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なんでもQ&Aお答えします 1981年5月号

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月刊ボディビルディング1981年5月号
掲載日:2020.05.19

胸の運動を週6日実施しているのに、他の部分より発達が遅いのはなぜ?

Q ボディビル歴は5ヵ月です。2ヵ月ほど前から胸の運動に重点をおいてトレーニングしています。そのようなわけで、胸の運動だけは月曜から土曜まで、6日連続実施しております。しかし、効果のほどはさっぱりで、他の部分に比してむしろ遅いように思われます。どうしてこのように胸が発達しないのか不思議でなりません。よきアドバイスをお願いします。

≪トレーニング・スケジュール≫
(2分割法を採用)
以上ですが、トレーニング後の疲労感はかなり強く、部分的には腕がとくに疲れる。

以上ですが、トレーニング後の疲労感はかなり強く、部分的には腕がとくに疲れる。

≪現在の体位≫
身長 173cm
体重 61kg
胸囲(拡張) 95cm
腹囲 71cm
上腕囲(緊張) 28cm
前腕囲 27cm
大腿囲 48cm
(群馬県 伊東正己 商業 19歳)
A 結論から申しますと、胸の発達が思わしくないのは、トレーニングの頻度が多すぎることに原因があると考えられます。胸の運動そのものの頻度はもちろんのこと全体的にも多すぎると思います。
 ボディビルというものは、もとよりトレーニングの頻度を多くすれば、それだけ効果が得られるといったものではありません。そこにボディビルの難しさがあるわけです。
 ところで、あなたのトレーニング・スケジュールは、胸の運動の箇所だけでなく、全体的に問題があるようなので、参考までに組み変えてみることにします。ただし、各種目の反復回数、およびセット数に関しては別に問題はないと思われるので、それらの記述については省略します。

≪トレーニング・スケジュール例≫
記事画像2
[註]A・Bの各コースを週2日ずつ行なうのが妥当と思います。週3日ずつ行なうことは、よほど回復力がすぐれているか、あるいは、生活条件にめぐまれている人でない限り慎むほうがよいと考えられます。

 以上のスケジュール例のように採用種目を分割して行なうのがよいと思います。そうすれば、たんに胸の部分だけでなく、他の部分の消耗も軽減されるので、これまでよりも全身的な効果も期待できるようになると思います。
 なお、ちょっと気にかかるので申しそえておきますが、上腕二頭筋の運動は、他の種目と変えるか、あるいは、他の種目をもう種目加えるかするのがよいのではないかと思います。
 というのは、あなたのからだは、まだバルクの増加を目的とする段階にあると思われるので、上腕二頭筋の運動もそのような目的に即した種目を行なうようにするのがよいと考えられるからです。ニー・カールは本来、バルクの増加よりもピークを高めるのに適した種目といえるので、ツー・ハンズ・バーベル・カールなり、またはふつうのダンベル・カールなりを行うようにするのがよいと思います。

上腕三頭筋の強化種目と、それを加えたトレーニング・スケジュールの作り方

Q ボディビル歴は1年2ヵ月、自宅で1人でトレーニングしています。現在は下記のスケジュールで行なっていますが、今後、当分の間は、上腕三頭筋の強化種目を加えたスケジュールでトレーニングしたいと考えています。

≪現在のスケジュール≫
隔日的、週3日(月・水・土)
記事画像3
≪現在の体位≫
身長 167cm 大腿囲 53cm
体重 64kg  下腿囲 36cm
胸囲(拡張)104cm
腹囲(縮小)67cm
上腕囲(緊張)34cm
(大分県 川上保夫 学生 21歳)
A 1年2ヵ月のキャリアにしては非常によいからだをしておられるようです。ボディビルダーの素質十分といった感がします。
 では、さっそく上腕三頭筋の運動種目について述べることにしましょう。
 現在の段階では、上腕三頭筋の形をよくするというよりは、まずバルクの増加に重点を置いてトレーニングをするのがよいと思います。そのようなわけで、採用する種目もその線に沿って選ぶのがよいでしょう。
 上腕三頭筋の運動を大別すると、主として外側頭に効くものと、長頭に強く効くものとに別けられます。したがって、さし当り、それら2種類の運動種目の中から、次に示すようなバルク・アップのための運動をそれぞれ1種目ずつ選んで行うようにするのがよいと思います。

