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ミスター・パシフィック・インターナショナル・ボディビルディング・チャンピオンシップス報告

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月刊ボディビルディング1981年9月号
掲載日:2020.06.24
赤羽トレーニング・ルーム会長 重村尚

両組織のトップ・ビルダーがハワイに集結

 5月23日、ハワイに来て3日目、いよいよ大会当日である。今日行なわれるのは、メーンのミスター・パシフィック・コンテストのほか、ミスター・ハワイ、ミスター・サウス・パシフィック、ミス・ビューティフル・ボディコンテストなどが行なわれる。
 朝早くからプレ・ジャッジが行なわれる。審査員をつとめる大塚さんと松山さんは8時30分頃にはホテルを出られた。ミスター・パシフィックに出場する日本の選手は全員シードされているため、このプレ・ジャッジングは必要ない。
 そこで私は、夕方から始まる本番を見ることにして、とにかくひと眠りすることにする。日本を発つ前から雑用に追われての睡眠不足、それにツアーの責任者として精神的にもかなりまいっていたので、少しでも休養をとりたかった。
 午後、ドナルド・チャンとキャティ夫妻とコンテストの打合せのため、彼の経営するフィジーク・ワールド・ジムに行く。日系人が多いとはいえ、やはりハワイはアメリカ、日本選手の名前の発音の仕方、タイトル等、細かい面まで一生懸命、チャン夫妻を気をかっているのがよく分る。
 ワールド・ジムのメンバーも何人か出場することになっており、夫妻は主催者であると同時に、コーチでもあり大会の裏方もしなければならない。本当に忙しそうだ。
 舞台装置、音響効果とも準備OKの報告が各担当者からキャティのもとに届く。この大会はキャティを中心に動いている。大きな決定事項はダンナのドナルド・チャンが決め、細部のことはすべてキャティがきりもりしているようだ。私もそんな状況を見ていて、万事順調に進んでいるのがわかり、日本を発つ前から気にしていた不安が少しずつとれてきた。しかし、まだ気がかりな点がある。果して何人くらいのお客さんが会場に足を運んでくれるだろうか?
 今夕7時から大会が始められる。6時にバスで会場のマッキンレー・ハイスクールの講堂に向う。あいにく、小雨がパラついてきた。
 講堂は、世界最大のショッピング・センターといわれるアラモアナ・ショッピング・センターの近くにある。大きな公園の中にある感じである。日本的なイメージで、講堂といえば、殺風景な古い体育館のようにしか思っていなかった私は、この講堂の前に立ってみて驚いた。重々しいクラシックな建物であるが、現代的な建築技法も取り入れたこの講堂が大へん気に入ってしまった。まさにボディビルの国際大会にふさわしい立派な建物である。
 お客さんも三々五々入ってくる。ほとんど婦人同伴というか、ガール・フレンドと一緒である。体のデカいのもずいぶんいる。客席はゆったりとしており、1000人は楽に収容できそうだ。客足も早く、7時ごろにはほぼ満員になった。

