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食事と栄養の最新トピックス⑭
栄養の吸収と個人差について(中)
-第9回健康体力研究会講演より-

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月刊ボディビルディング1981年9月号
掲載日:2020.06.23
健康体力研究所 野沢秀雄

4. 消化吸収率の問題点

 ところで、栄養素の消化吸収率がテキストにのっています。これは「食事療法事典」から抜萃したものですが、次のようになっています。
 
 たんぱく質 80~90%
 糖質 90%
 脂質 80~90%
 カルシウム 30~80%
 
 これはどうして求めるかというと、食品中に含まれる各栄養素をまず測定しておき、これを動物(人間やマウスなど)に食べさせ、糞便や尿に出てくる各栄養素の量を測定します。そしてこの差が、すなわち体内に吸収された栄養素量と判定します。これを割算で求めた比率が消化吸収率というわけです。上の消化吸収率の算出方法の説明を式にすると次のようになります。
記事画像1
 ところがここにも問題があるわけです。というのは、上の式で、もし食品中に含まれる栄養素量が多すぎたときは、当然ながら吸収量に限界があるので、体外に排泄される量も多くなり、結果的に消化吸収率は少ない数字になってしまいます。逆に、食品中に含まれる栄養素の濃度が最初から少なければ、体内にほとんど吸収されるので、見かけ上の数字は100%近くになります。
 つまり1回の食事で吸収される絶対量があり、高濃度の食品を多くとった場合、「消化吸収率が悪い」ということがおこります。けれども、実際には体内へかなりの量が吸収されているわけで、いちがいに消化吸収率の数字で「その食品は効果がない」と決められないのです。
 たとえばカルシウム製品を動物に与えて実験したとき、飼料中のカルシウム量が多すぎる場合、見かけ上「吸収率が悪い」というデータが出ます。ところが濃度を少なくして与えると、糞便中に排泄される量が少ないので、「消化吸収率は良好」という結果になります。全く同じ食品でも濃度によって消化吸収率は相当に変ることがおわかりでしょう。

5.効果をあげる食事法

 したがって、無駄のない効果的な食事法をしようと思えば、全体的なバランスをよく考えて栄養をとることが大切です。カルシウムやビタミンCをとるとき、一度にドカッとまとめて食べるより、1日に3回くらいにわけて少量ずつ食べるほうが吸収がよいわけです。
 みなさんの関心が深いタンパク質も1回の食事で吸収される量は50gくらいまでといわれます。したがって、プロティン製品を1日3度の食事時だけにとるより、間食としてトレーニングの前後や就寝前にとる方法がすすめられます。
 またビタミンB1についても、1回に5~6㎎が吸収される限界ですから、朝まとめてとるより、わけてとるほうが効果的です。病人やスポーツトレーニング期で多く要求される場合にも、なるべく回数をわけてとるようにすれば利用効率が高いわけです。
 また、アレルギーをおこしている場合や、下痢をしている場合は栄養の吸収は大変悪くなります。下痢をした時はその原因物質が吸収されないだけでなく、同時に食べたすべての栄養物が吸収されません。したがって慢性的に下痢をしている人は体重がふえず、体力が低下してしまいます。
 重要なことを言い忘れていましたが消化吸収力に影響の大きい唾液や胃液の分泌は、そのときの精神状態により大きく左右されます。
 たとえば「試験前になると食事がのどを通らない」とか、ひじょうにイヤなことや、気がかりなことがあるとき、食事がのどにつかえてなかなか通らないという経験を誰でもしているでしょう。いかがですか?
 逆に空腹でたまらず、ペコペコのときに食事を口にすると、たちまちのどを通って胃袋に達します。「ガツガツ食うな」とスポーツ合宿をしたとき先輩たちから叱られますが、まったくガツガツという表現が似合うように、どんどん腹に入ってゆき、たくましく消化吸収されるわけです。
 また「おいしい!」と感じて食べないと損なんですね。それを、せっかく栄養ある食品を「まずい」といいながら鼻をつまんで食べるようなタイプの人がいます。こんな人は自業自得というか、あまり消化液も出ないので結局損をしています。同じ食べるなら心がけよく、「うまいぞ、体の栄養になるぞ」と自分に思いこませて、たっぷり消化液を混合させながら食べるといいのです。
 「まずい食品を生産しながらよく言うよ」という人があるかもしれませんが、おいしさと栄養価は必ずしも一致せず、最初はまずいと感じるものに意外と栄養があったり(レバー、カニの脳みそなど)、逆に「甘くておいしい」と感じるものの、栄養はおちる食品(アイスキャンデー・着色着香ジュースなど)が多かったりで困るところです。
 プロティン・スコアを高めるために配合しているアミノ酸の一種にメチオニンがあります。加える量が多いほど良質で利用効率の高いたんぱく質になるので、高級品になるほど多く加えられています。ところが、イオウを含んでいるため、卵の黄身の臭いが強すぎて、「これはまずい」という人がいます。なかには「腐っているのではないか?」と敬遠する人もいます。人工香料でバニラの味をつけたり、いちごやバナナの味をつけている場合もありますが、イヤな臭いをカバーしているためですね。なるべくなら自然のままで、おいしく食べられるように慣れるといいでしょう。

