なんでもQ&Aお答えします 1981年2月号
月刊ボディビルディング1981年2月号
掲載日:2020.03.30
前鋸筋の発達とチンニングの手幅、上腕三頭筋に効かすプッシュ・アップの方法
Q ボディビル歴は10ヵ月です。開始当初から自宅で1人でトレーニングしております。そのようなわけで、トレーニング法について実地に指導を受ける機会もなく、分らないことがいろいろあります。
その中で、当面知りたいことを3つほど記述しますので、できるだけ詳しく説明していただきたいと思います。
①一流ビルダーの体を見ると、大胸筋の斜め下、ワキに寄ったところに、細かく隆起した2、3の筋肉がありますが何という筋肉でしょうか。また、その筋肉を発達させるにはどんな運動を行えばよいのでしょうか。
②チンニングの運動で、グリップの間隔をワイドにするのとナロウにするのとでは、効果の面でどのように違うのでしょうか。
③プッシュ・アップが上腕三頭筋の発達に効果があるということを聞きましたが、具体的にどのような点に留意して運動すればよいでしょうか。
(山梨県大月市 菅野洋一 34歳)
その中で、当面知りたいことを3つほど記述しますので、できるだけ詳しく説明していただきたいと思います。
①一流ビルダーの体を見ると、大胸筋の斜め下、ワキに寄ったところに、細かく隆起した2、3の筋肉がありますが何という筋肉でしょうか。また、その筋肉を発達させるにはどんな運動を行えばよいのでしょうか。
②チンニングの運動で、グリップの間隔をワイドにするのとナロウにするのとでは、効果の面でどのように違うのでしょうか。
③プッシュ・アップが上腕三頭筋の発達に効果があるということを聞きましたが、具体的にどのような点に留意して運動すればよいでしょうか。
(山梨県大月市 菅野洋一 34歳)
A ずっと1人でトレーニングしておられるそうですが、できたら何人かトレーニング仲間を探して、研究しながらやられることをおすすめします。では、さっそく質問にお答えすることにします。
①あなたがいわれる筋は前鋸筋といいます。ノコギリ状の形をしているところから、そのような名称が付されたのですが、この筋は、肋骨から肩甲骨に付着しており、僧帽筋に拮抗して働きます。
したがって、この筋の発達を促すのには、僧帽筋および三角筋(三角筋は僧帽筋に協応して働く)の運動が有効ということになります。しかし、ある程度重点的に前鋸筋の発達を促すには、同じ僧帽筋や三角筋の運動であっても、どちらかといえば重量を肩のうしろで挙上するよりは前方で挙上する運動のほうが有効であると考えられます。実際的な方法としては、フロント・プレスやフロント・レイズ等の運動を行うのがよいといえます。
②チンニングの運動は、ビハインド・ネック、ベント・バックなどの様式によっても効果のあり方が異なってきます。したがって、グリップの間隔だけの問題として、その効果についてお答えできない面があります。
とはいうものの、実際にはそれぞれの様式による効果の面での傾向というものがあるのも事実です。そこで、まずいろいろのやり方と、その効果の傾向について分類してみましょう。
①ワイド・グリップによる方法
広背筋の上部と大円筋
②ナロウ・グリップによる方法
広背筋全体。完全に体を引き上げれば下部に強く効く
③ビハインド・ネックによる方法
広背筋の上部、大円筋
④ベント・バックによる方法
広背筋の下部にとくに有効
さらに、チンニングの運動は、その動作範囲、つまり、下半分に重点を置いて行うか、あるいは、上半分(完全に体を引き上げること)に重点を置いて行うかによって、使用筋に及ぼす効果が変ってきます。
したがって、チンニングの運動による効果というものは、いろいろの要素を複合的にとらえて判断しなければならないといえるでしょう。
③プッシュ・アップという運動は、その運動としてのポイントをとらえて行えば、上腕三頭筋の発達を促すのに非常に有効な運動であるといえます。そして、上腕三頭筋の運動としてのプッシュ・アップのやり方には大きく分けて、①ナロウ・グリップによる方法、②ハンズ・パラレルによる方法の2つがあります。
前者は、どちらかといえば外側頭に対する有効度が高く、また後者は長頭に対する有効度が高いといえます。
では運動のやり方を具体的な説明をしましょう。
