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なんでも Q&A お答えします 1981年6月号

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月刊ボディビルディング1981年6月号
掲載日:2020.06.01

現在実施している基本6種目に、新たに3~4種目加えたいが

Q ボディビル歴は1年あまり、自宅でトレーニングしています。現在は下記のような、ごく初歩的なスケジュールでトレーニングしています。

≪トレーニング・スケジュール≫
記事画像1
≪現在の体位≫
身長 165cm 上腕囲 34cm
体重 57kg 前腕囲 28.5cm
胸囲 103cm 大腿囲 52cm
腹囲 70.5cm 下腿囲 36.5cm
腰囲 86.5cm

 そこで、これからのトレーニングについてお尋ねします。
 私は上述したように、現在は基本6種目によるトレーニングを行なっています。しかし今後は、新たに3~4種目を加え、都合10種目程度のトレーニングを行いたいと考えています。
 そのようなわけで、種目の増加を希望する部位を次に記述しますので、どのような運動を採用すればよいかアドバイスしていただきたいと思います。
胸.........2種目 肩.........1種目 
上腕三頭筋.........1種目
(旭川市 平野洋一 会社員 24歳)
A 基礎的な運動によって、じっくり鍛えることはたいへんよいことです。ことに、初・中級者の場合には、そのほうが、欲ばっていろいろな運動を行うよりは、むしろ良い結果が得られるようです。とはいえ、あなたは体位から判断して、すでに中級者として中程度の段階にあると考えられるので、ここいらで実施種目を3~4種目増やすのは大いに結構なことだと思います。では、質問にお答えすることにしますが、いまいったように、中級者の段階で、胸・肩・上腕三頭筋の運動種目を新たに増やすための選択の対象となる種目をいくつかあげてみま1す。

①胸の部の選択の対象となる種目

◎ラタラル・レイズ・ライイング
<効果>とくに大胸筋の外郭の発達を促す。胸郭の拡張にも有効。
◎パラレル・バー・ディップ
く効果>おもに大胸筋の下部に効く。ただし、バーの間隔の広狭によって多少効く部分が異なってくる。傾向としては、広ければ外側に、狭ければ内側に効くといえる。胸郭の拡張にも有効。(写真参照)
[パラレル・バー・ディップ]

[パラレル・バー・ディップ]

◎ダンベル・ベンチ・プレス
く効果>大胸筋全体に効く。大胸筋の輪郭をよくする。
◎ベント・アーム・プルオーバー
<効果>大胸筋の厚みを増す。さらに胸郭の拡張、広背筋、上腕三頭筋にも効く。

以上の他に、インクライン・プレスとデクライン・プレスも胸の部分に有効な種目であるが、差し当り上述の4種目の中から選ぶのがよい。

②肩の部の選択の対象となる種目

◎バック・プレス
く効果>三角筋の横からうしろの部分に効く。ただし、うしろの部分に十分に効かすには、左右のグリップの間隔を思いきって広くするほうがよい。僧帽筋にも効く。
◎スタンディング・ロー
く効果>主に三角筋の前から横の部分に効く。僧帽筋にも有効。
◎オールターニット・プレス<効果>三角筋の基礎的なバルクを増すのに有効。僧帽筋にも効く。
③上腕三頭筋の選択の対象となる種目
◎トライセプス・プレス・ライイング
<効果>主に上腕三頭筋の長頭に効く
◎ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
<効果>主に上腕三頭筋の長頭に効く
 以上、部位ごとに中級者向きの種目をいくつかずつ選んでみましたが、あとはその中からご自分で必要と考えられる種目を3~4種目選ばれたらよいと思います。なお、参考までにトレーニング・スケジュール例を記しておきます。

<トレーニング・スケジュール例>

記事画像3

臀部の脂肪をとり、すっきりした下半身にしたいが

Q ぼくは中学生のボディビル・ファンです。歳が若いので、まだ本格的に始めてはいませんが、軽いトレーニングは行なっています。しかし、高校に入ったら本格的にやるつもりです。
 ところで、ぼくの体は上半身が細い割には下半身が太く、とくに臀部に脂肪がたくさんついているのでかっこうが悪く、友だちにもひやかされたりして困っています。そのようなわけで、なんとか臀部の脂肪を落とし、すっきりとした下半身にしたいと考えています。臀部の脂肪を落とすためのよい方法があれば教えてください。


