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なんでもQ&Aお答えします 1981年7月号

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月刊ボディビルディング1981年7月号
掲載日:2020.06.05

ダンベル・カールのバリエーションと運動のやり方について

Q ダンベルを用いて行うカールのやり方にも、両手に持って行う方法、片手のみに持って行う方法等、いろいろあるようですが、運動種目としての種類ではなく、運動のやり方のバリエーションについてお教えください。 (東京都 吉田清隆 25歳)
A ダンベル・カールには、大きく分けて、ダンベルを両手に持って行うやり方と、片手のみにダンベルを持って行う方法があります。では、はじめに、両手にダンベルを持って行う方法から説明します。

◎シマルティニアスによる方法

 この方法は最もオーソドックスな運動のやり方で、両手に持ったダンベルを、左右、同時にカールする方法です。普通にダンベル・カールという場合は、だいたいこのやり方によるカールをいいます。シマルティニアスとは、同時にという意味です。

◎オールターニットによる方法

 両手に持ったダンベルを、左右交互にカールする方法。オールターニットとは交互のという意味。 [写真参照]
[オールターニット・ダンベル・カール]

[オールターニット・ダンベル・カール]

 次に、1つのダンベルを用いて行うやり方について説明します。

◎ワン・ハンドによる方法

 これは片手のみにダンベルを持って行う方法。しかし、片手のみにダンベルを持って行う場合でも、ニー・カールのように、もともと片手ずつ行うような運動には、改めてこの呼称を付することはない。

 また、コンセントレーション・カール・オン・インクライン・ベンチのように、片手ずつ行うことが一般化されているような運動では、ワン・ハンドの呼称が省略されることが多い。

◎ワン・ハンド・アシステッドによる方法

 片手のみにダンベルを持ち、空いている方の手を、ダンベルを持った方の手首の下に添えて補助して行う方法。ただし、この方法は、あくまでもダンベルを持った方の腕が運動の主体なのであるから、下の手の補助は、それを必要とする状態のときだけにとどめるようにする。ワン・ハンドによるいろいろな種類の運動を、この方法で行なってみるのもおもしろい。 [写真参照]
[ワン・ハンド・アシステッド・ダンベル・カール]

[ワン・ハンド・アシステッド・ダンベル・カール]

◎ツー・ハンデッドによる方法

 1個のダンベルを両手で持って行う方法。しかし、ふつう両手で持つ場合はバーベルを用いるのが普通で、ダンベルを持つ必要はあまりないので、この方法が活かされる運動は限られてくる。

 つまり、ダンベルを垂直にして、上方のプレートを、下から両手の手のひらで支えるようにして行うカール(ツー・ハンデッド・ダンベル・カール)くらいのものである。

 補足ながら、ツー・ハンデッド・ダンベル・カールは、上腕二頭筋の起始に近い部分の発達を促すのに有効です。ただし、そのような効果を強く期待する場合には、ダンベルを捧げるような感じで、口または鼻のあたりまであげるのがよい。

身長168cm、体重50kgのからだをなんとか人並みの体格にしたいが

Q ぼくは16歳の高校1年生ですが、からだつきがとても貧弱です。身長は168cmと普通ですが、体重は50kgしかありません。みんなに女の子みたいだとバカにされても、いつも笑ってごまかしています。しかし心の中は死んでしまいたいほどつらいのです。

 そのようなわけで、なんとか人にバカにされないくらいのからだになりたいと、いつも思っています。コツコツとトレーニングをしていけば、ぼくのような貧弱なからだつきのものでも、人並みの体格になれるでしょうか。

 なお、現在はトレーニング器具らしい器具は持っていません。あるのはいとこからもらった5kgのダンベルが1対あるだけです。今のところ器具を買える余裕がないので、それで出来るトレーニング法を教えていただきたいと思います。

