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なんでもQ&Aお答えします 1981年12月号

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月刊ボディビルディング1981年12月号
掲載日:2020.08.07

スケジュールを変えたら腕の発達が止まってしまったが

Q ボディビル歴は3年です。自宅で1人で行なっています。半年ほど前からスプリット・ルーティーンによる方法を採用し、下記の内容でトレーニングしています。しかし、スケジュールを変えて以来、ぜんぜん腕が太くなりません。それどころか、上腕三頭筋は以前よ小さくなった感じさえします。これはいったどういうことでしょうか。自分では腕の運動は充分すぎるくらいにやっているつもりですが、まだ足りないのでしょうか。アドバイスをお願いいたします。

 ちなみに現在のトレーニング・スケジュールと体位は次のとおりです。

《トレーニング・スケジュール》

スプリット・ルーティーンによる2分割法を採用
記事画像1

《体位》

記事画像2
(三重県 田辺 登 店員 23歳)
A トレーニング後の疲労感についての記述がないので、はっきりしたことはいえませんが腕が太くならなかったのは、トレーニング量が足りなかったからとは考えられません。それよりも、むしろトレーニングのやり方に無理があったために効果が得られなかったのではないかと考えられます。つまり、トレーニングが過度であったことと、トレーニングで消耗した筋を回復させるための手だてに、いささか不備な点があったと考えられます。
 トレーニングの効果というものは、トレーニングを一生懸命に行うだけで得られるものではありません。いかに一生懸命にトレーニングしても、トレーニングによって消耗した筋が回復しさらに超回復という経過をたどって得られるものです。

 したがって、トレーニングの量、および強度といったものは、トレーニングによって消耗した筋が、次回のトレーニング日までに超回復できる範囲に止めるようにしなければなりません。

 また、分割法を採用してトレーニングを行う場合には、からだの各部位ができるだけA、Bの双方のコースにわたって使用されることのないように、採用種目を配分することが大切になります。

 あなたの場合、腕そのもののトレーニング量はもとより、全体的にもトレーニング量が多すぎるように思われます。また、運動種目の分割の仕方にも疑問があり、腕、とくに上腕三頭筋の回復が全く無視されたスケジュールになっているように思われます。したがて、腕の発達を期待するからには、今後は上述した点を改めたスケジュールでトレーニングを行う必要があると思います。

 では一応参考までにトレーニング・スケジュール例を記しておくことにします。

《トレーニング・スケジュール例》

分割法。A・B各コースを週に2回ずつ行う。なお、各種目のセット数は3セット平均とする。

◎Aコース――火曜・金曜

〈1〉シット・アップ(傾斜度40度)
〈2〉レッグ・レイズ(傾斜度40度)
〈3〉ベンチ・プレス
〈4〉ダンベル・ベンチ・プレス
〈5〉ディップ
〈6〉フロント・プレス
〈7〉バック・プレス
〈8〉サイド・レイズ
〈9〉トライセプス・プレス・スタンディング
〈10〉トライセプス・プレス・ライイング
〈11〉ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス

◎Bコース――水曜・土曜

〈1〉シット・アップ(傾斜度30度)
〈2〉レッグ・レイズ(傾斜度30度)
〈3〉ベント・オーバ―・ローイング
〈4〉ナロウ・グリップ・チンニング・ウイズ・アンダー・グリップ
〈5〉ワン・ハンド・ローイング
〈6〉ツー・ハンズ・カール
〈7〉オールタ―ニット・カール
〈8〉スコット・カール
〈9〉リスト・カール
〈10〉フル・スクワット
〈11〉ベンチ・スクワット
〈12〉カーフ・レイズ
〈13〉デッド・リフト

 以上、トレーニング・スケジュールを参考までに記述しました。しかし、はっきり申し上げれば、現在のあなたの段階では、上記のスケジュールでもトレーニング量が多すぎるような気がます。現在のあなたにとっては、トーニング量をやたらに多くするということよりも、個々の運動を正しいフォームで行うように心掛けることが大切であるといえます。

腕立て伏せ(プッシュ・アップ)のバリエーション

Q ボディビルを始めたのは1年前です。以来、ごく基礎的なトレーニングを行なってきました。それでも開始前と比べると、自分でもびっくりするほど体力が強くなりました。

 私は現在、勤務先の野球部の部長を務めています。体力アップのために自分の体験を生かして部員にボディビルをやらせるようにしようかと考えています。しかし、予算の関係で今すぐにボディビル用具を購入するわけにはいかないので、とりあえず腕立て伏せや懸垂などの器具のいらない運動から行うことにしようと思っています。

