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なんでもお答えします Q&A 1979年2月号

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月刊ボディビルディング1979年2月号
掲載日:2018.10.11

トレーニング量が多すぎても逆効果

Q ボディビル歴は4ヶ月です。私は現在、大胸筋に重点を置いた下記のスケジュールでトレーニングを行っています。
つきましては、トレーニングの方法として不適当なところがあればご指摘いただきたいと思います。

<現在のスケジュール>
①シット・アップ(傾斜度30度)
15~20回×3セット

②ベンチ・プレス(スタンダード・グリップ)
30~45kg 10~5回×5セット

③ベンチ・プレス(ワイド・グリップ)
25kg 8~10回×3セット

④ベンチ・プレス(ナロウ・グリップ)
20kg 7~10回×3セット

⑤ダンベル・ベンチ・プレス
12.5kg 8~10回×3セット

⑥パラレル・バー・ディップ
3~5回×3セット

⑦プレス・ビハインド・ネック
20kg 8~10回×3セット

⑧ベント・オーバー・ローイング
40kg 8~10回×3セット

⑨バーベル・カール
25kg 8~10回×4セット

⑩スクワット
35~50kg 3~10回×5セット

以上を隔日的、週3日実施。トレーニング後の疲労感は、かなり強い。

<現在の体位>
身長 161cm
体重 48cm
胸囲 83.5cm
腹囲 66cm
上腕囲 28cm
前腕囲 25.5cm
大腿囲 45cm
(熊本市 藤田岩夫 学生 19歳)
A トレーニング・スケジュールを拝見しました。「いやァ、よく頑張りますねェ!」と褒めてあげたいところですが、そうもいっておられません。殺人的とまではいかないまでも、現在のあなたの段階ではかなり無理があるようです。
ボディビルというものは、トレーニングをたくさん行いさえすれば、それだけ効果があがるといったような単純なものではありません。
ボディビルは、まず第1に、強度および量的にいって適度に行うことが肝要であり、第2に、ボディビルの実施者としての体格的、かつ、体力的な段階をふまえた内容でトレーニングを行うことが大切です。そして第3には、個々の運動を、より的確な動作で行うべく、心してトレーニングする必要があります。
あなたのトレーニング法は、いま述べた3つのことがらに照し合わせるといくつかの問題があるようです。
では、あなたのトレーニング・スケジュールにそって、順次、問題点をさぐってみましょう。


①胸部のための運動種目数とトレーニング量が現段階では多すぎる

あなたのトレーニング量は、現段階では、全体としても、もちろん多すぎますが、部分的には胸部のための運動が多すぎます。
体格的にも、また、体力的な面からいっても、現在の段階で胸部のための運動を5種目も行うというのはボディビルの基本的なセオリーをあまりにも無視したことであるといわざるを得ません。今のように手を変え品を変えて胸の運動を行わなくても、現段階では1~2種目の運動で十分こと足ります。筋肉が未発達のうちに運動をむやみに多く行うことは、筋を強度に疲労させることになるので、かえって効果があがりにくくなります。
したがって、いまのところは、スタンダード・グリップによるベンチ・プレスと、他にもう1種目で十分だと思います。

②ベント・オーバー・ローイングの使用重量に無理がある

ベント・オーバー・ローイングの使用重量が40kgというのは、現在のあなたにとって、筋力的にかなり無理がある重量ではないかと思われます。おそらく誤ったフォームで運動しているのではないでしょうか。
広背筋の発達を意図して行う場合に、使用重量を欲ばりすぎると、運動のフォームがくずれ、広背筋の発達を促すための正しい動作が行えなくなります。【写真参照】
[ベント・オーバー・ローイング]

[ベント・オーバー・ローイング]

③バーベル・カールの使用重量に無理が感じられる

バーベル・カールについても、ベント・オーバー・ローイングの場合と同様な疑問が感じられます。したがって、この運動についても、一応使用重量と運動の動作を再検討してみる必要があると思います。
上腕二頭筋や広背筋の運動に限らず、筋の発達を目的として運動する場合、重たい重量で、ただ持ちあげればよいといった動作で運動を行うよりも、多少余裕のある重量を用いて的確な動作で運動を行うほうが効果的であるといえます。

ボディビルを始めたいが、差し当り必要な器具と当初のスケジュールは?

