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なんでもお答えします Q&A 1980年9月号

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月刊ボディビルディング1980年9月号
掲載日:2019.10.31

シャフトと合計20kgのプレートで、胸・脚・広背筋に有効な運動法は?

〔質問〕

 僕は17歳の高校生です。ボディビルを始めてから1年ほど経ちます。からだつきもだいぶ逞しくなってきましたが、自宅で1人で行なっているので、器具が不足がちです。とくにプレートの絶対量が足りないことで悩んでいます。現在、バーベル・シャフト1本、ダンベル・シフト1対、そしてプレートは全部で20kg所有しているだけです。

 そこで次の3つの質問についてお答えください。

<1>ベンチ・プレスをやるのに、30kgのバーベルでは重量的に物足りないので、22.5kgの重量にダンベルを組んで、片方ずつ行なっています。このような方法でも大胸筋の発達を充分に促せるでしょうか。なお、他にもっとよい方法があったら教えていただきたいと思います。

<2>スクワットの場合も、使用重量の絶対量が足りません。使用重量の不足をカバーできる脚部のための運動があったら教えてください。

<3>ベント・オーバー・ローイングもやはり30kgのバーベルではもの足りません。片手で行う広背筋のための種目をご紹介ください。

(東京都 木田重吉 高校生 17歳)
〔答〕

 はじめに結論を申しますと、バーベル・シャフトとダンベル・シャフト、それにプレート20kgというのでは、あまり期待できないと思いますが、できるだけその範囲内で効果が期待できるやり方について順にお答えします。

<1>胸の運動法

 ダンベルを用いて片手だけでベンチ・プレスを行う場合は、重量を支えるグリップの位置が胸部の中央に近くなるので、運動中、大胸筋の伸展度が狭くなり、そのため、大胸筋に十分な刺激を広範囲に与えにくくなります。重量を支えるグリップの位置が胸部の中央に近くなると、大胸筋の外側に与える効果が減り、その反面、上腕三頭筋に効くようになります。

 したがって、どのみちダンベルを用いて運動を行うのであれば、片手で行うダンベル・ベンチ・プレスよりは、両手で行うラタラル・レイズ・ライイングの方がよいといえます。20kgのプレートを1対のダンベル・シャフトに分けて取り付けた場合、片方が12.5kgになりますが、ラタラル・レイズ・ライイングならばいまの重量でも充分な効果が期待できます。

◎ラタラル・レイズ・ライイング

<かまえ>ベンチに仰臥し、両手に持ったダンベルを、腕を伸ばして胸の上方に保持する。

<動作>肘を伸ばしたまま、あるいは肘をいくぶんまげた状態で、両腕を左右横へ広げ、ダンベルを床の方へおろす。十分に胸が広がったなら腕をつぼめてダンベルを元の位置に戻す。

<注意>ダンベルをあげ戻すとき、ダンベル・ベンチ・プレスのような動作にならないように留意する。

<呼吸>ダンベルをおろしながら息を吸い、あげ戻しながら吐く。

<2>脚の運動法

 片脚のスクワット(シングル・レッグ・スクワット)を行うとよい。この運動は順れないとバランスがとりにくいので、初めは床の上でやらないで、ベンチの上に乗って行うようにするとやりやすい。なお、脚の筋力が弱い場合は、空身でも充分効果が得られるが筋力が強くなってきたら、両手にダンベルをぶらさげて行うようにする。〔写真参照〕
〔シングル・レッグ・スクワット〕

〔シングル・レッグ・スクワット〕

<3>広背筋の運動

 これには次に説明するワン・ハンド・ローイングか、または、ワン・ハンド・レバレッジバー・ローイングが有効である。

◎ワン・ハンド・ローイング

<動作>バーベルで行うベント・オーバー・ローイングと同様な体勢でダンベルを用いて片手だけのローイングを行う。空いている方の手をベンチにつき、からだを支えるようにして行うと動作がやりやすい。

 なお、ダンベルを引きあげたときに、上体が起きないようにする。つまり、動作中、上体が床面と平行をなす状態で行うこと。〔写真参照〕
〔ワン・ハンド・ローイング〕

〔ワン・ハンド・ローイング〕

◎ワン・ハンド・レバレッジバー・ローイング

<かまえ>レバレッジバー(バーベル・シャフトの一方だけにプレートをつけた形状のもので、運動中にずれないように、他方の端を壁などに固定する)をまたがずに、シャフトの横に位置して、ベント・オーバー・ローイングと同様の姿勢をとる。

