JBBAボディビル・テキスト16
指導者のためのからだづくりの科学
名論(解剖学的事項)―運動と運動器官2
月刊ボディビルディング1974年11月号
掲載日:2018.09.05
日本ボディビル協会指導員審査会委員長
佐野誠之
佐野誠之
Ⅲ関節運動と筋
人体にはおよそ大小400あまりの骨格筋があり、体重の約50%を占めており、それそれ固有の名称がつけられている。
骨格筋は別名横紋筋といわれる。多数の横紋筋が血管、神経を伴って結合組織によって束になった1つの器官で筋の両端は、普通筋線維が腱に移行して骨や靱帯に付着している。
また、筋の作用はたんに収縮することであるがこの起始・停止(付着)の関係や関節の種類等で、各種の異なった関節運動が行われることは筋系のところで述べたとおりである。
どのように複雑な身体運動もその源をたどれば、屈曲・伸展・回転といった、ごく単純な関節運動の組み合わされたもの、あるいは綜合されたものであると同時に、1本の筋線維の収縮によるということができる。
筋を収縮させるのは神経の働きで、神経がその支配する筋群を順序よく収縮させることにより、目的に合った運動を行うことができる。(神経面に関しては章を改めて記す)
運動器官としての骨格系、筋系の解剖学的分析を前節までに述べてきたが今回は基礎的関節運動を中心として、その動きが行われるためには、どういう筋の働きが必要であるかということ。
すなわち、運動を大別して頸の運動、上肢の運動(肩の動きを含む)、下肢の運動、胴体の運動(脊柱の運動)の4つに分けて、その動きに対する主働的働きをする筋と、補助的働きをする筋とに分類して総合的に述べる。
筋の起始・停止や関係の詳細については骨格系、筋系を参照されたい。
骨格筋は別名横紋筋といわれる。多数の横紋筋が血管、神経を伴って結合組織によって束になった1つの器官で筋の両端は、普通筋線維が腱に移行して骨や靱帯に付着している。
また、筋の作用はたんに収縮することであるがこの起始・停止(付着)の関係や関節の種類等で、各種の異なった関節運動が行われることは筋系のところで述べたとおりである。
どのように複雑な身体運動もその源をたどれば、屈曲・伸展・回転といった、ごく単純な関節運動の組み合わされたもの、あるいは綜合されたものであると同時に、1本の筋線維の収縮によるということができる。
筋を収縮させるのは神経の働きで、神経がその支配する筋群を順序よく収縮させることにより、目的に合った運動を行うことができる。(神経面に関しては章を改めて記す)
運動器官としての骨格系、筋系の解剖学的分析を前節までに述べてきたが今回は基礎的関節運動を中心として、その動きが行われるためには、どういう筋の働きが必要であるかということ。
すなわち、運動を大別して頸の運動、上肢の運動(肩の動きを含む)、下肢の運動、胴体の運動(脊柱の運動)の4つに分けて、その動きに対する主働的働きをする筋と、補助的働きをする筋とに分類して総合的に述べる。
筋の起始・停止や関係の詳細については骨格系、筋系を参照されたい。
1 頸部の運動
頸の上に頭が乗っているので必ず頭が共に動く。そのために体操では「かしらの運動」とも呼ばれている。
頸の運動に関与する筋系は、種―の頸筋群と固有背筋群の上部の働きによる。環椎関節が屈曲を容易にし、環軸関節の独特の構造が車軸運動として他の頸椎に見られない回転運動を容易にしている。
頸の運動は、屈曲・伸展(後屈)側屈・回旋に分けられるが、屈曲動作の片側収縮が側屈を生み、回旋は屈曲・側屈・伸展の総合動作である。
関節名――環椎後頭関節、環椎関節、正中環軸関節
骨――頸椎(7コ)および頭蓋
①屈曲(参考図C―1)
動き―顎を胸に近づけ顔面を下向きにする。
主働筋―胸鎖乳突筋
協力筋―頭長筋、頸長筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、前頭直筋、舌骨筋群
