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★内外一流選手の食事作戦⑪★

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月刊ボディビルディング1979年12月号
掲載日:2018.09.22
再び世界制覇を目指してカムバックした!!
須藤孝三選手の食事法

健康体力研究所・野 沢 秀 雄

1 内外の名声はいまも高く

 「日本のスドーは元気に活躍しているか?」「彼のポージングをぜひもう一度みたい」---ロンドンのミスター・ユニバースの会場にいくと、世界各国の人から日本の代表団に、必ずこう質問されるという。

 「私が去る9月、フィリピンのマニラ市で開催されたIFBBミスター・アジア・コンテストを見学したときも「オー、ジャパニーズ、スドー、スエミツ、コサキ、スギタ・・・・・私よく知っています」と多くの人たちから声をかけられた。それほど日本の選手たち、とくに須藤選手は強い印象を人びとの心に焼きつけているわけだ。

 ご存知の人も多いと思うが、これら海外のコンテストに出場し、優秀な成績をあげた選手たちは、「ストレングス・アンド・ヘルス」「マッスル・トレーニング・イラストレイテッド」など、外国誌に大きく写真入りで紹介される。すると、世界各地のビルダーやボディビル・ファンたちが、「うわあ日本にもいいボディビルダーがいるんだなあ」と注目することになる。

 アメリカで最近発行されて、漸新な内容で好評のボディビル雑誌「マッスル・ダイジェスト」は、編集長が日系2世のビル・クマガイ氏で、彼自身、東京錦糸町の遠藤光男さんのジムなどでトレーニングしていたことがあるという。そのため、日本のボディビルの実情にはとくにくわしい。

 「最新号で須藤孝三選手の特集をしたのでぜひ見てほしい」と私に手紙を書いてきている。どんな内容なのか今から楽しみである。

2 ウェルカム、須藤選手!

 今から約2年前、1977年ミスター日本コンテストに敗れてからしばらく、われわれは元気な須藤選手のポージングをみることができなかった。

 「須藤選手は肝臓を悪くして、入院生活をおくっている」「須藤選手はホルモン剤を使っていたので、今になって体に害があらわれて引退してしまった」---と、東京はもちろん、全国の地方で、ありもしない流言が伝えられ私自身の耳にも入ってきた。

 「えっ、彼にかぎってそんなことはない」と、須藤選手を育て、助言をしてくれている藤田務さんや四日市トレーニング・センターの伊藤会長に、電話をして確めたものだ。「いやいや彼は元気です。コンテストにこそ出ないが、マイペースでトレーニングを続けています」「ホルモン剤を使うなんてことは絶対にありません。誰かほかの選手と混同して伝えられたんでしょう」と、きっぱり否定され、私も安心した。

 その後、本年4月1日、東京で開かれた「健康体力研究会」にゲストとして元気な姿をみせてくれ、さらに8月5日のミスター中部日本コンテストにもゲスト・ポージングをおこない、本誌10月のグラビアページに写真がのっている。

 また、10月10日、体育の日に開催された「ミスター・ミス実業団ボディコンテスト」に、体調がほぼ完全に復調した、みごとなポージングを、多数の人の前で披露してくれている。体はひとまわり大きく、逞しくなっており、「よくカムバックしたね」と多くの人たちから祝福されていた。たしかに須藤選手がボディビルのコンテストに対して、一時的なスランプ状態があったことは事実であろう。
[表1]1972年当時の須藤選手の食事法

[表1]1972年当時の須藤選手の食事法

3 須藤選手の食事法の変遷

 須藤選手が歩んできた道や、トレーニング法について、窪田登先生が本誌の「1974年ミスター日本コンテスト増刊号」に書かれている。

 私も毎年、神奈川県の葉山マリーナで開かれていた「ミスター実業団コンテスト」当時から、藤田さんや須藤選手を知っていた。そして「こういう食事法がいい」「これを食べればもっといいのでは?」とよく話をしており、須藤選手の食事法がどのようなもので年月がたつにつれて、どの点が進歩しているか、割合よく知っている。

 そのほか、食事法のアンケートに毎回返事をくれたり、研究会のゲストで講演をしてくれたり、役立つことが実に多い。

 まず最初に、今から約7年前、72年度ミスター日本コンテストに4位入賞したころの内容を紹介しよう。当時21歳で、なんでもガンガン食べていたころの内容だ。[表1参照]

 この内容では、エネルギーになる炭水化物が少なく、たんぱく質が多すぎるので「もっと一般的な内容で良いのでは?」「野菜や果物・海藻などをもっと食べたら?」と、当時アドバイスしたことを覚えている。

 その後、肉はひきつづき多くとっているが、プロティンや野菜・果物などの摂取に心がけ、1975年、76年とミスター・ユニバースに選ばれるまでに大成したことは衆知のとおりである。

 一昨年(53年4月)のアンケートによれば、1日に食べている主要食品は[表2]のような内容であった。
[1976年度 NABBAミスター・ユニバースのミディアム・クラス優勝当時]

[1976年度 NABBAミスター・ユニバースのミディアム・クラス優勝当時]

