フィジーク・オンライン

なんでもQ&Aお答えします 1986年5月号

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1986年5月号
掲載日:2021.11.19

肩に有効な運動種目について

Q バーベルシャフト1本、ダンベルシャフト2本、フラットベンチ、105kgまでのプレート、チンニングバーを自宅に購入してウェイトトレーニングを始めたのは5年も前になるのですが、当時は正確な知識もなく効果的なトレーニングではありませんでした。その後、左肩を痛めたままに半年以上も中断したり、逆にアスレチックジムで本格的にボディビルに取り組んだ時期(約1年)もあったのですが、大学受験や大学の都合などで年間を通してトレーニングを継続したことはありません。
 
 これから、週4日の頻度でウェイトトレーニングをジムで再開したいのですが、肩の採用種目をどうしてよいのか迷っています。といいますのも、二分割法の場合、Aコースに大胸筋、肩、上腕三頭筋の組み合わせが最も一般的だと思うのですが、大胸筋のトレーニングとしてインクライン・ベンチ・プレスを行った後にプレス・ビハインド・ネック(あるいはフロント・プレス)を実行するのは筋力的に無理、または不必要ではないかと思います。
 また、サイド・レイズを行う時、とても重いとは思えない7kgのダンベルが重すぎるのか、三角筋の収縮が意識できないで、はたして効果があるのかどうか疑問です。それともう一つダンベル・アップライト・ローの後にショルダー・シュラッグを行う必要があるのでしょうか。
 私が肩のトレーニングとして適当であると考えている種目は、①バタフライ・マシン・リヤデルト・エクササイズ(あるいはベント・オーバー・ラタラル・レイズ②サイド・レイズ③ダンベル・アップライト・ロー④プレス・ビハインド・ネック⑤ショルダー・シュラッグですが、肩は状態トレーニングの要となる部分であり、オーバーワークにもなりがちだと思います。
 そこで方肩のトレーニング種目として適当な3種目とトレーニング上の注意についてアドバイスをお願いします。
 また、下記に示すトレーニング内容について不適当な点があったらご指導をお願いします。

《採用予定種目》
◆Aコース(月曜、金曜)

記事画像1
[註]この後に肩の種目2~3種類行なった後、上腕三頭筋のトレーニングを行う。

◆Bコース(水曜、土曜)

〈1〉ツイスティング・ベント・ニー・シット・アップ
〈2〉インクライン・レッグ・レイズ
〈3〉スクワット
〈4〉レッグ・プレス
〈5〉レッグ・カール
〈6〉カーフ・レイズ
〈7〉チンニング
〈8〉ラット・マシン・ブルダウン
〈9〉プーリー・ローイング
〈10〉クロス・ベンチ・プルオーバー
〈11〉バーベル・カール
〈12〉プリチャ―ズ・カール

[註]デッド・リフトを採用したいと思っていますが、どこに組み込んでよいか迷ってい ます。

《現在の体位》

記事画像2
(名古屋市 立家康至 24歳 学生)
A あなたが言われるように、上腕三頭筋を補助筋として使うことを考えて、胸・肩・上腕三頭筋を同一日にトレーニングするのが一般的です。その際、確かに胸の後に肩をやる場合、特にプレス系の種目では高重量が扱えなくなったりしますが、それはそれで構いません。

 もし、肩のトレーニングで高重量を扱いたいからといって、肩を次の日(Bコース)にまわせば、Aコースの胸の時と2日続けて肩に効いてしまい、これでは肩がオーバーワークになってしまう恐れがあります。上腕三頭筋や肩など、同一の補助筋を同じ日にトレーニングできるように分割したのですから、重量にこだわらず、筋肉に充分効かせることができる重量でトレーニングを行なって下さい。

 三角筋は、前部・中部・(側部)・後部に分けられます(胸のトレーニングや肩のプレス系の種目で使われるのは主として前部三角筋です)。普通、三角筋のトレーニングを3種目で行う場合、これらの3つの部分をトレーニングできるようにするためには、基本的な種目であり、特に前部に有効なプレス・ビハインド・ネック(またはフロント・プレス)、中部のためのサイド・レイズ、後部のためにベント・オーバー・ラタラル・レイズを行うとよいのです。

あなたの場合、前部三角筋が胸のトレーニングのときに効いてしまい、必要ないと感じるのであれば、プレス・ビハインド・ネックを除き、最後にショルダー・シュラッグを行えば、三角筋・僧帽筋で3種目になります。

