新ボディビル講座 ボディビルディングの理論と実際〈2〉
第2章 トレーニングの解剖生理
月刊ボディビルディング1981年4月号
掲載日:2020.05.08
名城大学教授 鈴木正之
トレーニングの生理学といえば、人体構造やしくみの基礎的学習から、運動生理学、スポーツ生理学、スポーツ科学を学習することであるが、ここでいう生理学とは、解剖生理学や運動生理学の教科書的なことをいうのではなく、筋肉を強化させ、筋力を強化するために必要な最小限の運動生理学を学ぶことであって、人体の解剖生理学的な記載事項は、論旨をまとめた程度にすぎない、そのため、もっと深く人体生理学を勉強したい人は、他の専門書で勉強していただきたい。
ただし、ここでは筋肉を発達させ、より強い筋力を発揮させるためのメカニズムについては人体解剖学的なことから、その生理学までくわしく述べていく。
ただし、ここでは筋肉を発達させ、より強い筋力を発揮させるためのメカニズムについては人体解剖学的なことから、その生理学までくわしく述べていく。
〈1〉解剖学とは
解剖学とは、動植物体の構造を研究する学問であるが、これを狭義に解して人体解剖学と呼んでいる。
解剖学の研究には、系統に従って順次研究する系統解剖学と、各々の局所について研究する局所解剖学との2つに分けて考えられるが、ここでは前者の系統解剖学に主眼をおいた。系統解剖学は、骨学、筋学、靭帯関節学、脈管学、内臓学等に分けられ、その構造を知ることは、ボディビルダーとしても、パワーリフターとしても、あるいは一般人の社会生活の上からも欠くべからざることである。
解剖学の研究には、系統に従って順次研究する系統解剖学と、各々の局所について研究する局所解剖学との2つに分けて考えられるが、ここでは前者の系統解剖学に主眼をおいた。系統解剖学は、骨学、筋学、靭帯関節学、脈管学、内臓学等に分けられ、その構造を知ることは、ボディビルダーとしても、パワーリフターとしても、あるいは一般人の社会生活の上からも欠くべからざることである。
〈2〉人体についての概念
a身体各部の名称
d身体各部の方向用語(解剖用語)
正中・・・・・・人体の左右の真中を前後の方向に走る線、または面をいう。
矢状・・・・・・正中線に平行して前後の方向に走る線、または面をいう。
前額面・・・・・正中線に対して直角の方向に走る線、または面をいう。
水平・・・・・・水面に平行する直線、または面をいう。
内側・外側・・・正中に向って近い方を内側、遠い方を外側という。
近位・遠位・・・中枢に向って近い部位を近位、遠い部位(手・足・指)を遠位という。
前(腹側)・後(背側)・・・体幹の前を腹側、後を背側という。
墝側・尺側・・・前腕における用語で、外側(母指側)を墝側、内側(小指側)を尺側という。
腓側・脛側・・・下腿における用語で、外側(小指側)を腓側、内側(母指側)を脛側という。
正中・・・・・・人体の左右の真中を前後の方向に走る線、または面をいう。
矢状・・・・・・正中線に平行して前後の方向に走る線、または面をいう。
前額面・・・・・正中線に対して直角の方向に走る線、または面をいう。
水平・・・・・・水面に平行する直線、または面をいう。
内側・外側・・・正中に向って近い方を内側、遠い方を外側という。
近位・遠位・・・中枢に向って近い部位を近位、遠い部位(手・足・指)を遠位という。
前(腹側)・後(背側)・・・体幹の前を腹側、後を背側という。
墝側・尺側・・・前腕における用語で、外側(母指側)を墝側、内側(小指側)を尺側という。
腓側・脛側・・・下腿における用語で、外側(小指側)を腓側、内側(母指側)を脛側という。
〈3〉骨格の解剖生理
1.骨格系の構成と作用
人体の骨格は約200個の骨より成りそれらが軟骨と結合組織によって連絡されている。また、各骨はそれぞれ特有の形態を有し、長骨・短骨・扁平骨・不規則形骨などに分けられる。
骨格系の主な作用は次のように分けられる。
a支持・・・全身の支柱となって、形態と姿勢をととのえて軟組織の支持をなす。
b保護・・・数個の骨が結合し、腔洞をつくって諸器官の保護をなす。(脳・眼球・脊髄・心臓・肺等)
c運動・・・骨格筋の作用によって受動的運動をなす。
d造血・・・長骨の内腔にある骨髄は造血作用をもつ。
骨格系の主な作用は次のように分けられる。
