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なんでも Q&A お答えします 1981年3月号

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月刊ボディビルディング1981年3月号
掲載日:2020.04.14

腰に負担のかからない肩の運動は?

Q 27歳の会社員です。仕事の都合で思うようにトレーニングができませんが、市内のトレーニング・ルームで週1~2回のトレーニングをしています。ところで、肩の運動についてお尋ねしたいことがあります。
 肩の運動には、当初からフロント・プレスまたはバック・プレスを採用しておりました。肩の運動として、他にサイド・レイズ、スタンディング・ローなどの運動があることは知っていますが、プレス系統以外の種目には目もくれず、しばらく前まではシーテッド・プレスを37.5kgで10回×3セット行なっていました。
 ところが、仕事の最中にギックリ腰にみまわれ、その後、回復してからトレーニングを再開しましたが、プレスだだけは恐くてできません。そのようなわけで、現在は肩の運動を行なっていません。そこで質問します。

①サイド・レイズは、肩の運動としては、あまり重量がかからないようですが、挙上記録のアップ、およびバルク・アップに効果があるでしょうか。プレス以外の運動は、あくまでも補助種目と考えておりますが、いかがでしょうか。
②肩の運動として、倒立腕屈伸運動を行なおうかと考えていますが、この運動は腰椎に負担がかからないでしょうか。また、プレスと比べて効果のほどはどんなものでしょうか。
③現在は、肩の運動の分をベンチ・プレスに回しております。それというのも、ベンチ・プレスでも三角筋の発達を促すことができると考えているからです。この点についてはいかがでしょうか。

 医師の診断によれば、私の腰椎は今後も完全に回復する見込みはないらしいのですが、この先、三角筋をどう鍛えていったらよいでしょうか。よろしくご指導ください。

≪現在のトレーニング・コース≫

記事画像1
 腹筋の運動はギックリ腰になって以来行なっていません。
(北海道 熊倉雅之 会社員 27歳)
A ギックリ腰による腰椎の損傷が、今後も完全に回復する見込みがないらしいというのは大へんですね。もう一度、大きな病院へ行って専門医に精密検査をしてもらったらいかがですか。では①の質問からお答えします。

(1)サイド・レイズは挙上記録のアップならびにバルク・アップに効果があるか?

 サイド・レイズは、プレス系統の運動と比べると、使用重量がはるかに少ないのは事実です。しかし、だからといって、肩に与えられる負荷が軽いということにはなりません。
 プレス系統の運動が行える腰の状態であれば、確かにサイド・レイズのような運動は、補強種目として考えても別に差しつかえありません。しかし、現在のように、プレス系統の運動が行えない状態では、あまりそのようなことに固執しないほうがよいでしょう。
 サイド・レイズとプレス系統の運動とでは効果がまるっきり同じというわけにはいきませんが、サイド・レイズにはサイド・レイゲなりの効果面での特徴があり、肩のバルク・アップも可能です。

(2)倒立腕屈伸運動は肩の運動として効果はあるか?

 この運動が腰椎に全然負担をかけないとはいいきれません。倒立のフォームによっては、腰椎にかなりの負担がかかることも考えられます。上手に行えば、腰椎にあまり負担をかけずに運動を行うことも可能ですが、体重を支える筋力が弱い場合には、技術的にかなり難しいといえます。
 なお、効果の面では、プレスをハーフで行なった場合に近い効果を期待できます。とくに、2つの台に手をついて、頭をその台の間に深く沈めるようにすれば、肩に関しては、プレスとほぼ同様な効果が期待できます。

(3)ベンチ・プレスで三角筋は鍛えられるか?