Q 3年ほど前からエキスパンダーと鉄アレー(3kg)を使って、ごく軽いトレーニングを行なってきました。おかげさまで体調は非常によいのですが、この3年間、体位の面ではさしたる変化が見られませんでした。トレーニングの内容からすれば当然のことかも知れませんが、ちょっとさびしい気もします。
そこでお伺いしますが、本式のボディビルを始めるに際し、差し当りどのような器具を用意したらよいのでしょうか。私の体位と体力を推察した上でお答えください。また本格的なトレーニングを始めるについて、当初はどのようなスケジュールでトレーニングを行なったらよいでしょうか。
私の希望としては、前腕と大腿をとくに太くしたいのです。これまでに、バーベルやダンベルを使った経験がありませんのでよろしくお願いします。

<現在の体位>
身長 162cm
体重 55kg
胸囲 93cm
上腕囲 26cm
前腕囲 25cm
腹囲 76cm
大腿囲 43.5cm
(宮城県 佐藤忠 商業 25歳)
A まず、器具についてお答えします。体位から推察されるあなたの体力では、差し当って下記のような器具をとりそろえれば十分かと思います。

①バーベル・シャフト(止め金の重量を含む)
10kg 1本

②プレート
1.25kgのもの 4枚
2.5kgのもの 4枚
5kgのもの 4枚
(プレートの総重量35kg)

③フラット(平らな)ベンチ
1台

当初はバーベルによる基礎種目を行えば十分と思われますので、強いてダンベル・シャフトをそろえる必要もないでしょう。ただ、先行きダンベルの運動も行うようになることを考えて、プレートは各種4枚ずつそろえておくのがよいでしょう。初めはスクワットの使用重量もスタンドを必要とするほど重くないと思いますので、これもそのうちにそろえればよいでしょう。
では次に、トレーニングに関する質問にお答えしましょう。
あなたはエキスパンダーと鉄アレーによるトレーニングの経験が3年ほどおありですが、そのことは度外視して一応、初歩的なスケジュールで行うのがよいと思います。それも、体位から推察されるあなたの体力を考慮すればごく初歩的な内容で行うのがよいかと思います。
初心者の場合、普通、基礎的な運動を6~8種目くらい行うようにしますが、はっきりいって、あなたの体位は水準よりも少し下がるので、当初は4~5種目が妥当と思います。

<トレーニング・スケジュール>

①シット・アップ
正確に行える回数×2セット
ただし、1セットの回数が30回を越えるような多回数の場合は1セットにしてもよい。

②スクワット 10~12回×2セット
③ベンチ・プレス 8~10回×2セット
③スタンディング・プレス 8~10回×2セット

採用種目が4種目の場合には、上記の内容でよいでしょう。そして、もし体力的に余裕があれば次の1種目を加えてください。

⑤ベント・オーバー・ローイング 8~10回×2セット

ベント・オーバー・ローイングは初心者の段階では、たとえ正しいフォームで運動を行なっても、重量的にちょっと無理をすると腰を痛めやすい。したがって、できれば他の運動で間接的に腰を強化されてから行うようにするのがよい。
さし当っては上記の4種目、あるいは5種目によるトレーニングで十分と思いますが、現在の腕のサイズでは、他の運動をやることによって、間接的に十分発達する余地があるので、上腕囲が27~28cmくらいになるまでは、カールのように腕を局部的にトレーニングする運動は行わなくてもよいと思います。あなたくらいの腕のサイズの場合は、カールのような運動によって、腕にあまり局部的な刺激を与えすぎるとかえって腕が太くならないことがあるので注意してください。
あなたは前腕と大腿の発達をとくに希望しておられますが、前腕については、いま述べたことと同様な理由で、当分の間は特別の運動種目をやる必要がないのではないかと思います。今のところは、あまり局部的な筋の発達にとらわれないで、全身的な体力を強化するといった考え方でトレーニングするのがよいと思います。
大腿については、スクワットが最も有効な運動種目なので、それを欠かさず行うようにすればよいでしょう。スクワットは、大腿部だけでなく、腰背部や臀部をも併せて鍛錬できるのでボディビルの運動の中でもとくに大切な種目です。

中・高年者のトレーニング法

Q 私はすでに50歳を過ぎた高年のボディビル実行者です。数年前から始めましたが、何分年輩になってから始めたことであり、本格的なトレーニングではなく、いわばボディビルのまねごと程度にすぎません。
現在、自宅で下記のようにAコースとBコースに分けて交替に3日ずつ、つまり週6日制でトレーニングしていますが、仕事の都合などで休むこともあり、かなり不規則です。

◎Aコース(上半身中心)
①プッシュ・アップ
10回×3セット

②ツー・ハンズ・スロー・カール
7.5kg×2
10回×5セット

③ダンベル・プレス
7.5kg×2
10回×2セット

◎Bコース(下半身中心)
①シット・アップ
30回×2セット

②ダンベル・スクワット
7.5kg×2
10回×5セット

③カーフ・レイズ(負荷なし)
60回×2セット

器具は7.5kgのダンベル2個のみですが、この他にブルワーカーを所有していますので、上記のトレーニングの前にウォーミング・アップも兼ねて若干のブルワーカー・トレーニングを行なっています。
この程度のトレーニングですが、それでも体位の面でいくらかの効果はあるようです。数年前の開始時に比べ、下記のように少し向上しています。

<体位の変化>
身長 165cm→165cm
体重 58kg→61kg
胸囲 84cm→91.5cm
上腕囲 30cm→33cm
大腿囲 49cm→55cm
下腿囲 35cm→37.5cm