 欲ばるようですが、できることならば、男らしい逆三角形のからだになる方法をお願いします。 (K・H)
A いきなり逆三角形のからだになるのは難しいことですが、あなたのような人でも、コツコツとトレーニングを続けていけば、やがては男らしい人並み以上の体格の持ち主になれます。

 ところで、あなたは5kgのダンベル1対しか器具がないとのことですが、そのような事情であれば、ダンベルを使う運動と、自分の体重を利用する運動とをとりまぜて行うようにするのがよいと思います。というのは、鍛練する部位によっては、5kgのダンベルだけでは運動の負荷が不足する場合があるからです。

 では、まずいくつかの運動法を紹介し、そのあとでトレーニング・スケジュール例を2つほど記しておきます。

◎シーテッド・レッグ・レイズ

<かまえ>床に両脚を伸ばして座り、上体を少しうしろへ倒し、両手をうしろ手に付いてからだを支える。 [写真参照]
[シーテッド・レッグ・レイズ]

[シーテッド・レッグ・レイズ]

<動作>両脚を伸ばしたまま、あるいはいくぶん膝をまげた状態で、両足をできるだけ高く上へあげる。

<効果>腹直筋。

◎プッシュ・アップ

 腕立伏臥腕屈伸運動。いわゆる腕立て伏せ運動のこと。胸および腕の筋力の弱い人の場合は、負荷を軽減するために、膝を床についた状態で運動を行うようにするとよい。

<効果>大胸筋。

◎ベント・オーバー・ローイング

<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち、上体を床面と平行になるくらいまで前倒する。

<動作>上体をできるだけ起こさないように留意して、両腕を下へ伸ばした状態から、両手に持ったダンベルを両ワキ腹のあたりまで引きあげる。

<効果>広背筋。

◎オールターニット・プレス

<かまえ>立った姿勢で、両手に持ったダンベルを肩の高さに保ってかまえる。

<動作>ダンベルを左右交互に上方に差し上げる。

<効果>三角筋。

◎オールターニット・カール

<かまえ>立った姿勢で、ダンベルを両手に持って、もものあたりにぶら下げてかまえる。 [写真参照]
<動作>左右交互にカールの動作を行う。カールとは肘を支点にして前腕を屈曲させる種類の運動をいう。

<効果>上腕二頭筋。

◎ヒンズー・スクワット

<かまえ>両足の間隔を肩幅くらいに開いて立つ。 [写真参照]
[ヒンズー・スクワット]

[ヒンズー・スクワット]

<動作>両脚を曲げてしゃがみ、十分にしゃがんだら立ちあがる。しゃがんだときに踵が浮いてしまうようなら、古雑誌などを頭の下に敷くようにするとよい。

<効果>大腿筋、大臀筋。

 さし当っては、以上の6種類の運動で十分だと思います。では次に、それらの運動種目によるスケジュール例を紹介します。

<トレーニング・スケジュール例1>

 これは第1段階のスケジュール例で1日~2日おき、週3回実施。各種目とも、正確に行える回数を1セットずつ実施する。

①レッグ・レイズ
②プッシュ・アップ
③ベント・オーバー・ローイング
④オールターニット・プレス
⑤オールターニット・カール
⑥ヒンズー・スクワット

<トレーニング・スケジュール例2>

 第2段階のスケジュールで、やはり1日~2日おき週3日実施する。運動の順序はスケジュール例1と同じで、⑥のヒンズー・スクワットのみ正確に行える回数を1セット、他の種目は2セットずつ実施する。

採用種目を減らさずに、体力的負担を軽減したいが

Q 私は現在、昼間働き、夜は学校へ行く生活をしています。そのようなわけで、帰宅するのは午後10時近くになり、トレーニングする時間は10時~11時ごろになります。ボディビルが性に合っているとみえて、深夜のトレーニングも精神的にはさほど苦になりません。

