である。
 大胸筋は前胸部を被う広くて平たい筋であり、鎖骨、胸骨、肋骨から上腕骨上部に付着している。作用は上腕の内転と内方への回転である。
 胸郭は、胸腔の周壁であり、胸骨と12対の肋骨からなる骨格である。
肋骨は軟骨の部分によって胸骨と連結しているため、胸郭だけは他の部分の骨ぐみの成長が止ってしまった後までも成長の可能性があるといわれている。
 胸部の筋には、大胸筋のほかに小胸筋、前鋸筋もあるが、小胸筋については、トレーニング上あまり考えなくてもいいと思う。

◎胸部の運動における基礎種目

 胸部の運動で最も主要な運動種目といえば、やはりベンチ・プレスである。
実際に、この運動を効果の面から評価すれば、胸部の発達の70%がた完成させるといっても過言ではない。
 その他、胸部の基礎的な発達を促す運動としては、ダンベル・ベンチ・プレス、バー・ディップス、ペク・プレス・オン・レッグ・プレス・マシーン、ベント・アーム・プルオーバー、ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング等があるが、トレーニングの初期的な段階ではベンチ・プレスのみでも十分に効果が期待できるといえる。
 なお、胸部における基礎的な運動種目を、その運動動作の面から考察すれば、大胸筋のより基礎的なバルク・アップには、傾向として、プレス動作による運動種目が有効といえる。

◎大胸筋のための準基礎的な種目

 広範囲、かつ多目的な意味での大胸筋のバルク・アップを促すには、大胸筋をある程度細分して鍛えることのできる種目が必要になる。
つまり、ごく基礎的な運動種目に加えて準基礎的な種目を行うことの必要性も生じてくる。そして、そのような必要性を満すための運動種目としては、インクライン・プレスやデクライン・プレスなど、大胸筋を大まかに細分して鍛練できる種々の運動が考えられる。
 準基礎的な運動種目としては、ベンチ・プレスのバリエーションで、シャフトをおろす位置を、大胸筋の上端、あるいは下端におろす方法や、握り幅を変えてやる方法、バック・ライイング・ダンベル・ベンチ・プレス、バック・ライイング・ラタラル・レイズ、インクライン・プレス、デクライン・プレス、デクライン・ランタル・レイズなどがある。

◎大胸筋の完成のための補強種目

 この種の運動としては、ダンベルやプーリーを用いて行う運動が有効である。
プーリー・クロス・オーバー、ハンズ・ポインティッド・アップ・ワード、アランド・ザ・ワールド・ライイング、インクライン・プレイツ・ピンチング・エクササイズ、シーテッド・ディップなどが補強種目に入る。

⦿胸郭の拡張を促すための運動

 トレーニングにおいて胸郭が拡張される要因としては、おおよそ次にあげる3つの場合が考えられる。
①スクワットやハイ・クリーンなどの筋作業の大きい運動種目によって、その運動中、および運動直後に酸素の需要量が一時的に増し、呼吸量の増大が強く引き起こされた場合。
②ハイ・レピティション(多回数の反復)により、心肺機能がいちじるしく亢進された場合。
③ラタラル・レイズ・ライイングやスティップ・アーム・プルオーバーなどによって、意識的になされる深呼吸と、深呼吸を助長する負荷とにより、肋軟骨が内と外の両方から刺激を受けた場合。運動種目としては、スティッフ・アームによるクロス・ベンチ・プルオオーバーや深呼吸をともなったバー・ディップスが有効といえる。

⦿全鋸筋の運動について

 前鋸筋は、大胸筋の斜め下、脇に寄ったところにあるノコギリ状の筋で、肋骨から肩甲骨椎骨縁に付着しており、増帽筋に拮抗して働く。
この筋を強化することは上体前面の迫力を増すのに役立つ。
 通説的には、この前鋸筋はスティップ・アームによる各種のプルオーバーによって発達が促されるといわれている。
しかし、実際には上述したように前鋸筋は増帽筋に拮抗して働くので、これらの運動、とくにスタンディング・プレスやフロント・プレスなどのように、重量を肩の前方で挙上する運動が有効と考えられる。
 では、胸部のための運動のうち代表的なものをいくつか紹介しよう。


