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☆突然、日本にやってきたアメリカの女性ビルダー☆
ミス・カリフォルニア バフィ・セントジョン

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月刊ボディビルディング1981年2月号
掲載日:2020.04.01
ハッチ&ウイルソン体育センター・トレイナー 位田達穂
 東京・秋葉原にあるサンプレイ・トレーニング・センターは、宮畑豊会長をはじめ、石井・上原、佐藤関口といった全日本級の選手がたくさんいるジムとして有名であり、また、女性ビルダーを多数輩出していることでも知られている。
 最初は、パフィが仕事の関係で、熱海から新幹線で東京駅に着くのが9時半、それからトレーニングして、すぐまた熱海にとんぼ返りをしなければならないので、できるだけ東京駅から近いジムということでサンプレイにお願いすることにしたのだが、考えてみれば、近いだけでなく、パフィのトレーニングに関しても、まさに最適のジムを選んだことに気づいた。
 宮畑会長と私とは、初面識だったがその暖かい人柄と、親切さで私たちを迎えていただき、パフィもすっかり嬉んでしまった。

パフィのトレーニング法

 こうしてバフィは、10時にサンプレイに着き、約3時間トレーニングをしたあと、軽い昼食をとってすぐ東京駅から新幹線に乗るという、ハード・スケジュールをすることになった。
 ここで、彼女の経歴をちょっと紹介しておきたい。
 名前はパフィ・セントジョン、年齢は27歳、長身163cm、体重45kg。アメリカにいる時は、有名なヘルス・クラブでトレーナーをしており、おもに同僚のマンディ・タニーと2人でエアロビクス・トレーニング、レディス・エクササイズなどを教えているという。
 このマンディ・タニーの父、アーマン・タニーは、米国で幅広くヘルス・クラブを経営する大物として知られている。そして、このマンディ嬢の女らしく完成された肉体は、パフィにとって大きなトレーニング目標だったと、彼女自身が言っていた。
 パフィの練習内容は、私の見る限りでは、特別に目新しい点はなかった。ただ驚いたのは、時間さえ許せば、4時間でも5時間でも、いや6時間くらい、ぶっつづけで練習することであった。とてもレディス・エクササイズの運動量としては信じられないハードなものである。
 使用重量は、最初は軽い重量から開始して、徐々に重量を増し、最後は2~3回の反復がやっと出来るというレベルまで上げ、反復限界が近づくとチーティングを採用したり、さらに数回をパートナーの補助を借りてやるという方法である。また、これらはスーパー・セット方式で、ふつう、3日間で全身のトレーニングをするというスプリット・ルーティンをとっている。
 以上のトレーニング法を見ると、男性の一流ビルダーのトレーニング法と全く変わるところがない。
 彼女のやり方をもっと具体的にいうと、1つの筋肉部位に対する所要時間は約1時間で、採用種目は4~6種目である。種目間のインターバルは約5分間。ほとんどの運動が2.5~5kgずつ増量していくのでトレーニング・インターバルは、このウェイト交換の間だけである。
 また、練習中、トレーニングに対する意識の集中を大切にしている彼女にとって、まわりから話かけられて、気が散るのを極端に嫌う。だから、パフィがアメリカでトレーナーをしているときは、トレーナーとしての時間と、自分の練習時間をきっちり分けているため、両方で1日合計12時間以上もへルス・クラブで体を動かしている計算になる。普通のスタミナなら、こんな生活は、おそらく3日も続けられないだろう。
 彼女が働くヘルス・クラブ「ホリディ・スパ」は、男性・女性の両方が練習できるので、会員の中にはミスター日本クラスの男性ビルダーもいるとのことで、さすがボディビルの本場の話は何から何まで興味深く面白いものだった。
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ボディビルに対する偏見