 そこで、お聞きしたいのですが、腕立て伏せ運動にはいろいろな方法があるそうですが、部員に指導するための参考として、それらの方法と効果についてお教えください。
(横浜市 原田秀男 会社員 33歳)
A 腕立て伏せ運動(プッシュ・アップ)のバリエーションとその効果について、さっそくお答えすることにします。

◎プッシュ・アップ

いわゆる普通に行われているところの腕立て伏せ運動(腕立て伏臥腕屈伸運動)。

<かまえ>
 両手の間隔を肩幅くらいにして、腕立て伏せの姿勢をとる。

<動作>
 全身をまっすぐに保った状態で腕を屈し、胸が床に軽く触れたなら、腕を伸ばして元の姿勢に戻る。腰のあたりを上下にくねらせるようのな動作で運動を行なうと効果が減ぜられる。なお、筋力が弱い場合には膝をついて行うとよい。

<呼吸法>
 腕を屈しながら息を吸い、伸ばしながら吐く

<効果>
 大胸筋全般、上腕三頭筋(主として外側頭)

◎ワイド・グリップ・プッシュ・アップ

<かまえ>
 両手の間隔を普通のプッシュ・アップの場合よりも広くして、腕立て伏せの姿勢をと  る。

<動作・呼吸法>
 普通のプッシュ・アップの場合と同様に行う。

<効果>
 大胸筋(とくに中央から外側によった部分に効く)、上腕三頭筋(主として外側頭)。

◎ナロウ・グリップ・プッシュ・アップ

<かまえ>
 両手の間隔を普通のプッシュ・アップの場合よりも狭くして腕立て伏せの姿勢をとる。
<動作・呼吸法>
 普通のプッシュ・アップの場合と同様に行う。

<効果>
 上腕三頭筋(外側頭・長頭)大胸筋。

◎クロス・グリップ・プッシュ・アップ

<かまえ>
 左右の手の指をくっつけた状態(両手の間隔ゼロ)、または、重ねた状態にして腕立て伏せの姿勢をとる。
<動作・呼吸法>
 胸が手の甲に軽く触れるまで腕を屈したら、腕を伸ばして元の姿勢に戻る。呼吸法は普通のプッシュ・アップの場合と同じ。

<効果> 
 上腕三頭筋全体。

[註]この運動の場合は、大胸筋に与える効果がかなり弱まる。したがって胸の運動として  ではなく、腕(上腕三頭筋)の運動として行うのがよい。
〔プッシュ・アップ・ビトウィーン・ボックスィズ〕

〔プッシュ・アップ・ビトウィーン・ボックスィズ〕

〔プッシュ・アップ・ウイズ・フィート・エレベイティッド〕

〔プッシュ・アップ・ウイズ・フィート・エレベイティッド〕

◎プッシュ・アップ・ビトウィーン・ボックスィズ〔写真参照〕

<かまえ>
 同じ高さの2つの箱(または台)を胸幅よりも広い間隔に離しておきその上に両手をついて腕立て伏せの姿勢をとる。

<動作・呼吸法>
 普通のプッシュ・アップの場合と同様に行う。ただし、この運動の場合は、腕を屈したときに、胸を箱の間にできるだけ深く沈めるようにする。

<効果>
 大胸筋全般(この運動の場合は、普通のプッシュ・アップの場合よりも運動としての可動範囲が大きすぎるのでそれだけで大胸筋に対する有効度も高くなる)
、上腕三頭筋。

◎プッシュ・アップ・ウイズ・フィート・エレベイティッド〔写真参照〕

<かまえ>
 両足をベンチなどの高い所にのせた体勢で、腕立て伏せの姿勢をとる。両手の間隔は、運動の動作がやり易い間隔に任意に定めればよい。

<動作・呼吸法>
 動作の要領は、普通のプッシュ・アップの場合とほぼ同様であるが運動の目的によって多少、動作のポイントが変ってくる。

(1)大胸筋全般に効かす場合

 この場合は、腕を屈するときに上体を水平におろしていく。したがって、動作の中途から、からだが弓なりの状態になってもよい。

<効果>
 大胸筋全般(この方法の場合は、普通のプッシュ・アップの場合よりも大胸筋に対する負荷が強くなるので、それだけ有効度も高くなる)、上腕三頭筋。

(2)大胸筋の上部に効かす場合

 この場合は、腕を屈するときにからだをできるがけ弓なりにしないように注意して動作を行うようにする。この種の方法では、足の位置を高くし、胸部の傾斜を強くするほど、傾向として大胸筋の上部と肩に効くようになる。ただしあまり傾斜が強くなると、運動の重点が胸よりも肩に強くかかるようになるので、その点に注意。