◎トライセプス・プレス・ライイング
(主として長頭に効く運動)

<かまえ>オーバー・グリップでバーベルを持ち、ベンチの上に仰臥し、バーベルを胸の上方に拳上する。なお、この場合の両手の間隔は、肩幅くらいか、あるいはそれよりもいくぶん狭いくらいがよい。
<動作>上腕部を垂直に近い状態に保ったまま、両肘を開かないように留意して腕を屈し、バーベルを額、または頭の上あたりにおろす。おろしたなら、両肘を開かないように留意して、バーベルを差しあげるのではなく、押しあげるような感じで腕を伸ばし、もとの位置へあげ戻す。両肘を開くようにすると長頭に与える効果が減少する。[写真参照]
[トライセプス・プレス・ライイング]

[トライセプス・プレス・ライイング]

◎ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
(主として外側頭に効く運動)

<かまえ>左右のグリップの間隔を肩幅よりも狭くしてオーバー・グリップでバーベルを持ち、ベンチに仰臥し、腕を伸ばしてバーベルを胸の上方にかまえる。
<動作>そのかまえの姿勢からベンチ・プレスの動作を行う。ただし、この場合は、普通のベンチ・プレスのように両肘を床の方(下の方)へ余り深くおろさないようにして、腕(肘)を十分に屈するようにする。このような運動のやり方では、腕(肘)が十分に屈しているにもかかわらず、バーベルのシャフトが腕に付かない場合もあるが、それは一向にさしつかえない。(注:大胸筋の運動として行うときは、両肘を十分に床の方へおろすようにする)


≪トレーニング・スケジュール≫
隔日的、週3日
記事画像5
[備考]上腕二頭筋と上腕三頭筋の運動を下記のようにスーパー・セットとして行なってもよい。
ツー・ハンズ・カール
トライセプス・プレス・ライイング

スコット・カール
ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス

 なお、肩と広背筋の運動が1種目ずつなので、体力的に余裕があればそれぞれ4セットずつ行なうようにしてもよい。ただし、その場合は、1セットにおける反復回数をあまり多くしないで、8回ぐらいまでにとどめるほうが無難である。

円盤投げの補強運動としてのウェイト・トレーニングのやり方

Q 僕は現在、高校で陸上競技の円盤投げをやっています。しかし、円盤投げの選手としては身体が小さいほうなので、そのハンデをウェイト・トレーニングによってなんとか克服したいと考えています。ウェイト・トレーニングは陸上競技部に入部以来ずっと行なっています。しかし、まったくの自己流で、効果のほうもあまりないようです。
 現在は下記のスケジュールでトレーニングしていますが、円盤投げの補強運動としては今のままでもよいでしょうか。間違っているところがあったらご指摘ください。


≪現在のスケジュール≫
隔日的、週3日
[註]円盤投げの練習は月・火・水・金・土の週5日行なっています。それに上記のウェイト・トレーニングを週3日実施しますので、ときには翌日までかなり疲れが残ることがあります。

[註]円盤投げの練習は月・火・水・金・土の週5日行なっています。それに上記のウェイト・トレーニングを週3日実施しますので、ときには翌日までかなり疲れが残ることがあります。

≪現在の体位≫
身長 174cm 上腕囲 34cm
体重 72kg  前腕囲 29cm
胸囲 101cm  大腿囲 58cm
腹囲 81cm  下腿囲 38cm
(神奈川県 S・H 高校生 17歳)
A 円盤投げのような投てき競技を行う選手にとって、ウェイト・トレーニングは不可欠のものであるといえるでしょう。それだけに、投てき競技を志す者にとっては競技能力を伸ばすために、いかに上手にウェイト・トレーニングを取り入れるかが、ひとつの大きな課題になると思います。
 トレーニング・スケジュールを拝見すると、あなたなりに運動種目の採用や各種目の反復回数などに気を配っておられるのがよくわかります。しかしウェイト・トレーニングを行うあなたの目的が、たんに運動選手としての基礎体力の強化にあるのではなく、あくまでも競技能力そのものの強化にあるのでしたら、トレーニングの内容をもう少し考えてみる必要があると思います。
 では、一応、そのような観点に立ってトレーニング・スケジュール例を参考までに作成してみましょう。なお、ご存知ないと思われる運動種目については後で説明することにします。

