フィジーク・オンライン

日本ボディビル界への提言
いまこそ小異を捨てて大同につくとき

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1981年5月号
掲載日:2020.05.25
 日本のボディビル界も、かつて一度は一本化したかに見えた時期もあったが、その後、再びJBBAとIFBB・JAPANとの2本立てとなり、すでに10数年が経過した。
 どうしてそうなったかについては、我々地方のジム経営者にはよくわからないが、日本におけるボディビルの普及・発展にとって大きなマイナスになっているように思えてならない。
 我が国でボディビルが本格的にはじめられてから20数年がたち、全国各地にボディビル・ジムが設立され、夏から秋にかけてはボディコンテストが一斉に開催される。一見、ずいぶんボディビルが盛んになったように見えるが果してそうなのだろうか。現在の状態に満足していていいのだろうか。
 私は決してそうは思わない。例えば1年間の成果を競うコンテストにおいても、ミスター東京とかミスター大阪など、ごく一部のコンテストは、選手層の厚さ、レベルの高さ、観客動員数等において、まさにコンテストの名にふさわしい大会といえるが、ほとんどのローカル・コンテストの現状は、あらゆる面においてコンテストとは名ばかりで、まったく自己満足そのものでしかない。選手層がうすいため、コンテストに出場する選手の顔ぶれ、とくに数年前から上位入賞者がほとんど変わらないというところさえある。これではボディビル・ファンでさえコンテストに対する魅力を失ってしまう。
 ボディコンテストは、選手たちの1年間の鍛錬の成果を競う大会というだけでなく、ふだんボディビルに接していない一般の人々にPRする絶好のチャンスでもある。この絶好のチャンスに現在のような、質・量ともに盛りあがらないコンテストを開催していたのでは、自らそのチャンスをつぶしているようなものである。
 そこで、なんとか、少しでもコンテストを盛りあげるために、私は次のような提案をしたい。

 まず、JBBAとIFBB・JAPANが一本化することが最も望ましい姿であるが、これにはいろいろ歴史的な背景もあり、すぐには無理かも知れない。そこで、両組織が選手だけでも自由にどのコンテストにでも出場できるようにしたらどうだろうか。そうすれば、選手自身にも大きな刺激となりそれがレベルの向上にもつながると思う。そしてまた、それが、見る者にとってもマンネリ化しつつあるコンテストに対する新たな興味にもなるにちがいない。さらにはそれが、ボディビルの普及にもつながるのではないだろうか。

 最後に、以上のこととは関係ないが私は、大阪で行なわれた昨年とその2年前のミスター日本コンテストを見に行ったが、その折、杉田茂さんが選手係のようなことをしているのを目撃して大きなショックを受けた。
 というのは、どうして杉田さんを審査員に加えないのか、いまの日本で、彼ほど審査員として最適の人はいないのではないだろうか。選手係のような仕事は、杉田さんでなくても他の人でも十分に勤まるではないか、と思ったからだ。

 ボディビル協会の役員には、協会に対する貢献度とか実績、あるいは経験とか年令が尊重されて当然であるが、審査員は、選手の体を見る確かな目をもち、公平な採点をする人でなければならない。私は杉田さんとは話もしたことはないが、彼なら誰が見ても以上の条件をすべて満たしていると思うので、ひと言つけ加えた次第である。
(地方の一ジム経営者)
月刊ボディビルディング1981年5月号

Recommend