①あなたがいわれる筋は前鋸筋といいます。ノコギリ状の形をしているところから、そのような名称が付されたのですが、この筋は、肋骨から肩甲骨に付着しており、僧帽筋に拮抗して働きます。
したがって、この筋の発達を促すのには、僧帽筋および三角筋(三角筋は僧帽筋に協応して働く)の運動が有効ということになります。しかし、ある程度重点的に前鋸筋の発達を促すには、同じ僧帽筋や三角筋の運動であっても、どちらかといえば重量を肩のうしろで挙上するよりは前方で挙上する運動のほうが有効であると考えられます。実際的な方法としては、フロント・プレスやフロント・レイズ等の運動を行うのがよいといえます。
②チンニングの運動は、ビハインド・ネック、ベント・バックなどの様式によっても効果のあり方が異なってきます。したがって、グリップの間隔だけの問題として、その効果についてお答えできない面があります。
とはいうものの、実際にはそれぞれの様式による効果の面での傾向というものがあるのも事実です。そこで、まずいろいろのやり方と、その効果の傾向について分類してみましょう。
①ワイド・グリップによる方法
広背筋の上部と大円筋
②ナロウ・グリップによる方法
広背筋全体。完全に体を引き上げれば下部に強く効く
③ビハインド・ネックによる方法
広背筋の上部、大円筋
④ベント・バックによる方法
広背筋の下部にとくに有効
さらに、チンニングの運動は、その動作範囲、つまり、下半分に重点を置いて行うか、あるいは、上半分(完全に体を引き上げること)に重点を置いて行うかによって、使用筋に及ぼす効果が変ってきます。
したがって、チンニングの運動による効果というものは、いろいろの要素を複合的にとらえて判断しなければならないといえるでしょう。
③プッシュ・アップという運動は、その運動としてのポイントをとらえて行えば、上腕三頭筋の発達を促すのに非常に有効な運動であるといえます。そして、上腕三頭筋の運動としてのプッシュ・アップのやり方には大きく分けて、①ナロウ・グリップによる方法、②ハンズ・パラレルによる方法の2つがあります。
前者は、どちらかといえば外側頭に対する有効度が高く、また後者は長頭に対する有効度が高いといえます。
では運動のやり方を具体的な説明をしましょう。
◎ナロウ・グリップによる方法(ナロウ・グリップ・プッシュ・アップ)
くかまえ>両手の間隔を肩幅よりも狭くして、腕立ての姿勢をとる。この場合、体を支える両手のかまえは、八の字をなすようにする。
<動作>胸(大胸筋)の力をできるだけ使わずに、腕だけで体重を支える感じで両肘を屈する。肘を伸ばすときも、屈するときと同様に、できるだけ大胸筋の力を使わずに、腕だけの力で伸ばすようにする。
また、腕を屈曲したとき、胸が両腕の間に沈まないように留意する。このようなやり方は上腕三頭筋に対する効果を半減させる。[写真参照]
<動作>胸(大胸筋)の力をできるだけ使わずに、腕だけで体重を支える感じで両肘を屈する。肘を伸ばすときも、屈するときと同様に、できるだけ大胸筋の力を使わずに、腕だけの力で伸ばすようにする。
また、腕を屈曲したとき、胸が両腕の間に沈まないように留意する。このようなやり方は上腕三頭筋に対する効果を半減させる。[写真参照]
◎ハンズ・パラレルによる方法(プッシュ・アップ・ウイズ・ハンズ・パラレル)
<かまえ>両手の間隔を肩幅よりもいくぶん狭くして、腕立ての姿勢をとる。この場合の両手のかまえは、前に説明したナロウ・グリップの場合とちがって、左右の手が並行をなすようにする。
<動作>両肘を内方向へしぼるようにして、左右の手と前腕が常に並行を保つように留意して、腕を屈する。腕を屈したときは、やはり、胸を両腕の間に沈めないように注意する。
大胸筋の運動としてではなく、上腕三頭筋の運動としてプッシュ・アップを行う場合には、できるだけ体重を腕で支えるようにするのがポイントである。[写真参照]
以上が、上腕三頭筋のためのプッシュ・アップのやり方ですが、腕の力が弱い場合には、両手を台の上について行うとか、または、両膝を床についた姿勢で行うとかして、体重を軽減して運動をするとよいでしょう。
<かまえ>両手の間隔を肩幅よりもいくぶん狭くして、腕立ての姿勢をとる。この場合の両手のかまえは、前に説明したナロウ・グリップの場合とちがって、左右の手が並行をなすようにする。