さて、人間の筋肉は60歳を過ぎても発達する可能性があると聞いていますので、今後も健康増進、老化防止を主としたトレーニングを続けるとともに体位も少しは向上させたいと考えております。それにつきまして、下記のことがらに関するご指示をいただきたいと思います。

①現在行なっている種目に加えるとすれば、どのような種目をどのように行えばよいでしょうか。

②私のからだつきは、いわゆるナデ肩で、鎖骨が出っぱっています。そのため、肩から胸の上部あたりが貧弱に見えるのですが、それをカバーする方法があればご教示ください。
(和歌山県 K・Y生 公務員)
A 最近、中・高年者のボディビル愛好者が増えているようです。厳密な意味ではボディビルとはいえないかも知れませんが、年令と体力に応じた適度な運動を行なうことは健康維持、老化防止に必要なことです。
では、①の質問からお答えします。健康法としてのボディビルの見地から身体を大きく分類すると、首・肩・背・胸・腕(屈筋・伸筋)・腹・腰・脚のつけ根・大腿・下腿というように分けることができます。
他にいろいろと分類の仕方はあるでしょうが、上記の分類に当てはめて、あなたの現在のトレーニングの内容を各部位ごとに分類し、それぞれどの程度使用しているかについて表にしたのが【表A】です。
【表A】現在のトレーニング・コースにおける各部位の使用度

【表A】現在のトレーニング・コースにおける各部位の使用度

これをもう少し具体的に検討してみることにしましょう。まず、気がつくことは首の運動が欠如していることです。その他の部位では、使用度の合計が3以上を良とすると、脚のつけ根のための運動が不足しており、背と腰のための運動がやや足りないということになります。
では、その不足している部分の運動について説明します。

◎首の運動……
首の運動については、若い人たちとちがうのですから、運動負荷を首に与えずに、ただ動かすだけでよいでしょう。前後、左右への屈曲と伸展。左右横へ顔を向ける。首を軸にして頭を前から横、うしろ、横、前と回転させる等の運動を行なってください。
ただし、急激に首を動かすとすじを痛めることがあるので注意してください。他の運動のセット間に行うようにすればよいでしょう。

◎脚のつけ根の運動……
脚のつけ根の運動とは、脚を上へ持ちあげる筋の運動のことです。したがって、スクワットの場合は、脚の運動でも、脚のつけ根の運動にはなりません。体力維持、老化防止といった意味を含んだトレーニングにおいては、この部分を鍛える運動を併せて行うようにするのがよいでしょう。
運動のやり方は、負荷を用いずにできるだけ膝を高くあげるようにして足踏みをします。そして足をおろすときに力を抜かずに、いくぶんゆっくりおろすのが効果的です。首の運動と同様、他の運動のセット間に行うようにすればよいでしょう。

◎背の運動……
ここでいう背の運動とは、広背筋を主とした引っぱる力を鍛錬するための運動のことです。
この種の運動としては、鉄棒にぶらさがっての懸垂運動(筋力が弱くからだが持ち上がらなければ持ちあげようと頑張るだけでよい)とかベント・オーバー・ローイングが有効ですので、いずれか一方の運動を適度に実施してください。
なお、自転車のチューブがあればそれを柱に引っかけ、両端を左右の手で握って引っぱるといった運動を行うようにしてもよいでしょう。

◎腰の運動……
腰の運動としては、ダンベル・デッド・リフトが効果的です。ただ、その場合、使用重量、反復回数の面でかなり余裕を持たせて行うようにするのが無難です。
年輩の人の場合、腰を鍛錬するのに、どちらかといえば、直接的に鍛えるよりは、間接的に鍛えるようにするほうがよいようです。そういった意味で、野球の投球運動とかゴロを捕る動作などを仮想してからだを動かすとよいでしょう。

次に、②の肩から胸の上部あたりに効果的な運動について説明します。

◎マニュアル・レジスタンスによる方法【写真参照】
<かまえ>
両肘を左右、横へ水平に張り、両手をノドの前あたりで押し合わせる。

<動作>
両手を押し合わせたまま、両手と両肘を肩の高さに保って、両手を左右、横へ移動させる。
[マニュアル・レジスタンスによる方法]

[マニュアル・レジスタンスによる方法]

◎立った姿勢による腕立て伏せ運動
<かまえ>
壁などに面して立ち、適当な高さのところに両手をつき、腕を伸ばしてからだを支える。この場合からだを前方へ傾斜し、伸ばした腕は床とほぼ平行(水平)になるように留意する。また、両手の間隔は肩幅よりも1こぶしくらいずつ広くとる。

<動作>
大胸筋の上部に常に負荷がかかっているように留意しながら、両腕を屈伸する。つまり、高い所に両手をついて行う腕立て伏せ運動である。しかし、胸の上部の発達を促すには、上体を上下に動かすというよりは、前後に移動させるような感じで行うほうが効果的といえる。

<呼吸>
腕を屈しながら息を吸い、伸ばしながら吐くようにする。

[回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生]
月刊ボディビルディング1979年2月号

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