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1980年度第26回JBBAミスター日本コンテスト回想
≪私の審査内容公開≫

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月刊ボディビルディング1981年1月号
掲載日:2020.03.13
日本ボディビル協会常任理事 審査委員
佐野匡宣

◇選手寸評◇

 前号で、決勝震災における私の採点と公式集計結果とを対比略記したが、以下、各選手に対する批評、感想を述べることにする。これが私の審査内容である。

<総合優勝・クラスⅠ優勝>浅井照雄

 第23回大会で初入賞して以来、年々著しい成長を見せ、四度目の挑戦でようやく念願の優勝をなし遂げた。短身クラスでは以前からパルク型の代表選手であった。
 私は今年になって、ユニバース出演したときの2回、朝生選手を見てきたが、選抜大会の時の状態と、約1ヵ月後の富山での状態を比較したとき、その充実ぶりがはっきりと読みとれ、ミスター日本にかける意気込みが溢れているのが感じられた。
 その夜、ホテルで選抜大会の時のビデオと、この日のゲスト・ポーズの録画を朝生選手に見せ、その長所・短所を指摘してアドバイスしたが、彼は素直にメモをとりながら、繰り返し繰り返しビデオを見ていた。そんな彼の態度から、本大会での活躍を楽しみに分かれたが、それだけに私の朝生選手に対する期待は大きかった。
 ポージングにおける欠点は何とか良くなっていたが、キレ味の点では不充分であった。少し脂ののった感じで迫力不足であった。
 その証拠として、部分賞において脚と胸を獲得しているが、彼のもっとも特徴である脚は、大腿部では山崎選手の方が良く、僅かにカーフの良さで1票差という僅少差での獲得であった。また、部分賞を獲得しなかったほかの部分ではいずれも支持票が1票という状況から見ても朝生選手の状態が完全でなかったことがわかる。全体として何とかまとまっていたことと、ポージングの是正で良く見えたことが他の審査員に高く評価された原因であろう。
 私は彼に対する期待が大きかっただけに、かえってきびしい採点になったかも知れないが、長宗、宮畑らと対比の上、クラス別では96点で3位、総合では97店で2位と採点した。
 聞くところによると、大会直前にカゼをひき高熱に悩まされたそうだが、これが当日の迫力不足の原因になったのかも知れない。いずれにしても、全日本を制覇したいま、このあとを狙うのはユニバースである。世界に通用するビルダーを目指して、研鑽努力してほしい。
[総合優勝・朝生照雄選手]

[総合優勝・朝生照雄選手]

<総合2位・クラスⅡ優勝>石井直方

 須藤選手が第23回大会以後、出場がなく、長身の選手で伸び悩みの選手が多く、淋しく思っていた矢先、日本人ばなれを感じさせる大型選手として登場、昨年、一躍総合5位に入賞して注目を集めた。
 上体、下体ともにバランスのとれたバルクを持っており、ポージングも場馴れしたのか非常に美しくソツなくこなしていた。とくに、ポージング時の腹筋の使い方が上手である。ポーズ全体を引き締めていた表現力が高く評価された原因であろう。
 しかし私は、全体として鍛え込み不足、キレ味不足を感じた。というのは前鋸筋から腹筋にかけての鍛え込みに比較して、他の部分の鍛え込みが甘いように思えた。
 その腹筋も部分賞では粟井選手の支持率にも及ばず、僅か1票しか獲得していない。このことは先にも述べたようにポージングにおいて腹筋を上手に使ってはいたが、特別にキレがあったとか、良かったということではないことを意味している。
 また、部分賞を獲得した背にしても、長宗・塚本・小山と票が割れ、僅か1票差であったのは、広背筋の広がりが美しく見えたことが得をしたようである。背面中央から下部にかけて、もう少し鍛え込んで欲しかった。
 長身でパルクもあり、ポージングにおいてもうまく自分の長所を表現するテクニックを心得ているのだから、いま一歩のキレ味が出れば、世界の舞台でも大いに期待できよう。金城・粟井・塚本と対比のうえ私は、総合では94点、5位、クラス別では93点、5位として評価、審査員中、彼に対して最もきびしいものとなった。
 大柄な派手さが得をしたことを自覚し、その特長を活かして、いま一歩、内容的に密度の高いものに仕上げてほしい。
[総合2位・石井直方選手]

[総合2位・石井直方選手]