 ある程度は肩の発達が促されるのは事実です。しかし、ベンチ・プレスはあくまでも胸の運動であって、肩の運動ではありません。たとえ肩の運動が促されるにしても、それは付随的なものであって、まるっきり肩の運動の代りというわけにはいかないでしょう。したがって、今後はなんらかのかたちで、肩の運動をトレーニング・コースに盛り込んでいくほうがよいでしょう。

◇肩の採用種目について

 腰に無理な負担をかけないようにするには、やはり、ダンベルによる運動を行うのがよいでしょう。ではいくつかの種目を紹介します。

◎サイド・レイズ

<運動法>直立した姿勢で、左右それぞれの手に持ったダンベルを、手の甲を外に向けて大腿部の横にぶら下げる。その位置から、できるだけ腕を曲げないようにして、ダンベルを真横へ上げる。肩の横の部分に有効。

◎サイド・ライイング・ワン・アーム

・ダンベル・レイズ(写真参照)
〔サイド・ライイング・ワン・アーム・ダンベル・レイズ〕

〔サイド・ライイング・ワン・アーム・ダンベル・レイズ〕

<運動法>片手のみにダンベルを持ちフラット・ベンチ(または床)に横向きに寝て、腕をできるだけ伸ばしたまま、大腿部の位置からダンベルを横上へあげる。インクライン・ベンチに横向きに寝て行うようにしてもよい。肩の横の部分に有効。

◎オールターニット・フロント・レイズ「写真参照]

〔オールターニット・フロント・レイズ〕

〔オールターニット・フロント・レイズ〕

<運動法>両手にそれぞれ持ったダンベルを、腕を伸ばしたまま、またはいくぶんまげた状態で、体の前方で左右交互に上へあげる。左右同時にあげるよりも、交互にあげるほうが腰に対する負担が軽い。肩の前の部分に有効。

◎インクライン・オールターニット・フロント・レイズ

<運動法>インクライン・ベンチに仰臥して行うオールターニット・フロント・レイズ。肩の前の部分に有効。

◎インクライン・リア・ラタラル・レイズ(写真参照)

〔インクライン・リア・ラタラル・レイズ〕

〔インクライン・リア・ラタラル・レイズ〕

<運動法>インクライン・ベンチに伏臥し両手にぶら下げた左右のダンベルを、腕を伸ばしたまま、いくぶんまげた状態で、肩の高さまで横へあげる。肩と背をできるだけすくめないようにして運動を行う。肩と背をすくめると三角筋に与える効果が減ずる。肩の後部に有効。
 以上が比較的腰に負担をかけずに行える肩の運動です。しかし、ギックリ腰というのは、腰にさほど負担がかからない状態でも、ちょっとしたかげんでなるので、くれぐれも慎重に運動を行うようにしてください。

病気回復後のトレーニング法

Q ボディビル経験は約10年、自宅でトレーニングを続けてきました。途中、ときどき休止期間などもあって、効果のほどはいまひとつといったところです。
 去年の暮、急性盲腸炎で手術しました。そのとき腹膜炎を併発しており、9日間の入院後、10日間ほど自宅療養し、現在は仕事に行っています。医師からは3~4カ月は激しい運動を行わないようにいわれました。重い物を持つとヘルニアになったりすることもあるといわれました。
 入院するまではスプリット・ルーティンによるトレーニング(Aコース、月・水・土、9種目、計30セット。Bコース、火・金、6種目計21セット)を行なっていました。
 そこでお伺いします。

①医師のいうとおり、3~4カ月はボディビルを行わないほうがよいか。
②目によっては運動を行なってもよか。
③運動を行なってもよいのなら、どのような内容で行うのがよいか。

 以上の3点ですが、練習を休んでいてとくに困るのは腹が出てくることです。スポーツ医学については全く知識がありません。よろしく助言のほどをお願いします。
(大阪府 Y生 34歳)
A 盲腸炎(虫様突起炎)に腹膜炎が伴発した場合は、手術後の養生にはとくに注意しなければならないでしょう。私の友人で、手術後の養生期間中に慎重さを欠いたために、完治するのに8カ月近くもかかった例もあります。あなたも医師のいうとおりに、3~4カ月はボディビルの運動を一切行わないほうがよいと思います。たとえ運動の内容を吟味したとしても、直接、医師やトレーナーの指導の下に行うのでない限り安全性は確保できないでしょう。
 これからの長い人生を考えれば、ここで3~4カ月トレーニングを休むのはなんていうこともないのではないでしょうか。こわごわ運動をして、その結果、ヘルニアにでもなってしまったら元も子もありません。
 では一応、医師のOKを得られた後のトレーニング再開時の運動法について述べていくことにします。まず、その要点として次の3つの点について留意してください。

