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ミスター東京での敗北から50日………
私はこうしてミスター日本に臨んだ
シーズン・オフとコンテスト直前のトレーニング法と食事法

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月刊ボディビルディング1981年2月号
掲載日:2020.04.07
ミスター日本クラスII優勝、総合2位 石井直方

初めて体験した敗北の悔しさ

ドンキー・カーフ・レイズ。背中に乗っているのは’79学生チャンピオンの高西選手と宮畑サンプレイ会長

ドンキー・カーフ・レイズ。背中に乗っているのは’79学生チャンピオンの高西選手と宮畑サンプレイ会長

 ふり返ってみれば、1980年のシーズンは、私に1つの非常に大きな教訓を与えてくれた。それは、あまりにも言い古されてきた事柄「トレーニングにおける精神の重要性」であった。
 恐らく私に対する大半の読者の関心は、ミスター東京での敗北から、ミスター日本2位入賞までの、極めて短い期間に、私がどのようにして体を変えたか、という点にあると思うが、残念ながらその答えは、トレーニングの技術的な面にはほんのわずかしか見出すことができないだろう。
 ボディビルは、数あるスポーツの中でも、時の運とか、大会当日の気分や体調などといった要因が、勝敗に与える影響の最も少ないスポーツの1つであろう。それだけに、自信を持って臨んだ大会で、敗北を喫したときの悔しさは、いっそう具体的なものとなる。
コンテストでの敗北は、いうまでもなく1年間のトレーニングにおける敗北であり、次に勝っためには、長所を伸ばし、弱点を矯正するトレーニングを早急に行わはなければならない。私の体を短期間で変えた最大の要因は、ボディビルを始めて以来、最初に体験した、この「悔しさ」であった。

 ミスター東京での敗北以後も、自分がそれまで行なってきたトレーニングのやり方が正しいものであったという自信は消えなかった。と言うのは、
次の項で述べる日常のトレーニングによって、私の体は、バランス良くバルク・アップしてきたからである。
 したがって、特に弱点と思われた肩と腹のトレーニングを除いては、トレーニング内容の変更はほとんど行わなかった。最も大きな変化は「とにかく1つ1つの部位を鍛える時には、神経を集中して、その筋肉が反応しなくなるまで徹底的に鍛えてみよう」という気持が芽生えてきたことである。
 敗北の悔しさは、本当に筋肉が反応しなくなるまで、手にしたバーベルを放すことを許さなかったし、セット間のインターバルを極限まで短くした。その結果、それまで限界と思われていた反復回数が、一挙に倍増したのである。
 私はパワーリフティングもやっていたので、試合における緊張感が、どれほど自分の力を限界近くまで引き出すかということはよく知っていた。しかし、日常のトレーニングにおいて、自分自身の心理的限界が、肉体的限界をこれほどまでに下回っていたということを知ったのは、このときが初めてであった。
 このような、緊張の連続した精神状態でトレーニングを続けるのは、1時間半が限度であった。そこで、後で述べるように、1日のトレーニングを昼と夜の2回に分けた。1回のトレーニングで鍛える部位は、腹筋を除き1箇所とし、文字どおり集中的なトレーニングをした。
 それまでの私は、どちらかというと淡々と、クールにトレーニングをする方だったので、目をむき、うなり声をあげながらダンベルを挙げている私の姿には、宮畑会長をはじめ、ジムの練習仲間も一様に驚いたに違いない。
 ただそれだけに、その後の実業団優勝、ミスター日本2位という成績は私の練習を見ていた彼らにとっては、さほど驚きの対象とはならなかったらしい。
 前置きが長くなったが、次に、シーズン・オフとコンテスト直前に私が実際に行なったトレーニング法と食事法を述べる。
昨年8月10日のミスター東京コンテスト

