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Q&A
なんでもお答えします 1979年9月号

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月刊ボディビルディング1979年9月号
掲載日:2019.04.17

上腕三頭筋、三角筋、前腕のトレーニング法ほか

Q
 ボディビル歴は2年です。現在は勤務先の同好会でトレーニングしています。
メンバーは私の他に6人ですが、キャリアは3ヵ月から10ヵ月といったところです。
 私自身はまだ他人に教えるほどの経験があるとは思っていませんが、キャリアが一番長いので、立場上なんとか指導しております。
雑誌や専門書などを読んで勉強はしているのですが、判らないことがまだたくさんあります。
 そこで、お願いがあります。うちのメンバーの質問を項目別にして記しますので、それらについて回答をいただきたいと思います。
①上腕三頭筋の外側頭の発達を促すにはどのような運動を行えばよいでしょうか。
②三角筋の前の部分の発達を集中的に促すには、どのような運動を行えばよいでしょうか。
③普通のリスト・カール以外の前腕屈筋のための運動をいくつか教えてください。
④マルティ・パウンデッジシステムという運動法があると聞きましたがどのような運動法でしょうか。
⑤ホリゾンタル・プレスとはどのような運動法でしょうか。また、その効果についてもお願いします。
⑥一番最初のミスター日本は窪田登先生だと聞きましたが、本当でしょうか。
(秋田県 H・T 25歳)

 ボディビルのトレーニングとその効果というものは、個別性が非常に大きいので、いちがいにはいえません。
最初はあまり多くの運動種目を採用せず、基本種目だけでしばらく練習して、各部位の発達の傾向を見きわめてから、少しづつ採用種目を増やすようにしてください。
では①の問題から順にお答えします。

(1)上腕三頭筋の外側頭の発達について
 上腕三頭筋の発達は、傾向として長頭よりも、むしろ外側頭の方が容易であるといえます。
というのは、長頭のための運動種目よりも外側頭のための運動種目の方が、運動としての技術的な難度が低いことによります。ではこの部分に効果的な運動をいくつか紹介しましょう。


◎ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
<かまえ>フラット・ベンチに寝て、左右のグリップの間隔を肩幅よりも狭くしてバーベルを持つ。
<動作>普通のベンチ・プレスと同じような要領で、シャフトが胸に軽く触れるまでバーベルをおろしたら差しあげる。
バーベルを持ちあげるときは、肘を完全に伸ばすように留意する。

◎ナロウ・グリップ・プッシュ・アップ
 両手の間隔を狭くして行うプッシュ・アップ(腕立て伏臥腕屈伸)。
<かまえ>両手の間隔を胸幅よりも狭くして、腕立て伏せの姿勢をとる。
<動作>普通のプッシュ・アップと同様な要領で両腕を屈し、胸が軽く両手の甲に触れたなら、腕を伸ばしてからだを元の体勢に押し上げ戻す。
からだを上げ戻すときは、肘を完全に伸ばすように留意する。
 なお、腕力が弱くて運動を行うのが困難な場合は、ベンチや机など、適当な高さの台の上に両手を付き、負荷を軽減して運動を行うようにするとよい。

◎リバース・ディップ
 後ろ手に両手を付いて行う腕屈伸(ディップ)運動。(写真参照)
<かまえ>ベンチ(または適当な高さの台)を背にしてからだを位置させ両腕を後ろへまわし、両手を台の手前フチに後ろ手に付く。
なお、この場合、両脚は前方に伸ばし、体重が十分に腕に掛るようにする。
<動作>腕を屈してからだを床の方へおろし、十分にからだを沈めたら腕にを伸ばして元の姿勢に戻す。
外側頭に効かすためには、運動中にあまり両肘を後方内側へしぼらないようにする。
内側へしぼると長頭に与える効果が増大する。
リバース・ディップ