[表2]須藤選手が一日に食べている主食品の種類および量

[表2]須藤選手が一日に食べている主食品の種類および量

4 須藤選手の最新の食事法

 「えっ、かなりきつい食事法だな」と上表をみた人は思うかもしれない。

 これには少々解説がいる。彼自身、ロンドンに何度かゆき、世界各国の選手たちと「おまえはどんな食事法?」と聞いたり、聞かれたり、親しく交流する機会がある。そんなとき、アメリカの一流選手から、「コンテスト1ヵ月前には野菜もとるな。牛乳もいけない。これらには炭水化物が含まれるので、徹底的にカットしなければならない」と教えられたという。

 「それはきびしい」と須藤選手自身感じたが、ウソか本当か試してみようと、自分も努力していたときの内容である。そして「コンテスト直前」という条件のもとで、おこなわれていた方法である。

 では現在はどうか?須藤選手がいま毎日おこなっている食事法は次のようなものである。
[表3]カムバック後の食事法

[表3]カムバック後の食事法

<講評>

①以前の内容に比べると、ごはんの量といい、野菜や果物の量といい、たいへん常識的になっていて、好ましいと思われる。

②トータルカロリー約4100、たんぱく306.8gという数字は、たとえ須藤選手が身長174cm・体重84kgで、連日2時間~2時間半のトレーニングをするとしても、やや多い。

③たんぱく源として、牛肉だけでなく豚肉・牛乳・プロティン・さんま・とうふなど、バラエティに富んでいることは良いことである。(後述)

④プロティンの使用量は1日当り100~110gとなり、1gの缶入りが約10日間でなくなる計算になる。この量はもう少しへらしてもよい。

⑤1日6食にふやして、こまめに栄養補給をしていることは、体を大きくしたい人の参考になるだろう。

5 高たんぱく食と成人病

 さて須藤選手は、一般の人には次のような食事法を推薦している。

①初心者の人は、1日3食は家族や友人と同じような食事でよく、毎食後卵1個と牛乳1本を加えること。

②練習をおこなう日は、トレーニング前に、「牛乳1本にプロティン・パウダー大さじ山盛り2杯をまぜ、ジュースにした飲料」を飲めばいい。

③コンテストに出場を目ざしている中上級ビルダーは、1日5食~6食とし、たんぱく質の多い食事をなるべく多く食べる。

④体調が悪くならないように野菜類を適当にとる。

⑤サプリメントフードとしては、プロティン製品のほか、総合ビタミン剤やローヤルゼリーを自分自身はとっている。プロティンはもう当然のように使用されているが、ローヤルゼリーはまだ一般的でない。(2ヵ月前から使用)

 これらの事項は、これからボディビルを懸命にやる人に、きっと役立つにちがいない。ここに書かれている内容については私も大賛成である。

 「ボディビルダーのおこなっている高たんぱくの食事法は、健康上よくないのではないか?」と心配する人がいるが、これはまったく心配がない。むしろ、成人病予防のうえで、非常に良い方法とされている。

 例えば、朝日新聞は農村と漁村の食生活を調査した久留米大学・医学部の報告をまとめて「高血圧で脳率中にかかる体質の人でも、高たんぱくの食事法をしていれば、死亡率がまったく少なくなる」と報道している。

 また日経新聞によると、科学技術庁が、北里研究所・国立栄養研究所・京都大学医学部などのスタッフを集め、3年がかりで、日本人の死因の1位を占める脳卒中に対する総合研究をおこなった。その結果、高たんぱく・高脂肪の食事法の場合、もっとも脳卒中にかかりにくいことがわかった。「重要な血管壁を強くするのに、高たんぱくの食事にすることが役立っている」と結論づけられている。

 さらに、日本人に多発している胃がんは、戦後30年間、いちじるしく減少しているが「食生活が向上して、高たんぱく化されたので、胃壁の抵抗力が強くなったため」と解説されている。

 実際に,胃がんの患者などに、高たんぱくの食事を与えて、回復をはかることがどの病院でも一般的になっている。

 このように,高たんぱくの食事法で生活することは、成人病の見地からもふさわしい。
[1972年、ミスター日本4位に初入賞したとき]

[1972年、ミスター日本4位に初入賞したとき]

[去る10月10日、実業団コンテストにゲスト出演したとき]

[去る10月10日、実業団コンテストにゲスト出演したとき]

 だが、何事もゆきすぎてはいけないのは当然である。「1日中、牛肉だけですごす」「プロティンだけで生活する」というビルダーがときにある。一時期ならいいが、何週間にもなると問題である。バランスよく、なるべく多種類の食品を、いろいろ調理して食べることが、常識的で正しい食べ方なのである。

 須藤選手から寄せられているアンケートで興味ある点をまとめて、本論の結びにしよう。(須藤選手に関するエピソードはいろいろ多いので、いつか機会があればご紹介してゆく予定である)

<生年月日>昭和26年1月5日、28歳

<星座>やぎ座 <血液型>A型

 6人兄弟の3男(末っ子)

<スポーツ歴>陸上競技
<ベンチ・プレス>120~140kg
<スクワット>170~195kg
<プレス>80~95kg
<カール>60~70kg

(チーティング)

日本では一度ミスター日本のタイトルをとってしまうと引退するケースが多いが、とくに須藤選手の場合は若いのだから、これからもまだまだ頑張って、外国選手のように息の長いビルダーになってほしいと思う。
月刊ボディビルディング1979年12月号

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