<動作>両肘を内方向へしぼるようにして、左右の手と前腕が常に並行を保つように留意して、腕を屈する。腕を屈したときは、やはり、胸を両腕の間に沈めないように注意する。
大胸筋の運動としてではなく、上腕三頭筋の運動としてプッシュ・アップを行う場合には、できるだけ体重を腕で支えるようにするのがポイントである。[写真参照]
以上が、上腕三頭筋のためのプッシュ・アップのやり方ですが、腕の力が弱い場合には、両手を台の上について行うとか、または、両膝を床についた姿勢で行うとかして、体重を軽減して運動をするとよいでしょう。
[ナロウ・グリップ・プッシュ・アップ]
[プッシュ・アップ・ウイズ・ハンズ・パラレル]
大胸筋と三角筋の形を整えるために有効な運動種目
Q ボディビル歴は約3年です。ここ半年ほどはトレーニングがマンネリぎみで、体もあまり変っていません。そのようなわけでこの際、トレーニングの内容を変えてみようかと考えています。
自分としては、これから夏にかけてバルクを増やすというよりも、見ばえのある体にしていきたいと考えています。とくに大胸筋と三角筋の形を整えたいと思っています。
ついては、そのための運動種目を自分なりに考えてみましたが、種目が多くなりすぎて、どうしても採用種目がしぼれません。胸・肩ともに5種目程度を採用してトレーニングしたいと考えているのですが、上述のことを考慮して、下記の中から選んでいただきたいと思います。
≪胸の運動≫
①ベンチ・プレス
②ダンベル・ベンチ・プレス
③インクライン・プレス
④デクライン・プレス
⑤ディップ
⑥ベント・アーム・プルオーバー
⑦ストレート・アーム・プルオーバー
⑧ラタラル・レイズ・ライイング
⑨インクライン・ラタラル・レイズ
≪肩の運動≫
①フロント・プレス
②フロント・レイズ
③スタンディング・ロー
④サイド・レイズ
⑤バック・プレス
⑥ダンベル・プレス
⑦シュラッグ
なお、私の現在の体位は次のとおりです。
身長 163cm 胸囲 93cm
体重 62kg 腹囲 69cm
上腕囲 37cm 大腿囲 56cm
前腕囲 31cm 下腿囲 39cm
(三重県 T・Y 会社員 24歳)
自分としては、これから夏にかけてバルクを増やすというよりも、見ばえのある体にしていきたいと考えています。とくに大胸筋と三角筋の形を整えたいと思っています。
ついては、そのための運動種目を自分なりに考えてみましたが、種目が多くなりすぎて、どうしても採用種目がしぼれません。胸・肩ともに5種目程度を採用してトレーニングしたいと考えているのですが、上述のことを考慮して、下記の中から選んでいただきたいと思います。
≪胸の運動≫
①ベンチ・プレス
②ダンベル・ベンチ・プレス
③インクライン・プレス
④デクライン・プレス
⑤ディップ
⑥ベント・アーム・プルオーバー
⑦ストレート・アーム・プルオーバー
⑧ラタラル・レイズ・ライイング
⑨インクライン・ラタラル・レイズ
≪肩の運動≫
①フロント・プレス
②フロント・レイズ
③スタンディング・ロー
④サイド・レイズ
⑤バック・プレス
⑥ダンベル・プレス
⑦シュラッグ
なお、私の現在の体位は次のとおりです。
身長 163cm 胸囲 93cm
体重 62kg 腹囲 69cm
上腕囲 37cm 大腿囲 56cm
前腕囲 31cm 下腿囲 39cm
(三重県 T・Y 会社員 24歳)
A 体位から判断すると、かなり立派な体をしておられるようですね。年令も24歳と若いので、精進次第では、ビルダーとして大成することも夢ではないと思います。
さて、あなたのご質問の件ですが、このような場合には、できるだけ写真を同封していただきたいと思います。そのほうがより適切なアドバイスができるからです。
そのようなわけで、今回はあなたの現在の胸と肩の形を知るための資料がないので、それぞれの種目の選択に当っては、最も常識的と考えられる方法で選ぶことにします。
さて、あなたのご質問の件ですが、このような場合には、できるだけ写真を同封していただきたいと思います。そのほうがより適切なアドバイスができるからです。
そのようなわけで、今回はあなたの現在の胸と肩の形を知るための資料がないので、それぞれの種目の選択に当っては、最も常識的と考えられる方法で選ぶことにします。
