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Q&A なんでもお答えします 1979年10月号

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月刊ボディビルディング1979年10月号
掲載日:2019.06.19

パンプ・アップと筋肉の発達の関係

Q ボディビル歴は5ヵ月です。現在、隔日的週3日のペースでトレーニングをしています。ところで質問があります。というのは、僕の場合、練習直後には一時的に筋肉が発達した感じになりますが、翌日になるとひっこんでしまったようになります。これはいったいどういうことでしょうか。トレーニングの仕方に問題があるのでしょうか。
<現在の体位>

<現在の体位>

<トレーニング・スケジュール>

<トレーニング・スケジュール>

(青森県 豊田高宏 店員 20歳)
A 「トレーニング直後に筋肉が発達した感じになるが、翌日になるとひっこんでしまう」とのことですが、それはパンプ・アップという現象によるものと考えてまずまちがいはないと思います。したがって、トレーニング法に原因があるわけではないと思います。
パンプ・アップとは、毛細血管の充血によって一時的に筋が膨張する現象です。このような現象は、運動によって使われた筋肉部位に酸素あるいは栄養素を補給するために、血液が多く動員されることによってひそ起こされるものです。

 しかし、パンプ・アップの現象は、個人差はあるものの、あまり持続性がなく、トレーニング終了後、時間が経過するにつれて消滅してしまいます。その上、筋肉というものは、元来、運動時や運動直後に発達する性質のもではありません、

 筋の発達は、運動終了後、運動によって消耗した筋組織が運動前の状態に回復した後に超回復というかたちで得られます、そして、ボディビルのような運動の場合、上記のような経過をたどって筋の発達が得られるには、通常トレーニングとトレーニングの間に中1~2日くらいの休養が必要であると考えられています。

 ある程度、ボディビルの経験を積んだ人であれば、パンプ・アップや超回復についての知識があるので実質的な筋の発達とパンプ・アップによる一時的な筋の膨張とを混同するようなことはないと思います。あなたのように経験が浅い場合にはえてしてとりちがえるものです。

 したがって、今後は、そのような現象にまどわされることのないよう留意してください。

 以上述べたことがらによって、あなたの疑問も解けたかと思います。しかし、それとは別に、トレーニング・スケジュールを見ていくつか気が付いたことがあるので、一応念のために書き添えておくことにします。

①現段階では、種目別に考えても、また、全体的に考えてもセット数が多すぎるように思われる。

②現段階では各種目3セットぐらいが適当かと考えられる。ただ、ベンチ・プレスに限り、場合によっては1~2セット多く行うようにしてもよい。

③ベント・オーバー・ローイングの使用重量が重すぎるようである。使用重量の目方から考えると不正確なフォームで行なっているものと考えられる。正しいやり方を写真で示すので参照していただきたい。(写真参照)
(ベント・オーバー・ローイング)

(ベント・オーバー・ローイング)

④スクワットを採用していないのはどのような理由によるのか。別に深いわけがあるのでなければ採用するほうがよい。スクワットは大腿部だけでなく、胸部や腰背部を鍛錬するにも必要。

初心者用のトレーニング・コース

Q ボディビル歴はありません。これから始めようよ思っているのですが、どのようなスケジュールでトレーニングしたらよいでしょうか?現在の体位は下記のとおりです。
記事画像4
(福島県郡山市 渡辺誠也 15歳)
A まず、初歩的なトレーニングにおける基礎的なことがらについて述べるとしましょう。

<採用種目>

採用する運動種目は下記の基礎種目の中から体力的に受容できる範囲で選ぶ。

◎ベンチ・プレス
 <効果>胸および上腕の伸筋
〇スタンディング・プレス
 <効果>肩および上腕の伸筋
〇ベント・オーバー・ローイング
 <効果>上背、とくに広背筋
〇カール
 <効果>上腕二頭筋
◎スクワット
 <効果>大腿および腰
◎シット・アップ
 <効果>腹

[注]◎印を符そたものは基礎種目の中でもとくに重要と考えられる運動種目。したがって、体力的に6種目すべてを採用するのが困難な場合には、採用種目の選択にあたって◎印の運動をとくに重視する。

<反復回数>

 1セットにおける反復回数は8~12回くらいが適当。

 トレーニング上の目的によって、1セットの反復回数を上記の回数よりも多回数にしたり、または、低回数にしたりして運動を行う場合もあるが、通常、初心者のトレーニングにおいては8~12回ぐらいで行うのが妥当と考えられている。

<1種目当りのセット数>

 1種目当りのセット数は2~3セットが適当であると考えられてるが、初期においては2セットにするのが無難である。ただし、きょくたんに体力が弱い場合には1セットから始めるようにしてもよい。

<使用重量>

 運動で使用する重量は、種目別に反復回数(8~12回)に相応して定める。

<運動の動作>

 トレーニング初期においては、運動はストリクト・スタイル(反動を使わずに、正確な動作で運動を行う方法)で行うのがよい。

 意図的に反動を使って運動を行う方法(チーティング・スタイル)もあるが、ストリクト・スタイルによる運動方法が身についていない初心者がいきなりそのような方法で運動を行なっても的確に使用筋に刺激を与えることはできない。

