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なんでもお答えします 1979年8月号

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月刊ボディビルディング1979年8月号
掲載日:2019.03.04

分割法を実施したいが種目の配分は?


ボディビル歴は1年5ヶ月です。現在は下記のようなスケジュールでトレーニングしています。
○現在のトレーニング・スケジュール
(1日おき、週3日のペース)
記事画像1
 ところで最近、使用重量がふえたせいか、上記のスケジュールをこなすのが困難になってきました。
そこで、この際、思いきって分割法を採用してみようかと考えています。
 その場合、現在行なっている種目の他に、次の運動を新たに加え、胸と広背は各3種目、他の部位を各2種目としてトレーニングしたいと思います。
 
○新たに加える運動種目
記事画像2
 そこでおたずねします。以上の新旧双方の運動種目を採用して分割法(2分割法)を行う場合、どのように種目を配分するのが効果的でしょうか。
自分としては、胸・背・腕の運動をAコースとし、腹・肩・脚の運動をBコースにして実施しようかと考えていますが、いかがでしょうか。
(市川市 山田清一 商業 24歳)

 現在のあなたの体格と体力のデータ(各部位のサイズ、および各種目の使用重量など)がわからないので、新しく採用するトレーニング法が、はたしてあなたにとって適切なものかどうか判りません。
したがって、以下の文章を読んで、あなた自身で判断してください。
 トレーニング・スケジュールというのものは、実施者自身の個別性を重視して作成されるべきものであるから、作成にあたって、このようにしなければならないといった絶対的な規則はありません。
とはいえ、一般的な理論を全く無視して、ただやたらに運動種目をならべればよいといったものでもありません。
 あなたは、胸・背・腕をAコースとし、腹・肩・脚をBコースとして行う案をお持ちのようですが、運動法としての効率の面から考えると、ちょっと問題があるようです。
 分割法というものは、もともと身体各部を交互に鍛練し、交互に休養させるという考えにしたがって考え出された運動法であるから、そのような観点にたってスケジュールを作成するのがよいと思います。
 あなたの案をこの観点から検討すると、交互に鍛練するという面では、それほど問題はないと思いますが、交互に休養を与えるという点で少なからず問題があります。
 具体的にいえば、上腕三頭筋を使う運動(上腕三頭筋そのものの運動、および、胸と肩のための運動)が双方のコースに組み入れられているので、上腕三頭筋の休養が不十分になるおそれがあります。
その点をもう一度よく検討してみてください。
 部位的な分割例を2つ記載しておきますので参考にしてください。なお、具体的なスケジュール表については省略させていただきます。

<分割表——例1>
Aコース
①胸の運動
②肩の運動
③上腕三頭筋の運動
Bコース
①腹の運動
②大腿の運動
③下腿の運動
④背の運動
⑤上腕二頭筋の運動
<分割表——例2>
Aコース
①胸の運動
②肩の運動
③上腕二頭筋の運動
④上腕三頭筋の運動
(③と④はスーパー・セット法を採用してもよい)
Bコース
①腹の運動
②大腿の運動
③下腿の運動
④背の運動

シェイプ・アップをはかりたい


 私は高校1年の女生徒です。
 1年半ほど前からだんだん太ってきて、今では、身長162cmで体重が62kg近くあります。
おなかのまわりにもだいぶ肉がつき、友だちからも「太った、太った」といわれます。
 学校のクラブでソフト・ボール部に入っており、また、これからは水泳もあるので、脂肪を落としてシェイプ・アップをはかり、さらに体力を強化し大いにスポーツにも活用させたいと考えています。
希望としては、もちろん全体的に筋肉質にしたいのですが、とくに、
①腹部のぜい肉をとる。
②脚と腕を強くし、筋肉質にする。
③手首の力を強くする。
以上の3点に重点を置いたトレーニングをしたいと考えています。
そのためにはローイング・マシン、スナッパー・マシンなどを使用してトレーニングをするをするのが効果的だとききましたがいかがでしょうか。
 それから、アイアン・シューズを使った運動をいくつかお教えください。
(東京都 港区 K・I)

