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★新 ボディビル講座
ボディビルディングの理論と実際〈4〉
第2章トレーニングの解剖生理

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月刊ボディビルディング1981年6月号
掲載日:2020.06.01
名城大学助教授 鈴木正之

7.身体運動における筋群の動き

 身体運動における筋運動の場合、通常、1つの筋のみで運動を起こさせることはない。運動を遂行させるために主として働く主働筋と、それに協力的に働く協力筋があり、またその逆に、運動を元の状態に戻すために働く拮抗的作用をもつ拮抗筋がある。
 したがって、ある1つの身体運動が行なわれる場合には、主働する筋のまわりにある筋群は、多小なりとも協力的に、あるいは拮抗的に働くか、または付随的に運動していることになる。
 これら協力筋や拮抗筋が、どのように働くかということは、最近、とくに筋電図の応用により、すべてのスポーツや身体運動について、それに関与する筋の状態が明らかになった。
 〔図11〕は、上肢筋群の付着状態を示す模型図で、これによっても、各筋が1~2個の関節をまたいで骨に付き拮抗作用、または協同作用ができるように合理的にできていることが分る。
 たとえば、広背筋などの浅背筋群は上腕を後方に引き、大胸筋などの浅胸筋群は、上腕を前方に引く(内転)ので、これは拮抗作用であるが、体操のつり輪のような十字懸垂の運動は、広背筋下部と小胸筋を含めた協同作用となる。
 この両者の関係は、肘関節運動においてさらに明らかになってくる。肘を伸ばす上腕伸筋群と、肘を屈する上腕屈筋群は拮抗作用をもち、かつ、上腕屈筋群のうち、上腕二頭筋と上腕筋は協同して肘を曲げるのに働く協同作用をもつ。
〔図11〕上肢筋系の全貌を示す模型図(藤田)

〔図11〕上肢筋系の全貌を示す模型図(藤田)

〔図12〕の下肢筋群においても、屈筋・伸筋の関係は上肢筋群と同じようなことがいえる。このように、身体運動における筋群は、相互に協力し合って1つの運動や複雑な運動を遂行しているのである。
[図12]下肢筋系の全貌を示す模型図

[図12]下肢筋系の全貌を示す模型図

8.筋の肥大

 筋トレーニングによって筋が肥大することは、日常の体験で誰でも知っている。では、生理学的に筋の肥大はどのようにして起こるのだろうか。
 筋の構成単位である筋線維は、0.02から0.1ミリという極めて細い筋線維が集合して構成されている。そして、筋が太くなるためには、筋線維が分裂して筋線維の数が増加するのではなく筋線維1本1本が、収縮という現象をくり返しているうちに、筋線維間にある結合組織が厚くなり、筋線維が太くなって筋が肥大するのである。
 よって、筋を肥大強化する手段として、筋トレーニングが行われるが、その他に、筋に化学反応を起こさせて、筋蛋白質の同化を促進させることも大切な要件である。
 筋線維の肥大や筋力増加のためには筋の中にあるアデノシン3燐やクレアチン隣酸、グリコーゲンなどの量を増加させることも関係するが、最も重要なのは、筋組織の大部分を占める筋蛋白質の増加である。
 筋蛋白質を増加させるためには、血液中のアミノ酸を筋蛋白質に同化させなければならない。この機構についてはまだ不明な点もあるが、筋組織は化学的消耗の過程をとるため、運動の結果生じる乳酸や炭酸ガスの代謝産物の存在が化学反応を起こさせ、筋蛋白質の同化促進活動に働いているものと考えられている。
 したがって、筋肥大および筋力増加のためには、代謝産物となる乳酸や炭酸ガスなどの多量蓄積のための運動と、筋蛋白質の素材である蛋白質を食物として多量に補えば、より合理的にトレーニング効果を高めることができる。ただ、摂取された蛋白質は、生命保持に必要な脳、肝臓、腎臓など、重要な器官の蛋白質代謝に先に費されるので、筋にまわるのはそのあとになる。したがって、筋肥大、筋力増加のためには筋蛋白質の素材になる蛋白質を充分摂取する必要があるが、いくら蛋白質を摂取しても、運動をしない場合は、筋蛋白質の同化に必要な代謝産物が生成されないので、せっかくの蛋白質も筋肥大や筋力増加に役立たないということになる。
 この同化促進活動のための筋力発揮指については、発揮される筋出力が大きいほど促進活動は著しく、また、筋運動中に筋が弛緩する状態をつくらず、常に緊張した動作、及び静的な運動ほど、筋肉代謝産物の蓄積、すなわち新しいエネルギーの欠乏状態と酸素の欠乏状態が作られるので、合理的に筋力トレーニングの効果を高めることができるのである。