リバース・ディップ

◎リバース・グリップ・ディップ(パームズ・アウト・ディップ)
 掌を外側へ向けて行うパラレルバー・ディップ。(写真参照)
<かまえ>普通のパラレルバー・ディップの場合とは反対に、両手の掌が外に向くように内側から手を掛けてバーを握る。
<動作>体を両腕で支えた状態で、普通のパラレルバー・ディップと同じような要領で肘を屈伸し、体を上下させる。
腕を伸ばすときは、肘を完全に伸ばすように留意する。
リバース・グリップ・ディップ

リバース・グリップ・ディップ

②三角筋の前の部分の発達について
 この部分の発達を促すにはフロント・レイズ(フォワード・レイズ)とフロント・プレスに類する運動が有効と考えられます。

◎フロント・レイズ
くかまえ>立った姿勢でバーベル(またはダンベル)をオーバー・グリップで持ち、大腿部の前に構える。
左右のグリップの間隔は、三角筋の前の部分に効かすためには肩幅よりも狭くするほうがよい。
<動作>腕を伸ばしたまま、または少しまげた状態で、バーベル(またはダンベル)を前から上方へあげる。

◎パラレル・グリップ・ダンベル・フロント・レイズ
くかまえ>両手に持った2個のダンベルをタテに合わせ、大腿部の前に構える。(写真参照)
<動作>前述のフロント・レイズと同じような要領で、2個のダンベルをタテに合わせたまま、前から上方へあげる。
パラレル・グリップ・ダンベル・フロント・レイズ

パラレル・グリップ・ダンベル・フロント・レイズ

◎両肘を内側へ寄せるようにして行うナロウ・グリップ・フロント・プレス(ナロヴ・グリップ・フロント・プレス・ウイズ・アームズ・パラレル)
<かまえ>バーベルを1~2こぶしのグリップ間隔にオーバー・グリップで持ち、左右の上腕が胸の前で並行をなすように留意して、頸の前で構える。
<動作>左右の上腕が常に並行を保つように、両肘の間隔を狭めた状態でフロント・プレスを行う。余裕の感じられる重量を用いて、ていねいな動作で行うようにする。


③前腕の屈筋群のための運動
 この部分の発達を促すには手首を掌側前腕部の方向へ屈曲する運動が有効と考えられます。
では、そのための運動を2つほど紹介します。

◎ストレート・アーム・リスト・カール(スティッフ・アーム・リスト・カール)
 両腕を伸ばした状態で行うリスト・カール。
<運動法>バーベルをアンダー・グリップで持ち、中腰、またはベンチに腰掛けた姿勢で、手首を膝に固定して、手首だけの屈曲運動を行う。

◎スタンディング・バーベル・リストカール
<かまえ>バーベルをオーバー・グリップで持ち、立った姿勢で、大腿部の前にぶらさげる。
この場合、上体を少し前傾させるほうが次に示す動作がやり易くなる。
<動作>両腕を伸ばしたままの状態で手首だけを手前へ屈曲して、バーベルを内側へ巻き上げるようにする。

◎スタンディング・ダンベル・リストカール
<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち、立った姿勢で両腕を下へ伸ばし、左右のダンベルをそれぞれの体側(大腿部の横外)にぶらさげる。
この場合、掌が内側へ向くようにする。
<動作>腕を伸ばしたまま、手首だけを内側へ屈曲して、それぞれのダンベルを内側へ巻きあげる。

◎レバレッジバー・バック・レイズ
<かまえ>立った姿勢で、レバレッジバー(ダンベル・シャフトの片方だけにプレートを取り着けた形状の器具)のプレートが付いている方を下にして握り、腕を伸ばして体側に構える。(写真参照)
<動作>腕を伸ばしたまま、手首だけを動かして、バーの先端を後方で上げ下げする。
レバレッジバー・バック・レイズ