素晴らしい舞台装置、ライテイング、音響効果、そして司会

 いよいよ開幕である。まず目を引いたのは司会のスマートさである。中国系の人で、ディスク・ジョッキーとしてはハワイでも人気No.1だそうだ。大会が進行していくうちに改めて感じたことだが、司会者の役割がどんなに大事かということが分った。とにかく、観客の目と耳をつねに舞台に引きつけておくテクニックは、さすがにプロである。
 舞台装置もよかった。今ではIFBB の規約で統一されているのだそうだが、舞台中央に1.2.3位の段々の表彰台が大きく、しかも高くつくってあり比較審査はその前で行ない、1人ずつのポージングは、表彰台の一番高い1位の台上でするのである。
 次にライティング。これは実際に選手がポージングをはじめてから分ったことだが、さすがボディビルの先進国だけあってよく研究されている。まず頭の上方からメインのライトを強くあて、前面の両サイドと後方の両サイドからライトを弱くあてる。
 ふつう、日本では首の下に影などができると、神経質なほど気にするが、向うでは、そんなことは少しも気にする様子はない。要は、いかに逞しく、そしてボリュウムのある立体感を出すかということを優先する。多少の影などは、かえって効果的なのかも知れない。
 もう一つは音響効果である。音響効果が、こんなにも観客と舞台を一体化し、大会を盛り上げるものかという点に気づいたことは、私自身、大きな収穫だった。
 もちろん、音楽そのものもいい。ディスコティックなサウンドが、舞台の前面の両サイドからガンガンとくる。選手も観客も、いやが上にものってくる。音楽がどんなに場内の雰囲気を大きく左右するかを改めて感じた。
 暗い感じの曲だったり、スローな曲だったら、おそらく場内もそんな雰囲気になってしまうだろう。それに、また、選手1人1人が自分用のテープを持っていることも参考になった。自分の番になると、すぐセットして、曲が流れてくると、それに合わせてポージングをする。もちろん、練習のときから音楽に合わせてポージングをしてくるから、曲によくマッチして、流れもスムーズで、決めるところはピタッと決まる。
 この大会を見て感じたことを、もう一度くり返すと、①舞台設定②ライティング③音響効果④司会(進行)の4つが、大会を盛り上げるためにいかに大切であり、その内の1つが欠けただけでも大会は盛り上がらないということをつくづく感じた。日本から行って一緒に見られた方々も、おそらく私と同じことを感じたにちがいない。

コンテスト開幕

 前置きがすっかり長くなったが、さあ、いよいよ大会の開幕である。
 幕が上がると、まず、主催者であるドナルド・チャン、キャティ・チャン夫妻が手をとり合って舞台中央の高い台上で紹介され、つづいて、この大会の協力者やスポンサー、ゲストが紹介された。
 日本交通公社のホノルル支店長のネルソン吉村さん、パシフィック・ビーチ・ホテルのアラン玉城さん、健康体力研究所の野沢所長、ゲストの末光、杉田、須藤、長宗、朝生、松川の6選手、それに大塚さん、松山さん、私。ハワイ・サイドではクリス・ディカソン、ローラ・コンベス、トミー・コーノといった、日本でも知られている方々をはじめ、ボディビル協会の役員や審査員がつぎつぎと紹介された。
 そして、いかにもハワイらしく、1人1人紹介されるごとに、きれいな若いお嬢さんが首にレイをかけてくれ、ホッペにキスマークが残るぐらいの歓迎のキスをしてくれるのだ。ふだん、こういうことに馴れていない日本人には、ちょっとテレくさいが、マンザラでもない気持であったのは、私ばかりではあるまい。
 こうして、オープン・セレモニーが終って、サァ大会開始である。
 ここで、いきなりゲスト・ポーザーの登場である。これまた驚いた。日本では、たいてい決勝審査がすんで、採点表の集計中にゲストを迎えるというのが通り相場だが、まず、最初にゲストを迎えるというのは、大会を盛り上げるための1つの工夫であろう。ゲストの使い方ひとつをとってみても、これからは発想の転換をする必要があるかも知れない。
 ゲスト・ポーザーは、女性ビルダーの第一人者、ドリスさんである。5人の子供の母親で、50歳に近いということだが、とても信じられないほど若々しい肉体を保っている。ポージングも音楽にのって堂々としている。
 コンテストの最初は、ミス・ボディビューティフル・コンテストである。出場者は8名ぐらいであるが、ひときは光っているのが主催者であるキャティの弟子のシンビーとエレナである。2人とも肌は小麦色に焼け、健康そのものといった感じ。とくに愛嬌たっぷりのエレナの腹筋には驚いた。
 日本でも一昨年から実業団コンテストで女性の部が新設されて大へん話題になっているが、私はたまたま所用があって、2回とも見逃してしまったので実際に自分の目で女性コンテストを見るのはこれが始めてである。
 比較審査に入る。いっせいに前面、側面、背面、フリーの4ポーズを見せて、いったん退場。そして今度は1人ずつのフリー・ポージングである。
 1番目の選手が舞台中央の高い台に立つ。ここでライティングがスポットに変る。音楽はショパンの幻想曲をポピュラーにアレンジしたものである。
 この瞬間、私の女性コンテストに対するイメージが一変した。たかが女性コンテスト、お遊び程度のものと思っていた私であるが、いつしかグイグイ舞台に引き込まれていってしまった。男にはない美しさ、女性特有の華やかさ、男性コンテストとはまた違って大へん楽しかった。
 結果は、やはりリラックス・ポーズのときから目立ったシンビーが優勝、エレナが2位となった。
 シンビーは脂肪の少ない筋肉質の体で、とくに背筋が素晴らしく、ポージングも冴えていた。これに対して、エレナの腹筋は男性顔負けのカットを出し、ハワイアン・ソングにのったポージングは観衆の人気を集めた。結局、全身のカットで勝っていたシンビーがエレナを押えた。
[ゲストのドリスさん。今年50歳、5人の子供の母親である]

