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食事と栄養の最新トピックス《15》
あなたはバルク型?デフィニッション型?

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月刊ボディビルディング1981年11月号
掲載日:2020.08.03
健康体力研究所 野沢 秀雄

1.決定的な体質の差

 前回まで3ヵ月にわたり、栄養の吸収と個人差について検討したが、結論として「体質差が大きく影響する」ということが理解されたと思う。

 ところが現実にトレーニングを開始している人を調べると、自分の体質に無関心で、ごく一般的な種目をふつうの量だけ練習し、食事のとり方も標準的な考え(たんぱく質を多くとる)にとどまり、効果があまりり出ていない人が多いようだ。

 この点トレーニングセンターに入会すれば、会長やコーチが各自の体質に応じたプログラムを作ってくれるので進歩が早い。入会する人の動機や目的もいろいろである。太りすぎている人は余分な脂肪がとれて、筋肉が目立つ体質になる。骨がゴツゴツしている人は練習と共に筋肉がついて、スポーツマンらしい体質になれる。両方のタイプとも結局は筋肉型の体質に一致してくるのだが、その過程は天と地ほどの差があるといってもよい。

 さらにボディビルコンテストに出場しようとする選手なら、自分の体質をしっかり把握しておくことが重要だ。

 今月は自分の体質を判別する方法を述べ、それに応じた練習法・食事法をアドバイスしよう。

2.体質判定表

 わずか切手一枚の重さに満たないほいど微量なホルモンのバランスにより、大まかな体質が決ってしまう。両親からの遺伝によるところが大きいが、環境や努力により変化する余地が残されている。

 具体的には、血液や尿に含まれる性ホルモンの濃度を測定すれば、分泌量の多い人、少ない人とに区別ができるが、ここでは経験的に誰にでも容易に把握できる観察法を紹介しよう。

 下の表の項目で、YESと思われたらその欄に○印をつけゆくとよい。どちらでもなければ○印をつけなくても構わない。

■観察による体質判定表
記事画像1
 YESの数がB欄とD欄に記入できたら下記の基準により、自分がどの程度バルク型であるか、デフィニション型であるか、大まかな判定が得られるだろう。
記事画像2
日本選手の中ではバルク型に属する榎本正司選手。1981年度実業団コンテストでのゲストポーズ

日本選手の中ではバルク型に属する榎本正司選手。1981年度実業団コンテストでのゲストポーズ

典型的なデフィニション型と思われる山崎義夫選手。それでもコンテスト時には10㎏近い減量を行なう

典型的なデフィニション型と思われる山崎義夫選手。それでもコンテスト時には10㎏近い減量を行なう

 以上で推定できる体質は、いわゆる脂肪体質(内胚葉型)か、太りにくい外胚葉型であるかをみているわけである。「バルク型」あるいは「デフィニション型」という定義自体、近年は変化しつつある。昔は単に脂肪で体が大きくなっている人でもバルク型と呼んでいたが、今は筋肉それ自体のボリュウムが大きくて、他の選手を圧倒するようなサイズの大きさを持つビルダーのことを、「彼はバルクがある」と評している。

 ボディビルのコンテストではトレーニング開始前の体質が、

(1)肥満しやすく、脂肪をとる苦労をしつづけたタイプの選手か、
(2)それとも逆に、太りにくい体質で、努力により少しずつ少しずつ筋肉をつけてきた選手であるか、
(3)あるいは先天的に運動に適した体質に恵まれ、他人より早いスピードで筋肉がついてきた選手か、3つのパターンに分かれるようである。

3.バルク型の人のために

 上記の判定テストで「脂肪がつきやすいバルク型」に該当する人へのアドバイスをおくろう。

 この型の人は体重をふやすことにはそれほど苦労はいらない。むしろ脂肪がつきすぎて後で苦労するタイプである。「最初はデフィニション型を気にせず、食べられるだけ食べて、トレーニングも重いバーベルやダンベルでガンガンやる」と方針を決めるところまではよい。問題はそのあと、調整期に入っても、筋肉のカットや血管が浮び上るような体質に戻しにくいことがしばしばある。

 あらかじめ自分なりに方針を立て、「肥満タイプでよい」と考えてい人はそれでもよいが、問題は「脂肪を除きたいがなかなかとれない」「皮下脂肪を10ミリ以下にしたいが、いっこうになれない」と悩んでいる人たちである。