6.同化力にも個人差が大きい

 さてみなさんがもっとも関心の高い同化力(つまり栄養素が体に吸収されたあと、筋肉や骨・血液など体の成分に変わることをいいますが)、その同化力にも個人差が大きいことを解説しておきます。
 具体的にいうと、同じトレーニングをしても筋肉がつきやすい人、つきにくい人、脂肪がとれやすい人、とれにくい人、さまざまであることは経験ずみのことでしょう。そしてこれが「体質の差」といわれていることはもうよく認識されていることと思います。
 有名なアメリカの体育学者シェルドンが1950年頃に、18~21才の学生4000名を対象にして、体格・姿勢・筋肉や脂肪のつき方・皮ふの状態・発毛度など、身体各部の特徴を研究して次の3種類に分けたことはご存知でしょう。

Ⓐ外胚葉型(エクトモルフィー)
 神経や皮ふの発達はすぐれているが筋肉の発達は悪く、脂肪もつきにくいタイプ。胃・腸など消化器が弱い。そして、いわゆるやせ型で神経質な人に多い。フランク・ゼーンなどこのタイプのビルダーです。

Ⓑ中胚葉型(メゾモルフィー)
 骨格や筋肉の発達がよく、頑丈で引締った強い体型。体操や柔道などどんなスポーツにも適している理想的な体質で、このタイプの人がウェイト・トレーニングを実行すると、短期間に筋肉の発達をみる例が多い。

Ⓒ内胚葉型(エンドモルフィー)
 消化器の発達がよく、何を食べても消化吸収してエネルギーにする力が強い。脂肪がつきやすく、肥満している。筋肉や骨の発達はそれほどよくない。のんびりした性格。ステーブ・デイビスやデイブ・ドレイパーといったビルダーは、トレーニング前は肥満児だったわけで、この型に属します。

 健康体力研究所でも、皮下脂肪の厚さ、筋肉のつき方、骨の太さなどを測定して、体質分類の研究をおこなっています。それぞれにより、適した運動法や食事法をおこなうのが良いわけです。
 筆者はこの3分類を、消化吸収力と男性ホルモン含有量を両軸とする下図のような区分を試みました。ホルモン分泌量が多いほど、筋肉の発達はすぐれており、これをタテ軸にとって、胃腸の強さを横軸にとりました。
記事画像2
 これで明確になることは、体質のすぐれた人は胃腸の消化吸収力に恵まれており、かつ血液中の同化ホルモン量が多いので、トレーニング効果が顕著に現われることです。また、女性によくあるタイプですが、胃腸がじょうぶで、脂肪を同化する女性ホルモンが多いと、内胚葉型になり、このような人はいくらトレーニングしても筋肉はなかなか発達しにくいわけです。
 補足データとして、血液中DAS濃度を表に示しています。これは年齢ごとに男性ホルモンの一種であるDASがどのように変化するかを示したものです。男性にも女性ホルモンが含まれるし、女性にも男性ホルモンが含まれているわけです。その量や比率がちがうわけで、個人ごとにプラス・マイナスで大変大きな差になっています。またこれは男性ホルモンの総量を示しているのでなく、したがって一つの参考として見てください。
※血液中DAS濃度(μg%)

※血液中DAS濃度(μg%)

 20~29才の男性を100とすると、40代になるとホルモンの分泌量は1/2以下に低下してしまいます。40才をすぎてからのボディビルはたいへんなことがわかります。また思春期までの子供は青年の約1/10しか性ホルモンがなく、男の子も女の子もそれほど差はありません。どちらもポチャポチャした体つきをしています。60才をすぎると、セックスも衰えて青年の1/5くらいに低下しています。
 ここで強調したいのはプラス・マイナスの幅が大きいことです。同じ20代の青年男性で、少ない人は100くらい、多い人は230にもなります。つまり血液中のホルモン量は2倍以上差がありこれが体質を決定する大きな比重を占めているわけです。
(結論として、どうすれば向上できるかを次号にのべます)
月刊ボディビルディング1981年9月号

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