≪トレーニング・スケジュール例≫
(分割法を採用)

記事画像7
 以上のトレーニング・スケジュール例は、トレーニングの密度からいってどちらかといえばシーズン・オフに行なうのに適しているといえます。したがって、シーズンに入って円盤投げの練習が増加するにつれて、ウェイト・トレーニングの方は、種目およびセット数を減少させていく必要があります。
 では次に、あなたがご存知でないかも知れない運動種目について説明することにします。

◎スクワット・ジャンプ(ジャンピング・スクワット)

<運動法>スクワットと同様にバーベルを後ろ肩にかつぎ、しゃがんだ状態から垂直に上方へ跳びあがる。運動中にシャフトがクビに当ったりすと頸椎を痛めるおそれがあるのでバーベル・シャフトと両肩の間に当て物をし、運動中にシャフトが肩から浮かないように、両手でしっかりと固定して動作を行うようにする。

◎ワン・ハンド・ダンベル・スイング

<かまえ>片手のみにダンベルを持ち両脚の間隔を自然な幅にひらいて立つ。次に、腰を少し落とし、上体をいくぶん前掲させた姿勢をとり、ダンベルを大腿部の横にかまえる。
<動作>脚と腰を伸ばしながら、反動を使ってダンベルを前から上方へ振り上げる。振りあげたなら逆の動作によって元の姿勢に戻る。ダンベルをおろすときに、膝にダンベルをぶつけないようにくれぐれも注意。

◎ベント・オーバー・ワン・ハンド・リフト

<かまえ>ダンベルを片手に持ち、上体を床面とほぼ平行になるくらいまで前倒し、ベンチか手ごろな台の上に空いている方の手をついて体を支える。その姿勢で、片手に持ったダンベルを下方にぶら下げる。つまりベント・オーバー・ワン・ハンド・ローイングのかまえと同じような姿勢をとる。
<動作>ダンベルをぶら下げている方の肩をいったん下へ落し、その姿勢から、腕を伸ばしたまま、からだをねじるようにして肩を引き上げる。つまり、水泳のクロールにおける息を吸うときのような動作で、ダンベルは下へぶらさげたまま、からだをねじる。広背筋を少し緊張させ、肩の関節をあまりゆるめないようにして運動を行うのがよい。

◎ツイスト

<運動法>バーベルをスクワットと同様に後ろ肩にかつぎ、立った姿勢で上体を左右へ捻る。このときバーベルの水平を保って行う。過度な重量を用いて腰椎を痛めないように注意する。

◎サイド・ベンド

<運動法>片手のみにダンベルを持ち、立った姿勢で体側にぶら下げ、上体を左右横へ屈伸する。投てきの強化運動として行う場合は、上記の動作に脚・腰の屈伸を加えて行うとさらに効果的になる。つまり、膝をまげ、腰を少し落とした姿勢から動作を行うようにするのがよい。

◎ツイスティング・シット・アップ

<運動法>上体を左右へ交互に捻りながらシット・アップを行う。[写真参照]
[ツイスティング・シット・アップ]

[ツイスティング・シット・アップ]

◎スタンディング・フライ

<かまえ>左右の手にそれぞれダンベルを持ち、立った姿勢でダンベルを体側にかまえる。
<動作>左右のダンベルを、それぞれの体側から、横へ30~40cmほど浮かし、その位置から腕を少しまげた状態で、円軌道を描くようにしてダンベルを頭上へ上げる。この場合、からだの真横で動作を行うよりは、多少前かげんの位置で動作を行うようにするのがよい。なお、ダンベルは水平にではなく、円軌道にそってタテ向きに保持するのがよい。

◎インクライン・サム・アップ・カール

<かまえ>左右の手にそれぞれダンベルを持ち、インクライン・ベンチに仰臥する。
<動作>ダンベルを水平にではなく、タテにした状態でカールを行う。インクライン・ベンチがない場合は、フラット・ベンチでもよい。

