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傷害・故障に泣くビルダーのための“ハリ治療”

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月刊ボディビルディング1981年4月号
掲載日:2020.04.30
滝沢新一(スポーツ・トレーナー 鍼灸師)
 一流のスポーツマンといわれている人達の多くが、何かしらの傷害を持っていることは、皆さんも良くご存じの事と思います。もし彼らに何の傷害もなかったら、もっと素晴らしい記録が出せるとは思いませんか?あるいは苦しまずに同じ成果を上げる事が出来るとは思いませんか?
 もちろん、その重荷ゆえに精神面が鍛えられ、良い結果をもたらしている場合もあるでしょう。しかし、若き日の無理のツケは、必ず、中高年以後に回って来るものだという事を忘れてはならないのです。
 読者の中にも、過度のウェイトに依る腰痛や関節痛等に悩まされている方も多いのではないでしょうか?いわゆるギックリ腰等の様な、急激にしかも激しい痛みに襲われた場合、皆さんは、まず整形外科に駆け込むでしょう。そこでは、各種の科学的な検査が行なわれ、それらに基づいて的確な診断が下されます。そして、いよいよ治療の開始です。
 多くは、その後、治療の成果が上がり、めでたく回復となるわけですが、中には、思う様な成果が上がらないために、途中で治療をやめてしまったりする人もあります。そこで、諦めてしまっては、老後に、利子を付けて、苦しみを持ち越す様なものです。
 そんな時、ハリ治療が劇的な効果をもたらす事があるのを御存じでしょうか?若い人程、ハリには馴染みがなく、ある種の抵抗を感じている様ですが、ハリ麻酔の効果で知られる様に、ハリ治療は、痛みに対して、素晴らしい効き目があるものなのです。
 そこで、今回は、ハリ治療とはどんなものかという事を分かりやすく、お話したいと思います。

―ハリ治療とは―

 ハリ治療の定義については、明治以後、様々な人によって、研究され公にされています。が、現在の所、公認され法的に認められた規定というものはありません。それぞれ難解な表現でなされていますが、分かり易くいうと、金属製のハリを用いて、皮内、及び皮下組織に刺入し、身体組織、特に神経系等に対して刺激を与えて、疾病の予防、治療を施すものだという事です。
 何故、ハリに依る刺激が効くのかという事は、現在、科学的な研究が進められている段階ですので、ここではお答え出来ませんが、その効果については、数多くの臨床例が物語っています。

―ハリは痛くない!―

 ハリというと、まず思い浮かべるのが針箱の中の木綿針、もしくは、あの太い畳針という所が一般的ですが、ハリ治療に使われてるハリは、そんなに太い物ではありません。普通の治療に使われるハリの太さは、直径が0.2ミリ前後の非常に細い物なのです。
「ハリを刺す」という言葉のイメージから、痛いものだという先入観にとらわれがちですが、目に見えるか見えないかのハリですから、決して痛くはないのです。こどもの頃、注射の痛さに泣いた覚えのある人は皆、その時の事を思い起こして、ハリを恐れる様ですが、そんな事は全くナンセンスだという事が、これでお分かりいただけると思います。

―ハリの種類―

 ハリには今お話したハリ(豪針)の他に皮内針というものがあります。これは、皮内に数ミリ刺入し、判創膏で固定して、数日にわたって刺激を与え続けるものです。相撲取りの背中や腹などにペタペタ張ってあるあれがそうです。以上の2つが代表的なものですが、他に、中国で使われている中国針、電気の刺激を与える電気針、灸とハリを組み合わせ熱刺激を与える灸頭針etc。治療目的に合わせて色々なハリがあります。
 さて、スポーツマンに起こりがちな傷害には、どんなものがあるのでしょうか?最近、人気のテニスには、テニス・エルボーと呼ばれる肘関節傷害、柔道では足首の捻挫、野球においては肩関節傷害等と、あげればキリがありません。ボディビルでは先にあげた腰痛、肩、膝の痛みなどの関節傷害や筋肉を痛める人が多いようです。私も、そんな経験をしたビルダーの一人として次回より、どういうトレニーニング種目で、どんな傷害が起こり易いか、という事と不幸にも傷害が起きてしまったらどの様に対処すれば良いか、という事を一鍼灸師の立場から具体的にお話して行きたいと思います。
月刊ボディビルディング1981年4月号

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