a支持・・・全身の支柱となって、形態と姿勢をととのえて軟組織の支持をなす。
b保護・・・数個の骨が結合し、腔洞をつくって諸器官の保護をなす。(脳・眼球・脊髄・心臓・肺等)
c運動・・・骨格筋の作用によって受動的運動をなす。
d造血・・・長骨の内腔にある骨髄は造血作用をもつ。
2.骨の構造
骨の種類により多少の差はあるが、通常は骨質・軟骨質・骨髄・骨膜の4種類の組織より成る。
a骨質・・・骨質は骨の主部をなすもので、骨細胞とそれを取りまく基質から成り、さらに骨の表層部を占める緻密質と、内部の海綿質とに分けられる。管状骨では、骨管は厚い緻密質から成り、骨端はおもに海綿質でその表層を薄く緻密質がおおっている。
b軟骨質・・・軟骨質は骨の関節面と成長面にみられる。前者は関節部に弾性の緩衝帯を形成するためであり、後者は、骨の長軸方向への成長を行うためのものである。成長線の軟骨質は骨の発育が止まると骨化してしまう。管状骨の成長線は骨幹と骨端との境にあって、これを骨端線という。
c骨髄(随腔)・・・骨髄は海綿線の内部の腔で軟組織でみたされている。骨髄は組織学的には細胞組織で、血球を産出する機能を営んでいる。この造血作用のある骨髄は赤色を呈しており、赤色骨髄と呼ばれるが、その機能を失なったものは脂肪化して黄色を呈しているので、黄色骨髄と呼ばれている。成人では、体肢の長管骨の骨髄はほとんど黄色骨髄になっている。
b骨膜(皮質)・・・骨膜は骨の表面をつつむ薄い膜で、組織学的には結合組織の1つで、骨と筋との結合や、骨の栄養補給などを行なっている。
a骨質・・・骨質は骨の主部をなすもので、骨細胞とそれを取りまく基質から成り、さらに骨の表層部を占める緻密質と、内部の海綿質とに分けられる。管状骨では、骨管は厚い緻密質から成り、骨端はおもに海綿質でその表層を薄く緻密質がおおっている。
b軟骨質・・・軟骨質は骨の関節面と成長面にみられる。前者は関節部に弾性の緩衝帯を形成するためであり、後者は、骨の長軸方向への成長を行うためのものである。成長線の軟骨質は骨の発育が止まると骨化してしまう。管状骨の成長線は骨幹と骨端との境にあって、これを骨端線という。
c骨髄(随腔)・・・骨髄は海綿線の内部の腔で軟組織でみたされている。骨髄は組織学的には細胞組織で、血球を産出する機能を営んでいる。この造血作用のある骨髄は赤色を呈しており、赤色骨髄と呼ばれるが、その機能を失なったものは脂肪化して黄色を呈しているので、黄色骨髄と呼ばれている。成人では、体肢の長管骨の骨髄はほとんど黄色骨髄になっている。
b骨膜(皮質)・・・骨膜は骨の表面をつつむ薄い膜で、組織学的には結合組織の1つで、骨と筋との結合や、骨の栄養補給などを行なっている。
3.骨の力学的構造
骨は支持作用、保護作用、運動作用の目的に合理的に適合し、力学的に理想的な構造になっている。すなわち、支持作用、保護作用のための強靭性、運動作用のための退席に比して重量の軽いことなどである。そのため、骨の内部が外部の緻密質より比重が軽い海綿質で出来ていることが特徴である。
また海綿質は単に骨体の重量を軽くするためだけでなく、緻密質と共にその構造は、骨柱が骨に作用する外力の力線の方向に整然と並んでいて、外からの作用に対して強い構造となっている。
また海綿質は単に骨体の重量を軽くするためだけでなく、緻密質と共にその構造は、骨柱が骨に作用する外力の力線の方向に整然と並んでいて、外からの作用に対して強い構造となっている。
〈図6〉人体の方向用語と骨格名
4.骨名(図6参照)
a頭蓋骨・・・前頭骨・頭頂骨・側頭骨・後頭骨・蝶形骨・上顎骨・下顎骨
b背柱・・・頸椎(7)・胸椎(12)・腰椎(5)・仙椎(仙骨、5)・尾椎(尾骨、3~5)
c胸郭・・・胸椎・肋骨(肋軟骨)・胸骨(剣状突起)
b上肢・・・鎖骨・肩胛骨(肩峰突起・鳥口突起)・上腕骨・墝骨・尺骨・手根骨(舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨・大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨)・中手骨(第1~第5)・指骨(基節骨・中節骨・末節骨)
e下肢・・・寛骨(腸骨・坐骨・恥骨)・大腿骨(大転子)・膝蓋骨・脛骨・腓骨
