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グッド ヘルス イズ グッドビジネス
(健康でなければいい仕事は出来ない)

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月刊ボディビルディング1981年3月号
掲載日:2020.04.13
医学博士 後藤紀久
 アメリカでは、社員の健康づくりは企業利益にもつながると、職場での体力づくりが奨励されている。
 以前、ホワイト・ハウスが政府各機関に対して「職員の健康と、仕事の能率向上のために、勤務時間内でも体力づくりのトレーニングを行なってよろしい」という通達を出し、各省にトレグーニング・ルームがつぎつぎにつくられた。そして、専門家による様々なトレーニング・プログラムが企画され、大きな効果をあげた。
 やがてこれが民間企業にも広まり、規定のプログラムを消化した社員には金一封を出すといった熱の入れようである。
 現代人は、車の普及、仕事の機械化で体を動かすことが非常に少なくなっている。休日は寝ころがって1日中テレビを見ているという人が多く、運動不足の上に、逆に食生活の向上に伴ってカロリーの過剰摂取から、肥満、心臓病、糖尿病などが増えている。
 しかし、アメリカのように企業ぐるみで健康と体力づくりの重要性を考えているところは、日本ではまだまだ少ないようだ。そこで、参考のために、私の指導している国立予防衛生研究所の例を紹介しよう。
 最初はボディビル・クラブとして発足し、会員も血気さかんな若い男性所員たちが、力自慢を競っていた。その後、名称をトレーニング・クラブと変更すると、若い女性所員が続々入会してきた。彼女らの目的は、もちろんカ自慢ではなく、美容体操としてのウェイト・トレーニングであった。
 この女性会員の急増で、始めはトレーニング・プログラムを組むのに大変苦労したが、いろいろ試行錯誤しながらやっているうちに、4ヵ月で体重を15kgも落とすことに成功した会員が現われると、そのニュースはたちまち職場中に広まり、さらに女性の入会者が続出した。そうなると、今度は器具の不足やトレーニング場の狭さが問題となり、組合でも取りあげられた。
 当初、私は週に3回指導していたのだが、いつの間にか毎日、昼休みに出動のハメになってしまった。もちろん自分の練習など出来る状態ではない。厚生省の組合新聞である「全厚生」からも取材に来て、その活動は厚生省全体に知れわたり、他の機関からも指導の依頼が飛びこんでくる。まさにうれしい悲鳴である。
 そのうち、美容目的だけでは満足できない女性会員たちが、ベンチ・プレス、スクワット、デッド・リフト、プルオーバーと、重いバーベルを使い出し、パワー・アップにも挑んできた。こうなると、男性会員は隅の方で小さくなって練習している始末である。
 そのブームがやや静まると、今度は、高齢化の進んでいる我が職場では、腰痛、胃下垂肩こりなどに悩んでいる人が多く、そんな人たちが連れだって入会してきた。会員の年齢層もアップし、リハビリ・グループもできてしまった。もう私1人ではとても間に合わず、経験の永い会員が、それぞれのループのコーチとして分担して指導することになった。
 現在では会員も30名に達し、そのうち女性会員が3分の2を占めている。夏の合宿も定期的に実施され、トレーニング・コースも目的別につくられ、よく努力した会員やパワー・アップの著しい会員には、暮の忘年会の時、クラブよりメダルが授与される。それも励みの1つになっているようだ。
 今では会員諸氏の健康状態も改善され、労働意欲も向上して大いによろこばれている。私はこれからも、職場における健康増進に役立ちたいと念願している。“グッド ヘルス イズ グッド ビジネス――健康でなければいい仕事は出来ない”
月刊ボディビルディング1981年3月号

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