①再開当初は、強度、量ともトレーニングの内容をごくひかえめにする。
②腹部を圧迫する運動、および、運動中に著しく腹圧を高める種類の運動は行わないようにする。
③運動を行う前に必ず器具の安全性を点検する。安全性の不備により体勢がくずれたりすると、腹部に思わぬ力が入り危険である。

◎再開後第1段階のトレーニング・スケジュール例

(1)腹の運動――除外
(2)胸の運動――ラテラル・レイズ・ライイング(両足をベンチの上に載せ膝を立てた姿勢で行うのがよい。このほうが、足を床におろして行うよりも腹部を圧迫しない。ただし、くれぐれもバランスをくずすことのないように注意する)
(3)肩の運動――除外
(4)背の運動――除外
(5)上腕二頭筋の運動――オールターニット・カール(左右を同時にカールする運動は胸部を著しく圧迫するのでそれにともなって腹圧を高めるおそれがある)
(6)上腕三頭筋の運動――ワン・ハンド・トライセプス・イクステンション・ライイング(立って行うトライセプス・イクステンションは、腹部に弱い緊張をともなう場合があるので第1段階としては、仰臥した姿勢で片腕ずつ行うのがよいでしょう)
(7)腰の運動―除外
(8)脚の運動―ハーフ・レインジによるヒンズー・スクワット(重量を用いないで、上半分の範囲でのハーフ・スクワットを行う。ただし、むきになって回数を多く行なわいようにの留意する。

◎再開後第2段階のトレーニング・スケジュール例

(1)腹の運動――スタンディング・オールターニット・ニー・レイズ(立った姿勢で左右の膝を交互に上へあげる。比較的ゆっくりとした動作で、慎重に、かつ、ていねいに行う)
(2)胸の運動――ベンチ・プレス(軽い重量でていねいに行う。重い重量をの用いての低回数による運動は慎しむほうがいい)
(3)肩の運動――オールターニット・プレス(6~8回くらいの回数を気張らずに行えるくらいの重量で行う)
(4)背の運動――ベント・オーバー・ローイング・ウイズ・ダンベル(両手にそれぞれダンベルを持ち、左右同時に動作を行うようにする。ワン・ハンドで行うと内腹斜筋、外腹斜筋に強い緊張をもたらす場合があるので注意する)
 なお、練習を休んでいると腹が出てきて困るとのことですが、この問題は食事の内容にある程度制限を与えることによって解決できると思います。

健康法としてのボディビルのやり方

Q ボディビルを始めてから17年になります。始めた当時は23歳であった私も、今では40歳になりました。もともとたいした素質があったわけでもなく、自分なりに体力が強化できればよいといった程度の考えでトレーニングを続けてきたので経験年数の割には体格もそれほどよくありません。しかし、ボディビルの運動はこれからもずっと続けていきたいと思っています。
 ところで、私は今年40歳になったのを機会に、今までの筋肥大と筋力強化を目的としたトレーニング法を改め、健康法としてのトレーニングを行うことにしました。健康法として行う場合には、トレーニングを隔日的に行うよりは、むしろ、運動量を減らしても毎日行うほうがよいということを以前聞いた覚えがあります。そのような訳で現在は下記の内容のトレーニングを週6日行なっています。しかし、疲労がたまりぎみで、体調もあまりよくありません。やはり隔日的にトレーニングするほうがよいでしょうか。ご意見をお聞かせください。

