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★1980年度ミスター日本コンテストを目指しての……
私の食事法とトレーニング法

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月刊ボディビルディング1981年6月号
掲載日:2020.06.03
1979年度入夕一北信越1位 大江久教
生年月日昭和26年12月10日(29歳)

≪体位≫

身長 170cm
体重 普通時 78kg 減量時 73kg
胸囲 平常 110cm 最高120cm
上腕囲 右最高 40.2cm 左最高 41cm
腹囲 普通時 76cm 減量時 72cm
皮下脂肪 約5mm
大腿囲 右 63cm 左 62cm
首囲 42cm
手首囲 16.5cm
カーフ 40.5cm

≪パワーの記録≫

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≪トレーニング内容≫

 A・B・Cの3コースを週それぞれ2回ずつ実施する。つまり、1週6日制で、1回の所要時間は約1時間半。
≪トレーニング内容≫

≪トレーニング内容≫

≪食事内容≫

――普通時の食事内容――
<朝食>―7時ごろ
ごはん1杯、みそ汁1杯(卵2個入り)、プロティン・ドリンク(プロティン大さじ2杯と牛乳300cc)
く昼食>―12時ごろ
自家製の弁当、チーズ28g1個
<夕食>―19時半ごろ
ごはん1杯、みそ汁1杯(卵2個入り)、肉または魚1009、果物
<間食>―21時ごろ
プロティン・ドリンク(プロティン大さじ3杯、牛乳500cc)

――減量時の食事内容――
<朝食>―7時ごろ
みそ汁1杯(卵2個入り)、プロティン・ドリンク(プロティン大さじ3杯、牛乳500cc)、ジャーム・オイル
く昼食>―12時ごろ
自家製の弁当
<夕食>―19時半ごろ
みそ汁1杯(卵2個入り)、肉または魚200g
<間食>
プロティン・ドリンク(プロティン大さじ4杯、牛乳500cc)

大江選手の食事診断……野沢秀雄

 ミスター富山・ミスター北信越・ミスター日本海等の大きなコンテストで圧倒的な強さで優勝をとげている大江選手。ミスター日本にも何度か出場して、重厚で質の良い筋肉を見せてくれている。骨格にも恵まれ、肩幅の広さや脚の太さも充分である。
 じょうぶに生んでくれた両親に感謝すると同時に、幼少時から遊びや通学で鍛え、スポーツをおこなっていたことがプラスしている。その基盤があって、バーベルやダンベルのトレーニングを実行したので、短期間に目ざましい成果があがったのだろう。
 もちろん当の大江選手の長い努力とコーチをした周囲のみなさんの力によるところが大きい。パワーの実力も並々ならないものがある。

1. ふつう時の食事内容

 朝7時・昼12時・夕食7時半ごろ・間食夜9時と、1日4食のパターンになっている。
 感心することは昼食に弁当を持参していることだ。自宅では自分に合った食事を自由にできるが、外食となるとコントロールがむずかしい。なかなか理想的なレストランや食堂は見つからないもので、ビルダーのみなさんも苦労しているだろう。
 総カロリーは2100、たんぱく質124g(体重1kg当中1.6g)、脂肪88g、炭水化物190g(全体の47%)という構成になっている。
 アドバイスは次の通りである。

①たんぱく質量は1日当り約124gで体重当りに換算すると、やや不足している。朝食に、ハム1枚、チーズ1切れ、または納豆、プロティンを加えるとよい。さらに夕食にも、もう少しだけたんぱく質を加えると理想的なバランスになる。
②たんぱく質は体重1kg当り、1.8~2.0gになるようにすれば、筋肉の発達は促進される。1.5~1.6gなら現状維持のレベルと考えられる。したがって大江選手の場合はもう少しだけ補強すれば良いわけだ。
③脂肪のパーセントや炭水化物の摂取量はちょうど適度である。野菜や果物もほぼ良くとれている。
④「食事のとり方は個人個人でちがうので、計算で数字を出して多いとか少ないと論じても仕方がない」という意見がある。たしかに個人差があり、人はそれぞれに何かを食べて現状のバランスを保っているわけだ。けれども次のような理由で食事分析をすることにも大きな意味がある。
⑤食事法は個人の習慣によるところが大きく、自分は正しいと思っていて6、片よった食事法になっていることが多い。
⑥古代から現代まで、長年かかってつくりあげてきた食事の体系や、多くのスポーツマン、ボディビルダーたちがとっている食事法を科学的に解明して、なるべく妥当な平均値を把握し、これを基準にして、比較検討することは今後のレベルアップに連がる。
⑦以上から、やはり良い食事法や悪い食事法があることは理解されよう。ただ単なるカロリー計算だけで全部が解決するわけではない。体内に入ってからの変化、消化や吸収の問題、その人の体質。よくかむかどうか、食べるときの状況(楽しいか悲しいか、空腹か空腹でないか)などによって、栄養効果が変るのも事実である。一応の参考として食事分析を理解していただきたい。
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2. 減量時の食事内容