≪現在の体位≫
身長 176cm 上腕囲 29cm
体重 72kg 大腿囲 55cm
胸 囲 85cm 下腿囲 36cm
腹 囲 77cm
(名古屋市 K・O 中学生15歳)
A 下半身全体にかなり脂肪が付いているようなので、臀部のための運動を行うと同時に、下半身全体の脂肪を落とすための運動を行う必要があるでしょう。

≪臀部をひきしめ形をよくする運動≫

◎バック・キック
く動作>立った姿勢で、左右交互に膝をのばしたまま、脚を斜め後方へあげる。この場合、上体が多少前傾してもかまわない。また、脚が上方へ高くあがらなくても別にさしつかえない。
◎サイド・キック
<動作>立った姿勢で、左右交互に脚を横へあげる。
◎プローン・レッグ・スプリット
くかまえ>両脚を伸ばして床にうつ伏せに寝。両手を大腿部の横あたりの床に付く。
<動作>膝をあまり曲げないようにして、両脚を床から少し浮かし、左右に開脚しながら、できるだけ脚を高くあげるようにする(写真参照)
【プローン・レッグ・スプリット】

【プローン・レッグ・スプリット】

◎スクワット・ジャンプ
<動作>腰を落した状態から、上方へできるだけ高く跳びあがる。両足の間隔をいくぶん広くし、大腿部が水平になるくらいに膝を屈した状態から跳びあがるようにする。

≪下半身全体の脂肪を落す運動≫

 下半身全体の脂肪を落すには、なんといってもジョギングを行うのが最もよい。しかし、年齢も若いのだから、ただ単調に走るだけでなく、ときおり息があがらない範囲で、次のような走り方をまじえるようにするのがよい。

◎臀部に、より負荷をかける走り方
 普通の場合よりも意識的に腰を低くかまえ、ストライド(歩幅)をできるだけ広くするようにして走る。このようにして走ると、後ろ足でからだを前方へ押し出すかたちになるので、普通に走る場合よりも臀部に負担がかかるようになる。

練習中、疲労感と腰痛を感じるが、このまま続行してもよいか?

Q ボディビル歴は3ヵ月です。私は剣道を10年ほどやっていますが、身体をより強くするためと、パワーをつけるためにボディビルを始めました。
 長年の間、素振りや縄とびなど、剣道のための補助運動を毎日行なってきましたので、ボディビルのトレーニングも、剣道の補助運動と併せて毎日行うようにしています。ボディビル開始当初は、トレーニング中にさほど疲労感を感じませんでしたが、最近は、いくぶん苦痛をともなった疲労感と腰痛を覚えるようになりました。
 現在実行しているトレーニング・スケジュールは下記のとおりですが、このまま続行してよいものでしょうか。アドバイスをお願いします。

≪トレーニング・スケジュール≫
記事画像5
≪現在の体位≫
身長 166cm 上腕囲 32cm
体重 63.5kg 前腕囲 28.5cm
胸囲 95cm 大腿囲 54cm
腹囲 78cm
(山形県 石原憲治 会社員 26歳)
A 最近になって、トレーニング中に苦痛をともなう疲労を感じ、また、腰痛を覚えるようになったとのことですが、その最大の原因はオーバー・トレーニングにあると考えられます。したがって、いくつかの運動を除いて、トレーニングを1~2日おきに行うようにするのがよいと思います。
 ところで、現在あなたが行なっているトレーニング・スケジュールは、運動の順序の面でも多少問題があると考えられるので、そのへんのアドバイスを兼ねて新しくスケジュールを作ってみましょう。

≪従来どおり毎日行なってもよいと考えられる運動≫

〇竹刀による素振り
〇ロード・ワーク
〇縄とび
〇シット・アップ

≪1~2日おきに行う運動≫

〇スクワット
〇片脚屈伸(シングル・レッグ・スクワット)
〇横げり(サイド・キック)
〇クリーン・アンド・プレス
◎スタンディング・プレス
〇倒立腕屈伸(ハンド・スタンド・プシュ・アップ)
◎ベンチ・プレスプ)
〇腕立て伏臥腕屈伸(プッシュ・アップ)
〇ベント・アーム・プルオーバー
◎ベント・オーバー・ローイング
◎カール
[註]両腕によるアイソメトリックスはどこの部位の運動として行なっているのか判らないので除外しました。なお、上記のスケジュールで疲れが残るようならば、◎印の付いた運動種目のみを行うようにするのがよいでしょう。