≪胸の運動≫
①ベンチ・プレス
(基礎種目、バルクの増加)
②ダンベル・ベンチ・プレス
(大胸筋全体の形を整える)
③インクライン・プレス
(大胸筋の上部の発達を促す)
④デクライン・プレスまたはディップ
(大胸筋の下部の発達を促す)
⑤ラタラル・レイズ・ライイング、またはストレート・アーム・プルオーバー(胸郭の拡張)
(基礎種目、バルクの増加)
②ダンベル・ベンチ・プレス
(大胸筋全体の形を整える)
③インクライン・プレス
(大胸筋の上部の発達を促す)
④デクライン・プレスまたはディップ
(大胸筋の下部の発達を促す)
⑤ラタラル・レイズ・ライイング、またはストレート・アーム・プルオーバー(胸郭の拡張)
≪肩の運動≫
①フロント・プレス
(主に三角筋前部の発達を促す)
②バック・プレス
(主に三角筋後部の発達を促す)
③サイド・レイズ
(主に三角筋の横の部分に有効)
④シュラッグ
(僧帽筋の発達を促す)
もう1種目を採用するとすれば、三角筋全体の補強種目として、スタンティング・ローか、ダンベル・プレスのいずれかを加えればよいでしょう。
(主に三角筋前部の発達を促す)
②バック・プレス
(主に三角筋後部の発達を促す)
③サイド・レイズ
(主に三角筋の横の部分に有効)
④シュラッグ
(僧帽筋の発達を促す)
もう1種目を採用するとすれば、三角筋全体の補強種目として、スタンティング・ローか、ダンベル・プレスのいずれかを加えればよいでしょう。
腕や脚の発達が左右アンバランスだが
Q ボディビルを始めてから約6ヵ月になります。おかげで、今では人からも体を少しはほめられるほどになりました。しかし、だからといって、現在の体に自分で満足しているわけではありません。それどころか、もっと大きくなりたいと思っています。
それにもう1つ、気になることがあというのは、体の発達が左右アンバランスのことです。とくに腕や脚の大きさがかなり違うのです。これを矯正する何か良い方法はないものでしょうか。
≪現在の体位≫
身長 170cm 前腕囲(右) 27.2cm
体重 59.5kg 前腕囲(左) 25cm
胸囲 92cm 大腿囲(右) 58.5cm
上腕囲(右) 35cm 大腿囲(左) 56cm
上腕囲(左) 32cm 腹囲 70cm
そこで、次の2点にしぼって詳しく説明していただきたいと思います。
①左右のアンバランスはどうしてできるのか、その原因について教えてください。
②左右の筋肉のアンバランスを矯正するにはどのようにしたらよいでしょうか。
(大阪府堺市 M・F 高校1年)
それにもう1つ、気になることがあというのは、体の発達が左右アンバランスのことです。とくに腕や脚の大きさがかなり違うのです。これを矯正する何か良い方法はないものでしょうか。
≪現在の体位≫
身長 170cm 前腕囲(右) 27.2cm
体重 59.5kg 前腕囲(左) 25cm
胸囲 92cm 大腿囲(右) 58.5cm
上腕囲(右) 35cm 大腿囲(左) 56cm
上腕囲(左) 32cm 腹囲 70cm
そこで、次の2点にしぼって詳しく説明していただきたいと思います。
①左右のアンバランスはどうしてできるのか、その原因について教えてください。
②左右の筋肉のアンバランスを矯正するにはどのようにしたらよいでしょうか。
(大阪府堺市 M・F 高校1年)
A ボディビルを始めて、まだ6ヵ月とのことですが、開始前の体のサイズ、とくに左右の腕や脚のサイズがわかれば、もっと適切な回答ができたと思います。
<1>左右アンバランスの筋の矯正法
腕や脚のサイズが左右ちがうというのは、それほどめずらしいことではありません。むしろ、左右が同じサイズという人よりも、多少ちがっている人のほうが多いといえると思います。しかし、それにしても、あなたの場合は自分でも気にしておられるとおり、左右のちがいが大きすぎるという感じがします。
それでも、大腿囲の方は、大腿そのものの太さから考えれば、2.5cmくらいのちがいはさして気にやむほどのこともないかもしれません。しかし、上腕囲の3cmと前腕囲の2.2cmは、上腕と前腕そのものの太さから考えて少々問題があるように思われます。