 ではあなたの体力をお手紙にある体位から推測して、適当と思われるトレーニング・スケジュール(例)を作ってみましょう。
<トレーニング・スケジュール例>

<トレーニング・スケジュール例>

 [注]体力的にも6種目行うのに困難がともなうようならば、採用種目の数を適当な数に調整する。
 なお、トレーニングの週間頻度は1~2日おきで週3日が適当とされているが、体力的に負担になるようであれば、2~3日おきに週2回にするのがよい。

サル腕を矯正し、持久力をつけたい

Q 僕は中学2年生です。歳が若すぎると思うので、まだ本格的にはボディビルを行なっていませんが、質問がいくつかあるのでお答えください。なお、家にはバーベル、ダンベル、ベンチ等の器具があります。

[質問1] 僕の腕はサル腕です。それをなおす運動をできるだけたくさん教えてください。

[質問2] サル腕の場合、腕の運動、とくにカール運動などをやってはいけないでしょうか。

[質問3] ボディビルダーでサル腕の人はいますか。また、いたらその人はなおっていますか。

[質問4] 本格的なボディビルは18~19歳になってから始めたいと考えています。今は柔道をやっているので、持久力をつけたいと思っています。持久力を強化するにはどのような運動を行ったらよいでしょうか。

[質問5] 僕は現在、身長172cmで体重が62kgです。もうひとまわり全体的にバルクをつけ、体重を70kgくらいにしたいと思います。運動と食事の面をどのようにすればよいでしょうか。

 なお、僕の上腕と前腕のサイズは次のとおりです。

〇上腕(まげずに、まん中)あたり
左 27cm 右 26cm
〇前腕(いちばん太いところ)
左 28cm 右 27cm

 質問が多くなりましたが、よろしくお願いします。
 
 (熊本市 T・H 中学生 14歳)


A まだ14歳とのことですが、いまの段階では、なるべくおおくのスポーツを実施して、全身的に発達するようにし、そのあとで本格的にボディビルを実施するのがよいでしょう。

 では[質問1]から順にお答えします。

[質問1]

 結論から申しますと、体操や運動によってサル腕をなおすのは不可能であると考えられます。
 
 俗にサル腕とは、肘を伸ばし、前腕を最大限に伸展したときに、上肢そのものが反対側(上肢の背側部の側)へ極端に反りかえるような傾向を有する腕を指していいます。しかし、サル腕は身体的にいって奇形というわけではなく、また機能上も、これといった障害をともなうというわけでもありません。

 サル腕は、男性には比較的少ないですが、女性には多く見られます。したがって、あなたもあまり気にしないようにすることです。

[質問2]

サル腕だからといって、カール運動を除外する必要はありません。ただし、プリーチャーズ・カール(スコット・カール)などの板の上に上腕部を固定して行うようなカール運動の場合、肘を完全に伸ばしたときに、腕全体が反りすぎて肘関節に不当な負荷がかかるようなことがあるかもしれません。もしも、そのようなことがあれば、使用重量を軽減するか、または腕の進展度を180度以内に止めるように留意して運動を行うようにするのがよいと思います。

[質問3]

サル腕を調査目的とした資料もなく、また、とくにそのようなことを注意してい一流ビルダーを観察したことがないのではっきりわかりません。ただし、一流とまではいかないまでもかなりビルド・アップされたビルダーでサル腕の人には何人か接したことがあります。その中で、現在もひき続いて接する機会を有している人たちがいますが、別にサル腕が直ってきているということはありません。

[質問4]

 柔道のような体技の場合には、ある程度の筋力的な向上を促しながら、持久力を強化していく必要があると思います。そのための運動をいくつかあげてみましょう。

①ヒンズー・スクワット[写真参照]

記事画像6
 重量物を用いずに行うスクワットのこと。足の屈伸に合わせるように両腕を前後(または上下)に振り、調子をとりながら行うようにしてもよい。

 できるだけ多回数行う。1~2セット(1セットの反復回数が50回を超える場合は、1セットのみにするのが妥当である)。

②スクワット・ジャンプ

 しゃがんだ姿勢から上方へできるだけ高く跳びあがる。重量物を用いずに行う。反復回数は15~20回。1~2セット。

③ブッシュ・アップ

 腕立て伏臥腕屈伸運動。いわゆる腕立て伏せ運動のこと。1セットの反復回数は20~30回程度にして、1~2セット行うとよい。

 筋力が弱くて上記の回数を反復できない場合は、両手を適当な高さの台の上に付き、上体を高くして、運動時の負担を軽減して行うようにするとよい。

④V・シット

 ジャック・ナイフ・エクササイズとも称する腹筋運動。

 両脚を伸ばして床に仰臥した姿勢から上体と脚を同時にあげ、臀部を支点にしてV字型をつくるように行う。できるだけ多回数を反復する。1~2セット。

 中学生でもあるので、上記の4つの運動を1~2日おきに行えば十分かと思います。

 なお、各運動種目のセット数は、初期においては1セットずつが無難です。オーバー・ワークにならないように注意してください。

[質問5]