②伸展(参考図C―1)
動き―顎をあげ後頭部を脊椎に近づける。
主働筋―僧帽筋(上部)、頭半棘筋、頸板状筋、頭最長筋、頸最長筋、頭棘筋、頸棘筋、頸半棘筋、頭板状筋、頸腸肋筋
協力筋―大後頭直筋、小後頭直筋、多裂筋、上頭斜筋、下頭斜筋、肩甲挙筋
③側屈(参考図C―2)
動き―頭を横に倒す(耳を肩に近づける)。
主働筋―前斜角筋、後斜角筋、中斜角筋の3筋が、肋骨を固定して片側だけが収縮するとき、その作働筋の方に側屈し、胸鎖乳突筋、肩甲挙務の片側だけが働けばその方へ側屈。
協力筋―最長筋、板状筋、頭半棘筋、外側頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋
④側転(捻転)(参考図C―2)
動き―頭を左右に回わす運動
主働筋―胸鎖乳突筋、頭長筋、頭半棘筋、頭斜筋
⑤回旋
動き―頸を回わし、頭頂で円を描くような動きで、いままで述べてきた屈・伸・捻転の総合運動である。
主働筋―胸鎖乳突筋、板状筋
協力筋―頸の運動に関与する筋のほとんどが協同している。
以上、頸部の基本的運動について述べたが、人間の身体を機能面から大別すれば、総合司令部的な役割をしている頭部と、これによって行動する胴体四肢との2つに大別することができ、
この2つの重要な部分を連結しているのが頸である。したがって、頸の機能如何は、頭部や体幹に直接間接に影響をもつ、きわめて重要な部分である。
腕や脚は切断されたとしても生命を全うできるが、たとえ小さな場所とはいえ、頸は生命に直結している人体の重要個所である。すなわち、その切断は死を意味する。馘首という言葉は、
この意味からきており、首位とか首席とかいう言葉もたんに位置的に体の上部にあるからではなく、その重要さからきたものである。
頸はよく動き、柔かで、しかも強く頭を正しい位置に保たなければならない。胴体と頭の関連を規定し、人体の正しい姿勢保持にすこぶる関係深い。
頸の運動に関与する筋系は、種―の頸筋群と固有背筋群の上部の働きによる。環椎関節が屈曲を容易にし、環軸関節の独特の構造が車軸運動として他の頸椎に見られない回転運動を容易にしている。
頸の運動は、屈曲・伸展(後屈)側屈・回旋に分けられるが、屈曲動作の片側収縮が側屈を生み、回旋は屈曲・側屈・伸展の総合動作である。
関節名――環椎後頭関節、環椎関節、正中環軸関節
骨――頸椎(7コ)および頭蓋
①屈曲(参考図C―1)
動き―顎を胸に近づけ顔面を下向きにする。
主働筋―胸鎖乳突筋
協力筋―頭長筋、頸長筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、前頭直筋、舌骨筋群
②伸展(参考図C―1)
動き―顎をあげ後頭部を脊椎に近づける。
主働筋―僧帽筋(上部)、頭半棘筋、頸板状筋、頭最長筋、頸最長筋、頭棘筋、頸棘筋、頸半棘筋、頭板状筋、頸腸肋筋
協力筋―大後頭直筋、小後頭直筋、多裂筋、上頭斜筋、下頭斜筋、肩甲挙筋
③側屈(参考図C―2)
動き―頭を横に倒す(耳を肩に近づける)。
主働筋―前斜角筋、後斜角筋、中斜角筋の3筋が、肋骨を固定して片側だけが収縮するとき、その作働筋の方に側屈し、胸鎖乳突筋、肩甲挙務の片側だけが働けばその方へ側屈。
協力筋―最長筋、板状筋、頭半棘筋、外側頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋
④側転(捻転)(参考図C―2)
動き―頭を左右に回わす運動
主働筋―胸鎖乳突筋、頭長筋、頭半棘筋、頭斜筋
⑤回旋
動き―頸を回わし、頭頂で円を描くような動きで、いままで述べてきた屈・伸・捻転の総合運動である。
主働筋―胸鎖乳突筋、板状筋
協力筋―頸の運動に関与する筋のほとんどが協同している。