 筋力や瞬発力、スタミナ等、体力を強化し、あわせてシェイプ・アップをはかるためにボディビルのようなレジスタンス・エクササイズ(抵抗運動)を行うことはたいへんよいことです。
オーバー・ワークにならないように行えば、水泳やソフト・ボールなどの補強運動としてもかなり有効であると思います。
ただ無理をせずに適度に行うようにすることが大切です。
 では質問にお答えします。まず運動についてですが、手首の力を強くするためにスナッパー・マシーンの運動を行うことについては異存ありません。
また、①の腹部のぜい肉をとる、②の脚と腕を強くし、筋肉質にするためのトレーニングとして、ローイング・マシーンの運動を行うことについても異論はありません。
しかし、この場合、強いていわせていただけば、ローイング・マシーンの運動だけに限定するのは少し問題があるのではないかと考えられます。
 座席が移動するタイプのローイングマシーンの運動は、腹と脚を鍛練するのに有効であり、また、腕力と背筋力の強化にも有効です。
だが、ここで問題になるのは、ローイング・マシーンを使った運動が、その運動の様式上、上体における鍛練が索引力の強化に片寄るということです。
(註:油圧式等の高価な器具の場合はその限りではない)
 したがって、その運動上の不備を補う意味で、他になんらかの押す力を強化するための運動を行う必要があるのではないかと思います。
たとえば、バーベルかダンベルによるベンチ・プレス、またはプッシュ・アップ(腕立て伏せ運動)等の運動を行うようにするのがよいと思います。
 次にアイアン・シューズについて説明します。
 アイアン・シューズは主として脚・腰を鍛練するための器具です。しかし使い方によって脚・腰に与える効果が異なるので、いくつかの運動法を紹介しながら、それぞれの運動の効果について説明することにします。

◎スタンディング・ニー・レイズ

<運動法>アイアン・シューズを片方の足につけ、立った姿勢で膝を上へ引きあげる。1セットずつ交互に行う。[写真参照]
 なお、両足にアイアン・シューズを履き、足踏みをするようにして運動を行なってもよい。
<効果>主として腸腰筋(脚を引きあげる筋)。腹筋にも効く。
[スタンディング・ニー・レイズ]

[スタンディング・ニー・レイズ]

◎シーテッド・レッグ・イクステンション

<運動法>アイアン・シューズを足に履き、椅子またはベンチに腰をかけ、その姿勢で下腿を前方へ伸展する。
片方ずつ行うほうが運動しやすい。[写真参照]
<効果>大腿部の伸筋(大腿四頭筋)
[シーテッド・レッグ・イクステンション]

[シーテッド・レッグ・イクステンション]

◎レッグ・カール

<運動法>アイアン・シューズを履き立った姿勢で膝を支点にして、下腿を後ろ上方へ屈曲する。つまり、踵を臀部の方向へ持ちあげるようにする。(写真参照)
<効果>大腿部の屈筋(大腿二頭筋)
[レッグ・カール]

[レッグ・カール]

◎サイド・キック

<運動法>アイアン・シューズを履き立った姿勢で、膝をまげないようにして片脚を横へあげる。1セットずつ左右交互に行う。
<効果>大腿筋膜張筋、中臀筋、外腹斜筋、固有背筋、大臀筋等、脚のつけねと腰の筋を強化する。
 以上、4つの運動について説明しました。他にもまだ運動法はありますがこれらの運動が最も一般的なアイアンシューズによる運動です。

ボディビルで“なで肩”をなおしたい


 僕は18歳の高校生です。いま現在はボディビルをやっていませんが、大学へ入ったら、ぜひ始めたいと考えております。
 僕は中学時代に卓球部に入っていました。それで、卓球をやっている人によくある傾向なのですが、僕の肩はひどいなで肩”なのです。
でも、肩そのものはそんなに貧弱というわけではありません。肩が”なで肩”なのは、肩が貧弱というよりは、首のつけ根の筋肉が部分的に異常に発達しているからかもしれません。
 そして、いま考えてみると、僕は中学生の頃、卓球の他には腕立て伏せばかりやっていて、肩を上下にまわすようなスポーツはあまりやらなかったように思います。
そこで次の4つのことについておたずねします。
①“なで肩”なのは、まだ骨格ができていない中学時代に、腕立て伏せのような運動ばかりやっていたからでしょうか。
②僕は長距離走が苦手で、肺活量も少なく、胸囲は88cmです。そして肩幅もあるほうではありません。そのようなことも“なで肩”に原因があるのでしょうか。
③6月号の貴誌で、三角筋の鍛え方が載っていましたが、それをやる前にまず、根本的に骨格をつくるようにしなくてもよいでしょうか。
④“なで肩”をなおす方法があったら教えてください。将来、ボディビルを始める前に“なで肩“をなおしておきたいと思っています。
 以上の質問にお答えください。なお僕の現在の体位は次のとおりです。
 
身長 173cm
体重 63kg
胸囲 88cm
(神奈川県 鎌倉市 小山忠)

