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マッスルマニアプロ マイク宮本のアメリカ便り
ロサンゼルスの冬の名物イベントLA フィットエキスポ2015

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月刊ボディビルディング2015年5月号
掲載日:2018.05.12
2012 年マッスルマニアライト級世界チャンピオン/ 職業:プロトレーナー、ネットコーチ、海外コンテストコンサルタント(お問い合わせ:mike.miyamoto55@gmail.com )/ カリフォルニア州ロサンゼルス在住/ 神奈川県相模原市出身ブログ:http://ameblo.jp/miyamotopro/ オフィシャルファンページ:https://www.facebook.com/mike.miyamoto.pro
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 ボディビルのメッカ、ロサンゼルスの冬の名物『LAフィットエキスポ』が、全く冬を感じさせない気温25度の雲一つない快晴の中、2月7日と8日にLAコンベンションセンターで行われました。第12回を迎えるLAフィットエキスポですが、年々会場近くの駐車場に車を止めるのが困難になってきており、数字を見る前に、肌で規模が大きくなっているのが感じとれます。またLAフィットエキスポは、ロサンゼルスのもう一つの冬の名物イベント、音楽業界の祭典であるグラミー賞と同じ日になぜかいつも行われ、会場も隣同士なので、近隣は派手なスポーツカーに乗ったタンクトップ姿のボディビルダー達と、黒塗りの高級車のリムジンから降りてくるタキシードで決めたセレブ達がすれ違うという人種のルツボ、価値観が全く違う者同士が共存する、いかにもロサンゼルスらしい光景が見らます。 エキスポは1日25ドル(1ドル120円とした場合3000円)2日で40ドル(4800円)の入場チケットで、現役ミスターオリンピアのフィル・フィース、8回オリンピアに輝いたロニー・コールマン、4回オリンピアになったジェイ・カトラーに会えるだけでなく、質疑応答のセミナーにも参加できるという事で、今年は世界中から過去最高の5万人の来場者が、2日間で訪れました。

 会場に入ると高品質で美味しいプロテインバーとして知られる、クエストバー(QuestBar)のブースで、DJが大音響でノリの良いダンスミュージックをかけ、一気にLAフィットエキスポに来たと感じさせてくれます。プロテインバーは、プロテインパウダーに比べると、バーになるまでに不純物が入る可能性が増えるので、私は減量中はプロテインバーを避けますが、クエストバーのプロテインバーは砂糖を一切使っておらず、ドライフルーツやナッツの自然の甘みを使っており、1本20gのプロテインもとりつつ、カロリーも低い物ですと160カロリーだけなので、減量中の楽しみとして多くの方に人気があります。私は減量中でも、そこまで甘い物を欲しいと思いませんが、私の女性のクライアントの中には、減量中クエストバー無しでは、生きていけないと12本入りの箱ごと大量に買い込んでいる人も見かけます。

 金髪のノリノリのクエストバーギャルからサンプルのバーを貰い食べながら歩いていると、マイク宮本が日本で会社勤めしていた時、なぜか女性社員だけ、会社の制服のような物を着ていましたが、まさにその日本の女性社員の制服のような清楚な服を着ている黒髪の女性を発見しました。ビキニ姿は、フィットエキスポではごまんといますが、逆に清楚な格好の女性は、まず見ないので近寄ってみると、うま味調味料として世界に知られる日本の会社「味の素」のブースでした。うま味調味料はアミノ酸を主成分としますが、うま味調味料で培った最先端のアミノ酸製造技術を使い、ボディビルダーやアスリート用のBCAA、グルタミンは勿論、一般の人向けにも、血糖値や血圧を正常にするのに役に立つアミノ酸等も商品として取り揃えている事を、丁寧に教えてくれました。
のりのりの金髪美女のDJで目を惹いたクエストバーのブース。砂糖を一 切使っていないので、減量中に食べている人も多い

のりのりの金髪美女のDJで目を惹いたクエストバーのブース。砂糖を一 切使っていないので、減量中に食べている人も多い

清楚な服装の黒髪の女性がいたのは、日本でもお馴染みの味の素のブース。 アスリートはもちろん一般向けのアミノ酸を取り揃えている

清楚な服装の黒髪の女性がいたのは、日本でもお馴染みの味の素のブース。 アスリートはもちろん一般向けのアミノ酸を取り揃えている

 フィットエキスポでは、いつも目新しい楽しそうなマシーンや、トレーニング器具が見られます。ただ5年後、10年後もトレーニーからありがたられているような商品は、なかなか見かけまんせん。そんな中、昨年位から、丸い形をしたダンベルをよくエキスポでよく見かけるようになりました。各社呼び方に、若干違いがあるようですが、私が、今回実際に触ったのは、「ニューベル」と呼ばれ、生体力学に基づき作られていて、重量がバランス良く挙げられ、また手首や肘への負担が従来のダンベルに比べると遥かに優しく、もしかしたら今後のトレーニングの歴史をを変えるかもしれないとさえ思いました。今の所、私が通っているジムでは、「ニューベル」ではなく、「ダンベル」ですが、10年後「ダンベル」が「ニューベル」にすべて替わって、もう「ダンベル」とは、呼んでいないかもしれませんね。ただ「ニューベル」は10年後もう〝ニュー(新しい)〟ではなくなっているので、何と呼ばれるのかなと考えながら次のブースに向かって歩いていると、丁度10年前の2005年に8回目の最後のミスターオリンピになったロニー・コールマンが、自分自身のサプリメント会社でファンサービスをしていました。