 また「健康管理やシェイプアップのために脂肪をとりたい」と望む人たちの場合、一般的なトレーニング法と食事法をおこなうのではなく、次のような方法を重点的に実行するとよい。

(1)トレーニングは高回数・低重量を原則とする。練習時間もなるべく長くとり、かつ  休憩時間を少なくする。

(2)可能ならばジョギングを併用する。

(3)脂肪がたまりやすい腹部を重点として、シットアップ、レッグレイズを計100回以上  おこなう。(毎日可)

(4)トレーニングは空腹状態でおこなってもかまわない。(食事前)

(5)食事法は高たんぱく・低カロリーを方針として、炭水化物の多い食品は極力さける  こと。

(6)ビタミンやミネラルは不足しないようによく配慮する。

(7)夕食を軽くし、夜食もとらない。

(8)脂肪が除去され、皮下脂肪10ミリ以下、腹囲74cm以下になれば、今度は本格的な増  量プログラムに移行してしてゆくとよい。

4.デフィニション型の人のために

 どんなに懸命にトレーニングしたりいくら多くたんぱく質を食べてもなかなか体重がふえにくいタイプの場合は、人一倍の根気と努力がいる。

 胃腸の消化吸収力が弱い人なら、まずレバーなどをよくとり、胃腸を強くすることが先決である。また神経を使いすぎず、のんびりすることも大切である。睡眠時間が短い人はなるべく改善し、早寝早起きを励行するとよい。

(1)トレーニングは重点的にスクワットやベンチプレス、バーローイング、デッド    リフトなど、ボリュウムの大きい筋肉を使う運動を重点的におこなう。 
  

(2)なるべく使用重量をふやし、回数は3~8回、ときには1~2回でもよい。
セット数は5セ  ットは実行する。

(3)逆に、肩・腕・手首・カーフ・首などの細部の筋肉の運動は最初はあまりおこなわ  なくてよい。

(4)腹筋も胃腸を強める程度で、軽く流してかまわない。

(5)連日にわたって、同じ部分の筋肉は鍛えないこと。1日以上の間隔をあけて実行す  る。

(6)決して空腹時にトレーニングをおこなわないこと。練習前30~60分に、たんぱく質  ・糖質・ビタミン類の多い軽食をとっておいて、それから練習をするとよい。

(7)食事法は高たんぱく・高炭水化物・高ビタミン・高ミネラル・高カロリーというよ  うに、栄養素が濃縮された良い食品をえらんでとる。

(8)1日5食とし、夕食や夜食に栄養のあるものを食べてゆく。もちろん朝食や昼食も内  容をしっかり高めること。

5.恵まれた体質とは?

 以上の2タイプはいずれも根気よく2年、3年とかかって基礎体質を変えてゆけば、いつか理想的な筋肉質の体質に変えてゆける。

 カナダ在住で、ミスターカナダ2位にまでなった河内山和夫選手が帰国しており、先日久しぶりに会った。彼は川崎のトレーニングセンターで私と同じように練習した時期があった。当時は肩や背は大きいが、脂肪も結構多く、典型的なバルク型であった。それが10年近くたって再会すると、驚くほど完成されたデフィニションタイプの体質に変化していた。
 「ステロイドを使わずに、体を引締めるのに数年かかりましたが、今ではこんな体型が維持できています」と彼は語っている。最近は少々食べてもそれほど太らず、体調もベストコンディションであるという。

 こんな苦労をする人がある一方で「それほど苦しい練習をしないのにもかかわらず、筋肉がよく発達して、素晴らしい体だ」と言われる体質の人が結構いる。

「私の友人はC大の野球部員ですが、わずか3ヵ月ウェイトトレーニングをしただけで、体重5キロ、胸囲10cmもふえ、上腕囲も37cmなんです。信じられないようですが、私の苦労と比べて情けない気もします」という手紙を読者の方からいただいたことがある。

 このタイプの人は、子供の時から運動をよくおこない、トレーニングをする前に柔道やボクシングなどを実行していた人に多い。筋肉の質が柔軟性を持ち、収縮させたときのピークが大きく密度が高い。逆に伸ばしたときの伸びがよく、重量感に富んでいる。

 残念なことに、このタイプの人は体づくりに執着心が少なく、実行すればぐんぐん伸びるのにもかかわらず、中途でトレーニングをやめてしまう人が多い。せっかく素質に恵まれ、またパワーもあり、疲れ知らずに練習できるのだから、コンテストの檜舞台を目ざしてがんばっていただきたい。
月刊ボディビルディング1981年11月号

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