9.筋運動の収縮エネルギー

 筋運動に直接関与するエネルギーはアデノシン3燐酸(ATP)が分解する際に放出されるエネルギーである。しかし、常に筋線維中に存在するATPの量はきわめて少なく、最大努力で運動した場合には数秒でなくなる。
 そのため、ATPがアデノシン2燐酸(ADP)になったものを再合成させてやる必要がある。これは、分解と同時に、クレアチン燐酸や食物より摂取したエネルギー源、グリコーゲンの働きにより再合成される。
 この再合成のために働いたクレアチンは燐酸が分解しているので、ATPとグリコーゲンの働きによって、再びクレアチン燐酸となり、再合成されて次のエネルギー放出に備える。
 グリコーゲンは分解すると乳酸になるが、複雑なクレブスのクエン酸回路(TCAサイクル)に入り、グリコーゲンは最終的には炭酸ガスと水に分解する過程をとる。そして、そのグリコーゲンは、酸素の力を借りて、約80%は再びグリコーゲンに再合成される。これらの分解と再合成の過程は、無酸素過程、または無気的過程といい、この過程における運動能力を無酸素的能力と呼んでいる。

<5>血液循環の解剖生理

 血液をからだの中で循環させる原動力は、心臓のポンプ作用である。このポンプ作用によって送り出されるのが血液である。血液は身体内の各組織や器官を[図14]のように循環し、酸素や栄養物質を運搬すると共に、不用となった炭酸ガスなどの代謝産物を運び去って、身体内部のバランス(恒常性)を保っている。
[図14]血液の循環経路

[図14]血液の循環経路

 とくに身体運動の立場からみて、血液と心臓は運動生理学的に重要な働きをしている。また、健康と体力という問題に密接な関係をもち、循環機能こそ現代の成人病をも含めた生命力を高める重要なテーマでもある。

<1>循環器

 循環器には心臓と血管があり、その働きの中心となる心臓は、身体の正中線より2/3に位置し、上部は左右の肺にはさまれ、下部は横隔膜に接している[図15]。大きさは“こぶし”大で、平均的重量は、男子で約280g、女子で約230gである。
[図15]心臓の位置と形

[図15]心臓の位置と形

 血管には大動脈、中小動脈、静脈、毛細血管などがあり、動脈は血管壁に弾力繊維を持ち、心臓の拡張期に弾力性を発揮し、心臓の補助ポンプの役目をはたし、血流を末梢に送る助けをする。静脈は弁膜を持ち、動脈より押し出されてきた血液を逆流させずに心臓に送り返す作用をしている。

<2>血液

 血液は、全身に分布している血管により、心臓のポンプ作用で押し出されて全身に運ばれる。血液の成分は次のようになっている。
記事画像5
 これらのうち、有形成分は凝固する性質をもっため、液体部分の血漿から分離させることができるが、循環系の中でたえず流動している血液は、有形成分と血漿とが分離することはない。
 全身の血液の量は4~5Lで、これは体重の1/10~1/13の割合である。その血液は、運搬作用としておもに次のような働きをする。
①栄養物質の運搬
②酸素・炭酸ガスの運搬
③ホルモンの運搬
④その他代謝産物の運搬

