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なんでもQ&Aお答えします 1980年10月号

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月刊ボディビルディング1980年10月号
掲載日:2019.11.29

効果があがらないのはトレーニング法が悪いのか、それとも素質がないのか

Q ボディビルを始めてから約4ヵ月たちます。ところが、その間に大きくなったのは胸囲ぐらいで、その他は全く変化がありません。

 トレーニング開始以来、一貫して後述のスケジュールでやってきましたが最近は運動する意欲も減退ぎみです。効果が得られないのは、トレーニング法に誤りがあるからでしょうか。それとも、身体的な素質がないからでしょうか。これからもなんとかボディビルを続けていきたいと考えていますのでご意見をおきかせください。
《トレーニング・スケジュール》

《トレーニング・スケジュール》

〔註〕トレーニング後の疲労感は、ぐったりするくらいに疲労を強く感じます。食事は1日3食で、蛋白質は主として牛乳からとっています。
(奈良県 原島三男 店員 21歳)
《体位の変化》

《体位の変化》

A トレーニングの効果に個人差があることはたしかです。しかし、それが全て素質に起因するとはかぎりません。しかも、あなたの場合、トレーニングを始めてからまだ4ヵ月しかたっていないので、今の状態だけで素質の有無を考えるのは早すぎると思います。

 事実、あなたの場合、効果の得られなかった原因が、多分にトレーニング法や栄養摂取面にあると思われるのでなおさら素質云々について考える必要はないと思います。

 では、原因と思われることがらについて述べることにします。まず、問題点をあげてみると次の3つが考えられます。

①トレーニング量が多すぎないか
②週間頻度が多すぎないか
③蛋白質の摂取量が少なくないか
 そのほか、個々の運動のやり方などにも、あるいは問題があるかもしれませんが、あなたの手紙をもとにして指摘できるのは以上の3点です。したがって、一応、問題点を以上の3点にしぼって、①から順に考えてみることにしましょう。

①トレーニング量が多すぎないか

 あなたは、トレーニング後に、ぐったりするほど疲れを感じるそうですが、そのことから考えると、トレーニング量が多すぎるといっていいと思います。

 ボディビルというものは、筋の組織が過度に消耗すると効果が得られなくなるおそれがあるので、トレーニング量を適量におさえる必要があります。このことは、とくに初心者の場合には強くいえると思います。したがって、あなたも、この際トレーニング量を思いきり少なくして、新たなスケジュールで行うようにするのがよいでしょう。
《トレーニング・コース》例1

《トレーニング・コース》例1

〔註〕現段階では、あえて肩の運動を2種目行う必要もないと考えられるので、スタンディング・ローを除外しました。
《トレーニング・コース》例2

《トレーニング・コース》例2

〔註〕フロント・プレスとツー・ハンズ・カールは当分の間は除外する。

②週間頻度が多すぎないか

 筋の肥大および筋力の向上といったボディビルの効果は、超回復(図1参照)といって、運動によって消耗した筋の組織が元の状態に回復した後に得られるものです。したがって、ボディビルとしての効果を有効に得るためには、筋に充分な休養を与えることが、運動を行うのと同様に大切なことです。

 ボディビルでは、普通、トレーニング日とトレーニング日の間に1~3日くらいの休養期間を置くのがよいといわれています。

 あなたの場合のように、トレーニングを週に4日行うということは、いやでも2日続けてトレーニングする日があるわけですから、1~3日おきにトレーニングを行うのがよいというボディビルの基本から外れてしまうことになります。

 多くの人の中には、同一トレーニングを週に4日以上行うことで効果をあげている人がいるかもしれません。しかし、あなたの場合、現実に今まで週4日のトレーニングを続けてきた結果、効果が得られなかったのですから、やはり素直に週3日以内に改めるべきだと思います。
〔図1〕超回復

〔図1〕超回復

③蛋白質の摂取量が少なくないか

 いかにまじめにトレーニングしても、栄養が不充分では効果をあげることはできません。あなたが現在、どのような内容の食事をしておられるか知りませんが、蛋白質を主として牛乳から摂っているというところが気になります。

 あなたの場合、筋の肥大、および筋力の強化といった面での効果を積極的に促していくには、蛋白質を95~125gぐらいは摂ることが望ましいといえます。牛乳以外の食物からどのくらいの蛋白質をとっているか判りませんが、かりに、上述の目標量の半分を牛乳からとるとすれば、1600~2100mlとらなければならない計算になります。これは普通の牛乳ビンに直せば8本から10本ということになり、一般的な日本人の食生活からすると、かけはなれた量であるといえます。実際に、これだけの量を飲むとなると大へんな量であると思います。

 前述したように、あなたの詳しい食事内容がわからないので、これ以上のことはいえませんが、一度、栄養表などを参考にして、現在の1日あたりの平均的な蛋白質の摂取量を計算してみられる必要があるかと思います。