以上、頸部の基本的運動について述べたが、人間の身体を機能面から大別すれば、総合司令部的な役割をしている頭部と、これによって行動する胴体四肢との2つに大別することができ、
この2つの重要な部分を連結しているのが頸である。したがって、頸の機能如何は、頭部や体幹に直接間接に影響をもつ、きわめて重要な部分である。
腕や脚は切断されたとしても生命を全うできるが、たとえ小さな場所とはいえ、頸は生命に直結している人体の重要個所である。すなわち、その切断は死を意味する。馘首という言葉は、
この意味からきており、首位とか首席とかいう言葉もたんに位置的に体の上部にあるからではなく、その重要さからきたものである。
頸はよく動き、柔かで、しかも強く頭を正しい位置に保たなければならない。胴体と頭の関連を規定し、人体の正しい姿勢保持にすこぶる関係深い。
〔参考図c―1〕頭の前後屈
〔参考図c―2〕頭の側転と側屈
〔参考図c―3〕肩甲骨を固定し、掌を下向きにして
2 上肢の運動
上肢は各種の作業をし、食物をとり字を書く等のほか、いろいろのスポ―ツを行うとき必ず使用されるもので、身体の中で最もよく運動し、しかも各々の運動が大きい。
主として投げる、打つ、押す、引く、ねじる、懸垂等の運動の基礎になるものである。これらの運動は、体幹と上肢帯、肩関節、肘関節(上腕と前腕)、手首(前腕と手)、指の運動に分けて考えることができる。
上肢帯とその運動の意義については上腕の自由な運動は上肢帯、とりわけ肩甲骨の運動に「つぎき」されて、はじめて与えられる点にあると要約できる。
主として投げる、打つ、押す、引く、ねじる、懸垂等の運動の基礎になるものである。これらの運動は、体幹と上肢帯、肩関節、肘関節(上腕と前腕)、手首(前腕と手)、指の運動に分けて考えることができる。
上肢帯とその運動の意義については上腕の自由な運動は上肢帯、とりわけ肩甲骨の運動に「つぎき」されて、はじめて与えられる点にあると要約できる。
A 肩(上肢帯)の運動
関節名――肩鎖関節、胸鎖関節、肩関節
骨――肩甲骨、鎖骨
体幹とは鎖骨が胸鎖関節(多軸性)によって関節的結合を行うだけで、肩甲骨は胸郭と結合組織で比較的ゆるく結びつけられているから、可動性ははなはだ大きい。
上肢帯を体幹に対して動かすのは、体幹から起こって上肢帯に付いている筋で、それは浅背筋群、浅胸筋群の2群である。
①内転と下方回転
動き―肩甲骨が脊柱の方へ動き、同時に肩甲骨の下隅が脊柱の方に回転する。
主働筋―僧帽筋(中央部)、大菱形筋小菱形筋
協力筋―僧帽筋(下部)
②外転と上方回転
動き―肩甲骨が脊柱から離れて、外側に動く。同時に肩甲骨下縁が脊柱から離れて上方に回転する。
主働筋―前鋸筋、胸筋
③挙上
動き―肩を上にあげたり、すぼめたりする動き。
主働筋―僧帽筋(上部)、肩甲挙筋
協力筋―菱形筋
④下制
動き―挙上した肩甲骨をもとに戻す動き。または手に物をぶらさげたとき。
主働筋―僧帽筋(下部)前鋸筋(下部)
骨――肩甲骨、鎖骨
体幹とは鎖骨が胸鎖関節(多軸性)によって関節的結合を行うだけで、肩甲骨は胸郭と結合組織で比較的ゆるく結びつけられているから、可動性ははなはだ大きい。
上肢帯を体幹に対して動かすのは、体幹から起こって上肢帯に付いている筋で、それは浅背筋群、浅胸筋群の2群である。
①内転と下方回転
動き―肩甲骨が脊柱の方へ動き、同時に肩甲骨の下隅が脊柱の方に回転する。
主働筋―僧帽筋(中央部)、大菱形筋小菱形筋
協力筋―僧帽筋(下部)
②外転と上方回転
動き―肩甲骨が脊柱から離れて、外側に動く。同時に肩甲骨下縁が脊柱から離れて上方に回転する。
主働筋―前鋸筋、胸筋
③挙上
動き―肩を上にあげたり、すぼめたりする動き。
主働筋―僧帽筋(上部)、肩甲挙筋
協力筋―菱形筋
④下制
動き―挙上した肩甲骨をもとに戻す動き。または手に物をぶらさげたとき。
主働筋―僧帽筋(下部)前鋸筋(下部)