◎ベンチ・プレス
胸部のための最も基礎的な運動種目であり、大胸筋全体のバルクを増すのに有効である。
く運動法>ベンチに仰臥した姿勢で、バーベルを胸のあたりから上方へ押し上げる。シャフトの握り幅を広くしたり(ワイド・グリップ)、狭くしたり(ナロー・グリップ)することによって、大胸筋に与える効果がいくぶん異なっていくが、トレーニング初期の基礎的なバルク・アップの段階ではスタンダード・グリップ(両腕を左右横へ広げたときの、両肘の幅くらいの握り幅)で行うのがよい。
この運動は、上腕三頭筋、三角筋にも有効である。
<呼吸>バーベルをおろしながら息を吸う。
ベンチ・プレス

ベンチ・プレス

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◎バー・ディップ(パラレル・バー・ディップ)
大胸筋の基礎種目の1つで、バルクを増すのに有効。とくに内側に効く。
<運動法>ディッピング・バー、またはパラレル・バー(平行棒)の間に入り、体重を両手で支えながら、両肘を屈して体を上下させる。筋力が強くなったら、腰に重量をぶらさげて行うとよい。運動に慣れないうちは、胸、腕、肩などの筋肉を痛めるおそれがあるので、あまり深くおろさなくてよい。
この運動は、大胸筋の他に、上腕三頭筋の強化にも効果がある。
<呼吸>体をおろしながら息を吸う。
バー・ディップ

バー・ディップ

記事画像4
◎ベント・アーム・ブルオーバー
大胸筋のバルクを増し、胸郭の拡張を促す。また、広背筋と上腕三頭筋にも有効である。
く運動法>フラット・ベンチに仰臥し、上腹部あたりに構えたバーベルを、肘をまげたままの状態で、顔面の上を通過させて床面の方へ深くおろし、おろしたら逆動作によって元の位置へ引き戻す。運動中は、両脚でベンチをはさみ、からだがずれたり浮いたりすることのないように腰をしっかり固定する。
頭部をベンチの上に載せた姿勢で行う方法もあるが、大胸筋の発達を促すためには、どちらかといえば、ベンチの端から頭部を出したフォームで行うのがよい。
<呼吸>バーベルを床面の方へおろしながら息を吸い、引き戻しながら吐く。
ベント・アーム・ブルオーバー

ベント・アーム・ブルオーバー

◎デクライン・プレス
これは準基礎種目で通説としては大胸筋の下部に効くといわれているが、
実際にはなかなか通説どおりにはいかず、どちらかといえば、小胸筋の方向にそって脇あたりから斜め上下に効く。
<運動法>デクライン・ベンチ、または傾斜した腹筋台に頭の方を低くして仰臥し、バーベルを胸の位置から上方へ押し上げる。一般にデクライン系統の運動によって、大胸筋を的確に刺激するには、運動法の上で次に述べるようなちょっとしたコツがいる。
①かまえの姿勢で、頭と肩をベンチから浮かすようにして、背をできるだけ
ベンチに密着させるようにする。
②上述の姿勢をできるだけ維持し、両肩を首の方へすくめないように留意して運動を反復する。
デクライン・プレス

デクライン・プレス

◎インクライン・プレイツ・ピンチング・エクササイズ
大胸筋の内側と下部を鍛えるための補強種目である。
く運動法>2枚の同じ大きさのプレートを、平らな面を外側にして合わせ、プレートの縁に指をかけないように留意して、両手の掌と指の腹で挟み持ち、インクライン・ベンチに仰臥した姿勢で、両腕を胸の位置から前方へ水平に押し出すようにする。
この場合、プレートの縁に指をかけてウェイトを支えると効果がほとんどなくなるので注意。
インクライン・プレイツ・ピンチング・エクササイズ

インクライン・プレイツ・ピンチング・エクササイズ

◎バック・ライイング・ラテラル・レイズ
大胸筋の発達と胸郭の拡張に有効である。大胸筋の発達を目的とするときはベント・アームで、胸郭の拡張を目的とするときはスティッフ・アームというように使いわけるといい。
<運動法>腰から下をベンチから出し、背だけでベンチに仰臥して、両手に持ったダンベルを腕を伸ばして胸の上方に保持する。肘を伸ばしたまま、両手を左右に広げて床の方へダンベルをおろし、胸を張るようにする。おろしたとき、手首をいくぶん上へ曲げる。
<呼吸>ダンベルをおろしながら、できるだけ深く息を吸う。
バック・ライイング・ラテラル・レイズ

バック・ライイング・ラテラル・レイズ

月刊ボディビルディング1979年5月号

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