大腿部の肉づきをよくしたいのですが

Q 私は21歳の女性です。兄が家でボディビルを行なっていますので、その影響を受けて、私も美容のためにウェイトを使った運動を行なっています。

 現在実施している運動は下記の6種目で、暇さえあれば毎日トレーニングするようにしています。
《現在のトレーニング種目》

《現在のトレーニング種目》

 使用する重量は、各種目とも、所定の回数の倍くらいの回数が反復できると思われる重量を用いています。なおトレーニング後の疲労感はごく軽度で、こころよいものです。また数日間つづけて行なっても、別に疲労がたまるという感じはありません。

 ところで質問があります。

 私は生まれつき大腿部の肉づきが悪い体質で、とりわけ内ももの部分が貧弱です。スクワットで大腿部の肉づきがよくなるとのことですが、とくに内ももを豊かにするにはどのようなフォームで行えばよいでしょうか。できるだけ詳しく教えていただきたいと思います。

 また、私が現在採用している各種目の運動法について、女性として留意しなければならない点があれば、そのことについてもアドバイスをいただきたく思います。なお、ちなみに私のサイズは下記のとおりです。

 身長156cm ウエスト59cm 体重45kg ヒップ86cm バスト87cm

(静岡市 金子寛子 家事 21歳)
A まだまだ現在の日本では、女性が美容のためにウェイト・トレーニングを行うというのは、たいへん勇気のいることであろうと思います。あなたのように、ウェイト・トレーニングに理解を持った女性がおられるのは本当にうれしいことです。美容のために、また、健康のためにずっと続けて欲しいと思います。

 それでは、スクワットに関する問題から先にお答えします。

 あなたが現在どのようなフォームでスクワットを行なっておられるのか存じませんが、内ももの発達を促すための2とおりのフォームについて説明します。
〔図2〕Wヒールズによるスクワット

〔図2〕Wヒールズによるスクワット

◎Wヒールズによる方法

<足のかまえ>左右の足の間隔を肩幅くらいにして、ツマ先を開き、〔図2参照〕のようにかまえる。

<動作>この足のかまえで完全なスクワットを行う。ただし、この場合膝が常に親指のツマ先の方向に向いた状態で脚を屈伸させる。立ちあがるときに、両膝を内側へ閉めるようにすると内ももへ与える効果が半減する。

◎ワイド・スタンスによる方法

<足のかまえ>左右の足を肩幅の倍かそれ以上の間隔に開き、ツマ先を前述のWヒールズの場合よりもさらに外方向に開く。〔図3参照〕

<動作>上記の足のかまえでスクワット運動を行う。ただし、体勢からいってフル・スクワットは無理なので、腰をおろせる範囲で、できるだけ深くおろすようにする。
〔図3〕ワイド・スタンスによるスクワット

〔図3〕ワイド・スタンスによるスクワット

 では次に、個々の運動についての意見を申し述べることにします。

◎シット・アップ

 この運動については別に問題はありません。ただ、下腹部をひきしめる必要があるのでしたら、両膝を伸ばして床に座し、うしろ手に床に両手をついた状態で脚を上へあげるシーテッド・レッグ・レイズを併せて行うようにするとよい。

◎スクワット

 すでに質問にお答えしているのでこれといって意見はありません。ただ、運動の際は、上体があまり前傾しないように留意して、大腿部にきちんと負荷をかけるようにする。

◎ベンチ・プレス

 男性の場合とちがうので、シャフトの握り幅を広くする必要はありません。肩幅か、あるいはそれよりもいくぶん広い間隔で握って行うのがよいでしょう。

◎ベント・オーバー・ローイング

 この運動は、男性の場合ですと、広背筋の発達を促すために、みぞおち、もしくは下腹部の方へシャフトを引きつけるように動作を行いますが、女性の場合は、背中の豊かさを増すのが目的と考えられるので、胸のあたりヘシャフトを引きあげるように行うのがよいと思います。


◎フロント・プレス
 この運動は単なる肩の種目としてだけでなく、姿勢を良くするという意識を持って動作を行うようにするのがよいでしょう。そのためには、バーベルを挙上したときに〔図4〕のような姿勢をとって、胸を前へ押し出し、背すじを反らすようにします。ただし、重量が腰椎よりもうしろにかかると腰を痛めるおそれがあるので、その点くれぐれも注意してください。胸を前へ押し出しにくい場合は、左右のグリップの間隔を拡げるとよいでしょう。

◎カール

 女性の場合、上腕二頭筋が発達していると、腕の美感が損われるという意見もあるようです。したがってあなたがこの意見に賛成ならば、カールはトレーニング・コースから除外するほうがよいでしょう。
〔図4〕フロント・プレスの姿勢