B上腕の運動(肩関節の動き)
関節名――肩関節
骨――肩甲骨、上腕骨
上腕の運動範囲は肩甲骨の回旋を伴うことによって増大されることを最初に知っておくべきである。
肩甲骨は人体中で最も理想に近い多軸関節(球状関節)で、各方面への動きの大きさは、これに相当する下肢部の股関節とは比べものにならない。多数の筋が所属しているが、
これらは体幹、あるいは上肢帯から起こって上腕骨についている筋群である。
これらの筋群は形態学的には3群に分けられ、第1群は体幹から起こり上腕骨についている広背筋と大胸筋で、筋の分類上では浅背筋群と浅胸筋群に属しているものである。
第2群は肩甲筋群といわれるもので、三角筋、棘下筋、小円筋、大円筋、肩甲下筋等である。
第3群は上腕筋群のうち上肢帯に起始をもっているもので、上腕二頭筋、烏ロ腕筋、上腕三頭筋(長頭)等である。これらは本来、肘関節を動かすものであるが、肘関節が固定されている場合、
その起始の関係から上腕を動かすことになる。(参考図C―3)
①外転(側方挙上)(参考国C―4、C―5)
動き―上腕骨を体側から横に水平にあげる。
主働筋―三角筋
協力筋―棘上筋
②内転(体幹へ引きつける)
動き―外転した上腕骨を体側に引きおろす。
主働筋―広背筋、大円筋、大胸筋
協力筋―上腕三頭筋長頭、烏ロ腕筋
③屈曲(前方挙上)(参考図C―6)
動き―肩関節の左右軸に対して、上腕を下から前にあげる。
主働筋―三角筋前部、烏ロ腕筋
協力筋―三角筋中部、大胸筋上部は上膊の内転または内旋に際し協力する。上腕二頭筋短頭、棘上筋。
④伸展(後方挙上)(参考図C―6)
動き―肩関節の左右軸に対して腕を上から下におろす。さらに体側を通過して後方にあげる。(これを過伸展という)
主働筋―広背筋、三角筋後部、大円筋
協力筋―小円筋、棘下筋、上腕三頭筋長頭、大胸筋肋部
⑤外旋
動き―肩甲骨の上下軸に対して、上腕が回転するとき、ねじれるように動くから旋という。腕を真すぐに伸ばしたまま掌を前方に向けるように回わす動きを外旋という。
主働筋―棘下筋、小円筋
協力筋―三角筋後部
⑥内旋
動き―外旋の反対の動作で、真すぐに伸ばしたまま、掌を後ろより外側方に向け、ねじる動き。
主働筋―肩甲下筋、大胸務の鎖骨部、胸肋部、広背筋、大円筋
協力筋―三角筋前部、大円筋
⑦描円
動き―肩関節を中心として胴体を軸として上腕骨が円を描くように動く。
主働筋―肩関節に参加する筋がすべて参加する。
骨――肩甲骨、上腕骨
上腕の運動範囲は肩甲骨の回旋を伴うことによって増大されることを最初に知っておくべきである。
肩甲骨は人体中で最も理想に近い多軸関節(球状関節)で、各方面への動きの大きさは、これに相当する下肢部の股関節とは比べものにならない。多数の筋が所属しているが、
これらは体幹、あるいは上肢帯から起こって上腕骨についている筋群である。
これらの筋群は形態学的には3群に分けられ、第1群は体幹から起こり上腕骨についている広背筋と大胸筋で、筋の分類上では浅背筋群と浅胸筋群に属しているものである。
第2群は肩甲筋群といわれるもので、三角筋、棘下筋、小円筋、大円筋、肩甲下筋等である。
第3群は上腕筋群のうち上肢帯に起始をもっているもので、上腕二頭筋、烏ロ腕筋、上腕三頭筋(長頭)等である。これらは本来、肘関節を動かすものであるが、肘関節が固定されている場合、
その起始の関係から上腕を動かすことになる。(参考図C―3)
①外転(側方挙上)(参考国C―4、C―5)
動き―上腕骨を体側から横に水平にあげる。
主働筋―三角筋
協力筋―棘上筋
②内転(体幹へ引きつける)
動き―外転した上腕骨を体側に引きおろす。
主働筋―広背筋、大円筋、大胸筋
協力筋―上腕三頭筋長頭、烏ロ腕筋
③屈曲(前方挙上)(参考図C―6)
動き―肩関節の左右軸に対して、上腕を下から前にあげる。
主働筋―三角筋前部、烏ロ腕筋