あなたの場合、このようなアンバランスが生じたのは、いつごろからでしょうか。ボディビルを始めてからか、それとも、それ以前からのことでしょうか。もしも、ボディビルのトレーニングを始めてからのことであるとすればそれは、今まで行なってきた運動のやり方自体に誤りがあったものと考えられます。
また、かりに、ボディビルを始める以前から、左右の大きさが今のようにちがっていたものならば、今後は、なんらかの方法によってそれを矯正するように努めなければなりません。
それでは、具体的に矯正法について述べる前に、もう少し掘り下げて、前者の場合の原因について考えてみることにしましょう。まず考えられるのは次の3つです。
①運動のフォームと動作が左右対称でないために、負荷が左右同じようにかからない。
②左と右の運動量が違う。
③左右どちらか一方の休養が不十分。
では、これら3つのことがらについて、順に説明します。
①運動のフォームと動作について
程度にもよりますが、バーベルの運動では左右均等に、また、ダンベルの運動では左右に同じように負荷をかけるようにしないと、体の発達がアンバランスになります。このことは至極あたりまえのことですが、意外とこの判りきったことを無視している人が多いようです。また運動としてのフォームを度外視して、ただ重量をあげることだけにこだわるあまりに、そのような誤りを犯しているものと思われます。
つまり、重量をあげるのに、筋力の弱い方をかばったり、バーベル運動では筋力の強い方に負荷を余分にかけたり、また、ダンベル運動では悪い意味でのチートした動作(ごまかしの動作)で運動を行うようにするので、そのために運動のフォームと動作が左右異なってしまうものと考えられます。そして、このような傾向が著しいときは、原因と結果が悪循環となり、ますます左右の発達に差異を生じさせてしまうことにもなります。
②左と右の運動量の違い
左と右の運動量が違うことによっても左右の発達に差異が生じます。このことは、必ずしも,発達の弱い側の運動量が少ない場合だけとは限りません。発達の弱い側の運動量が多すぎることによっても同様の結果になることがあります。つまり、運動量が多すぎるために、かえって筋が過度に消耗してしまい、発達が得られなくなる場合もあります。
③左右どちらか一方の休養が不十分
なんらかの理由によって、一方の側の休養が不十分になる場合にも左右の発達に差異が生じることがあります。たとえば、仕事などの関係で一方の側の筋を使いすぎるため、そちら側だけ休養不足になって発達が阻害されるということもあります。
初・中級者の場合にはあまり見かけませんが、上級者になると、利き腕よりも、利き腕ではない腕の方が太いという人をよく見かけます。
これは、腕のトレーニング量が増加されるにつれ、日常的な生活の中でより使われている利き腕の休養が不十分な状態になってくることによります。
それでも、大腿囲の方は、大腿そのものの太さから考えれば、2.5cmくらいのちがいはさして気にやむほどのこともないかもしれません。しかし、上腕囲の3cmと前腕囲の2.2cmは、上腕と前腕そのものの太さから考えて少々問題があるように思われます。
あなたの場合、このようなアンバランスが生じたのは、いつごろからでしょうか。ボディビルを始めてからか、それとも、それ以前からのことでしょうか。もしも、ボディビルのトレーニングを始めてからのことであるとすればそれは、今まで行なってきた運動のやり方自体に誤りがあったものと考えられます。
また、かりに、ボディビルを始める以前から、左右の大きさが今のようにちがっていたものならば、今後は、なんらかの方法によってそれを矯正するように努めなければなりません。
それでは、具体的に矯正法について述べる前に、もう少し掘り下げて、前者の場合の原因について考えてみることにしましょう。まず考えられるのは次の3つです。
①運動のフォームと動作が左右対称でないために、負荷が左右同じようにかからない。
②左と右の運動量が違う。
③左右どちらか一方の休養が不十分。
では、これら3つのことがらについて、順に説明します。
①運動のフォームと動作について
程度にもよりますが、バーベルの運動では左右均等に、また、ダンベルの運動では左右に同じように負荷をかけるようにしないと、体の発達がアンバランスになります。このことは至極あたりまえのことですが、意外とこの判りきったことを無視している人が多いようです。また運動としてのフォームを度外視して、ただ重量をあげることだけにこだわるあまりに、そのような誤りを犯しているものと思われます。