 プレス・ビハインド・ネックも行なって、しかも3種目以内で僧帽筋も鍛えたいのなら〈1〉プレス・ビハインド・ネック〈2〉ダンベル・アップライト・ロー〈3〉ベント・オーバー・ラタラル・レイズにするとよいでしょう。ダンベル・アップライト・ローで中部三角筋と僧帽筋が鍛えられます。

 以上の説明でもお分かりと思いますが特に僧帽筋を発達させたいのでなければ、ダンベル・アップライト・ローの後にショルダー・シュラッグを行う必要はありません。

 現在のあなたのトレーニング内容に関しては、大きな問題はありませんがAコースで固有背筋のトレーニングは行なわず、Bコースの最後にデッド・リフト、バック・エクステンションやツイストを行なって下さい。

 また、いくつかの腹筋運動も、各コースの最後に行う方がよいでしょう。ただし、トレーニングの最初にウォーム・アップとして軽く行うのは構いません。

肥満解消のためのトレーニング法とプロティンの活用法

Q トレーニング歴は1年、自宅でトレーニングを行なっています。脂肪体質の体を筋肉質に変えたいと思い、トレーニングをはじめました。
 
 トレーニングを始めた頃と比較すると、全体的に見れば少し脂肪が落ちた感じで、筋肉もついてきたようです。しかし身長は173cmに対し体重が78㎏もあるのは、まだまだ脂肪が多すぎると思います。特に、腹部と胸部の脂肪が思うように落ちません。

 食事の面でも、プロティン大さじ1杯を牛乳に溶かして飲んでいますがあまり効果がありません。
 そこで脂肪をおとすためのトレーニング方法とプロティンの摂り方についてアドバイスしてください。

《現在のトレーニング》(毎日2時間)

記事画像3
《体位》
 身長173cm、体重78kg、胸囲103cm、上腕囲32cm、腹囲89cm、大腿囲60cm

(群馬県 T.K 17歳 高校生)
A 現在のあなたの体位を拝見すると、確かに脂肪が多いようです。高校生で腹囲89cmはちょっと太すぎますね。

 現在トレーニングを毎日行なわれているようですが、筋肉質の体にしたいのでしたら、同じ種目を毎日行なうより分割法を採用した方が効果的です。そして脂肪を落すためには、インターバルを短くして心拍数を上げた状態でトレーニングをすることが大切です。
では、分割法を採用したトレーニング・スケジュール例を作成します。

《トレーニング・スケジュール例》

記事画像4
 普通のセット法でスクワットの後にスティッフ・アーム・プルオーバーを行うよりも、スーパー・セット法で行なった方が、胸郭の拡張にも有効で、酸素を充分取り込めますので、スクワットが終ったら休まずに直ちにプルオーバーに移って下さい。

 食事に関しては、やせようと思ってプロティンを使用をしても、プロティンはやせる薬ではなく、たんぱく質ですから、プロティン自体もカロリーがありますので、普通の食事にプロティンを加えていたのではやせることはできません。

 プロティンが減量に有効なのは、摂取カロリーを減らすためには減食が必要ですが、その際カロリーと共に他の必要な栄養素も少なくなり、それが不足してしまうことがあります。そのような時にプロティンを使用すれば低カロリーでたんぱく質を効率よく補給できるためです。
 多くのプロティンがビタミンやミネラルなども加えてありますので、そのようなものを使うとよいですね。
 
 したがって、減量するためにはまず普段の食事を減らす必要があります。現在のあなたの食事内容がわかりませんので具体的なアドバイスができませんが、全体量を減らすと共に、特に脂質には充分注意して下さい。たんぱく質・糖質が1g当り4calなのに対し、脂質は9calあります。脂肪分の多い食品を控える他、油を使った料理も避けましょう。

 その他の注意点としては、よくかんでゆっくりと食べ、朝多く、夜少なく食べるようにして下さい。ただし、カロリーは減らしてもバランスよく食べるようにして下さい。つまり食事を減らした上で、必要な分のたんぱく質をプロティンで補うようにして下さい。

肩・上腕部の鍛え方、スクワットの正しいやり方、日焼け灯の使用法について

Q 昨年7月下旬からウェイトトレーニングを始め、楽しく充実した毎日を送っております。また、貴誌のバックナンバーを昨年のものから買って、たいへん興味深く読ませていただいております。

 ところで、トレーニングについていくつかお聞きしたいことがあります。

<1>私は肩から上腕にかけて、どうも他の部位に比べて貧弱に思えるのです。特にこの 部分を良くするにはどうしたらよいでしょうか。

<2>スクワットをするときフラットバーを使うと肩(僧帽筋の下部)が痛くて仕方があ りません。止むなくUバーを使っているのですが、折角購入したバーベルセットなのに 、フラットが使えず残念に思っています。私の使い方に問題があるのでしょうか。