レバレッジバー・バック・レイズ

④マルティ・パウンデッジ・システム
 使用重量を運動の途中で軽減しながら反復を続ける運動法のことです。
たとえば、ベンチ・プレスで、はじめにごく低回数しかできない重量をセットして運動を行い、反復が困難になったら、2人のパートナーに左右のプレートを次々と減らしてもらいながら重量が少なくなるまで動作を繰り返えすようにします。
 なお、同様な理論に基いた運動法としてフォースド・レプス・プリンシプルという方法がありますが、こちらの方は、使用重量を減らしてゆく代わりに、パートナーの直接的な助力(シャフトの中央を持って手助けしてもらうといったこと)によって、自力ではとうてい反復不可能と思われる回数を継続して繰り返しながら運動を行うようにします。

⑤ホリゾンタル・プレスについて
 フロント・プレスの変形種目の1つで、やり方は次のようです。
<運動法>立った姿勢で、バーベルを肩の位置から前、上方ほぼ45度の方向へプレスする。
古い話ではあるが、東京オリンピック女子砲丸投の勝者タマナ・プレスは、この方法で75kgのバーベルを軽るがると十数回反復したといわれる。
ホリゾンタルという言葉の意からすれば、前方へ水平にプレスするということになるが、通常的には上記のように行う。
 なお、水平にバーベルを突き出す場合はアーム・ランジという名称が用いられることもある。
<効果>三角筋、僧帽筋、その他上背の諸筋、前鋸筋にも有効。

⑥日本で一番最初のミスター日本は?
 JBBA主催のミスター日本コンテストにおける初代チャンピオンは、1956年度の勝者である中央路和彦氏です。
しかし、それよりも4年前の1952年に窪田登氏は、日本重量挙協会福島支部と福島県平市の主催によるボディ・コンテストにおいて、我国初のミスター日本のタイトルを得獲しています。

胸囲をあと10センチふやしたい


 ボディビルを始めて6ヵ月ほどたちます。仕事の内容が高熱作業の上、残業が多いのでなかなか思うように練習ができず、週に2回トレーニングするのがやっとという状態です。
 現在は身長170cmで体重が71kg、胸囲が約1mといったところです。しかし、身長からいって胸囲は110cmくらいは欲しいと思っています。
胸の運動としてはベンチ・プレスが効果的だということはわかっていますが、それを行うための設備と場所がありません。
それで現在はディップスを行なっていますが、最近ではほとんど胸囲がふえていません。そこでお尋ねします。
①現在、ディップスを空身で15回×4セット行なっています。それを5~10kgのおもりを腰につけて行うようにすれば、もっと効果があがると思うのですが、いかがでしょうか。
②ディップスとベンチ・プレスとでは胸の運動として効果の面で、どのくらいの差があるでしょうか。
③最近、ブル・ワーカーを購入しました。ブル・ワーカーの運動にもラタラル・レイズの変形のような大胸筋の運動がありますが、それとディップスを組合わせて行うのはどうでしょうか。

 なお、参考までに記しておきますが現在、ディップスの他に次の運動を行なっています。
(旭川市 熊倉雅之 26歳)
記事画像5

 仕事の関係で、思うようにトレーニングができないそうですが、やり方次第では、週に2回のトレーニングでも結構効果があります。
くじけることなく、しぶとく続けてください。

①おもりをつけたディップスについて
 筋の肥大を目的とするという意味でのボディビルは、漸増的過負荷の原則に基づいた運動であるといえます。
したがって、ディップスの場合でも、大胸筋の肥大を目的とするならば、筋力が向上するにつれて運動負荷も当然それに見合ったように増加させる必要があります。
 あなたの場合、1セットの回数が15回ということでもあるので、重量を負荷して、もっと少回数で運動を行い、大胸筋に強い刺激を与えるようにするのも大変よいと思います。
 ただしその場合、重量のつけ方によっては上体が起きすぎてしまうこともあるので、その点に注意してください。
上体が立ちすぎると大胸筋に効きにくくなることがあります。