<効果>
 大胸筋(とくに上部)、三角筋、上腕二頭筋。

◎ウェイテッド・プッシュ・アップ

 背中にウェイトを載せて行なうプッシュ・アップ。それぞれの様式のプッシュ・アップにおいて、運動の負荷を強めるために行えばよい。

◎プッシュアップ・ウイズ・パートナーズ・レジスタンス

 トレーニング・パートナーに背を押さえてもらいながら行うプッシュ・アップ。

 以上がプッシュ・アップのバリエーションとしては比較的ポピュラーなものです。その他、片手で行うプッシュ・アップ(ワン・ハンド・プッシュ・アップ)や、上腕三頭筋の長頭を重点的に鍛練するためのプッシュ・アップ・ウイズ・ハンズ・パラレルといった種類の運動もありますが、今のところは必要ないと思いますので、それらの説明は省略することにします。

 また、プッシュ・アップという運動は、同じ姿勢からの動作でも、腕の屈曲の仕方によって胸(大胸筋)に強く効いたり、あるいは腕(上腕三頭筋)に強く効いたりします。しかし、初・中級者の段階では、そこまで神経質に考えることもないと思います。

ボディビルを初めて6ヵ月経過したのに、ほとんど効果がないが

Q ボディビル歴は6ヵ月です。自宅でトレーニングしています。開始以来、ずっと隔日的週3日のペースでまじめにトレーニングを続けてきました。
それにもかかわらずほとんど効果が得られませんでした。

 友人でやはりボディビルをやっている者がいますが、彼の場合は、週に2日くらいのトレーニングで、けっこう効果があがっています。これはいったどういうことなのでしょうか。友人素質があって、僕には素質がないからでしょうか。ご意見をお聞かせください。

 参考までに、開始時と現在のトレーニング・スケジュール、それに体位の変化を記しておきますのでよろしくお願いします。

《開始時のスケジュール》

記事画像5
[註]1日おき週3日実施。トレーニング後の疲労感は、かなり疲れたという感じがしたが、翌日には残らなかった。

《3ヵ月目~現在のスケジュール》

記事画像6
[註]トレーニング後の疲労感は、ぐったりするくらいで翌日にも残る。

《体位の変化》

記事画像7
[註]開始後2ヵ月くらいは全体的に多少からだが大きくなったが、その後、また元にもどってしまった。
(埼玉県 S・T 学生 20歳)
A 疾病がある場合はその限りではありませんが、効果があがらないのは、トレーニング後の疲労感から判断して、オーバー・ワークがその原因とみて間違いないでしょう。トレーニングの効果があがるようにうするためには、思いきってトレーニングの強度と量を軽減する必要があると思います。

 トレーニングの強度と量といったものは、他の人と関連で定めるものではなく、自分にとって適切であるかどうかという判断に基づいて定めるものです。他の人にはちょうどよくても、自分にとってちょうどよいとは限りません。つまり、実施者自身の身体的個別性を重視して定めるものです。

 あなたの友人が、週に2日くらいの気楽なトレーニングで、けっこう効果があがっているのは、その程度のトレーニングが友人にとっては、ほどよいものだからかも知れません。

 よしんば、トレーニングの量と強度が多少不足していたとしても、あなたのようにオーバーワークになってないことだけは間違いないでしょう。

 トレーニングは量と強度が多少不足する分には、それなりの効果が期待できます。しかし、オーバオ―・ワークの場合は、たんに効果が期待できないだけでなく、ときには、筋の太さと力が減退してしまうこともあります。あなたもそのへんのところをよく考えて、新たな気持ちでトレーニングを行うようにしてください。