つまり、重量をあげるのに、筋力の弱い方をかばったり、バーベル運動では筋力の強い方に負荷を余分にかけたり、また、ダンベル運動では悪い意味でのチートした動作(ごまかしの動作)で運動を行うようにするので、そのために運動のフォームと動作が左右異なってしまうものと考えられます。そして、このような傾向が著しいときは、原因と結果が悪循環となり、ますます左右の発達に差異を生じさせてしまうことにもなります。
②左と右の運動量の違い
左と右の運動量が違うことによっても左右の発達に差異が生じます。このことは、必ずしも,発達の弱い側の運動量が少ない場合だけとは限りません。発達の弱い側の運動量が多すぎることによっても同様の結果になることがあります。つまり、運動量が多すぎるために、かえって筋が過度に消耗してしまい、発達が得られなくなる場合もあります。
③左右どちらか一方の休養が不十分
なんらかの理由によって、一方の側の休養が不十分になる場合にも左右の発達に差異が生じることがあります。たとえば、仕事などの関係で一方の側の筋を使いすぎるため、そちら側だけ休養不足になって発達が阻害されるということもあります。
初・中級者の場合にはあまり見かけませんが、上級者になると、利き腕よりも、利き腕ではない腕の方が太いという人をよく見かけます。
これは、腕のトレーニング量が増加されるにつれ、日常的な生活の中でより使われている利き腕の休養が不十分な状態になってくることによります。
◎左右のアンバランスを矯正するための要点および方法
ⓐ原因について考える
どのようなことが原因になっているのか、それを究明することは、矯正のための適切な方法を導き出す上で必要なことです。
ⓑ運動のフォームおよび動作に不備な点があればこれを正すバーベルの運動の場合は、シャフトの中心に印をつけ、それが体の中心線からはずれないように留意して動作を行うようにする。また、運動中に、バーベルが常に水平を保ち、斜めにならないように注意する。
ダンベルの運動の場合は、フォームと動作が常に左右対称になるように留意する。オールターニットの場合とワン・ハンドの場合は、とくに留意する。
運動というものは、重量を支える支点(カールなどでは肘)の位置が少しずれたり、あるいは、ちょっと向きが変ったりするだけでも、使用筋に対する負荷のかかり方が変化してしまう。したがって、左右の発達の差異を矯正するためには、できるだけこまかい点まで動作を観察する必要がある。
ⓒ左右の運動量が均等でない場合
なんらかの理由によって、左右の運動量が均等でない場合は、ただちにこのような状態を改めるようにしたほうがよい。
この場合、採用する運動の量は、筋力的に、また、疲労の回復力の面で劣っている側に負担とならない範囲にする。強い側に運動量を合わせると、劣っている側が過度に消耗して、かえって逆効果になるおそれがある。
左右の発達の差異をなくすためにわざわざ発達の劣っている側の運動を余分に行なっている人もいるが、このような方法は意外と成果があがらない。
筋の発達というものが、元来、トレーニングの量と比例して得られるものでないことを知れば、そのような方法が必ずしもよい方法であるといえないことが理解できると思う。
ⓓ左右の休養が不均等の場合
一方の側が、他方よりも休養不足と感じられる場合は、消耗を軽減するために運動量を少なくする。
わかりきったことではあるが、休養が不十分な状態では筋の発達は得られない。たまたま一方の側のみが休養不足になるときは、その発達において左右に差異を生じることになる。したがって、運動だけでなく、仕事なども含めた日常の生活において、左右の消耗度に著しい違いがある場合は、その消耗度を軽減するために、運動の量を少なくする必要がある。もとよりこの場合は、片方の側だけでなく、双方の運動量を相対的に減らすようにする。
以上、要点について述べましたが、体の発達における左右の差異を矯正していくためには、まず発達の劣った側の筋肥大を一義的に考え、他方の側の大きさに少しでも近づけるように努めることが大切です。