<総合3位・クラスⅠ2位>長宗五十夫

 9月初め体調をこわし、何とか克服してNABBAユニバースに出場、クラス5位を獲得。帰国後、中2日あまりで本大会出場という強行スケジュールであった。
 機中の運動不足からくる脂ののりを除くため、絶食に近い食事制限で迎えた大会である。せめて帰国後4~5日あればと残念であったことだろう。大会当日、筋肉に張りがなく肌のツヤが悪かったのも止むを得まい。この悪条件の中で、よくぞあれだけのキレ味を維持し健斗したその努力と意気に敬意を表したい。
 裏審査ではやはり少し疲れが見えていたが、第二次予選、クラス別決勝と進むにしたがい調子を上げてきた。部分賞でも健斗して首の部を獲得。背の部分でも小山・塚本・石井と熱戦を演じたが、これは惜しくも逸した。総合決勝の後半ではかなりの疲れが目立ったが、止むを得ないことと思う。
 こうした多少、疲れの目立ちが他の選手との対比において損をしたのだろう。私は、この点に関しては、スポーツマン・シップ、マナーという点で評価、クラス別では98点、1位、総合では99点、1位と評価した。
 大会2日後に、長宗選手から連絡があり、すっかり体調も良くなり、肌のツヤも戻り、かえってキレも出てきましたと笑っていたが、これは、ヤレヤレと気分的にリラクゼーションできたことと、無理な食事制限から解放され必要な栄養分の摂取により活力を取り戻したためであろう。本大会の経験を活かして、今後のより一層の成長に結びつけてほしい。
[総合3位・長宗五十夫選手]

[総合3位・長宗五十夫選手]

<総合4位・クラスⅠ3位>金城正勝

 2度目の挑戦で総合4位入賞という大殊勲をたてた金城は、小柄ながら、筋肉質で切れ味の良い選手である。ボディビル経験が5年ほどで、これだけの筋肉をつくりあげたということは、その陰に並々ならぬ努力があったことと思うが、素質的にもすぐれたものを持っていたのであろう。また、昨年、初出場で総合6位を獲得した兄、正秀選手が良きライバルとして共に競争心を燃やしていたことが2人の急成長につながったのではないか・
 一見、見まちがえるほど良く似た兄弟であるが、正秀選手よりプロポーション的に上回っている。いまひと廻り大きく鳴れば、部分賞でも何部門か獲得できる可能性がある。本大会では部門別ではあまりさえなかったが、何か1つか2つ、この部門なら絶対、という特長を持つように努力すれば、さらに上位に食い込めるだろう。私は、クラス別では93点、4位、総合では93点6位と評価した。
[総合4位・金城正勝選手]

[総合4位・金城正勝選手]

<総合5位・クラスⅡ3位>粟井直樹

 昨年は少し伸び悩んでいたが、何とか克服して、全体的にグッと逞しくなってきた。癖のあるポーズも、充分とは言えないがだいぶ良くなってきた。ただ、実際よりは少し細身に見えるがその原因がどこにあるのか、よく検討してみる必要がある。
 この点について、私は、少し肩に不必要な力が入りすぎて、腕の位置が悪く胴をまのびさせて見せるからではないかと思うが、いまひと廻りのバルク・アップが出来れば、こういった点も解消するのではないだろうか。
 部分戦では腹の部で善戦していたがいま一歩というところ。何か1部分は獲得できる特長を持ってほしい。私はクラス別では98点、1位、総合では96点、3位と評価した。
 アポロ、クラス別、総合と、同じ大阪の塚本選手とシーソーゲームを展開してきており、とくに総合決勝での2人の熱演は見もので、大いに場内をわかせてくれた。
[総合5位・粟井直樹選手]

[総合5位・粟井直樹選手]

<総合6位・クラスⅡ2位>塚本猛義

 7月のユニバース選抜大会では腹・脚もしまり、昨年よりひと廻り成長したあとが見え、ヤル気充分と感じたが、本大会では、いまひとつ物足りなかった。僧帽筋上部から三角筋、腕にかけての上体は非常に良いものを持っているが、腹・脚の鍛え込みが不充分であった。
 部門別では腕の部を獲得。背の部でも、長宗・小山・石井の3選手と乱戦を展開したが、背面中部・下部が不充分でこの部門は獲得できなかった。今後の課題は、とくに腹と脚の鍛え込みにある。その成否如何が大きく躍進できるかどうかのカギとなろう。
 私は、クラス別では粟井・小山・佐藤・石井と対比のうえ97点、2位、総合では粟井・石井・金城との対比のうえ95点、4位と評価した。
〔総合6位・塚本猛義選手〕