 また、運搬作用以外にも、身体を病気や外敵から保護したり、身体内部の水分や体温のバランスをとるため、次のような働きをする。
①白血球は、体内のバイ菌を食べる食菌作用や、病気に対する抗体作用を持ち、身体の防衛作用をする。
②腎臓や他の器官と協力し合って、組織の水分やイオン濃度の調節作用。
③血管と協力し合って体温の調節作用をする。
 以上の他、肺や腎臓の排泄機能(身体に不要なものを体外に出す)と相まって、身体内部のバランス(恒常性)を維持するために働いている。

<3>血圧

①血圧とは
 血圧とは、心臓が血液を血管の中に送り出すことによって上昇する大動脈の内圧(約120mmHg)と、末梢血管自体の内圧との圧差をいう。しかし、この圧差は一般的には測定できないので通常血圧と呼ばれているのは、血管の中を流れる血液の流圧をいう。この流圧は大動脈が最も高く、心臓より末梢に遠ざかるにしたがって、血管も細くなり、流圧るさがってくるので、当然、血圧も低くなってくる。静脈は心臓の地緩作用によって血流作用を行うものであるから、血圧はほとんどないといってもいい。
②最高血圧と最低血圧
 動脈では、心臓の拍動に伴なって、血圧の上昇と下降がみられる。この拍動による血圧は、心臓の収縮期に最も高い値を示すので、これを最高血圧、または収縮期血圧といい、逆に、心臓の拡張期には低くなるので、これを最低血圧、または拡張期血圧という。
 しかし実際には、この収縮期血圧と拡張期血圧を調べるものではなく、一般的には、心臓と同じ高さにあって、大動脈の血圧とほとんど等しいと考えられる上腕動脈を圧迫して測定した圧力を便宜的に血圧と呼れでいる。
 この測定方法には、最近、便利なデジタル型式のものが多く出まわっているが、著者の体験的な感じからいえば従来からよく使われている「リバロッチ型血圧計」が最も正確なように思われる。特にトレーニング・コーチなどをされ、健康相談にたずさわる方は、簡単な測定器に頼らず、リバロッチ型を使用されることをお勧めする。使用の方法も、説明書を読むだけで簡単に測定することができる。

<4>心臓の機能

①心臓の拍動と血流量
 心臓の拍動はポンプ作用に似ていて心臓の筋肉が収縮することにより、血液を動脈中に押し出し、逆に、弛緩することにより静脈から血液を受けて心臓の内腔を満す。これを拍動というが心房と心室は同時に収縮・弛緩はしない。この拍動には、先にも述べたように、収縮期と弛緩期があるわけで、これを心臓の周期という。
 この拍動によって心臓から押し出される血液の量を拍出量といい、1回の心臓の収縮による拍出量は、成人で60~80mlである。そこで、普通、1分間に拍出される血液量を計算してみると1回当りの拍出量を70ml、1分間の心拍数を70回とすれば、70ml×70回=4.900ml
すなわち、1分間に約5ℓの血液が拍出されていることになる。ところが、中等度の運動では毎分約10ℓ、特に激しい運動では毎分200にも及ぶ場合がある。
〔図13は筋肉の横断面とトレーニング効果を示す写真一左がトレーニング前、右がトレーニング後の写真。全く同じ位置においたカメラで写したものであるが、右の写真の方が、一本一本の線維が太くなっているのがよくわかる〕

〔図13は筋肉の横断面とトレーニング効果を示す写真一左がトレーニング前、右がトレーニング後の写真。全く同じ位置においたカメラで写したものであるが、右の写真の方が、一本一本の線維が太くなっているのがよくわかる〕

②心臓の自律性(拍動のおこり)
 心臓は身体内において自律神経の支配を受けているが、心臓自体だけで働くことの出来る特殊な自律性を持っている。そのため、神経の命令を受けなくても自動的に拍動することができるのである。
 その拍動のおこりは、洞結節(大動の脈のつけ根)に規則正しい興奮が1分間に約70回生じるためである。それが心臓の中央の心房壁を通って房室結節に達し、さらにそこから出る命令を刺激を伝えるヒス束によって、心室の心筋群に伝えられる。この興奮によって心筋が収縮するので、この自律性は生体内における機能としては大きな特徴となっている。