[ゲストのドリスさん。今年50歳、5人の子供の母親である]

[ミス・ボディビューティフルで2位のエレナ嬢。とくに腹筋が凄かった]

[ミス・ボディビューティフルで2位のエレナ嬢。とくに腹筋が凄かった]

 次にまたゲスト・ポーズである。ローラー・コンベスの登場である。雑誌などで見る彼女は、鋭いカットを出しているが、今はふっくらとして、いかにも女らしい体つきをしている。しかし筋量はさすがに凄い。とくに肩から腕、そしてV字型に広がった広背筋が彼女の特徴である。ポージングはどちらかといえば男性のポージングに近い感じで、音楽にもよく合っていた。
 いよいよ男性ビルダーが登場。まずミスター・ハワイ・コンテストが行なわれた。日本の地方コンテストと同じであるが、レベルはかなり高い。中でもショートマン優勝のドナルド・シューバースと、トールマン優勝のボンソニー・オーハイの2人が光っていた。ミドル・クラスは少しレベルが落ちる感じである。
 シューバースはバルクが凄く、どこをとっても彼を上まわる人はいなかった。当然、彼はミスター・パシフィックにも出てくるだろうが、日本選手にとってもちょっと手ごわい相手であろう。
 オーハイは日系人で、素晴らしいプロポーションとディフィニッションで他を圧倒していた。とくに自然体が目をひいた。部分賞もこの2人で独占してしまった。
 つづいてミスター・サウス・パシフィックである。ミスター・ハワイの上位入賞者と、アメリカ本土の選手、それにミスター・サモアン(ハワイの南方の島)2位のS・フォーマイらが出て行われた。ミスター・ハワイよりツブがそろった感じであるが、やはりミスター・ハワイの上位2人と、ミスター・サモアン2位のフォーマイの争いとなった。
 フォーマイは、シューバースを上まわる凄いバルクで、とくに腕が太い。ただ少ししぼりきれていないので、迫力的に少し物足らなかった。
 進行は女性も男性も同じで、まず出場者全員が並んで比較審査を受け、いったん退場して、次は1人ずつ高い台の上でフリー・ポージングをする。最後にもう一度、全員そろってフリー・ポージングをする。
 この審査方法は、時間がかかるが、面白いと思った。ただ、日本のように出場選手が多い場合は時間的にどうであろうか?
 コンテストの結果、総合優勝はやはりショートマンのシューバースが獲得した。2位はミディアムのサモアンから来たS・フォーマイ、3位はトールマンのボンソニー・オーハイと、各クラスで抜きん出ていた3人が順当に選ばれた。
[ミスター・サウス・パシフィック総合優勝、ドナルド・シューバース]

[ミスター・サウス・パシフィック総合優勝、ドナルド・シューバース]

[ミスター・サウス・パシフィック総合2位、S・フォーマイ]

[ミスター・サウス・パシフィック総合2位、S・フォーマイ]

[ミスター・サウス・パシフィック総合3位、ボンソニー・オーハイ]

[ミスター・サウス・パシフィック総合3位、ボンソニー・オーハイ]