<3>天気の良い日は庭でパンツ1枚でトレーニングしていましたので、肌がよく焼けてカ ットも見えるようになりました。しかしこれからは日差しもだんだん弱くなり、それに 新学期が始まると日中にトレーニングする訳にもいきません。そこで日焼け灯を使用し たいと思うのですが、太陽光線のような効果が得られるでしょうか。また使用するとし たら、どのような点に注意したらよいでしょうか。

<4>プロティンパウダーを服用したいと思っていますが、初心者のうちからでも構わな いでしょうか。またプロティン・スコアという言葉を聞きますが、具体的に何の事です か。

<5>よくバルクをつけるトレーニングと、ディフィニッションをつけるトレーニングと は違うという事を聞きますが、具体的にどう違うのでしょうか。ちなみに私は大腿部の ディフィニッションを良くしたいのですが、どのようなトレーニング方法をしたらよい のでしょうか。

 現在の体位とトレーニング・スケジュールは以下の通りです。上記についてよろしくご指導をお願いします。

《体位》

記事画像5

《トレーニング・スケジュール》

記事画像6
[註]順番は上記の通りで、スクワットは2回に分けています。また、時々、スクワット の代わりにヒンズー・スクワットを50回×6セットすることもあります。トレーニング 時間はだいたい90分で、週4~5回です。インターバルは3分です。新学期が始まったら 、これにランニングを加える予定です。

 上記スケジュールの他に、暇を見つけて以下の補強トレーニングを随時実施しています。
記事画像7
(国学院大学1年・今井 悟)
A あなたのトレーニング・スケジュールを拝見すると、いくつかの問題点が見られます。まず、種目の順序に問題があります。筋肉を発達させるなら、胸なら胸のトレーニングを全部行なってから次の部位に移るようにして下さい。同様にスクワットを2回に分けて行うのも効果的ではありません。

 また、暇を見つけての補強トレーニングにも問題があります。筋肉を発達させるには、効率よく筋肉を刺激し、栄養をしっかり摂って充分休養しなくてはいけません。効率よく筋肉を刺激するには、1つの筋肉部位を集中してトレーニングすることです。1日のトレーニングの中では前述のように胸なら胸をくっつけて行ない、翌日はその部位は行なわないようにすることが大切です。ですから「暇を見つけて…」というのは、熱心な気持ちはわかりますが、よくありません。

 では、トレーニング・スケジュール例を記します。

《トレーニング・スケジュール例》
 (隔日的週3日)

記事画像8
 現段階ではまだ必要ないと思われる前腕の種目は除きました。
 
 では、次にご質問の項目ごとにお答え致します。

<1>前述のスケジュールを見ていただければおわかりのように、肩の種目としてサイド ・レイズを、上腕の種目としてオルタ―ニット・ダンベル・カールとフレンチ・プレス ・ライイングを加えました。
 また、これらの部位の筋肉は、胸・背・脚に比べて小さいので、それほどには速く発達 しません。根気よくトレーニングを続けて下さい。

<2>現在どのようなフォームでバーをかついでいるのかわかりませんが、一般的に言え ることは、バーを握る手の幅をあまり広くせずにかつぐようにします。こうすれば背中 の上部の筋肉が盛り上がり、バーをのせた時に骨などに当らなくなり、痛みもやわらぎ ます。その際に肘を上に向けるようにするとさらにやりやすくなります。
 もしもこの方法でも痛いようでしたら、スポンジやタオルを当てて行う方法もあります 。

<3>日焼け灯は、部分的に赤くなってしまうことが多く、あまり効果的でないのでおす すめできません。もし使うのでした、こまめに、全身ムラなく焼けるように注意するこ とが大切です。

<4>プロティン・パウダーは粉末の高たんぱく食品です。初心者の段階では特にたんぱ く質が重要で、体重1㎏当り2gのたんぱく質が1日に必要になります。あなたの場合は体 重73kgですから、1日に146gのたんぱく質が必要になるわけですが、これを普通の食事 からも摂るのは(量的にも、経済的にも)大変です。それでプロティンが便利なので  す。