<動作>レバレッジバーの上端を片手でつかみ、体側で片手だけのレバレッジバー・ローイングを行う。この場合は、いくぶん上体を起こしぎみにして運動を行ってもよい。〔写真参照〕
〔ワン・ハンド・レバレッジバー・ローイング〕

〔ワン・ハンド・レバレッジバー・ローイング〕

トレーニングと胃腸のはたらきの関係

〔質問〕

 ボディビル歴は約7ヵ月。トレーニングを始めて以来、ずっと体調が良かったのですが最近、胃腸の調子がどうも思わしくないので、医師に診てもらったところ、別に悪いところもなく、ウェイト・トレーニングに原因があるのではないかといわれました。

 もし医師のいうとおりであるとすれば、ボディビルを続けていくことを考えなおさなければならないと考えていますが、そのようなことがあるのでしょうか。参考までに、現在の私の体位は次のとおりです。

身長  170cm  上腕囲 32cm
体重 68kg  大腿囲 53cm
腹囲 79cm

(茨城県 Y・T 17歳)
〔答〕

 手紙の文面では、医師にどのようにいわれたのかはっきりしたことがわかりませんが、ウェイト・トレーニングそのものが胃腸に悪い影響を与えるということは考えられませんので、あなたのトレーニングのやり方に問題があるのではないかと思います。

 食事後、あまり時間をおかずにトレーニングをやると、胃の調子がおかしくなることがあります。また、人によっては、過度な腹筋運動をすると下痢をしたりすることがあります。しかしあなたの場合、ウェイト・トレーニングに原因があるとすれば、それは、オーバー・ワークによるものではないかと考えられます。

 オーバー・ワークは、たんに運動能力を低下させるだけでなく、内臓器管の機能をも低下させます。

 したがって、オーバー・ワークによって胃腸の具合が悪くなるということは、多分にありうることです。そのように考えて、一応、トレーニングの量と強度、トレーニング時刻などをもう一度チェックしてみる必要があるでしょう。

 なお、栄養にこだわりすぎて、食事の面に不備がなかったかどうか、その点についてもチェックしてみる必要があると思います。

プルオーバーの正しい運動法

〔質問〕

 ボディビルを始めて1年になります。2ヵ月ほど前から下記のコースで胸部の強化トレーニングをしています。ところが、ストレート・アームとベント・アームとにかかわらずプルオーバーをすると肩がズキンと痛むことがあります。これは、運動のやり方に誤りがあるからでしょうか。肩を痛めないための正しいプルオーバーのやり方を教えてください。なお、プルオーバーを胸部のコースから除外しなければならないとしたら、その代わりにどのような種目を採用したらよいでしょうか。

<胸部のトレーニング・コース>
①ベンチ・プレス 4~6回×5セット

②インクライン・プレス 7~8回×3セット

③ベント・アーム・プルオーバー 8~10回×3セット

④ストレート・アーム・プルオーバー 8~10回×3セット

<現在の体位>
身長  167cm 腹囲 75cm
体重 64kg  上腕囲 34cm
胸囲 102cm  大腿囲 56cm

(青森市 岡本正雄 店員 22歳)
〔答〕

 あなたが運動を行なっているところを実際に見ておりませんので、確かなことはいえませんが、やはり運動のやり方に原因があるものと考えるのが妥当だと思います。したがって、そのような見地に立って、プルオーバーのより安全な方法と、その要点について説明します。

◎ベント・アーム・プルオーバー

①頭越しにバーベルを床の方へおろすときに、両肘を外側へひらかないようにする。いい方を変えれば、左右の上腕部の内側が上向きにならないようにする。要するに上腕を内方へしぼるようにする。

②バーベルをおろすとき、また、おろしおわったときに上腕部の内側が上向きになると、ワキが甘くなり、肩の関節がバーベルの重量によって逆を取られた感じになる。したがってそのようなやり方では肩を損傷する危険性が増大する。〔写真参照〕
〔ベント・アーム・プルオーバー〕