協力筋―三角筋中部、大胸筋上部は上膊の内転または内旋に際し協力する。上腕二頭筋短頭、棘上筋。
④伸展(後方挙上)(参考図C―6)
動き―肩関節の左右軸に対して腕を上から下におろす。さらに体側を通過して後方にあげる。(これを過伸展という)
主働筋―広背筋、三角筋後部、大円筋
協力筋―小円筋、棘下筋、上腕三頭筋長頭、大胸筋肋部
⑤外旋
動き―肩甲骨の上下軸に対して、上腕が回転するとき、ねじれるように動くから旋という。腕を真すぐに伸ばしたまま掌を前方に向けるように回わす動きを外旋という。
主働筋―棘下筋、小円筋
協力筋―三角筋後部
⑥内旋
動き―外旋の反対の動作で、真すぐに伸ばしたまま、掌を後ろより外側方に向け、ねじる動き。
主働筋―肩甲下筋、大胸務の鎖骨部、胸肋部、広背筋、大円筋
協力筋―三角筋前部、大円筋
⑦描円
動き―肩関節を中心として胴体を軸として上腕骨が円を描くように動く。
主働筋―肩関節に参加する筋がすべて参加する。
〔参考図c―4〕水平に両腕を側開(肩甲骨の内転)
〔参考図c―5〕肩甲骨の動きが伴い、掌を内向きにしたとき
〔参考図c―6〕前方挙上と後方挙上
C 前腕の運動(肘関節の動き)
関節名――肘関節(橈尺関節、腕橈関節、上橈尺関節)
骨――上腕骨、橈骨、尺骨。
この関節は、上腕と前腕との蝶番関節で、肘の屈伸運動が主である。肘を曲げる動きには上腕屈筋が主役でありそのほか、前腕屈筋群のうち表層にあるもの、
および前腕伸筋群のうち腕橈骨筋と橈側手根筋もその起始の位置から肘を曲げる動きにも多少関係している。
腕を伸ばすのは上腕三頭筋が主力であるが、そのほか肘筋という小筋もいくらか関係している。また、前腕の伸筋群のうち、腕橈骨筋を除く上腕骨に起始をもつものも多少の関係をもっている。
以上、肘関節は屈伸に適した関節構造を土台として、これに回内・回外のための構造が附加されたものである。
①屈曲(参考図C―7)
動き―前腕を曲げる(上腕骨と橈骨・尺骨との角度の減少)
主働筋―上腕二頭筋、上腕筋
協力筋―腕橈骨筋、前腕の屈筋群
②伸展(参考図C―8)
動き―屈曲した腕をもとに戻す動き。
主働筋―上腕三頭筋
協力筋―肘筋
③回内(参考図C―9)
動き―解剖学的姿勢(掌を前に向けた姿勢)から、掌を裏がえす動き、すなわち橈骨が尺骨に対して回転する動き
主働筋―円回内筋、方形回内筋
協力筋―橈側手根屈筋
④回外(参考図C―9)
動き―回内の位置から掌を外側に回わす。すなわちもとに戻す動き。
主働筋―上腕二頭筋、回外筋
協力筋―腕橈骨筋
骨――上腕骨、橈骨、尺骨。
この関節は、上腕と前腕との蝶番関節で、肘の屈伸運動が主である。肘を曲げる動きには上腕屈筋が主役でありそのほか、前腕屈筋群のうち表層にあるもの、
および前腕伸筋群のうち腕橈骨筋と橈側手根筋もその起始の位置から肘を曲げる動きにも多少関係している。
腕を伸ばすのは上腕三頭筋が主力であるが、そのほか肘筋という小筋もいくらか関係している。また、前腕の伸筋群のうち、腕橈骨筋を除く上腕骨に起始をもつものも多少の関係をもっている。
以上、肘関節は屈伸に適した関節構造を土台として、これに回内・回外のための構造が附加されたものである。
①屈曲(参考図C―7)
動き―前腕を曲げる(上腕骨と橈骨・尺骨との角度の減少)
主働筋―上腕二頭筋、上腕筋
協力筋―腕橈骨筋、前腕の屈筋群
②伸展(参考図C―8)
動き―屈曲した腕をもとに戻す動き。
主働筋―上腕三頭筋
協力筋―肘筋
③回内(参考図C―9)
動き―解剖学的姿勢(掌を前に向けた姿勢)から、掌を裏がえす動き、すなわち橈骨が尺骨に対して回転する動き
主働筋―円回内筋、方形回内筋
協力筋―橈側手根屈筋
④回外(参考図C―9)
動き―回内の位置から掌を外側に回わす。すなわちもとに戻す動き。
主働筋―上腕二頭筋、回外筋
協力筋―腕橈骨筋
〔参考図c―7〕前腕屈度