 パフィ自身の練習には、男性コーチがついていて、いつも食事やトレーニングについて細かいアドバイスをしてくれるそうだ。先日、その男性コーチから手紙がきて、日本でのパフィの食事内容やコンディションの状態を詳しく書いてアメリカに送ってくれるようにと言ってきた。
 パフィの話によると、彼女のコーチはすごく立派な体をしているそうで、とくに、食事のとり方が徹底しているというのだ。彼は魚(マグロやカツオなど)と野菜だけで何年間もやってきたのだが、最近、魚類に含まれている水銀で中毒症状になってしまったという話だが、果たして真相はどうか?
 以前、日本でも、魚の水銀汚染が問題になったが、その男性コーチの症状は、水銀だけでなく、ひどい偏食も原因の1つではないかと思う。すべてスピード時代のこの世の中、少しでも早く効果を得ようとして、極端に片寄った食事をとったり、無茶なトレーニングをすると、いつか必ずその反動がくる。ボディビルというものは、コツコツと長期にわたって努力することによって、肉体的にも精神的にも逞しくなる。その良さを忘れてはならない。
 外国の一部のビルダーが、ステロイドなどの薬品を使っているといううわさを耳にするが、たとえ薬を使わないにしても、あまりにも常識はずれの食事などをしていると、とかくボディビルに偏見をもつ人たちから批判されることになる。
 「ボディビルでつくった人工的な体は、優康上、有害であるばかりでなく運動能力もない」「注射をしなければあんな体ができるはずはない」「女性もボディビルをやっているけど、女性の体は注射以外で筋肉がつくことはない」等々、永年にわたって、ジックリとトレーニングに汗を流している多くのビルダーのいることを、案外知らない人が多いようだ。
 長い歴史をもつボディビルに対する偏見は、我々ビルダーが、行動をもって、その偏見を打ち破る以外にない。そして、男女両方のボディビルが世の中で認められない限り、この偏見も消えないと思う。私は過去10年以上も、正しい方向で女性のボディビルが日本で発展してくれることを願っていた。たまたま一昨年から実施されはじめた全日本実業団ミス・ボディコンテストが大いにマスコミに受けているが、これが一時のブームに終らないよう、期待と不安の入りまじった複雑な気持で見守っている。

パフィ・セントジョンの夢

 アメリカでのパフィは、いつも大男のトレーニング仲間と一緒に練習しているという。とくに、あの有名なゴールド・ジムには彼女の友人がたくさんいるという。
 たとえば、元ビルダーで、今はコーチをしているグリムコウスキー、彼はまさに筋肉人間であり、あのルー・フェリーノさえコーチをしても不自然ではないだけの体を現在も持っているそうだ。
 また、パフィの友人には、大勢のトップ・ビルダーがおり、なんと、なんと彼女が最も親しくしていた人は、数年前、IFBBオールジャパン・コンテストのゲスト・ポーザーとして来日した某ビルダーだということだ。
 いま、アメリカでは“超人ハルク”の映画版が製作中で、ゴールド・ジムの多くのビルダーがそれに楽しく出演しており、また、シュワルツェネガーも、映画“コナン”の撮影に入っており、フェンシングやモダン・バレーの練習をしているそうだ。
 これらの映画が日本でも上映されることを期待したいが、以前、米国で大ヒットしたビルダー映画“パンピング・アイアン”が日本で上映されなかったのを考えると、これらの映画も見ることが出来ないかも知れない。“パンピング・アイアン”が米国で上映された当時、ボクシング映画“ロッキー”も上映されており、向うではともに大ヒットして同じレベルで興業収入をあげたといわれる。
 ところが“ロッキー”は日本でも上映されて大ヒットしたが、“パンピング・アイアン”はいまもって日本で上映されるという話はきかない。日本の映画輸入業者や配給会社は、ボディビルを扱った映画なんて、一般にはウケないだろうと、これまた独断と偏見で決めつけてしまっているようだ。