≪腰痛について≫

 トレーニングの頻度を少なくすることによって体調が回復しても、なおかつ腰痛が治らないようであれば、その場合は、たんにオーバー・ワークだけが腰痛の原因ではないと考えられるので、その原因について調べる必要があるでしょう。
 現在あなたが採用しておられる種目の中には、その運動のやり方が悪いと腰を痛めるおそれのある運動が多数あります。したがって、それら問題の種目についても、運動のやり方が悪くないかどうかをテキストなどを参考にしてチェックしてみる必要があります。
 中でも、実際に運動を行なっているときに、腰に痛みを感じる種目が最も問題があると考えられるので、そのような種目についてはとくに念入りにチェックすることが必要です。
 なお、腰痛がなかなか解消しない場合には、一応、医師の診断を受けることをお勧めします。また、腰痛の原因がわかっても、完全によくなるまでは腰部に負担がかかる運動や、腰部を強く刺激する運動は絶対に行わないようにしてください。

腹筋のカットを出し、側腹部の形をよくするにはどうしたらよいか

Q ボディビル歴は6年、自宅で1人でトレーニングしています。昨年は県のコンテストにも出場しました。しかし、残念ながら決勝には残れませんでした。
 コンテスト終了後に、審査員の方に意見を伺ったところ、次のようにいわれました。
 私のからだは、腹筋のカットが弱くその上、腰(側腹部のあたり)が詰っているので、ウエストにアクセントがなく、からだ全体の印象も重苦しい感じがするとのことでした。
 それ以来、私はその審査員の意見を入れて、それらの欠点を強化是正するために励んできました。しかし、効果は全くといっていいほどありません。腹筋のカットもよくならなければ、側腹部の形もスッキリしてきません。
 といっても、私の腹部には、前も横も、また後ろの部分にも脂肪が多く乗っているわけではありません。私の腹部は、多少、下腹が出た感じがしますが、もともと全身的に脂肪が少ないほうで、この点に関しては一流ビルダーにひけをとらないと自負しています。
 そこでお伺いしますが、私の場合、腹筋のカットがよくならないのも、また、側腹部の形がスッキリしないのもこれは先天的なものでしょうか。もしも、先天的なものでないとすれば、これら欠点を強化是正するにはどうしたらよいでしょうか。よい方法があればご指導ください。
 なお、現在行なっている腹部と腰部(側腹部)のトレーニングは下記のとおりです。

≪トレーニング・スケジュール≫
記事画像6
≪現在の体位≫
身長 171cm 上腕囲 39cm
体重 65kg 前腕囲 30cm
胸囲 111cm 大腿囲 58cm
腹囲 78cm
(Y・M 商業 27歳)
A 実際にあなたのからだを拝見したわけではないので、はっきりお答えすることはできません。何ヵ月ものトレーニングの結果、一向に効果のきざしが見られないということで、不安になるあなたの気持も解らぬではありません。しかし、腹筋のカットと側腹部の形がよくならないのが、果して先天的なものであるのかどうか、あわてて結論を出すこともないでしょう。結論を出すのは、もうひと工夫、もうひと頑張りしてからでも遅くはないと思います。
 事実、あなたのトレーニング法には不備な点も認められるので、まだまだ試してみることがいくつかあると思います。では、腹直筋のカットの問題から考えてみることにしましょう。

◇腹直筋のカットについて

 腹直筋のカットを強くするということは、とりもなおさず腹直筋の個々のミゾを深くし、腱画をはっきりさせることにほかありません。したがってあなたのように、ありきたりの腹筋運動だけでカットがよくならない場合は、そのへんのところをよく考えたトレーニングをする必要があるでしょう。つまり、次に説明するようなミゾを深め、腱画をはっきりさせるのに有効と考えられる運動を行うことが必要です。