 プロティン・スコアとは、たんぱく質の栄養価の優劣を決定するアミノ酸バランスのこ とで、別名たんぱく価ともいいます。

 人体を構成するアミノ酸のうち8種類は人体内で作れず、食物から摂らなければなりま せん。これを必須アミノ酸といい、これらのバランスを数字で表したのがプロティン・ スコアで、バランスがよいほど100に近い数値になります。例えば大豆たんぱくには必 須アミノ酸のうち、メチオニンが少なく、プロティン・スコアは55と低くなっています が、大豆を原料とするプロティン・パウダーは、これにメチオニンを加え、プロティン ・スコアを60~100近くまで高めてあります。

 ちなみに各食品のプロティン・スコアは鶏卵100、牛肉79、あじ88、牛乳74、大豆55、 じゃがいも47、トマト14、などです。

<5>一般的にバルク・アップのトレーニングでは高重量低回数、デフィニションを得る トレーニングでは低重量高回数がよいとされています。低回数とは5~6回の反復のもの をいい、高回数は15回以上のものをいいます。どちらの場合も食事法との関連が大きく、
バルク・アップの際はたんぱく質とともカロリーも(バランスよく)充分摂らなければいけません

 ディフィニションを得るにはたんぱく質を必要量維持しながら、カロリーを必要最少限(日常生活やトレーニング、その他を行う)まで落さなければいけません。従ってディフィニションを得ようとして、いくら高回数でトレーニングを行なっても、必要以上のカ ロリーを摂っていたのでは皮下脂肪は落ちないので、ディフィニションは出てきません 。また、根本的に筋肉が発達していなければ、つまり筋繊維自体が充実していなければ ディフィニションは得られません。

 大腿部のカットの為にはレッグ・エクステンションがよいのですが、レッグ・カール・マシーンがない場合を考え、
前述のトレーニング・スケジュールの中に、シシ―・スクワットを加えておきました。

腕を真先にトレーニングする場合のスケジュールの組みかた

Q ボディビル歴は3年です。現在はジムに通ってトレーニングしています。今年はコンテストに出場するつもりでがんばっていますが、腕が細いためポーズをとってもあまり見栄えがしません。そこで、腕を克服するためにトレーニングの最初に腕のトレーニングを実施したいと思っています。しかし、腕のトレーニングを先に行なうと、その後で行う胸や背中などの種目が十分にトレーニングできないと聞いています。

 腕の種目を先にトレーニングする場合、どの部位と組み合わせて実施したらよいのでしょうか。現在までの私のスケジュールは週6日、Aコースが胸と上腕三頭筋、Bコースが背中と上腕二頭筋、Cコースが肩と脚という組み合わせになっています。

《トレーニング内容》

記事画像9

《体位》

身長172cm、体重68kg、上腕囲34cm、胸囲109cm、大腿囲58cm、腹囲72cm

(東京都 T.O 25歳 会社員)
A 現在のあなたの分割法や、A・B2コースでAコースに胸・肩・上腕三頭筋、Bコースに背・上腕二頭筋・脚のような一般的な分割法の場合には、腕の筋肉優先法はできません。あなたが言われるように腕の後の胸や背のトレーニングが充分にできないからです。

 しかし、分割法を変えれば問題は少なくなります。腕のトレーニングを先に行ない、次にそこを補助筋としない胸か背のトレーニングを行なえばよいのです。ではまず具体的なスケジュール例を次に記します。

Aコース;上腕二頭筋・胸
Bコース;上腕三頭筋・背
Cコース;脚・肩

 ただし、Aコースの翌日に(中1日置かず)Bコースを行うと、Bコースの背中の時に前日の上腕二頭筋の疲労が残っていることが考えられますが、広背筋のトレーニングの最初にプルオーバーなどの、上腕二頭筋を補助筋としない種目を行なって、ある程度広背筋に刺激を与えておけば大丈夫です。

 ちなみに、上腕二頭筋を補助筋としない広背筋の種目としては、他にラット・マシン・ストレート・アーム・プルウダウンなどがあります。
 また同様に、肩の際に前日の上腕三頭筋の疲れが残っているようでしたらフロント・レイズやサイド・レイズを先に行なって下さい。

 では、具体的なスケジュール例を記します。

《トレーニング・スケジュール例》

記事画像10
 肩の種目に三角筋後部のための種目がありませんでしたので、バック・プレスと同系統のフロント・プレスを除き(どちらも上腕三頭筋が補助筋となっていることも考え合わせて)ベント・オーバー・サイド・レイズを加えました。

〔回答はトレーニング・プラザ代々木・野沢秀雄先生、工藤悦弘先生〕
〔演技指導は平井トレーニング・センター会長・熊岡健夫先生〕
月刊ボディビルディング1986年5月号

Recommend