〔総合6位・塚本猛義選手〕

<クラスⅠ4位>宮畑 豊

 7月のユニバース選抜大会では、昨年に比べてバルク・アップされ、かなり良くなっていた。私が彼にそのことをいうと、彼は「ハイ、今年こそ全日本の優勝を狙う最後のチャンスだと思っています。もう来年は40歳です」とその決意を示していたが、本大会で、おそらく彼自身、予想だにしなかった総合決勝進出に敗れ、勝負のキビシサをかみしめていることだろう。
 その敗因は、ひと言でいって、マキシム表現の不足による“見あきられた損”というマイナス面が作用、迫力不足を感じさせたことにであろう。
 かつて、石神日出喜選手が、全体的に非常に良い内容をもちながら、ポージングで足の位置が悪いために脚を弱く見せたり、力の配分に悪いクセがあった。注意したがなかなか矯正できずにいるうち、やはり“見あきられた損”というマイナス作用が影響して優勝を逸した。よほど厳しく指導矯正する者がそばにいないと、いったんそれがクセになると、本人はなおしたつもりでも、自然とそのクセは出るものである。
 部門別で腹の部を文句なく獲得。全体的に昨年よりひと廻り大きくなっていながら、迫力不足を感じさせたことは惜しい。金城・粟井・石井といった新鮮さに押され、1票差で総合決勝進出がならなかったのは残念であった。私は、クラス別でその内容を高く評価し、97点、2位と評価した。
〔クラスⅠ 4位・宮畑 豊選手〕 ↓

〔クラスⅠ 4位・宮畑 豊選手〕 ↓

<クラスⅡ4位>小山裕史

 ミスター大阪、関西と連覇して上り調子で出場。大阪大会の時よりさらに一段とキレを出しての健斗であった。しかし、姿勢が悪く、ポージングのとき、変に偏ったクセや、必要以上にリキみすぎがあり、マイナスになっている。筋量では石井選手に匹敵するものを持っており、キレ味という点では彼以上のものをもっていながら、全体として見るとき、いま述べたような面が影響したのであろう。
 部門別の背の部でも長宗・塚本・石井と共に乱戦健斗していた。この部門で勝った石井選手が、広背筋の逆三角形を形づくる広がりの表現が非常にきれいで上手なのに対し、逆に小山選手は何となく姿勢が悪く、そのうえ、必要以上にリキみすぎて、ポーズ表現が下手である。まだ若いのだからあせることはない。じっくり姿勢の矯正、ポーズの練習を基本から練習しなおしてほしい。私は、クラス別で94点、4位と評価した。
〔クラスⅡ 4位・小山裕史選手〕

〔クラスⅡ 4位・小山裕史選手〕

<クラスⅠ 5位>関口敏夫

 キレの良さが森田選手を押さえて念願のクラス入賞を果たしたが、大胸筋以外はまだバルク不足である。内容的には深谷選手と大差はないが、新鮮さと、ポーズ時の姿勢の良さが評価されたのであろう。
 クラス5位に入賞したとはいえ、上位4名とはまだ差のあることを自覚しこの入賞を出発点として、初心に戻り来年度に向ってまず全身のバルク・アップに励んでほしい。クラス別で東海林選手と対比して91点、5位と評価した。
〔クラスⅠ 5位・関口敏夫選手〕

〔クラスⅠ 5位・関口敏夫選手〕

<クラスⅡ5位>佐藤啓治

 昨年の大会で見たとき、少しバルク不足ながら、キレの良い、バランスのとれた選手で、大いに伸びる可能性があると、その成長を楽しみにしていた1人である。
 そして今年、ひと廻り大きくなっての出場。バランスも良くポージングもうまくまとめていた。内容的に、派手さはないが、どこといって欠点もなく、まとまりの良さでは石井選手より上と私は評価した。
 惜しむらくは、ポージング時に腹筋が弱く見え、胴体中央部が少しボケて見えたのは損。この点、石井選手とは正反対であった。もうひと廻りのバルク・アップに心掛け、そして腹筋の鍛え込みに留意してほしい。私はクラス別で95点、3位と評価した。
〔クラスⅡ 5位・佐藤啓治選手〕