アメリカにもまだある偏見

 では、米国人の中には、ボディビルに対する偏見がまったくないのかと言えば、必ずしもそうではないらしい。そのへんの事情についてパフィは次のように語っている。
『米国の男性ビルダーの一部の人たちは、女性のボディビルに対しては、その有効性、必要性は認めながらも、自分の彼女にはボディビルをさせたくないと言います。
 その上、不思識なことに、ボディビルを実施している女性自身たちが、まだ完全にはボディビルを理解していないのではないかと思う。というのは、試行錯誤しながらトレーニングを行なっている女性が多いように思えるからです。
 女性のボディ・コンテストに出場するような、すごい筋肉の体にはなりたくないが、ウエストをもっと引きしめて、適当にシェイプ・アップしたいと願っている女性が多いのですが、その人たちが、バーベルやダンベルを見ただけで、まず口から出るのは“こんな器具を使って運動すれば、ゴツゴツした筋肉の体になるからイヤだ”といいます。しかし、私は、タンベルやバーベルを見ただけで筋肉の大きくなった人をまだ見たことはありません。
 そして、練習したあと「やっぱりこれでは筋肉ゴツゴツになりそうで、こわい”といいます。ここでも、やはり私は、たった1日の練習で筋肉が盛り上がった人を見たことはありません。多かれ少なかれ、まだまだ、一般社会の人はボディビルに対して偏見を持っているようです……』
 パフィの言うとおり、ボディビルシェイプ・アップしようと決心してスタートした女性でも、こんな気持が潜在的にあるのだから、指導する側に、深い知識と経験がなければ、女性が安心してウェイト・トレーニングをすることはできないと思う。
 ミス実業団コンテストに出場した女性の中には、明らかにボディビルで美しい体型をつくったと思われる人が何人かいた。このコンテストの模様をテレビや週刊誌で見た私の知人がこう言った。
『あれが何故ボディビルなんですかね。普通の人とどこが変っているのか全然わからない。それに、テレビで見た外国の女性ビルダーと比較して、あまりに違いすぎます』
 外国の女性ビルダーとの違いはともかくとして、普通の人と変っていないという点については、私は、それでいいと思う。興味本位に、男性ビルダーのようなゴツゴツした筋肉を女性に期待するのが間違っている。女性らしい美しい体型にするのが、女性のボディビルなのだから。
 パフィの日本での話に戻そう。彼女はクラブ歌手という仕事がら、トレーニング時間が変則になりがちだが、宮畑会長の特別の配慮で楽しいトレーニングをつづけていた。しかし、それもまたまた九州への出演が決まり、サンプレイでのトレーニングを一時中断しなければならなくなった。
 その後、ホンコン、大阪と仕事がつづき、1ヵ月以上、東京に戻ることがきず、彼女自身、トレーニングが出来ないことを非常に残念がっていた。これを聞いた宮畑会長は、大阪なら私の友人でいい人がいるから、ぜひそこでトレーニングしなさい、といって紹介してくれたのが、ミスター・ユニバース、杉田茂氏であった。パフィも大喜びで、早速、杉田さんを訪れたのはいうまでもない。
 パフィの練習を見ていて感じることは、あれほど重いウェイトを使ってハードな練習をしていても、男性ビルダ一のように筋肉が盛りあがってくるということは決してないということである。
 とくに彼女の場合、バック・プレスやアーム・カールを出来るだけ重いウエイトにして、精一杯がんばっていながら、依然として女性らしい曲線を維持している。もちろん、マスキュラー・ポーズなどをすれば、かなり筋肉も浮きあがってくるが、リラックス状態の時は、ほんとうに女らしい姿態であることはいうまでもない。
 どうか、日本の女性たちも、ボディビルに対する誤解や偏見にとらわれることなく、勇気をもって、肥満防止、シェイプ・アップに効果のあるボディビルを実践してもらいたいと思う。
月刊ボディビルディング1981年2月号

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