〔ベント・アーム・プルオーバー〕

◎ストレート・アーム・プルオーバー

①バーベル(あるいはダンベル)を頭越しに床の方へおろすとき、左右の上腕部の内側を上向きにしないよう留意する。

②上腕部の内側が上向きになると、ワキが甘くなり、やはり肩を損傷する危険性が増大する。〔写真参照〕
〔ストレート・アーム・プルオーバー〕

〔ストレート・アーム・プルオーバー〕

 さて、それでは、あなたが今後、プルオーバーを継続して行うことの是非についてお答えすることにします。

 いま現在、ときたまではあるにせよ肩の痛みを感じているのですから、当分の間はプルオーバーを中止するのがよいでしょう。

 そして、プルオーバー以外の運動のときは肩に痛みを感じないのであればやはり、プルオーバーのやり方が悪かったという可能性が大きいので、その場合は、前述した方法でプルオーバーを試しにやってみてください。そしてその結果、別になんらの異常も感じられなければ、従来どおり継続して行うようにすればよいでしょう。

◇プルオーバーを除外する場合の胸部のトレーニング法

 あなたが現在実行されている胸部のためのコースは、いまひとつトレーニング上の意図がはっきりしません。そこで、その辺のところをこちらで適当に解釈して、最も一般的と思われる胸部のトレーニング・コースについて記すことにします。

①ベンチ・プレス――大胸筋の基礎的な筋量を増すための種目

②ダンベル・ベンチ・プレス――大胸筋そのものの厚さの均一度を高める種目

③インクライン・プレス――大胸筋の上部を重点的に鍛える種目

④バー・ディップス、またはデクライン・プレス――大胸筋の下部を重点的に鍛える種目。なお、バー・ディップスは胸郭の拡張を促すのにも有効である。

ボディビルで運動神経はよくならないか

〔質問〕

 半年ほど前にボディビルを始めた17歳の高校生です。僕がボディビルを始めたのは、友人に「君は運動神経が鈍い」といわれたのが動機です。事実、自分でいうのも恥しいのですが、逆立ちもできません。僕はなんとしても運動神経を良くしたいのですが、ボディビルでこの希望がかなえられないものでしょうか。僕の体のサイズは次のとおりです。

身長 169cm 腹囲 73cm
体重 52kg 上腕囲 27cm
胸囲 82cm 大腿囲 47cm

(札幌市 S・Y 学生 17歳)
〔答〕

 ボディビルが運動神経の向上に直接的な効果があるとはいえないかも知れませんが、関節的な意味では効果があるといっていいと思います。

 俗に運動神経が良いとか、悪いとかいうのは、身体の器用性と機敏性を基とした運動能力の良否をいい、ある動作をタイミングよく、かつ、バランスよく、あるいはスピーディーに行うことができるか否かの身体的能力のことをいうようです。

 器用性や機敏性といったものは、それらの能力を促進するためには、くり返し学習することが必要です。したがって、ボディビルのようなウェイト・トレーニングがそれらの能力の向上に直接的な効果を有するとは単的にはいえません。しかし、器用性にしても、また機敏性にしても、身体を動かすということからすれば、筋の収縮力が、ある面ではそれらの能力の基盤になるともいえます。

 このように考えてみると、ボディビルのような運動で筋の収縮力を強化するということは、直接的ではないにしても、器用性と機敏性の向上に間接的な意味で効果を有するということもいえるかと思います。

 あなたは逆立ちもできないといわれていますが、逆立ちのような運動は、器用性に加えて筋力の強さが多分に要求される運動でもあるので、そのような運動の場合は、ボディビルで筋力を強化するということが非常に有効な手段になるといえます。

 しかし、器用性、あるいは機敏性の良否といったことは、あくまでも筋の収縮力だけの問題ではなく、動作で使われる諸筋の協応性の問題になるのでこれらの機能を向上させるためには、なんといっても学習、つまり動作の反復練習が必要であるといえます。

トレーニング量が多すぎるのはマイナス

〔質問〕

 僕はボディビルを始めてから途中、少し休養しましたが、1年4ヵ月になります。最初は5種目の運動を選んで、それぞれ3セットずつ行なっていましたが、今は8種目で3~5セットずつ行なっています。トレーニングに要する時間は、1時間前後で、木曜と日曜を除く週5日、下記のスケジュールでトレーニングしています。