 コンテスト出場に際し、体重を78kgから73kgへ、腹囲76cmから72cmへとシェイプアップしている。腹部の皮下脂肪が約5ミリというから、だいたい限界いっぱいまで脂肪を除いていることがわかる。
 減量しても筋肉量(バルク)があまり落ちず、パワーも比較的低下せずに良いコンディションになっているが、その秘訣を食事法から探してみることにしよう。
 総カロリー2000、たんぱく質160g(体重1kg当2.3g)、脂肪100g、炭水化物110g(全体の約30%)という構成になっている。

①注目される点は、カロリーの減少は約100カロリーで、たんぱく質や脂肪はむしろ普通時より増加している。炭水化物は約1/2まで減らされている。
②減量時によくおこることは、必要なたんぱく質・脂肪・ビタミン・ミネラルまでも大幅にカットして、体の維持に必要な栄養素が不足してしまうことだ。
③今年の始め、長崎県のある女子大生が「やせたい」とコンニャク粉末製品をとるだけで、ほかの食事を拒否する生活をおくり、とうとう体重が25kgになって衰弱して死亡するという、あわれな出来事があった。新聞やテレビで大きく報道されていたので知っている人も多いだろう。
④ここまで極端なところまでゆかなくても、貧血・立ちくらみ・肌のカサカサになった状態や顔色の悪さ、体力の低下など、栄養不足による症状が現われやすい。とくにビルダーなら、「いくらトレーニングしてもパンプアップしてこない」という事実を体験する人が多い。
⑤その点、大江選手のように、減量中にもたんぱく質をしっかり食べ、脂肪(ジャームオイルも含めて)も不足しないように心がければ、あまり無理しなくとも減量はかなりうまくゆくわけである。
⑥ビタミンやミネラルについても、減量中にも不足しないように配慮していれば、栄養失調の心配はほとんどない。
⑦ごはん・パン・麺類は意識して減らしているが、みそ汁や牛乳にある程度の炭水化物は含まれる。生野菜や新鮮な果物(いちご・みかん・りんご・バナナ)などはもう少し食べてよい。なぜなら連日、ハードトレーニングをしているので、すべてエネルギーに変って消耗されるからである。
⑧1日あたりのカロリー減少は100カロリーずつでも、2ヵ月、3ヵ月と続ければ確実に脂肪の除去につながり、うまく減量できる。とくに腹筋運動を多角的に高回数実行すれば、ウェストも72cmまでなれることを大江選手は証明してくれている。
⑨8選手のタイプにもよるが、シーズンオフもいつでもポージングできるように脂肪のつかない体を維持している場合、コンテスト前の調整は楽である。ほとんどいつもの努力だけで体型が完成する。それに対し、シーズンオフは食べ放題で、体型にこだわらない選手は、急に食生活を変えても仕上げまでに並々ならぬ苦労がいる。「1週間減量コース」を3度、4度とくりかえし実行し、体を完成させるわけだ。
⑩いずれにしろ、一流選手になれば、体重をふやしたり、減らしたり、ウェイトコントロールを自由自在におこなう要領を身につけている。やせるためのトレーニングや食事法をよく知っているので、一般女性や中高の年の人たちに教えてあげることもできよう。ぜひその能力を社会のために活かしていただきたい。
月刊ボディビルディング1981年6月号

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