〔参考図c―8〕前腕伸展度
〔参考図c―9〕前腕の回旋度
D 手の運動
人間は道具をつくり、道具をつかって仕事をするという点が他の動物との本質的な相違であると考える。仕事をする手の発達、すなわち労働し得る手の獲得と完成は人間の進歩にとって重要な意義をもっている。
手は物を握る、押す、引く、投げる、つまむ、はじく等、日常生活はもとより、いろいろの運動において重要な役割をもっている。
手の運動は手首の運動と指の運動とに分けることができる。これらを分析してみると次の5つに大別できる。
○手首の運動
①橈骨、尺骨に対する手根骨の動き
②手根骨に対する中手骨の動き
③中手骨に対する基節骨の動き
④基節骨に対する中節骨の動き
⑤中節骨に対する末節骨の動き
以上、5つの運動が協調して、前腕の運動とともに巧妙な動きが行われる。
関節名――橈骨手根関節、手根間関節、手根中手関節、中手間関節、中手指節関節、指関節
骨――橈骨、尺骨、各手根骨、各指節骨
手首は橈骨手根関節により、二軸性運動を行うというように一般にいわれているが、実際にはこの関節はほとんど多軸性である。
①手首の屈曲(参考図C―10)
動き―橈骨手根関節において掌側に曲げる動き。
主働筋―橈側手根屈筋、尺側手根屈
協力筋―長掌筋、浅指屈筋、深指屈筋。(ただし浅指、深指の両筋は指の伸展位にあるときのみ)
②手首の伸展(参考図C―11)
動き―手首を背側に曲げる。
主働筋―長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋
協力筋―指の伸筋群
③手首の外転と内転(参考図C―12、C―13)
動き―内転とは小指側に手を曲げる動きをいい、外転は親指側に曲げる動きをいう。
主働筋―内転(尺骨側に曲げる)ときは尺側手根伸筋、尺側手根屈筋、外転(橈骨側に曲げる)ときは長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、橈側手根屈筋
外転協力筋―長母指外転筋、短母指外転筋
手は物を握る、押す、引く、投げる、つまむ、はじく等、日常生活はもとより、いろいろの運動において重要な役割をもっている。
手の運動は手首の運動と指の運動とに分けることができる。これらを分析してみると次の5つに大別できる。
○手首の運動
①橈骨、尺骨に対する手根骨の動き
②手根骨に対する中手骨の動き
③中手骨に対する基節骨の動き
④基節骨に対する中節骨の動き
⑤中節骨に対する末節骨の動き
以上、5つの運動が協調して、前腕の運動とともに巧妙な動きが行われる。
関節名――橈骨手根関節、手根間関節、手根中手関節、中手間関節、中手指節関節、指関節
骨――橈骨、尺骨、各手根骨、各指節骨
手首は橈骨手根関節により、二軸性運動を行うというように一般にいわれているが、実際にはこの関節はほとんど多軸性である。
①手首の屈曲(参考図C―10)
動き―橈骨手根関節において掌側に曲げる動き。
主働筋―橈側手根屈筋、尺側手根屈
協力筋―長掌筋、浅指屈筋、深指屈筋。(ただし浅指、深指の両筋は指の伸展位にあるときのみ)
②手首の伸展(参考図C―11)
動き―手首を背側に曲げる。
主働筋―長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋
協力筋―指の伸筋群
③手首の外転と内転(参考図C―12、C―13)
動き―内転とは小指側に手を曲げる動きをいい、外転は親指側に曲げる動きをいう。
主働筋―内転(尺骨側に曲げる)ときは尺側手根伸筋、尺側手根屈筋、外転(橈骨側に曲げる)ときは長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、橈側手根屈筋
外転協力筋―長母指外転筋、短母指外転筋
〔参考図c―10〕手首の屈曲(掌屈)