本番、ミスター・パシフィック

 最後は、いよいよ日本の選手の出るミスター・パシフィック・コンテストである。その前にゲスト・ポーザーろして末光選手の登場である。
 "ケンイチ スエミツ!!"とアナウンスされるや、一段とはげしい拍手がなりひびく。幕が上がって、スポットに照らし出された末光選手、"栄光への脱出"の曲に合わせて、堂々とポージングを始める。
 部厚い胸、キリッとしまったウエスト、太い腕、全体的に以前よりひとまわり大きくなった感じである。ミスター日本、ミスター・ユニバースをとってから何年もたつのに、これだけの体を維持していることに驚く。
 ただ、当時のあのバリバリのディフィニッションは少し影をひそめた感じなので、人によっては以前の方が迫力を感じるかも知れない。バルクをとるか、ディフィニッションをとるか、意見の分かれるところであろう。いずれにしろ、日本を代表する素晴らしい選手であることに違いはない。
 ポージングもとりなれていて、見ていても安心感を我々に与える。大きな拍手でアンコールが叫ばれる"ワン・モア・プリーズ"・・・・・しかし、どうしたわけか、末光選手は二度とステージにその姿をあらわさなかった。
[以前よりひとまわりバルク・アップした末光健一選手]

[以前よりひとまわりバルク・アップした末光健一選手]

 ミスター・パシフィックが始まった。最初のショートマン・クラスの出場選手が一列にならぶ。このクラスには日本から石村、菊池、谷口それに崎浜の4選手が出ている。果たしてどこまでいくか。自分のことのように落ちつかなくなってしまう。
 さきに行なわれたミスター・ハワイとミスター・サウス・パシフィックで優勝したシューバースも出ている。ミスター・ニュージーランドも強敵であろう。日本選手は全体にツブは揃っているが、バルク不足の感じが少しする。シューバースやフォーマイをとらえることができるだろうか。谷口、菊池の両選手が活躍しそうだ。
 審査が開始された。言葉のハンデがあって、日本選手には少しとまどいが見られる。すかさず、観客席のまん前で、英語に強い杉田選手が大きな声でアドバイスをあたえる。ここにはIFBBもJBBAもない。ただ、日本の選手に頑張ってもらいたいという気持だけである。
 どうやら、比較審査を終った感じでは、谷口選手と菊池選手がいい線をいきそうだ。とくに、菊池選手は体に張りがある感じで、私には谷口選手より良く見えた。谷口選手は急に参加を決めたと聞いたが、時間的に充分調整できなかったのかも知れない。去年見た彼は、もっと筋肉に張りがあったし、肌も黒く焼いて迫力があったように思う。
 1人ずつのポージングに移る。
 まず、ミスター・ニュージーランド。彼は近くで見ると迫力を感じるが、こうして少し離れて見るとそれほど感じない。また、自然体のときは良く見えるが、ポージングをとってみると、さほど良いとは思えない。彼を最初に見たとき、私は、彼が優勝するのではないかと思ったぐらいである。でも、上位に入るのは確実である。
 2番目には石村選手。当年42歳。日本の"さくら、さくら"の琴の曲にのってポージングを演じる。つい先日、南アフリカで行われたIFBBシニア・ユニバースで5位に入賞し、その足でハワイ入りしたという。しかし、とても40歳以上には見えない。どう見ても20代である。頭に細いヒモを巻き、独特のフンイキづくりをしている。これが、彼のいうサムライ・スタイルなのかも知れない。ポージングも曲にのってうまくこなしていく。ただ、他の選手に比して、少しバルク不足は否めない。
[独創的なポージングを見せる石村勝己選手]

[独創的なポージングを見せる石村勝己選手]