・足根骨(距骨・踵骨・舟状骨・第1~第3楔状骨・立方骨)、中足骨(第1~第5)・指骨(基節骨・中節骨・末節骨)
b背柱・・・頸椎(7)・胸椎(12)・腰椎(5)・仙椎(仙骨、5)・尾椎(尾骨、3~5)
c胸郭・・・胸椎・肋骨(肋軟骨)・胸骨(剣状突起)
b上肢・・・鎖骨・肩胛骨(肩峰突起・鳥口突起)・上腕骨・墝骨・尺骨・手根骨(舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨・大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨)・中手骨(第1~第5)・指骨(基節骨・中節骨・末節骨)
e下肢・・・寛骨(腸骨・坐骨・恥骨)・大腿骨(大転子)・膝蓋骨・脛骨・腓骨
・足根骨(距骨・踵骨・舟状骨・第1~第3楔状骨・立方骨)、中足骨(第1~第5)・指骨(基節骨・中節骨・末節骨)
5.骨の連結(関節)
骨はその間に腔間を有しない不動結合によって連結されているものもあるが、ふつう、2骨間の連結面に腔間があり、可動結合の関節によって連結され、身体の運動に関与している。
通常、関節を形成する両骨端は、一方が凸面、他方が凹面を呈しており、前者を関節頭、後者を関節窩といい、その表面は薄い軟骨(関節軟骨)で覆われている。また関節は結合組織によって取り巻かれて関節嚢を形成している。[図7参照]
通常、関節を形成する両骨端は、一方が凸面、他方が凹面を呈しており、前者を関節頭、後者を関節窩といい、その表面は薄い軟骨(関節軟骨)で覆われている。また関節は結合組織によって取り巻かれて関節嚢を形成している。[図7参照]
〈図7〉肩関節 右側を前額状断面を後方から見る (スベルテホルゾ)森於免の解剖学より
A―骨の連結と関節名
a靭帯結合・・・強靭な靭帯によって結合されるもので、鎖骨間靭帯・椎弓間の黄色靭帯などがある。
b縫合・・・わずかの結合組織により、不動の状態に結合されているもので、鋸状縫合、鱗状縫合などがある。
・軟骨性連結・・・骨と骨の間に軟骨が介在して連結するもので、椎間円板や恥骨間円板などがそれである。
b滑膜性の連結・・・骨と骨とが特殊な結合により可動連結、すなわち関節をなすものである。関節の形態にはいろいろあり、これを大別すると次のようになる。
(イ)球関節・・・関節面が球面状のもので、運動範囲が大きい―肩関節
(ロ)臼状関節・・・球関節に似ているが関節面が広い長円形をなしているもので、運動に制限がある―股関節
(ハ)蝶番関節・・・関節頭の上に高まりがあり、関節窩内にはこれに適合するくぼみがあって、運動は骨軸の方向のみに行なわれる―指関節
(ニ)顆状関節・・・関節頭の長短両軸のまわりに動く関節―墝骨手根関節
(ホ)車軸関節・・・骨の長軸のまわりを車輪のようにまわる関節―墝尺関節
(ヘ)鞍関節・・・両関節面が鞍の背を合わせたような形の関節―第1手根中手関節
(ト)平面関節・・・両関節面がほぼ同じ平面な形をしているもの―椎間関節
(つづく)
b縫合・・・わずかの結合組織により、不動の状態に結合されているもので、鋸状縫合、鱗状縫合などがある。
・軟骨性連結・・・骨と骨の間に軟骨が介在して連結するもので、椎間円板や恥骨間円板などがそれである。
b滑膜性の連結・・・骨と骨とが特殊な結合により可動連結、すなわち関節をなすものである。関節の形態にはいろいろあり、これを大別すると次のようになる。
(イ)球関節・・・関節面が球面状のもので、運動範囲が大きい―肩関節
(ロ)臼状関節・・・球関節に似ているが関節面が広い長円形をなしているもので、運動に制限がある―股関節
(ハ)蝶番関節・・・関節頭の上に高まりがあり、関節窩内にはこれに適合するくぼみがあって、運動は骨軸の方向のみに行なわれる―指関節
(ニ)顆状関節・・・関節頭の長短両軸のまわりに動く関節―墝骨手根関節
(ホ)車軸関節・・・骨の長軸のまわりを車輪のようにまわる関節―墝尺関節
(ヘ)鞍関節・・・両関節面が鞍の背を合わせたような形の関節―第1手根中手関節
(ト)平面関節・・・両関節面がほぼ同じ平面な形をしているもの―椎間関節
(つづく)
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