〔参考図c―11〕手首の伸展(背屈)
〔参考図c―12〕手首の橈骨側屈(外転)
〔参考図c―13〕手首の尺骨側屈(内転)
〇指の運動
手の指は非常に微妙な動きをすることができる。指を動かす筋は、手と足とでは本質的には同じであるが、足の指と比較してみると、その動きに非常に大きな違いがある。
指を動かす筋は大別して2群に分けられる。1つは前腕筋群に属する屈筋(浅指屈筋、深指屈筋、長母指屈筋など)と、
伸筋(指伸筋、小指伸筋、長母指外転筋、短母指伸筋、長母指伸筋示指伸筋など)で、主として指の屈伸を行うもので、長くて大きい筋であるからカは強い。
もう1つは手筋群で、これは手掌のいろいろの部分から起こって指にいたるもので、約10種の小筋である。これらはたんなる指の屈伸よりは、
イ.指の内転、外転 ロ.指を向け合わせて近づける ハ.指を動かさずに中手関節だけを曲げる、等の動きがおもなるものである。すなわち、これらの筋の存在によって、
指がいろいろと微妙な動きをなすもので、手の動きにとっては非常に重要なものであるが、いずれも力の弱い小筋である。
①中手指節関節(球関節)における基節骨の屈曲
動き―手掌の中央(指のつけね)で物を握るように曲げる動き。
主働筋―虫様筋
協力筋―背側骨間筋、掌側骨間筋
②中手指節関節における基節骨の伸展
動き―屈曲された基節骨をもとに戻す動き。
主働筋―指伸筋、示指伸筋、小指伸筋
協力筋―背側骨間筋、長母指伸筋、短母指伸筋
③手の指節関節の屈曲(近位、遠位の指節関節―蝶番関節)
動き―基節骨と中節骨、中節骨と末節骨の2つに分けられ、手の指先を曲げる動き。
主働筋―浅指屈筋、深指屈筋
④指節間関節の伸展
動き―屈曲した指先を伸ばす。
主働筋―指伸筋、示指伸筋、小指伸筋
⑤指の内転・外転
動き―中手骨に対する指骨の動きで、指間をひろげたり(外転)、閉じたり(内転)する動き。
主働筋―外伝の場合は背側骨間筋、小指外転筋、内転の場合は掌側骨間筋
○母指の運動とその機能
母指の運動は、屈曲、伸展、外転、内転、対立の5つの運動からなる。
関節――手根中手関節(鞍状関節)、中手指節関節(球状関節)、指節間関節(蝶番関節)
①屈曲
主働筋―長母指屈節(指節関節)、短母指屈筋(中手指関節)
協力筋―母指内転節(中手指関節)、長母指屈節(中手指関節)
②伸展
主働筋―長母指伸筋(指節関節)、短母指伸筋(中手指節関節)
協力筋―短母指外転筋(中手指節関節)、短母指内転筋(中手指節関節)
③外転
主働筋―長母指外転筋、短母指外転筋
④内転
主働筋―母指内転筋、第一背側骨間筋
⑤対立
主働筋―母指対立筋、長母指外転筋、短母指外転筋、短母指屈筋
〔註〕母指の対立とは、母指の背面が橈側を、掌面が尺側を向いているので母指を橈側、掌側に移動させると、
母指の先端が半円形の軌跡を描いて手掌の前を尺側方向に動き、他の指と真正面から向き合う位置にまでくることができる。これを対立という。
× × ×
人類の祖先が4本足で匍匐をしておったときは、前肢も後肢もともに体を運ぶという同一目的をもっていたが、進化の途上、2本足歩行の直立姿勢の生活に移り、
前肢が歩くことから解放されて以後、前肢と後肢とはその任務も性格も大きく違ってきた。
上肢は巧微、正確、敏捷等の人間生活的な運動能力の特徴をもつようになった。「上手・下手」とか、「腕前拝見」「はたらき手」「敏腕家」「あの人は腕がいい」等の言葉が使われるように、
生活力、処生術等の意味にまで用いられている。
上肢帯の肩については、「肩で風を切る」「肩身がせまい」「双肩にかかっている」「肩をすぼめる」等、得意のとき、あるいは意気のあがらないときの表現によく使われている。
このように、人間を人間たらしめており、直接文化を築くのに役立っているのはこの前肢(上肢)である。
(次回は下肢の運動、胴体の運動について記す)
