フィジーク・オンライン

どこまでホント?危ない健康常識(1)

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1980年5月号
掲載日:2019.10.18
現代は情報があまりにも多すぎて、「あれがいい」、「これはいけない」と、未整理のまま諸説がとびかい、善良な市民はとまどうばかりである。そこでもう一度、あなたの信じていることは正しいかどうか、再チェックしてみよう。

I 食生活のまちがった知識

①ごはんを食べると太る

農林水産省に味方するつもりはないが、現代人の米ばなれの風潮は異常なものがある。「米は肥満のもとだが、パン食にすると太らない」といいふらしている栄養学者がいるのには困ったものである。

肥満になるかどうかは、食べすぎたときにおこる問題で、毎食、茶わん1杯程度のごはんをおいしく食べることは、決して成人病に結びつくものではない。つまり、ごはんそのものが悪いのではなく、問題は食べ方にある。

パン食のほうがバターをつけたり、ジャムをつけたり、かえってカロリーが高くなり、肥満のもとになる。欧米では「ライスこそ低カロリーの健康食である」と愛用されていることを認識していただきたい。

②玄米食にすれば病気がなおる

「精白した白米はカスで、栄養がない。玄米食にするとビタミンやミネラルが多く、病気がなおる」と、いろいろ症例を並べて玄米食を礼讃している人たちがいる。

確かに、胚芽やヌカが付着していて微量なビタミンやミネラルは、いくらか白米より多いのは事実だが、そうかといって、基本栄養素である「たんばく質」「炭水化物」「脂肪」の面では差はほとんどない。

だから「玄米食さえ食べていれば、肉や魚、卵などは食べなくてもいい」という間違った説を信用すると、たちまち栄養失調に陥いる。最初は低栄養のために体重が減って調子がいいように感じるが、やせてからもなお玄米食をつづけていると、生命にまでかかわってくる。

③卵はコレステロールが多くて危険

「昨晩、目玉焼を食べたので、今日と明日は卵を食べない。週に3個くらいにしている」という人がいる。

“卵はコレステロールのかたまり”などとTVで知らされ、卵を食べるたびに恐怖感さえ持っているのだから気の毒なことだ。

コレステロールは人体の肝臓で合成され、ホルモンの原料や胆汁のもとになる重要な物質である。確かに年をとるにつれて、生体の恒常性維持能力が衰えて、コレステロールをとりすぎると、血中コレステロールが増加するがそうかといって、1日に卵を1~2個ずつ食べつづけたからといって、これが原因で動脈硬化になることはない。

④植物油は健康によい

リノール酸の多いサフラワー油の製品がブームになっている。確かに、多過不飽和脂肪酸が多い植物油の場合、血中コレステロールを低下させ、成人病予防に適している。

だが、メーカーの宣伝がゆきすぎて「動脈硬化をなおす」というふうに、いったんコレステロールが沈着し、硬化した血管を元のように柔かく、弾力性のある状態に戻してくれるかのごとく消費者に誤解を与えているのはよくない。

いくら植物油を多く食べても、硬化した血管は元には戻らない。予防にいいだけでのことである。そのうえ、体内にとりすぎると,「過酸化物質」がふえて、脳軟化症になるという報告さえある。

良いときくと、まともにそれを信じて、いくらでも多くとるのが日本人の悪い習慣である。

(健康体力研究所・野沢秀雄)
月刊ボディビルディング1980年5月号

Recommend