②ディップスとベンチ・プレスの差
 同じ大胸筋の運動種目とはいっても、ディップスとベンチ・プレスとでは、ある意味では異質な運動ともいえるので、この2つの運動の効果を単純に比較することできません。
 一般的な考え方にもとづいていえば、大胸筋の運動としてはベンチ・プレスの方が効果の面ですぐれているであろうということはいえます。

③ブル・ワーカーとの組合せについて
 体力的な余裕があれば組合わせて行うのもよいことです。
 ブル・ワーカーによる大胸筋の運動は、その運動の様式がたんにアイソメトリックスによるというだけでなく、大胸筋そのものに与える刺激の方向もディップスの場合とは違うので、それなりの効果を期待することができるといえます。
 したがって、ディップスだけを行う場合とは、また異なった効果を得ることができると思います。

アンバランスの腹直筋を直したい


 ボディビルを始めてから2年ほどになります。発達も比較的に順調で、いくらかビルダーらしい体形になってきました。
 ところで腹筋に関する質問があります。私の腹直筋は、どういうわけか上から2段目の発達が左右不均等です。
 右側は筋肉の発達もよく、くぼみの部分も比較的はっきりしているんですが左側は右側に比較して発達も悪く、くぼみもあまりはっきりしません。
 このような左右アンバランスの腹直筋の発達ぐあいを是正する方法はあるでしょうか。もしあればご指導ください。(中山実 会社員 23歳)

 腹直筋は白線と腱画によってタテ、ヨコにこまかく区分されていますが、個々の筋の形と大きさが必ずしも左右均等であるとはいえません。
 左右の形がきちんと整いバランスよく発達している人もたくさんいますがそうでない人もけっこうおります。
 そして、外観的にいって、腹直筋の左右が不均等に見える場合には、傾向として次の2通りのタイプがあるといえます。
①筋そのものの形は左右対称であるが筋の発達具合が左右均等でない。
②筋そのものの形がすでに左右対称でない。
 結論的にいって、①のタイプは矯正可能といえますが、②のタイプは、その原因が先天的なものなので、まず矯正することは不可能であると考えられます。
 あなたの場合、手紙の文面ではどちらのタイプであるかはっきり判別できません。
もしも、②のタイプであるとすれば、今後、腹直筋の形が左右対称をなしていないことについて、いたずらにくよくよ悩むことなく、もっと大らかな気持でトレーニングするようにしてください。
世界のトップ・ビルダーの中にも腹直筋が左右対称でない人はいくらでもいることですから、気にしないで、個々の筋の隆起と、カットをよくすることを心がけてトレーニングを行うようしてください。
 それでは、①のタイプの矯正方法について述べるとしましょう。
 あなたの場合、右側よりも左側の発達が弱いということなので、そのような場合に当てはめて述べることにします。

◎シット・アップ
 シット・アップは、基本的には、上体を正しく正面へ向けたフォームで動作を行う運動です。
しかし、腹直筋の左右不均等な発達を矯正するためには、あえて、上体を左右いずれかの方向へねじったままの体勢で運動を行う必要があります。
つまり、発達の弱いと思われる側がいくぶん上方に向くように上体をねじったフォームで運動を行うようにすると効果的です。
くかまえ>腹筋台または床に仰臥し、上体を右へ少しねじる。ねじりすぎると効果が減ずる場合があるので留意する。
<動作>上体をねじったままのフォームでシット・アップの動作を行う。
上体をのばし、腹直筋をできるだけ伸展させた状態から体を起こすようにする。

◎レッグ・レイズ
<かまえ>普通のレッグ・レイズと同じ要領で床、または腹筋台に仰臥する。
<動作>膝をあまりまげないように留意して、両脚を上へあげる。あげたなら腰を少し右へひねり、次いで、腰をひねったままの状態で両脚を下へおろす。

 (回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生)
月刊ボディビルディング1979年9月号

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