 しかし、正直なところは、ときどき翌日に疲れが残り、肉体的には多少負担を感じています。

 現在は基礎的な6種目の運動を行なっていますが、上述のような理由で、これを4種目ぐらいに減らしてみようかとも考えています。しかし、現在採用している種目は、どの種目にしてもからだ全体をバランスよく鍛えていくには欠くことのできない種目と思われるので、いざとなると減らすことができません。そこでお伺いします。

 現在採用している種目を減らすことなく、体力的な負担を軽減するにはどうしたらよいでしょうか。 (大阪府松原市 倉本敏明 21歳)

◇現在のトレーニング・スケジュール
(隔日的、週3日)
記事画像5
◇現在の体位
記事画像6
A 採用種目を減らさずに、体力的な負担を軽減するには、2通りの方法があります。1つはセット数を少なくして行う方法であり、もう1つは、分割法を採用して行う方法です。

 このうち、セット数を少なくして行う方法に関しては別に説明する必要もないと思われますので、分割法についてのみ記述することにします。

◇分割法について

 分割法とは、採用種目を部位的に分割して2つ~3つのコースを作りそれぞれのコースを日を違えて行うトレーニング法のことです。そしてこの方法は、本来、トレーニングの密度を高めるために採用する方法であるといえます。

 しかし、あなたのような場合には、トレーニングにおける体力的な負担を軽減させるために採用してみてもよいでしょう。

 では、分割法にもとづいて、現在あなたが採用しておられる6種目の運動を2つのコースに分割してトレーニング・スケジュールを作ってみましょう。

◇分割法によるトレーニング・スケジュール

記事画像7

レッグ・プレスとフロアー・プーリー・ローの正しい運動法

Q 私は現在、あるアスレティック・クラブでトレーニングしています。会員の大部分の人が健康管理としてのウェイト・トレーニングを行なっている中で、私は同好の士数人とボディビルを行なっています。

 クラブの設備は申し分なく、たいていの器具はそろっています。このクラブには、健康法としてのウェイト・トレーニングを指導する人はいても、ボディビルを詳しく知っているトレーナーはいません。そのようなわけで、仲間の者たちとも相談して、トレーニング上の問題についてお伺いする次第です。よろしく質問にお答えください。

<1>大腿部を鍛えるためにレッグ・プレス・マシーンを使ってのレッグ・プレスを行なっています。しかし大臀筋ともものつけ根には効いているようですが、大腿四頭筋の前の部分にはほとんど効いた感じがしません。これは、レッグ・プレスが、効果の面でもともとそのような効き方をする運動だからでしょうか。

 なお、私たちが使用しているレッグ・プレス・マシーンは、仰向けの姿勢で、プレートを垂直に上方へ押し上げる形式のものです。

<2>広背筋の運動としてフロア・プーリー・ロー(ホリゾンタル・プル)を行なっています。しかし、広背筋よりは僧帽筋に強く効いてしまいます。これは、おそらく運動のフォームに原因があると思いますが、どのような点に留意して運動を行なったらよいでしょうか。 (東京都 ボディビル愛好者 26歳)
A あなたのトレーニングのやり方とか経験、現在の体のサイズ、筋力などがわかれば、もっと適切なアドバイスが出来ると思いますが、ここでは、ごく一般的な傾向について説明していきます。

<1>レッグ・プレスで大腿四頭筋の前の部分に効かすには

 大腿四頭筋の前の部分にあまり効いた感じがしないのは、レッグ・プレスが効果がないというのではなく、あなたの運動のやり方に原因があると考えられます。といっても、あなたが運動を行なっているところを実際に拝見したわけではないので、原因をはっきり指摘することは差しひかえます。しかし、一応、参考までにレッグ・プレスにおける運動と効果の関係について述べておきます。

 ウェイトを垂直に押しあげる形式のマシーンを使って行うレッグ・プレス運動は、仰向けに寝たからだの位置によって下半身に与える効果が異なってきます。

 つまり、からだを押し上げ板の下に深く入れた場合には、傾向として、もものつけ根と大臀筋に負荷が強くかかり、その反対に浅く入れた場合は、膝のあたりから大腿四頭筋の前の部分に強く効くようになります。