 3番目が菊池選手。日本の選手の中では一番張りきっており、トレーニングも充分やったらしく、いい仕上がりである。ポージングも力強い。このぶんならかなり期待できそうだ。
 4番目が谷口選手。前記したように調整不足か、旅の疲れか、いつもの彼らしい迫力がない。その点、菊池選手の元気さが目につく。谷口選手の実力はこんなものではなかったはずだ。それでも、腕やバックはさすがに迫力がある。果して結果はどうだろうか。
 日本選手の最後は崎浜選手。出場選手中、一番小柄だが、よく鍛え込んでおり、大胸筋のカットも素晴らしい。ポージングも堂々としている。ただ、ヘア・スタイルが少し重い感じがしないでもない。少し損だったのは、隣りにならんだのが、ハワイのあのバルキーなシューバースだったことである。
 6番目が、優勝候補と目される、そのシューバースである。地元の選手だけに声援もひときわ多い。さきに行なわれたミスター・ハワイ、ミスター・サウス・パシフィックのときはもっと凄いと思ったが、こうしたツブの揃った中に入ると、それほど抜きんでているとは見えない。
 ショートマン・クラスは、このあと2人ほどポージングをして、ミディアム・クラスに入る。
 ここでは、やはりサモアン出身のS・フォーマイが他を圧倒している。このクラスには日本の選手も出ていないしフォーマイの他にとくに目についた選手もいなかったので省くことにする。
 最後のトールマン・クラスには臼井選手が参加する。なにしろ、このクラスは出場選手が全部で3名。臼井選手の他は、あの日系のボンソニー・オーハイと、アメリカ本土から来たデイブ・ボーマンの2人である。
 ミスター・ニュートーンの肩書きをもつボーマンのバルクは凄い。胴も太いが腹筋もあるといった、ポール・グラントみたいな選手である、100kgは軽く越すだろう。
 オーハイは、さきにもちょっと紹介したが、バリバリのディフィニッションで、肌もまっ黒に焼いている。
 臼井選手は均整は抜群だが、色白でこの2人と並ぶとどうしても細く見えてしまう。しかし、ポージングはよく工夫されていたと思う。
 臼井選手ばかりでなく、日本の選手のポージングを見て感じたことは、一様に安心して見ていられる、つまり、安定しているということであった。その反面、審査員や観客の目をグイッと引きつける独創性に欠けるといえるかも知れない。そんな中で、かなり思いきった独創性を見せてくれた石村選手と臼井選手のポージングが印象に残った。
 すべての審査が終り、あとは成績発表待ちである。ここで待望のクリス・ディカソンのゲスト・ポーズである。
 曲が流れ、幕が上がる。坐った感じのポーズで彼はすでに待機している。曲に合わせてゆっくりと動き出す。スポットに光る体は金色に輝いている。従来のポージングの趣きとは少し異なる。一瞬、息をのむ。体そのものも素晴らしいが、それよりも芸術的なその動きが素晴らしいのである。なんと表現したらいいのか分らないが、動く芸術!これこそ、まさに芸術だ!そう思った。
 おそらく、今日はじめてコンテストを見た人でも、ディカソンのこの筋肉の芸術には感動するに違いない。しかし果して、練習さえすれば、誰もがこのようなポージングが出来るものだろうか。
 このようなセンスが培えられるものだろうか。ディカソンだからこそできるのだろうか?彼が日本のトップ・ビルダーたちに与えたポージングに対するイメージは、きっと後々で大きな影響を及ぼすに違いない。
 ディカソンは、ポージングの始めと終りを同じポージングでもってまとめていた。ハワイの観衆も彼の華麗なポージングにすっかり酔いしれているようだった。もちろん、アンコールの催促である。短かめだけど、よりすぐった自信のあるポーズをいくつか披露し、両手を挙げて観衆の前から消えた。
 最後にディカソンは再び舞台に姿をあらわし、主催者のドナルド夫婦をステージに招いて、一緒に二度、三度、観客席に向って手をふり拍手にこたえた。
 時間にすれば僅か数分間の、このディカソンのポージングは、ただ"素晴らしい!!"の一語である。ボディビルにまた、夢を見た感じである。
[クリス・ディカソン]

[クリス・ディカソン]

 ミスター・パシフィック・コンテストの結果が発表されたのはもう深夜だった。やっぱり総合優勝はドナルド・シューバースだった。日本選手では、菊池選手がショートマン・クラスの2位、臼井選手がトールマン・クラスの3位に入賞した。
 次号では、この翌日行なわれたパシフィック・ビーチ・ホテルでのショウなどについて書く予定です。
月刊ボディビルディング1981年9月号

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