〔図4〕フロント・プレスの姿勢

2つのトレーニング・コースの運動量をうまく2分割したいが

Q ボディビル歴は1年2ヵ月、自宅で1人でトレーニングしています。2ヵ月前から分割法を採用し、腕を使う運動と、腕を使わない運動とに分けて、下記のスケジュールでトレーニングしています。
記事画像10
 ところで、Bコースの日は採用種目が4種目なので、全然疲れませんが、Aコースの日はぐったりするほど疲れて、ときには翌日にも疲れが残ることがあります。

 自分ではA・B両コースの運動量を平均に分けて行うようにすればよいと考えているのですが、どのように分割したらよいかわかりません。分け方が悪ければ、部位的に疲労が蓄積され、部分的なオーバー・ワークになってしまうということもあると思うので、しかたなしに今のスケジュールを続行しています。

 そのようなわけで、現在採用している種目の範囲内で、2つのコースの運動量が平均したスケジュールを作っていただきたいと思います。
なお、参考までに現在の体位を記しておきます。


《現在の体位》
 身長173cm 前腕囲29cm 体重67kg 大腿囲56cm 胸囲107cm 下腿囲38cm 上腕囲34cm 腹囲74cm

(福井県 M・I 会社員 26歳)
A あなたのいわれるとおり、分割法は、分割の仕方が悪いと部分的なオーバー・ワークをまねくおそれがあります。しかし、現在のスケジュールをそのまま続行することは、部分的どころか全面的なオーバー・ワークになるおそれが多分にあります。

 あるいは、もうすでにオーバー・ワークの状態になっているかもしれません。もしそうだとしたら、その場合はただちに現行のトレーニング・スケジュールを中止し、疲労が完全にとれるまでレイ・オフするのが賢明です。

 では、分割法によるスケジュール例を記してみましょう。

◇トレーニング・コース例1
《Aコース》――月曜・木曜

①ベンチ・プレス
②ラタラル・レイズ・ライイング
③ビハインド・ネック・プレス
④オールタニット・プレス
⑤チンニング
⑥ワン・ハンド・ローイング
⑦トライセプス・プレス・スタンディング
⑧トライセプス・プレス・ライイング

《Bコース》――火曜・土曜

①シット・アップ
②レッグ・レイズ
③スクワット
④カーフ・レイズ
⑤ツー・ハンズ・カール
⑥ダンベル・カール
⑦デッド・リフト

〔註〕<Aコース>の広背筋の運動(チンニング、ワン・ハンド・ローイング)と<Bコース>の上腕二頭筋の運動(ツー・ハンズ・カール、ダンベル・カール)を次に示す例2のように入れ替えてもよい。

 また、腹部の運動2種目(シット・アップ、レッグ・レイズ)をA・B双方のコースに1種目ずつ振り分けて行なってもよい。腹部の運動を多日数行う方法は、多くのビルダーに採用されています。

◇トレーニング・コース例2
《Aコース》――月曜・木曜

①シット・アップ
②ベンチ・プレス
③ラタラル・レイズ・ライイング
④ビハインド・ネック・プレス
⑤オールタニット・プレス
⑥トライセプス・プレス・スタンディング
⑦トライセプス・プレス・ライイング
⑧ツー・ハンズ・カール
⑨ダンベル・カール

《Bコース》――火曜・土曜

①レッグ・レイズ
②スクワット
③カーフ・レイズ
④チンニング
⑤ワン・ハンド・ローイング
⑥デッド・リフト

〔註〕この例2の場合は、どうしてもAコースのトレーニング量が多くなるきらいがあるので、もしそのことが気になるようなら、次の例3のようなスケジュールで行なってみるのもよい。

◇トレーニング・コース例3
《Aコース》――月曜・木曜

①ベンチ・プレス
②ラタラル・レイズ・ライイング
③ビハインド・ネック・プレス
④オールタニット・プレス
⑤トライセプス・プレス・スタンディング
⑥トライセプス・プレス・ライイング
⑦シット・アップ
⑧レッグ・レイズ

《Bコース》――火曜・土曜

①チンニング
②ワン・ハンド・ローイング
③ツー・ハンズ・カール
④ダンベル・カール
⑤スクワット
⑥カーフ・レイズ
⑦デッド・リフト

〔註〕トレーニング上の安全性を重視すれば、デッド・リフトはスクワットの前に行わないほうがよいといえます。スクワットは、腰に強度な負担がかかる運動なので、スクワットを行う前にデッド・リフトによって腰を疲労させることは、それだけ運動における危険性を増大させることになるからです。

 以上、3とおりのコース例を記しましたが、それらを参考にして、ご自分でも考えてみてください。運動の順序にしても、あなたなりの考えがあるかと思います。

 ただし、スクワットのような大きな運動を最初に行う場合は、いきなり行うようなことはしないで、事前に充分なウォーム・アップを必ず行うようにしてください。
〔回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生)
月刊ボディビルディング1980年10月号

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