 中学2年生にしてはずいぶんと立派な体格をしているようですね。
 
 まず運動の面からいえば、全体的なバルクを増すためには、局部的な運動種目よりも、より広範囲にからだを使う運動種目を行うようにするのがよいといえます。

 食事の面では、偏食をしないで、野菜、果実、魚、肉、豆類等をまんべんなく食べることです。

 なお、筋肉の発達を促すには蛋白質を多く含む食物を、また体重を増やすには主食類を十分に食べるように心がけることです。

6ヵ月間で逞しいからだにしたいが

Q 私は22歳の学生です。ボディビル経験はありません。私は今春、就職の予定でした。ところが、私は小さい頃からスポーツが苦手で、どちらかというと家にとじこもって勉強ばかりしていたので体格がわるく、そのことが原因で就職することができませんでした。

 就職のために7社の面接を受けましたが、どこへいっても「ずいぶんやせているね、運動は?」とか、「ずいぶん骨と皮だね」といった言葉で体格のわるいことを指摘され、ことごとく不採用になってしまいました。

 そこで1年間、大学に留年し、からだを鍛えることにしました。といってもすでに半年余りを無為に過してしまいましたが、残り半年間で、ミスター日本とまではいかないまでも、上半身が逆三角形のがっしりした立派な体型にしたいと考えています。残された6ヵ月間で、このような体型にするにはどのような方法でトレーニングをしたらよいでしょうか。

 ちなみに現在の私の体位はつぎのとおりです。
記事画像7
(東京都 M 学生 22歳)
A 「ローマは1日にして成らず」という諺がありますが、ボディビルも例外ではありません。ボディビル体位の向上がいかに有効であるからといっても、6ヵ月やそこいらの短期間で、風船をふくらますように筋肉を発達させられるものではありません。

 6ヵ月という期限をきって、からだつきをなんとか逞しくしたいというあなたの気持ちも解らぬわけではありませんが、そうそう簡単に一流ビルダーのようなからだつきになれるものではありません。一流ビルダーのようなからだつきになるには何年もの地道な努力が必要です。

 したがって、あなたも、せっかくボディビルを始めるのであれば、余り多大な効果を期待しないで、地道にからだを鍛えていくように心がけて欲しいと思います。余り多大な効果を期待すると、トレーニングの結果について失望を感じるようになり、挫折することにもなります。挫折によってトレーニングを放棄してしまえば、もうそれっきり身体を鍛錬する機会を失ってしまうことになります。

 トレーニングの結果は、まずトレーニングを行なってみなければ判りません。そして、トレーニングの結果、どれだけの効果が得られるかは、事前には誰にもわかりません。

 たしかにある意味では、漫然と行うよりも目標を定めてトレーニングを行うほうがよいということもいえます。しかし、だからといって、およそ可能性の薄い目標を立てることは、現実とのギャップを強く感じるようになり、かえってトレーニングに対する意欲を損うことにもなります。したがって、目標を定めるなら、余り欲ばらずに実現性のある範囲で定めるようにするのが賢いといえます。あなたもその辺のところをよくわきまえた上でボディビルを始めるようにしていただきたいと思います。

 あれこれとくだくだしいことを述べてきましたが、あなたが適切なトレーニング・スケジュールをつくって、真剣に練習さえすれば6ヵ月の期間があれば、体格的なハンデを克服することは十分可能です。少なくとも、面接の場で、体格の貧弱なことを指摘されるようなことは解消できるかと思います。いずれにせよ、いまのあなたの体格からいってからだを鍛錬する必要があると思うので、意欲を持って1日も早くトレーニングを始めるようにしてください。
 
 トレーニング上の要点については渡辺誠也さんへの解答欄(本号Q&A)を参考にしてください。なお、個々の運動のやり方については専門書を参考にされればよいでしょう。
<トレーニング・スケジュール例1>

<トレーニング・スケジュール例1>

[注] 当初は正しい運動法をマスターするために重量的に十分な余裕を持たせる。
<トレーニング・スケジュール例2>

<トレーニング・スケジュール例2>

[注] 上記のスケジュールで体力的に余裕が感じられるようになったら、各運動種目のセット数を1セットずつ増やし、3セットずつ行うようにするとよい。ただし、その場合は、全種目にわたって一時に増やさないで、様子を見ながら1種目ずつ増やすようにする。

 現在のあなたの体格から判断すると6ヵ月という期間内では、上述した第2段階までのトレーニング内容で十分かと思います。焦るあまりに、余裕のないトレーニングを行うと、筋肉が過度に消耗して、かえって効果があがらなくなる場合があります。焦ることなく地道に努力してください。
回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生
月刊ボディビルディング1979年10月号

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