したがって、ある程度得心がいく状態に左右の差異が矯正されるまでは、他方の筋肥大(発達)をたな上げするくらいの気持も必要です。さもないと左右のアンバランスが矯正されないまま、双方ともが筋肥大してしまうことになります。そのような意味では、左右対称をなすフォームと動作で運動を行うためにときには他方の側にとって、たとえ負荷が軽すぎると感じられることがあっても、発達の劣った側の筋力に合わせて、使用重量を軽くすることも必要になります。
なお、ワン・ハンドで行う運動の場合は、まず筋力の弱い側の運動を行いその後で、同じ重量で他方(筋力の強い側)の運動を同回数行うようにします。要は、筋力の強い側に与える負荷と刺激を、筋力の弱い側と同じにするということです。
[回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生]
どのようなことが原因になっているのか、それを究明することは、矯正のための適切な方法を導き出す上で必要なことです。
ⓑ運動のフォームおよび動作に不備な点があればこれを正すバーベルの運動の場合は、シャフトの中心に印をつけ、それが体の中心線からはずれないように留意して動作を行うようにする。また、運動中に、バーベルが常に水平を保ち、斜めにならないように注意する。
ダンベルの運動の場合は、フォームと動作が常に左右対称になるように留意する。オールターニットの場合とワン・ハンドの場合は、とくに留意する。
運動というものは、重量を支える支点(カールなどでは肘)の位置が少しずれたり、あるいは、ちょっと向きが変ったりするだけでも、使用筋に対する負荷のかかり方が変化してしまう。したがって、左右の発達の差異を矯正するためには、できるだけこまかい点まで動作を観察する必要がある。
ⓒ左右の運動量が均等でない場合
なんらかの理由によって、左右の運動量が均等でない場合は、ただちにこのような状態を改めるようにしたほうがよい。
この場合、採用する運動の量は、筋力的に、また、疲労の回復力の面で劣っている側に負担とならない範囲にする。強い側に運動量を合わせると、劣っている側が過度に消耗して、かえって逆効果になるおそれがある。
左右の発達の差異をなくすためにわざわざ発達の劣っている側の運動を余分に行なっている人もいるが、このような方法は意外と成果があがらない。
筋の発達というものが、元来、トレーニングの量と比例して得られるものでないことを知れば、そのような方法が必ずしもよい方法であるといえないことが理解できると思う。
ⓓ左右の休養が不均等の場合
一方の側が、他方よりも休養不足と感じられる場合は、消耗を軽減するために運動量を少なくする。
わかりきったことではあるが、休養が不十分な状態では筋の発達は得られない。たまたま一方の側のみが休養不足になるときは、その発達において左右に差異を生じることになる。したがって、運動だけでなく、仕事なども含めた日常の生活において、左右の消耗度に著しい違いがある場合は、その消耗度を軽減するために、運動の量を少なくする必要がある。もとよりこの場合は、片方の側だけでなく、双方の運動量を相対的に減らすようにする。
以上、要点について述べましたが、体の発達における左右の差異を矯正していくためには、まず発達の劣った側の筋肥大を一義的に考え、他方の側の大きさに少しでも近づけるように努めることが大切です。
したがって、ある程度得心がいく状態に左右の差異が矯正されるまでは、他方の筋肥大(発達)をたな上げするくらいの気持も必要です。さもないと左右のアンバランスが矯正されないまま、双方ともが筋肥大してしまうことになります。そのような意味では、左右対称をなすフォームと動作で運動を行うためにときには他方の側にとって、たとえ負荷が軽すぎると感じられることがあっても、発達の劣った側の筋力に合わせて、使用重量を軽くすることも必要になります。
なお、ワン・ハンドで行う運動の場合は、まず筋力の弱い側の運動を行いその後で、同じ重量で他方(筋力の強い側)の運動を同回数行うようにします。要は、筋力の強い側に与える負荷と刺激を、筋力の弱い側と同じにするということです。
[回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生]
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