<5>心臓の拍動調節のしくみ

 心臓は、神経の命令を受けなくても自動的に収縮・弛緩するが、脳の神経中枢(延髄)から出て心臓に分布する2種の自律神経によって、二重支配を受けており、この二重支配のために収縮と弛緩の作用は拮抗的に働き、そのために拍動が調節されている。
 二重支配の1つは交感神経であってこれが興奮すると、拍動数が増し、心臓の活動力を高め、収縮力を増加させる。そのため、この交感神経を心臓促進神経ともいう。
 もう1つは、迷走神経であって、これが働くと拍動数を減少させ、心臓の収縮力を強める。そのため、迷走神経を心臓抑制神経とも呼んでいる。

②心臓反射
 心臓への種々な働きによって、拍動は変化し、反射的に調節されるしくみになっている。その反射性の調節要素には種々あるが、それらの中でも重要なものをあげると、次のような反射がある。
(イ)高位の中枢(大脳皮質間脳)の影響
 感性的な興奮が大脳皮質より間脳に作用し、間脳から延髄の心臓促進中枢に作用し、心臓の拍動を強く、早くさせる。
(口)頸動脈洞反射
 総頸動脈のうち、内・外頸動脈分岐部に頸動脈洞という圧受容器があり、頸動脈の血圧が高まると、洞神経により延髄に伝えられる。そして延髄にある迷走神経の抑制中枢が興奮し、心臓の活動を減少させる作用をする。
(ハ)大動脈反射
 大動脈弓には血圧が上昇したときに起こる頸動脈洞に似た知覚受容器があり、これが大動脈の血圧に反応し、大動脈神経によって心臓中枢に伝えられ、血圧がコントロールされる。
(ニ)頸動脈球反射
 頸動脈の分岐部には、頸動脈洞の他、血液中の化学成分、特に炭酸ガスに反応する頸動脈球と呼ばれる化学受容器があり、炭酸ガスの増加、酸素の欠乏、乳酸の変動に反応し、反射的に延髄の心臓促進中枢を興奮させて、心拍数を増加させる。
(ホ)大静脈反射(心房反射)
 大静脈の血圧が高まってくると、大静脈の基部や右心房の入口にある圧受容器が刺激され、その刺激は迷走神経を経て、心臓の抑制中枢に伝えられ、迷走神経の緊張が抑えられて、心臓拍動数が増加する。
(へ)その他
 呼吸運動、知覚刺激による反射、体温上昇、血圧上昇、アドレナリン注射など、種々の原因により心臓の拍動は左右される。

<6>スポーツ心臓

 永年にわたって鍛練を継続すると、心臓は次第に運動に適応するために、作業性肥大を起こして心筋は増強されてくる。このように、スポーツ運動のために生理的肥大を起こしたものをスポーツ心臓という。この傾向は、一般に持続性のある運動種目、すなわち、マラソン、長距離、スキー、ボート、自転車などの選手に多くみられる。
 スポーツ選手の心臓が肥大を起こすのは、持久的競技において心臓の送血量を多くして、運動中の酸素不足を最少限にしなければならないので、絶えず呼吸循環系を高度に働かせなければならないからである。これら競技では脈拍数が少なく、しかも拍出量が大きい心臓が要求されるので、運動遂行のため、心臓は適応現象として、その容量も収縮力も生理学的な作業性肥大として、大きく強化されてくるものと考えられる。

<7>トレーニングによる血管の変化

 激しいスポーツ運動による循環器の変化は、前項のスポーツ心臓だけではなく、その他にも種々の変化をもたらすが、中でも循環器の場合には、心臓より多量に送られてきた血流を、合理的に身体に供給し、エネルギーの源を組織において受け渡すためには、毛細血管の増加の必要がある。
 毛細血管の増加の必要性は、モルモット実験によれば、最大運動時の筋血流量は安静時のおよそ25倍に達し、収縮運動をする筋の酸素消費量は、安静時の100倍にも達するといわれる。そのため、トレーニングされた筋は、筋の機能を向上させたり、肥大させたりすると同時に、毛細血管の数も増加している。
月刊ボディビルディング1981年6月号

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