≪現在のトレーニング内容・週6日≫

記事画像5
[註]各種目とも、あと2回くらいの反復を行えると思われる余力を残しているので、無理はしていないつもりです。

≪現在の体位≫

身長 162cm 腹囲 91cm
体重 71kg 上腕囲 35cm
胸囲 101cm 大眼囲 50cm

(香川県 小川太一 会社員 40歳)
A トレーニングの内容からしてこれを連日、週6日も行うのは、体調を悪くして当然と思われます。現在あなたが実行しておられるトレーニング法は、その内容からすれば隔日的に行うべきものであって連日、週6日も行う質のものではありません。
 あなた自身は、筋肥大、および筋力強化指向のトレーニング法から、健康法としてのトレーニング法に改めたいといわれていますが、それは1人よがであって、改められたとは思われません。
 というのは、現在あなたが行なっておられる各運動種目の使用重量は、現在のあなたの体位から推察される筋力に照して考えてみると、筋の肥大、および筋力の強化に適した重量であって健康法として週に6日も行うのに相応しいとは思えません。したがって、あなたがどうしても現在のトレーニング内容に固執するのであれば、トレーニング頻度を隔日的、週3日に改めるべきでしょう。
 しかし、あなたが毎日少しずつでもの運動をするということのほうに意を強く持っているのでしたら、その場合は当然、今のトレーニング内容を軽度なものに改めなければなりません。40歳という年齢を考えれば、むしろ、そのような方法のほうがよいかもしれません。
 体力を維持し、老け込まないためには、若さを保とうとする気持も必要です。しかしその反面、体力の衰えていくのを素直に認めるという心の持ち方も必要です。そういった二面的な心情があって、はじめて健康法も活きたものになるのではないかと思います。
 健康であるためには、まず現在の自己の体力をよく把握し、5年先、10年先のことを考えて運動を行なっていかなければなりません。ことに年輩者の場合には、できるだけ身体的に過度な消耗をきたさないように留意して運動を続けていくことが大切です。
 そのためには、若い頃から持ち続けてきた筋肥大や筋力強化に対する根強い執着を捨てなければなりません。よしんば完全に捨てないにしても、そういった気持を和らげることは必要でょう。このことをもっとくだけた言葉でいい変えれば、シャカリキになって一生懸命にトレーニングするのではなく、くつろいだ気分で楽しみながら運動を行うようにしたほうがいいということです。
 では念のために、毎日行う場合のトレーニングのやり方について3種類の方法を記述しておきます。ただし、いずれの場合、各運動種目の使用量重は、最高重量の60~70%以下にするのがよいと考えられます。
 また、腹筋運動のようにウェイトを用いない運動種目の場合は、正しいフォームによって可能と思われる最高反復回数の60~70%程度の回数を1セットの反復回数として運動をするのが妥当かと考えられます。

≪トレーニング・スケジュール例1≫

記事画像6
[註]各運動種目の使用重量法、前述の説明を参考にしてください。また、反復回数は、一応5~6回としましたが、これは使用重量との関係で、任意に決めてけっこうです。しかしあまり低回数にしないほうがよいでしょう。

≪トレーニング・スケジュール例2≫

記事画像7
[註]各運動種目の反復回数は10回に限定されたものではないので、任意に決めてください。なお、ストレート・アーム・プルオーバーとベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイングは、整理運動として、他のスケジュールの場合にも採用されて結構です。
[フロント・キック]

[フロント・キック]

[ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング]

[ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング]

≪トレーニング・スケジュール例3≫

 この例3は、採用種目を1セットずつ行なっていき、それを2巡する方法。
記事画像10
 [註]以上の運動を、もう1セットずつ行うようにするが、運動種目の順序は、その運動で使われる筋を、前後の運動において重複して使用しないように並べてください。
 なお、このようなトレーニング法は、一般にはセット間の休息をできるだけとらないようにして、筋を強化することだけでなく、心肺機能も同時に強化するという目的で行なっています。しかし、年輩の人が、体の動きの円滑性を促進(もしくは維持)することをトレーニングの第一義的な目的として行うのであれば、セット間の休息時間を強いて短縮すのる必要はないでしょう。脈拍数が度にあがらない範囲で、実施するようにしてください。
(回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生)
月刊ボディビルディング1981年3月号

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