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これぐらいは知っておきたい
やさしい健康常識

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月刊ボディビルディング1979年7月号
掲載日:2018.12.01

野菜ジュースで体力はつくれない

<筋肉はこうして発達する>

 筋肉には、①自分の意志で運動を行うことができる骨格筋、②意志による運動が不可能な内臓筋(胃や腸の壁をつくっている筋)、③内臓筋の一種であるが、とくに厚さが大きく、顕微鏡でみると骨格筋と同じようにきれいな縞模様がみられる心筋、の3種類に大別され、一般の人で全体重の約40%を占めている。筋肉が発達して皮下脂肪の少ないスポーツマンでは、およそ45%となる。

 骨格筋をくわしく調べると、太さが0.01~0.1ミクロン、長さが1ミリ~10センチの細い繊維の集まりで、核が数十~数百個あり、ところどころに縞模様が並んでいる。これを筋肉細胞または横紋筋繊維と呼ぶ。

 筋肉細胞をさらに拡大してみると、筋原繊維というものがあり、さらに細い繊維で構成され、そのまわりを筋形質という液体が埋めていることがわかる。その筋形質に、栄養物質がとりまれるわけだ。電子顕微鏡の力を借りて、なおも拡大して2万倍の大きさにすると、筋原繊維もまたフィラメントと呼ぶ微細な繊維でできている。このフィラメントにもやや太いものと、やや細いものがあり、前者をミオシン、後者をアクチンと呼び、互いに重なり合ったり、伸びて離れたりする作用を行なう。つまり筋肉の収縮と弛緩を行なうわけである。

 興味深いことは、ミオシンもアクチンも蛋白質であり、トレーニングにより筋肉が太くなるのは、1つ1つのフィラメントが太くなるためで、フィラメントの数が増えるためではないことだ。

 フィラメントが太くなるのと同時に周囲の結合組織や血管組織が発達して筋肉が大きくなるが、これらの主成分もまた、ほとんど蛋白質であり、何もしないでいても、我々のからだは新陳代謝により時々刻々、蛋白質の入れ替えを行なっている。

<逞しい体には蛋白質が最重要だが>

 高蛋白食では、筋肉の量、筋力、血液中の色素量などが順調に増加するのに対し、低蛋白食では筋肉が発達しないばかりでなく、筋力の上昇がみられず、逆に血液中の色素が減少することが報告されている。

 実際に、トップ・ビルダーたちは、体重1gにつき、2g程度の蛋白質を毎日欠かさず食べている。

 「ボクは毎日、牛肉100gと卵1個を食べているからいいでしょう?」「ごはんやパンは糖質だから蛋白質は含まれていないんですね?」といった質問がトレーニングを始めたばかりの人から出るが、どちらも間違っている。

 つまり、牛肉を100g食べても、純蛋白質は20g程度しか含まれていないし、卵1個で約7g、とうふ1丁では約12g前後だ。逆にどんぶり1杯のごはんで約6g、食パン2枚で8g程度の蛋白質がとれることになる。

 では最後に、蛋白質をとる場合の注意事項をあげよう。

①蛋白質は何種類ものアミノ酸が連結してできたものだから、アミノ酸のバランスが良い卵、チーズ、肉、大豆、プロティンパウダーを重視する

②トレーニングの1時間前、もしくはトレーニングの後30分くらいたってから食べた場合に効果が大きい。

③蛋白質ばかりの食事は、かえって内臓諸器管に負担をかける。エネルギーの回復には糖質がよいので、バランスよく食べる。

④野菜ジュースにはビタミンやミネラルが含まれているが、蛋白質はほとんどない。

運動の激しさと疲労は比例しない

<ジッとしていれば疲れないか>

 「あまり動かないでジッとしている作業はエネルギーを使わないから疲れない。体をよく動かす作業はエネルギーを使うから疲れやすい」

 と思いがちであるが、実際に工場でみてみると、一定の姿勢で包装作業をする人やコントロールパネルで監視作業をしている人の方が、作業場をかけまわっている人よりもずっと疲れた顔をしている。