<トレーニング・スケジュール>
①ベンチ・プレス
15kg 10回×5セット

②インクライン・カール
10kg 10回×3セット

③バーベル・スクワット
15kg 10回×3セット

④ベント・オーバー・ローイング
30kg 10回×3セット

⑤リスト・カール
10kg 10回×3セット

⑥リバース・カール
10kg 10回×3セット

⑦カーフ・レイズ
15kg 20回×4セット

⑧シット・アップ
傾斜度40度 25回×3セット

 以上のようなスケジュールですが、自分では少し多いような気もしますがどんなものでしょうか。もし、トレーニング量を減らすとしたら、どのようにしたらよいでしょうか。現在までのところ、筋肉がついたと思うのは、胸と腕が少々で、他の部分はほとんど変化がありません。現在、身長159cm、体重52kgです。

(石川県 村石正吾 16歳)
〔答え〕

 あなたのトレーニング・スケジュールは量的に多すぎるのはもちろんですが、その他にもいろいろ問題があるようです。そこでまず、それらの問題点を指摘し、その後で個々のことがらについてお答えすることにします。

①トレーニング量が多すぎる

②運動種目の選択が適切でない

③ベント・オーバー・ローイングのやり方に疑問が感じられる

④トレーニングの週間頻度が多すぎる


では、以上の4つの問題について順にお答えします。

①トレーニング量が多すぎる

 身長と体重だけでは、どのくらいの体力があるのか、全く見当がつきませんが、年齢的にいっても、現在のトレーニング量は多すぎるようです。16歳という年齢では、個人差はありますが、まだ身体的に完成期に入る前と考えられるので、無理に多く行うことはよくありません。

 完成期に入る前の身体は、一般的にいって、まだ筋肉が発達しやすい体質になっていないので、ボディビルのようなウェイト・トレーニングをたくさん行なっても、ある意味ではムダになるともいえます。したがって、この時期におけるボディビルは、からだをあまり消耗させないように、トレーニング量を思いきって少なくして実施するように心がけてください。

②運動種目の選択が適切でない

 ①のトレーニング量が多すぎるということにも通じることですが、不用な種目が多すぎます。現在の段階では、基礎的な運動だけで充分であるといえます。

 具体的にいえば、リスト・カールやリバース・カール、カーフ・レイズなどは、いまのところ不要な種目だと考えられます。現在のような段階で、細かい運動や補強的な運動を多く行うことは、いたずらにからだを消耗させ、かえって基礎的な体位の向上と、体力の強化に不利な条件を与えることになります。

③ベント・オーバー・ローイングのやり方に疑問が感じられる。

 他の運動種目の使用重量に比較して、ベント・オーバー・ローイングの使用重量が重すぎるように感じられますが、誤ったフォームで運動を行なっているのではないかと思われます。

 この運動を、ただ引っぱる力を強くするために行なっているのでしたら、腰さえ痛めるおそれがなければ今のままでも別にかまいません。しかし、広背筋を発達させたいのであれば、やはりそれなりに正しいフォームで運動を行うようにしなければなりません。その場合は、一応、専門書を参考にして、正しく運動を実施しているかどうか再検討してみる必要があると思います。

④トレーニングの週間頻度が多すぎる

 同じ内容のトレーニングを週に5日もやるのは、多すぎるもいいところです。ボディビルのような運動の場合、通常、週に5日の頻度では、休養が不充分になって、かえって効果が得られなくなります。したがって、1~2日おき、週3日か、場合によっては2~3日おき、週2日の頻度でトレーニングをするのが適当であるといえます。

 以上に述べた点を考慮して、参考までにトレーニング・スケジュールを作成してみました。トレーニング頻度は週3日(あるいは2日)。

<トレーニング・スケジュール>

①ベンチ・プレス
15kg 10回×2セット
②インクライン・カール
10kg 10回×2セット
③ベント・オーバー・ローイング
хkg 10回×2セット
④スクワット 15kg 10回×2セット
⑤シット・アップ  25回×2セット

〔註〕現段階では、1種目あたり2セットずつでよいと思いますが、余力がだあるようなら、種目によっては3セットにしてもいいでしょう。なお、さらに体力的な余力が生じてきて、新たに種目を加えたいというときはフロント・プレスを加えるのがよいでしょう。しかし、2年間ぐらいは6種目以内でしんぼうするのがよいと考えられます。
〔回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生〕
月刊ボディビルディング1980年9月号

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