 したがって、レッグ・プレスを行う際にはそのことを考慮して、発達を意図する部分に負荷が十分にかかるように、からだの位置を定めなければなりません。

 なお、大腿四頭筋の前の部分に効かすには、運動中にあまり両膝を開かずにできるだけ両ももを並行にした状態で動作を行うようにするのが効果的です。また、押し上げ板は、ツマ先ではなく、土ふまずのあたりで支えるようにするのがコツです。

<2>フロアー・プーリー・ローで広背筋に効かすには

 フロアー・プーリー・ローで、広背筋よりも僧帽筋に強く効いてしまうのは、プーリーを引くときに、おそらく㋑図のように後ろへ傾いているせいだと考えられます。

 広背筋に十分に効かすには、㋺図か、または㋩図のようなフォームで運動を行うのがよい方法です。ただし、㋺㋩いずれの場合も、ウェイトを引きつけるときに、両肩を首の方ヘすくめると、広背筋に与える効果が半減します。[図参照]
記事画像8

大胸筋の内側の発達を促すには

Q 軽いトレーニングは2年ほど前から行なっていましたが、本格的にボディビルを始めたのは1ヵ月前です。そして、現在は下記のスケジュールでトレーニングしています。しかし、その結果、どうも大胸筋の発達が思わしくありません。

 そこで、お尋ねします。とくに大胸筋の内側の発達を促すにはどのような運動種目を行えばよいでしょうか。 (東京都 K・M 高校生 15歳)


<トレーニング・スケジュール>
―隔日的、週3日―
記事画像9
<現在の体位>

<現在の体位>

A はっきりいって、あなたのからだは未だ筋肉の細部の発達にこだわる段階に至っていないと思います。今の段階ではあまり細かいことにはこだわらずに、もっと基礎的な発達に主眼を置いてトレーニングされるのがよいと思います。

 つまり、ここ当分の間は、ベンチ・プレスのスタンダードな方法を主にして、大胸筋を鍛えていくのがよいのではないかと思います。そして、大胸筋の基礎的な発達がある程度得られたなら、その上で、大胸筋の細部における補強運動を行うようにされたらよいと思います。

 以上のような考えから、あなたがいますぐに大胸筋の内側の運動を採用されることについてはあまり賛成できません。しかし、せっかく質問されたことでもありますので一応、中級者向きと思われるものを3種目紹介します。

◎ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス

<運動法>ナロウ・グリップで行うべンチ・プレスのことで、左右のグリップの間隔は肩幅よりも狭くする。なお、動作上留意すべきことは、バーベルを差し上げたときに肘を伸ばし、両腕をしめるようにして、左右の大胸筋を意識的に内側へ寄せるようにすることである。

◎ショルダー・ブリッジ・プレーツ・ピンチング [写真参照]

[ショルダー・ブリッジ・プレーツピンチング]

[ショルダー・ブリッジ・プレーツピンチング]

<かまえ>平らな面を外側にして合わせた2枚の同じ大きさのプレートをフチに指をかけないようにして両手で挟み持ち、床またはベンチの上に仰臥してショルダー・ブリッジの姿勢をとる。

<動作>2枚のプレートがずり落ちないように、両手でしっかりと挟んだまま、両腕を上方へ上げ伸ばす。

 かまえのところでも述べたように、あくまでもプレートのフチに手のひら、または指をかけないように留意して運動を行う。プレートのフチに手のひら、および指がかかると、両手を伸ばし合わせる力が減じられるので、運動としての効果もなくなってしまう。

◎バー・ディップス

 総じてバー・ディップスは大胸筋の内側に効く。しかし、内側に強く効かすには、どちらかといえば、左右のバーの間隔が広いよりは、狭い間隔の方がよいようである。

 運動上留意することは、体をもちあげたときに、両肩がまるくなるまで、完全に体をあげきるようにすることである。
[回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生]
月刊ボディビルディング1981年7月号

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