 1日に必要なカロリーを計算する場合、動作ごとにエネルギー消費量を求めて、その動作が基礎代謝量(20度Cで安静に寝ているときに要するカロリー)の何倍にあたるかを個々に計算して出す。これをエネルギー代謝率(RMR)と呼び、その総合計が、つまり1日に必要とする総カロリーということになる。

 たとえば、新聞・雑誌を読む0.2、家計簿をつける0.3、食事0.4、散歩1.5、「ラジオ体操3.0、野球のピッチング5.1、水泳39.6、全力疾走205というように・・・・・。

<神経の緊張とエネルギー消費>

 だが、さっきのエネルギー代謝率には大きな過ちがある。

 まず第一は、140億を超える脳細胞を動員して、神経の集中・思考などをおこなったときに消耗するエネルギーが考慮されていないこと。これは、受験勉強でモーレツに腹がへったり、重要会議の終わったあとで空腹を感じるといった実感からも、神経の集中・思考などに並々ならぬエネルギーが必要なことが想像されよう。

 もう1つは、神経の緊張は同時に筋肉の緊張を伴うことだ。力を抜いたつもりでも筋肉は常に一定の神経支配が行なわれていて、ごく軽度に収縮した状態にある。睡眠や全身麻酔のときはこの働きが低下して、ぐったりした状態になる。

 反対に、神経が緊張しているときは筋肉も固く収縮している。「試験場であがってコチコチになってしまった」「はじめて彼女とダンスしたときは、思うように体が動かず、ギコチなかったよ」といった経験は誰にも思い当るだろう。

 このように、神経の緊張に伴って消費されるエネルギー量は、先ほどのエネルギー代謝率には含まれていない。

 疲労物質が十分にとりきれないまま翌日も同じような精神的に負担の多い仕事をした場合には、いっそう筋肉の緊張が増し、肩こり、頭痛、しびれなどをおこす原因になる。「1日の疲労はその日のうちにとれ」といわれるのはこのためであるが、要は、疲れているからといって、スポーツやトレーニングを避けていると、ますます具合が悪くなることである。積極的に体を動かしたり、サウナなどでマッサージを受けることが想像以上に効果をあげるのだ。

玄米食を盲信すると栄養失調になる

<白米は玄米のカス?>

 「玄米食さえ食べていれば健康が維持できて、病気もなおる」と信じこんでいる人が意外に多い。その人たちの意見によると、「私たちが毎日食べている精白米のごはんは玄米を精白してビタミンやミネラルをとったものだ。米へんに白と書くと“粕”になるでしょう。つまり私たちはかすを食べているんですよ」

 さて、このような説は正しいのだろうか?

 クスリ公害を告発している高橋晄正氏は、以前、朝日新聞に次のような体験談を語っている。

 「私の遠縁のある娘さんが、赤ちゃんができることになり、“元気で丈夫な子供が生まれるように”と母親が毎日玄米食を食べさせていました。ところが、生まれた赤ちゃんは未熟児で、発育がいつまでも遅れ、ひどい目にあいました・・・・・」

 「この例だけでなく、玄米食にすれば腰痛がなおると教えられ、まじめに実行したけれどいっこうに回復しない青年や、慢性の便秘がなおるといわれ、半年間も続けたけれど、よくなるどころか悪くなるばかりの女性など、私が知っている人だけでも同様な被害者は何人かいる。

<玄米のほうが心配なところもある>

 玄米と白米のちがいは「ぬか」が付着しているかどうかの差による。玄米にはビタミンやミネラルは確かに精白米より多いが、ただそれだけのことであって、栄養の基本となるタンパク質や炭水化物、脂肪の点ではほとんど差はない。だから玄米食にかえただけで満足し、副食に魚や肉を食べるという配慮を忘れてしまうと、本当の栄養失調になってしまう。さっきの話も、おそらく玄米を過信しすぎて、このような注意を怠ったためにおこったものだろう。

 ビタミンやミネラルは確かに重要ではあるけれども、そうかといって「白米イコール粕」と単純にきめつけるのも早合点すぎる。せっかくの玄米も、といだり高圧釜でグツグツ煮ているうちにビタミンの半分くらいが破壊されてしまう。そのほか、精白米にくらべて消化、吸収が悪いことや、残留農薬の多いことなど心配の種はつきない。
[健康体力研究所・野沢秀雄]
月刊ボディビルディング1979年7月号

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