手の指は非常に微妙な動きをすることができる。指を動かす筋は、手と足とでは本質的には同じであるが、足の指と比較してみると、その動きに非常に大きな違いがある。
指を動かす筋は大別して2群に分けられる。1つは前腕筋群に属する屈筋(浅指屈筋、深指屈筋、長母指屈筋など)と、
伸筋(指伸筋、小指伸筋、長母指外転筋、短母指伸筋、長母指伸筋示指伸筋など)で、主として指の屈伸を行うもので、長くて大きい筋であるからカは強い。
もう1つは手筋群で、これは手掌のいろいろの部分から起こって指にいたるもので、約10種の小筋である。これらはたんなる指の屈伸よりは、
イ.指の内転、外転 ロ.指を向け合わせて近づける ハ.指を動かさずに中手関節だけを曲げる、等の動きがおもなるものである。すなわち、これらの筋の存在によって、
指がいろいろと微妙な動きをなすもので、手の動きにとっては非常に重要なものであるが、いずれも力の弱い小筋である。
①中手指節関節(球関節)における基節骨の屈曲
動き―手掌の中央(指のつけね)で物を握るように曲げる動き。
主働筋―虫様筋
協力筋―背側骨間筋、掌側骨間筋
②中手指節関節における基節骨の伸展
動き―屈曲された基節骨をもとに戻す動き。
主働筋―指伸筋、示指伸筋、小指伸筋
協力筋―背側骨間筋、長母指伸筋、短母指伸筋
③手の指節関節の屈曲(近位、遠位の指節関節―蝶番関節)
動き―基節骨と中節骨、中節骨と末節骨の2つに分けられ、手の指先を曲げる動き。
主働筋―浅指屈筋、深指屈筋
④指節間関節の伸展
動き―屈曲した指先を伸ばす。
主働筋―指伸筋、示指伸筋、小指伸筋
⑤指の内転・外転
動き―中手骨に対する指骨の動きで、指間をひろげたり(外転)、閉じたり(内転)する動き。
主働筋―外伝の場合は背側骨間筋、小指外転筋、内転の場合は掌側骨間筋
○母指の運動とその機能
母指の運動は、屈曲、伸展、外転、内転、対立の5つの運動からなる。
関節――手根中手関節(鞍状関節)、中手指節関節(球状関節)、指節間関節(蝶番関節)
①屈曲
主働筋―長母指屈節(指節関節)、短母指屈筋(中手指関節)
協力筋―母指内転節(中手指関節)、長母指屈節(中手指関節)
②伸展
主働筋―長母指伸筋(指節関節)、短母指伸筋(中手指節関節)
協力筋―短母指外転筋(中手指節関節)、短母指内転筋(中手指節関節)
③外転
主働筋―長母指外転筋、短母指外転筋
④内転
主働筋―母指内転筋、第一背側骨間筋
⑤対立
主働筋―母指対立筋、長母指外転筋、短母指外転筋、短母指屈筋
〔註〕母指の対立とは、母指の背面が橈側を、掌面が尺側を向いているので母指を橈側、掌側に移動させると、
母指の先端が半円形の軌跡を描いて手掌の前を尺側方向に動き、他の指と真正面から向き合う位置にまでくることができる。これを対立という。
× × ×
人類の祖先が4本足で匍匐をしておったときは、前肢も後肢もともに体を運ぶという同一目的をもっていたが、進化の途上、2本足歩行の直立姿勢の生活に移り、
前肢が歩くことから解放されて以後、前肢と後肢とはその任務も性格も大きく違ってきた。
上肢は巧微、正確、敏捷等の人間生活的な運動能力の特徴をもつようになった。「上手・下手」とか、「腕前拝見」「はたらき手」「敏腕家」「あの人は腕がいい」等の言葉が使われるように、
生活力、処生術等の意味にまで用いられている。
上肢帯の肩については、「肩で風を切る」「肩身がせまい」「双肩にかかっている」「肩をすぼめる」等、得意のとき、あるいは意気のあがらないときの表現によく使われている。
このように、人間を人間たらしめており、直接文化を築くのに役立っているのはこの前肢(上肢)である。
(次回は下肢の運動、胴体の運動について記す)
月刊ボディビルディング1974年11月号
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