◎レバレッジバー・エクササイズ(フロント・レイズ)

<かまえ>レバレッジバー(ダンベルのシャフトの片方だけにプレートを取り付けた器具)の、プレートの付いている方を前へ向けて持つ。
<動作>手首だけを動かして、プレートの付いている方の先端を前方で上下させる。

◎レバレッジバー・エクササイズ(ツイスティング)[写真参照]

<かまえ>レバレッジバーを握り、ベンチに腰を掛け、前腕を膝の上にのせて固定する。
<動作>レバレッジバーをまっすぐに立てた状態から、左右真横へ連続した動作で交互に倒しては元に戻す。
[レバレッジバー・エクササイズ(ツイスティング)]

[レバレッジバー・エクササイズ(ツイスティング)]

ブルース・リーのような引き締った逞しいからだをつくりたいが

Q 僕がボディビルを始めるようになったのは、映画でブルース・リーの引きしまった逞しいからだを見たのがきっかけです。
 現在、僕は下記のスケジュールでトレーニングしていますが、あのブルース・リーのような体格をつくるにはどのようなトレーニングをしたらよいか教えていただきたいと思います。


≪トレーニング・スケジュール≫
隔日的、週3日
記事画像10
≪現在の体位≫
身長 163cm 上腕囲28cm
体重 52kg  前腕囲25cm
胸囲 91cm  大腿囲44cm
腹囲 69cm  下腿囲33cm
(山口県 谷村 敦 学生 16歳)
A ブルース・リーのからだは、一流ビルダーのようにバルクのあるからだではありませんが、それにしても、はじめから誰でもあのようなからだになれるものではありません。あのようなからだになるためには、それなりの地道なトレーニングの積み重ねが必要です。そして、いかなる場合でも、最初はごく基礎的なトレーニングから始めることが大切であるといえます。
 ブルース・リーのようなからだになりたいという、あなたの望みも分からぬわけではありませんが、しかし、はっきりいって、そのような望みはもっと先へ行っての目標として、今のところは横へ置いておくのがよいのではないかと思います。
 というのは、現在の自分とあまりかけはなれたところに目標を置くと、知らず知らずのうちに無理なトレーニングをするようになり、筋肉の発達はおろか、かえって体調を崩すことにもなりかねません。したがって、当面は、もっと手近な目標を立てるのがよいと思います。
 たとえば、現在91cmしかない胸囲をとりあえず95cmにしたいとか、あるいは、28cmの上腕囲を30cmにするとかいったような、実現性のある至近な目標を立ててとレーニングを行うようにするのがよいと思います。
 それでは、トレーニング法に関する意見を述べるとします。
 現在、あなたが実行しておられるトレーニング・スケジュールはごく基礎的なものである、採用種目、および、週間頻度についてはとりたてていうほどの意見はありません。しかし、あなたのスケジュール表には使用重量や反復回数、それとセット数の表示がないので、その点が不安です。採用種目と週間頻度がいかに妥当なものであっても、トレーニングそのものの強度や量が過度であってはなにもなりません。それに、運動のやり方に誤りがないか否かということも、トレーニングの成果をあげるためには非常に大切なことになります。
 体位表からうかがわれる現在のあなたの体格は、まだまだ初級者の段階にあると考えられるので、当分の間はみっちり基礎的なトレーニングを行う必要があります。それには、1セット当りの反復回数を8~12回くらいにして各種目2~3セット行うようにするのがよいと思います。
 なお、トレーニングの成果をあげるには前述したように、運動を正しい動作で行うことが大切なので、使用重量は欲ばらずにいくぶん余裕のあるものを用いて運動を行うようにしてください。使用重量を欲ばると、必然的に運動の動作が雑になるので、そのために発達を意図する部分へ刺激が十分に与えられなくなります。このことをよく考慮して使用重量を定めてください。
 ところで、あなたは腹部の運動を行っていませんが、それにはなにか理由があるのでしょうか。別にこれといった理由がないのでしたら、腹部の運動は基礎運動としても重要な運動であるので、シット・アップなり、またはレッグ・レイズなりをぜひとも採用されることをお勧めします。
[回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生]
月刊ボディビルディング1981年5月号

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