昨年8月10日のミスター東京コンテスト

9月28日のミスター日本コンテストで撮影したもの

9月28日のミスター日本コンテストで撮影したもの

シーズン・オフのトレーニング

 A、B、Cの3コースに分け、各コースを週2回ずつ実施する。つまり、週6日トレーニングして、1日休養ということになる。夜7時頃から開始して、所要時間は2時間強である。
 この時点で特に注意した点は、
 ①出来る限り重い重量(ストリクト・スタイルで3~6回)を用いること。
 ②ストリクト・スタイルで行なったあと、チーティングを用いて少なくともあと3回は反復すること。
 ③インターバルは、次のセットを精一杯行なえる範囲で極力短くすること(通常1~1分半らくい)。等である。
 各コースの内訳けは、
 Aコース=腹・大胸・広背
 Bコース=腹・肩・上腕三頭筋
 Cコース=腹・上腕二頭筋・脚
 とし、具体的な運動種目と運動量は次のとおりである。
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ミスター日本コンテスト直前のトレーニング法

 原則的にはシーズン・オフのやり方と同じで、A、B、Cの3コースを週2回ずつ行なった。ただし、練習時間を昼と夜の2回に分け、ダブル・スプリット・ルーティンとした。所要時間は昼が45分~1時間、夜が1時間~1時間半で、冒頭にも記したように、神経を集中して、昼、夜、それぞれのトレーニングが終ったときは、各筋群がオールアウト(完全にエネルギーを使いきって、それ以上、運動ができない状態)に近い状態にまでやるように心がけた。セット間のインターバルは極力短くした。また、使用重量は、できるだけシーズン・オフの場合と同じに保つことを心がけたが、実際には、体重の減少のため5~10%軽めにせざるを得なかった。
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シーズン・オフの食事法

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 特に気をつかうことなく、なんでも食べるようにしている。1日当り3000~4000カロリー、蛋白質160~180g程度になるはずである。標準的な例を示すと次のようになる。

≪朝≫……午前8時

プロティン・ドリンク(A)
牛乳300~400ml
オレンジ・ジュース100ml
プロティン・パウダー20~30g

≪昼≫……午後1時、学生食堂で

ごはん丼1杯、肉または魚約100g
みそ汁1杯、生たまご1個、豆腐1丁、納豆1袋、生野菜少々

≪間食≫……午後5時半

プロティン・ドリンク(朝と同じ)
サンドウィッチ3枚
(午後7時~9時までトレーニング)

≪夕食≫……午後11時、自宅で

ごはん丼1杯みそ汁1杯、生たまご1個、肉200~300g、生野菜たっぷり、果物

≪夜食≫……午前1時

プロティン・ドリンク
牛乳200ml
オレンジ・ジュース50ml
プロティン・パウダー15~20g
[註]オレンジ・ジュースはすべて果汁100%のものを用いている。また、プロティンの他にはサプリメントは摂っていない。就寝は午前2時前後。

ミスター日本直前の食事法

 短期間に極端なカット・アップをねらったので、かなりエキセントリックな内容になっていると思われる。コンテストをねらうビルダー以外には、すすめかねる。

≪朝≫……午前8時

プロティンドリンク((A)と同じ)
ビタミンB1錠

≪昼≫……午前11時半、トレーニング前

プロティンドリンク((A)と同じ)
ビタミンB12 1錠

(12時半~1時半までトレーニング)

≪昼≫……2時半、トレーニング後

プロティンドリンク((A)と同じ)
オレンジ2個、ネクタリン1個

≪タ≫……6時、トレーニング前

プロティンドリンク((A)と同じ)

≪夜≫……10時半、自宅で

ごはん軽く1杯、肉または魚200~300g、みそ汁1杯、生たまご1個、生野菜たっぷり

≪就寝前≫……午前1時

プロティンドリンク
オレンジ・ジュース100ml
プロティン・パウダー20g
ジャーム・オイル3カプセル
月刊ボディビルディング1981年2月号

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