 なお、あなたは全般的に使用重量に無理があるように感じられます。使用重量に無理があると、動作が不正確になり、疲れる割りに効果があがりにくくなります。くに、ベント・オーバー・ローイングとツー・ハンズ・カールの使用重量が重すぎるように感じられます。運動のフォームに問題がないかどうかについても、よく検討してみてください。もし間違っていたら、直ちに改めるようにしてください。

ベンチを使わない胸の運動法と、35kgの重量で大腿部に強い刺激を与えたいが

Q ボディビル歴は5ヵ月です。寮の自室で行なっていますがスペースの都合上、バーベルが使えないので、ダンベルによるトレーニングをしています。質問の前に、まず、現在のトレーニング・スケジュールと体位を書いておきます。

 なお、この5ヵ月間の効果は、ほとんど目につきません。

《トレーニング・スケジュール》

1日おき、週3日実施
記事画像8
[註]トレーニング後の疲労感は、快い感じ。なお、週2度ほど4~5kmのジョギングを行なっている。

《現在の体位》

記事画像9
 ところで私は、上記のスケジュールでもお分かりと思いますが、胸の運動を全く行なっていません。というのも、部屋が畳敷きなのでベンチを使うわけにいかないからです。そこでお伺いします。ベンチを必要としない胸の運動法があれば教えていただきたいと思います。

 なお、私は現在、35kgのプレートをヒモで背負ってスクワットを行なっていますが、負荷が軽すぎて大腿部に強く効いた感じがしません。35kgというのは私が所有しているプレートの総重量ですが、この重量の範囲内で大腿部にもっと強い刺激を与える方法はないでしょうか。

(長崎県 佐々木正巳 会社員 24歳)
A 胸の運動に関しての質問からお答えします。本来ならば胸の運動としては当然ダンベルによるベンチ・プレスを行うところでしょう。しかし、事情があって、そうもいかないということであれば、ラタラル・レイズ・ライイングを、畳の上でじかに寝たフォームで行うのが最もよいのではないかと思います。

 ベンチ・プレスのような運動は、床(または畳)の上に直接寝たフォームで行うと、運動としての可動範囲が極端に小さくなり、大胸部にあまり広範囲に効かなくなります。

 しかし、ラタラル・レイズ・ライイングは、床(または畳)の上にじかに寝て行なっても、効果がそれほど極端には減少することはありません。

 では、一応、念のためにラタラル・レイズ・ライイングのやり方について説明しておくことにします。

◎ラタラル・レイズ・ライイング

<かまえ>
 床、または畳に仰臥した姿勢で、左右の手にそれぞれ持ったダンベルを、腕を伸ばして胸の上方にかまえる。この場合、運動の効果を高めるためには、2つ折りにした座ぶとんを1~2枚、タテ向きにして背中の下に敷くようにするとよい。

<動作>
 肘を少し曲げた状態で、両腕を真横へ拡げるようにして、左右のダンベルを下ろしていき、床、または畳にダンベルが触れそうになったら腕をつぼめて元の位置へ上げ戻す。肘をまげ過ぎると、ダンベルを上げるときにプレスのような動作になり、効果が減少する
 呼吸方法は、ダンベルを下ろしながら息を吸い、上げ戻しながら吐くようにする。

〔写真参照〕

 次に大腿部についての質問にお答えします。普通、一般には重量(負荷)の足りない場合は、回数で補う方法がとられています。しかし、あなたはそのような方法は好まないようなので、次に示すような運動を行ったらよいと思います。
〔ラタラル・レイズ・ライイング〕

〔ラタラル・レイズ・ライイング〕

〔シングル・レッグ・スクワット〕

〔シングル・レッグ・スクワット〕

◎シングル・レッグ・スクワット

<かまえ>
 両手にダンベルを持ってぶら下げ、片足で立つ〔写真参照〕

<動作>浮かした方の脚を後ろへまげるか、前へ差し出すようにして伸ばし、片足だけでバランスをとりながらスクワットを行なう。

◎ニーリング・レッグ・イクステンション

<かまえ>
 床、または畳の上に正座し両手にそれぞれダンベルを持ってぶら下げる。この場合、上体を前傾させないように注意する。

<動作>
 上体をできるだけ垂直に保った状態で腰を浮かし、両膝で床、または畳の上に立つようにする。腰を浮かす動作で上体が前傾すると効果が半減する。

《トレーニング・スケジュール例》

記事画像12
〔回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生〕
月刊ボディビルディング1981年12月号

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