〔クラスⅡ 5位・佐藤啓治選手〕

<クラスⅠ 6位>東海林 徹

 毎回出場のベテランであるが、ここ数年、大した進歩が見られない。とくに背筋、脚の弱さが気になる。上体前面は良いのだから、もう少し下半身と背筋を鍛えてほしい。予選で、私は深谷選手の全体的なキレの良さに1票を投じ、東海林選手をチェックしなかったのも、以上のような理由による。
クラス別決勝では、私は関口選手と対比のうえ90点、6位と評価した。
〔クラスⅠ 6位・東海林 徹選手〕

〔クラスⅠ 6位・東海林 徹選手〕

<クラスⅡ6位>山崎義夫

 先ず、念願の入賞おめでとうという言葉を送る。非常にキレの良い選手で、特に脚は一級品である。欠点は、下体の逞しさに比して、上体のバルク不足である。
 これは姿勢のとり方にも問題があると思う。いま少し肩の力を抜いて楽な姿勢で、もっと肩幅を広く見せるようなポーズの練習と研究をしてほしい。
 脚の部門賞では、1票差で朝生選手に惜敗したが、その脚の良さが入賞に結びついた原因である。やはり、どこか1部門でも、強烈に印象づけるような部門を持つことがいかに大切かということがわかると思う。
 ポージングでは気力充溢、独特の雰囲気を出していたが,その姿勢は偏りがあって損、もっと素直な姿勢のほうがいい。私はクラス別で89点、6位と評価した。
〔クラスⅡ 6位・山崎義夫選手〕

〔クラスⅡ 6位・山崎義夫選手〕

 ――×――×――×――
 以上、入賞した選手について略記したが、その他で印象に残った選手たちを何人かあげてみる。
 深谷(神奈川)は、全体的にまとまってキレの良いものを持っているが、いまひとつバルクがほしい。
 森田(広島)は、1票差で入賞を逸したが、脂ののった感じでセパレート不充分であったのがその原因。もう少しキレ味があったら、入賞の可能性があったと思う。
 桜井(大阪)は、年齢以上にふけて見えるが、身体は若々しく、バルク、キレともにまとまった素直なポーズを見せていた。現在は健康管理として実施しているようだが、コンテストを目的として本格的に練習すれば、見違えるほどの成果を上げる素質を持っていると思う。
 大竹(新潟)は、小柄ながらバルクがあるのだから、あるのだから、もう少しデフィニションをつければ、入賞も可能。切れ味の不足が惜しい。
 北川(大阪)は、非常に恵まれた素質を持っており、いまひと廻りのバルク・アップができれば入賞を狙うに充分。
 大江(富山)は、プロポーションの良い選手であるが、やはりバルク不足が目につく。いまひと廻り大きくなれば迫力も増してくるであろう。
 広田(愛知)は、山崎とせり合い、1票差で入賞を逸したが、上体のバルク不足がその原因。体型は抜群のものを持っているのだから、あとはバルク・アップして迫力をつければ、大いに期待できよう。
 糸崎(石川)は、久しぶりの出場であったが、その筋量、プロポーションの良さは以前のままだが、調整不充分で、切れ味不足が目についた。とくに腹筋の切れ味不足が目についた。往年の迫力を取り戻してほしい。
 田崎(千葉)は、少し脂がしぼりきれていない感じで迫力不足であった。ぐっとしぼってキレ味を出せばと悔まれる。
 三田村(神奈川)は、もうひと廻りのバルクがほしい。とくに下半身に比べて上半身が見劣りする。
 松村(広島)は、何となく上半身、下半身がアンバランスに感じられ不安定であった。
 村本(福岡)は、全体的に細身に見え、迫力に乏しかった。ミスター九州のときのほうが良かったように思う。いまひと廻りのバルク・アップをはかってほしい。
 梅村(愛知)、岡本(神奈川)はともにもう少しキレ味が出ればと思う。迫力不足が感じられた。斉田(京都)は、なんといってもバルクがほしい。
 まだまだ各選手について希望や期待あるいは感想、苦言等を呈したいことはたくさんあるが、誌面の都合上、言葉の足りない点があったのかもしれないが、このくらいで筆を置く。
月刊ボディビルディング1981年1月号

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