 一般的に“なで肩”の原因としては、先天的に骨格や筋肉のつき方がそのようになっている場合、特殊な運動をやりすぎた場合、日常生活の姿勢からくる歪みなどが考えられます。
 では、あなたの4つの質問について順を追ってお答えします。
①“なで肩”といっても、いわゆる普通にいうところの“なで肩”の場合はともかくとして、変形ぎみと思われるような“なで肩”の原因を直接的に腕立て伏せ運動に求めるのは、いささか問題があるようです。
 あなたがどのようなフォームで、また、どのようなスケジュールで腕立て伏せ運動を行なっていたのか分りませんが、正しいフォームと適切なスケジュールで行うかぎり、腕立て伏せ運動が“なで肩”それも変形ぎみと思われるような“なで肩”の直接的な原因になるとはちょっと考えられません。
 中学時代に行なった運動について“なで肩”になった原因を強いて求めるとすれば、あなた自身もいわれているように、卓球を行なったことに原因があるのではないかと思われます。
 というのは、卓球における構えのフォームで、肩をグッと落として極端に前肩にして構えていたことが、いつしか習慣となり、平生の姿勢として身についてしまったのではないかとも考えられるからです。
 その上、あなたは、卓球と腕立て伏せばかりやっていて、他に肩を上下にまわすような運動をほとんど行わなかったそうですが、そのようなことも、あるいは“なで肩”になった間接的な原因になっているのかもしれません。
 しかし、このことはあくまでも推測であって、卓球を行なったことが必ずしも“なで肩”の原因になるということではありませんから、その点を誤解しないでください。
 したがって、あなたの場合も、まったく違ったところに原因があるかもしれません。
その1つの原因として、あなたも指摘しておられるように、首のつけねの筋肉が発達しすぎているということも考えられます。
 ただ、生まれつきではなく、中学時代に“なで肩”(変形ぎみという意味での極度な“なで肩”。以下、たんに“なで肩”と称する)になったのであれば、それは、そのような姿勢がなんらかの理由で身についてしまったと考えるほうが妥当です。
したがって、“なで肩”の原因を首のつけ根の筋肉のつきすぎの問題として捉えるよりも、姿勢の問題として捉えるほうが至当ではないかと思います。
②一般的にいって、胸囲の小さいことや、肩幅の狭いことが“なで肩”の直接の原因とは考えられません。
もしも、そのようなことが“なで肩”の原因になるとすれば、胸囲の小さい人や肩幅の狭い人は、みんな“なで肩”になってしまいます。
 先天的な“なで肩”の場合はともかくとして、あなたのように中学時代以後になったという後天的な“なで肩”の場合は、その原因を、姿勢の歪みによるものとして捉えることのほうが妥当かと思われます。
 下記に“なで肩”の人に多く見られる姿勢上の特徴について述べておきますので参考にしてください。
ただし、通常は、いくつもの特徴が重なることが多いので、その点に留意してください。
㋑円背(いわゆる猫背)
㋺前肩
㋩鎖骨の端が正常な位置になく、前方にゆがんでいる。
㋥肩甲骨が正常な位置になく、上方へあがっている。
㋭腕を下へさげたとき、上腕部の向きが正常ではなく、内側へよじれている。(肘が横、外の方へ向いている)
③三角筋のトレーニングを始める前にしても、また、トレーニングをやりながらにしても、矯正できるものであれば矯正しておくほうがいいと思います。
 三角筋のトレーニングを行いながらでも矯正することは可能なので、必ずしもトレーニングを開始する前に矯正しておかなければならないということもありません。
要は心がけの問題であり、“なで肩”を直すにはトレーニング中の運動フォームはもちろんのこと、平素の姿勢にも注意をおこたらないように留意することが大切です。
④あなたの肩がどのような形なのか実際に見ていないので、はっきりしたことはいえませんが、一応、原因は姿勢の歪みによるもので、矯正可能と考え、そのための方法について述べることにします。

<なで肩の矯正運動>

①上体の後方への伸展
 立った姿勢、または椅子に腰かけた姿勢で、上体を後方へそらす。腰椎のあたりを反らすのではなく、胸椎のあたりをそらすようにする。
②肩の上下、後方への回転
 背すじを伸ばし、胸を張った姿勢で両腕を下にさげ、肘窩部(肘関節の内側)をいくぶん前方に向けた状態で、肩を上から後方へ引くようにしてまわす。
③首の前後・左右への屈伸
 背すじを伸ばし、胸を張って首の屈伸を行う。
④前胸部および側胸部の伸展
 肩幅か、それより少し広めに両手でタオルを握り、肘を完全に伸ばしたまま胸をグッとそらし、両腕を頭上へあげ、さらにできるだけ頭の後方までタオルがいくようにする。

 他にも“なで肩”の矯正運動はいろいろありますが、とりあえず代表的なものを4つ紹介しました。
 “なで肩”の原因が姿勢の歪みによる場合、まず、その姿勢の歪みを矯正するための運動を行うようにすればよいわけです。自分でいろいろ工夫してひまをみて随時実施してください。
(回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生)
月刊ボディビルディング1979年8月号

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