◇ミゾを深め、腱画をはっきりさせるには

 このためには、腹直筋をできるだけ伸展させた状態から収縮させるのがよいと考えられます。したがって実際的な方法としては、各種のストレッチ・シット・アップ、および、高い台の上で行うレッグ・レイズが有効であると思われます。(註:ストレッチ・シット・アップとは、腹部を大きく伸展させるようにして行う種類のシット・アップのこと)

◇ミゾを深め、腱画をはっきりさせるのに有効と思われる運動

◎クロス・ベンチ・シット・アップ
くかまえ>ベンチに横向きに腰かけ、前方の床の上にあらかじめ据え置いたバーベルのシャフトの下に両足を差し入れて固定する。(写真参照)
[クロス・ベンチ・シット・アップ]

[クロス・ベンチ・シット・アップ]

<動作>上体を後ろへ倒してゆき、両肩が床に触れるくらいにまで倒したら体を起こす。腰を痛めないように慎重に動作をすること。
◎ローマン・チェア・シット・アップ
 ローマン・チェアがあれば、それを用いてストレッチ・シット・アップを行うようにすればよい。
◎高い台の上で行うレッグ・レイズ
くかまえ>高い台の上に腰(臀部)から下を出すようにして仰臥する。もちろん、運動中にからだがずり落ちないように両手で台のフチを掴む。
く動作>腹部が十分に伸展するまで両足を下へおろし、おろしたなら持ちあげる。高い台がなければ普通のベンチでもよい。しかし、この運動は台が高いほうが腹筋が十分に伸展するので、腱画をよくするには、できるだけ高い台のほうがよい。
 以上が腹直筋のミゾを深め、腱画をはっきりさせるのに有効と思われる運動種目です。しかし、この種の運動種目は腰にかなり負担がかかるので、くれぐれも腰を痛めないようにしてください。実際に運動を行なってみて、もしも不当な負荷が腰にかかるようならば、最初からあまり大きくからだを仲展させないようにするのがよいでしょう。

◇腰(側腹部)の形をスッキリさせるには

 あなたのからだを実際に見ていないので、はっきりとしたことはいえませんが、腰が詰っているのが先天的なものであるとすれば、現在の腰の印象を大きく変えることは難しいと考えられます。
 あなたの場合、先天的なものではないような感じがします。腰が詰って見えるのは、姿勢に原因があると考えられます。というのは、あなたはあまり脂肪が乗っていないのに下腹部が出ているそうですが、そのような腹部の形は腰の姿勢が悪い人によく見られる現象だからです。したがって、あなたの場合は、腰の姿勢を矯正することによって、腰の形をよくすることが可能であると思われます。では次に、その矯正運動を3つほど紹介します。
◎矯正運動①
<かまえ>両脚を伸ばして床に仰臥し両腕を頭の先の方へ伸ばす[図1ーA]。ただしこの場合、[図1ーB]のように腰と背がそらないように留意する。なお、両手を次のように組合せると後述する動作がやりやすくなる。片方の手の親指だけを立ててコブシをつくり、その親指を他方の手で握るようにする。
<動作>脚を交互にできるだけ伸ばすようにし、その動作に合わせて、[図1ーA]のように腕は腕で頭の先の方へ精いっぱい伸ばすようにする。なお、上記の動作は、腰を交互に伸ばすことを意識して、ゆっくり行うのがよい。
[図1]

[図1]

[図2]

[図2]

◎矯正運動②
くかまえ>直立し、両手を組合せて、両腕を頭上へできるだけ伸ばす[図2ーC]。この場合、手の先から足のツマ先までの線が湾曲しないでまっすぐになるように留意する。[図2ーD]のように湾曲させると、後述する動作で腰が十分に伸びなくなる。なお、手の組み方は前項の矯正運動①の場合と同様にする。
<動作>手の先から足のツマ先までの線を湾曲させないように留意して種をあげ、全身をできるだけ上方を伸ばす[図2ーE]。
◎矯正運動③
くかまえ>[図2ーE]と同じ。
<動作>[図2ーE]の場合と同じように、全身をできるだけ上方に伸ばし、その姿勢の状態で左右の瞳を交互に床に近づけるようにする。このとき、腫を無理に床に着けなくてもよい。なお、バランスがとりにくければ、壁などに軽く寄りかかって行うようにしてもよい。
〔回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生]
月刊ボディビルディング1981年6月号

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