ニュース 1981年6月号
■JPA国際部ニュース……国際部長・吉田進
【1】カズマイヤー、6年ぶりにスーパー・ヘビー級の世界記録を更新
まずスクワット第1試技で385kgを軽く挙げ、第2試技で420kgを成功させた彼は、第3試技で世界記録の442.5kgに挑戦するつもりであったらしいが、大臀筋に痛みを訴えてパス。つづくベンチ・プレスでは、第1試技270kg、第2試技290kgの世界新、そして第3試技では夢の300gを成功させてしまったのである。まさに恐るべしである。
最後のデッド・リフトでは、第1試技337.5gを、おもちゃのように軽く引き続いて第2試技で380kgを成功。この時点でトータル1100gの世界新樹立となったのである。さらに彼は、第3試技で、これも6年間破られていないラインホルトの400gを破るべく402.5gに挑戦した。結局は非常に長い努力のすえに、なんとかこの402.5gを引いたのであるが、途中でバーベルが止まったため、白ランプ1、赤ランプ2で、惜しくも失敗であった。
このように、彼の記録はまだまだ伸びそうなので、今年インドで行なわれる世界選手権での彼の活躍が大きな興味の的であると言えよう。
【2】因幡選手とカズマイヤーとでは、果してどちらが強いか
このように、体重の違う選手の記録を公平に較べたいとき、IPFでは1979年より「シュワルツ・フォーミュラ」という数表を用いて、各大会などでベスト・リフターを選出するのにつかっている。この数表は、アメリカ・パワーリフティング協会の役員であるシュワルツ氏により、1969年以来改訂されつづけてきたものであり、1979年に正式採用になったものである。
その内容は、ここ10年間の世界トップ・リフターの体重と記録を統計的に整理し、そこから得られるグラフを数式をもって代表させ、それをコンピューターで係数としてあらわしたものである。この係数表を全部掲載すると、それだけで数ページにもなってしまうので、ここでは男子の各クラスのリミットのところだけを抜き出して紹介することにしよう。
52kg......0.9515
56kg......0.8748
60kg......0.8128
67.5kg....0.7258
75kg......0.6645
82.5kg....0.6193
90kg......0.5853
100kg.....0.5540
110kg.....0.5365
125kg.....0.5210(現在、表示はここまで)
そこで、因幡選手の体重が52.0kgで係数が0.9515、カズマイヤー選手の体重は150.0kgだが、表示が125.0kgまでしかないため、かりに0.500として計算すると、
因幡英昭選手のトータル 567.5kg×0.9515=540kg
カズマイヤーのトータル 1100kg×05000=550kg
この540kgと550gがフォミュラ・トータル(FT)と呼ばれるもので、この記録をもって両者を比較するのである。ここではカズマイヤー選手の正確な係数がわからないので推定になるが、どうやらわずかにカズマイヤー選手の方が強いということになりそうである。
なお、JPAでも公式競技では1979年より、このシュワルツ・フォーミュラを使っている。また女子用としては、マローン・フォーミュラがIPFにより認定されており、JPAも今年度から採用している。
【3】ワールド・ゲーム、アジア・オセアニア大陸
代表として日本から因幡、伊藤
パワーリフティングは、7月28、29の両日、アメリカ大陸対ヨーロッパ大陸対アジア・オセアニア大陸の3大陸対抗の形で行われる。日本からは52kg級・因幡英昭選手と60g級・伊藤長吉選手の2人が、アジア・オセアニア大陸代表として、3月31日付けで、IPF副会長であるオーストラリアのフランク・ランプ氏によって選出された。両選手の健闘を期待したい。
【4】全米女子パワーリフティング選手権大会成績表
[註]4kg級3位のT・ホイットはベンチ・プレスの特別試技で67.5kgの世界新、56kg級2位のD・フランツはデッドリフトの特別試技で182.5gの世界新をそれぞれ樹立。
【5】ハワイ国際招待パワーリフティング大会
世界各国から有力選手を招待し、世界新記録の樹立される様を見てもらおうという「ハワイ国際招待パワーリフティング大会も今年で4回目を迎えた。
1987年の第1回大会には、日本から因幡、富永の両選手が招待され、その活躍ぶりは地元の日系人の大隅索を受けていた。しかし、今年は財政的困難からか、招待選手はすべてアメリカ国内選手にかぎってしまったようである。しかも、ショーとしての面白さだけを考えたのか、軽いクラスの選手は招待しなかったとのことである。
主催者は、ガス・レズウィッシュというシェラトン・ホテル・ワイキキのホテルマンで、彼は、スーパー・ヘビー級、級選手として、毎年、全米パワーリフティング選手権大会で上位入賞しているベテランであり、テレビでも放映されたワールド・ストロングマンにも出演したことがある。
この、アメリカの重量級選手のみによって戦われた「ハワイ国際招待大会」では、結局、2つの国際新記録しか出なかったが、重量級の強いアメリカの事。これらの記録は日本人である我々には、おどろくべきものである。来年はまた、世界各国から選手を集めて、大きな大会になることを希望しよう。
当大会の成績は次のとおりである。なお、☆印は世界新記録を示す。
■男子パワーリフティング世界記録表
■女子パワーリフティング世界記録表
[註](ニ)はニュージランド、(フ)はフィンランド、(オ)はオーストラリアを示す。
■第7回沖縄県パワーリフティング選手権大会
(沖縄県パワーリフティング協会理事長・仲村昌英)
■異色のパワーリフター、照屋選手と宮城選手
〔異色のパワーリフター2人。左が照屋唯秀氏、右が宮城政文氏〕
〔第1回埼玉県パワーリフティング選手権大会の優勝者と役員〕
■第1回春季埼玉県パワーリフティング選手権
〔註〕◎印は日本新記録、〇印は埼玉県新記録
■第11回愛媛県パワーリフティング選手権大会
〔註〕※印はオープン参加を示す。中尾選手のスクワットは日本新記録。なお、以上のほかに100kg級に大西選手、110kg級に杉本選手が出場したが、大西選手はベンチ・プレスを失敗、杉本選手はデッド・リフトを棄権して失格。
■第11回神奈川県パワーリフティング選手権成績
■第10回全日本パワーリフティング選手権大会
56年5月3日 於・府中市立総合体育館
〔註〕◎印は日本新記録を示す。
■1981年度近畿・大阪府パワーリフティング選手権大会
〔註〕最初の順位が近畿順位、次が大阪府順位。また◎印は日本新記録を示す。
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