 ロニーは、現役時代非常に高重量でのトレーニングをしていたので、引退後そのツケが回ってきて、引退後6回の大きな手術をしています。脊髄の手術3回、両方のヒップリプレスメント(人工股関節置換手術)、首の手術をしており、昨年の50周年のオリンピアでは、8回オリンピアに輝いた世界最高のボディビルダーの面影は全くなく、松葉杖を付きながら、痛々しく舞台に上がってきたのが、私の記憶の中では、まだ鮮明でした。

 ただそれから4ヶ月後のLAフィットエキスポでは、元気一杯のロニーがいました。真のチャンピオンは、肉体的にも精神的にもどんなに叩き落とされても、必ず這い上がってくるんですね。2ヶ月前からまたスクワットをはじめ、インタビューでも「俺は、まだ引退したわけでもなく、レジェンドでもなく、また復活するかもしれないぞ!」と調子良さそうに話していました。

 今現在自身のサプリメント会社の社長業もこなすロニーですが、ミスターオリンピアだった時と比べ物にならないくらい忙しい日々を過ごし、商品のプロモーションの為に世界中を飛び回る毎日を過ごしています。昨年のオーストラリアツアーでは、多忙の為、3日間1日1時間しか睡眠がとれませんでしたが、そんな状況下でも1日5食の食事、週5回のトレーニングの時間は必ず取っているとのことです。ロニーは、自分がミスターオリンピアどころか、ボディビルダーになれるとさえ思っていませんでしたが、アーノルド・シュワルツネッガーのミスターオリンピア7勝を上回る8回もの優勝を成し遂げました。その欲のないロニーがオリンピア8回に輝いた一番のモティベーションは「ただ日々より良い自分自身になりたかっただけ」と答えてました。昨日よりも今日、今日よりも明日と日々少しずつ自分を研鑽していく姿勢が積み重なって、前人未到のミスターオリンピア8勝という偉業を成し遂げたのでしょう。50歳になったロニーですが、昨年8人目の子供に恵まれ、8回ミスターオリンピアに輝いた父親ロニーとして、これで1人の子供に1つずつミスターオリンピアのトロフィーを渡す事が出来ると嬉しそうに話していました。
丸い形をしたダンベル『ニューベル』。生体力学に基づいており、手首や肘 への負担が軽減される未来のダンベルだ

丸い形をしたダンベル『ニューベル』。生体力学に基づいており、手首や肘 への負担が軽減される未来のダンベルだ

ミスターオリンピア8回優勝のロニー・コールマンは、自身のサプリメン ト会社のブースで、ファンサービスに努めていた

ミスターオリンピア8回優勝のロニー・コールマンは、自身のサプリメン ト会社のブースで、ファンサービスに努めていた

 高重量トレーニングでミスターオリンピアになったロニー・コールマンに対し、高回数で強度を上げパンプを大切にするトレーニングで4回ミスターオリンピアに輝いたジェイ・カトラーも自身のサプリメント会社を代表しファンサービスに精を出していました。ジェイは、トレーニング中だろうが、食事中だろうが、ファンにせがまれたら、常に写真やサインを書いてあげる非常にファン思いの誠実な性格の為、今現在ジェイ・カトラーのFacebook のファンページには、550万人のファンがいて、ジェイのセミナーには、非常に多くのファンで埋め尽くされました。エキスポのような質疑応答のセミナーでは、「BCAAは摂った方が、良いんですかね?」という初歩的な質問からはじまり「ステロイドについてどう思いますか?」という突っ込んだ質問までありますが、丁寧に答えていました。

 まず食事に関して、1日の中で一番大切な食事は朝食なので、朝食は絶対に抜いてはダメだと。なにか母親から聞いた事のあるような話ですが、ミスターオリピアになるような人達って、特別何か難しい事をしているのではなく、当たり前の事をきちんと毎日当たり前にこなしている人が世界の頂点に立つのですね。またトレーニング前とトレーニング後の食事の大切さも説いていました。

 有酸素運動は、「朝起きて、朝食を食べる前の空腹の状態でやると、一番脂肪が燃えるよ」とも話していました。質問者が「家に有酸素運動するマシンがないんです」と言うと、「近所を走ったり、散歩しても良いでしょ」と丁寧に対応していました。ジェイは、BCAAを朝起きて、空腹の状態で取り、そして有酸素運動をするのが筋肉を保持しながら脂肪も燃やすことができる理想と話していました。

 トレーニングは、自分の体の声をよく聞きながら、怪我のないようにトレーニングして下さいと優しく話していました。また選手の人からよく、関節の痛みについて相談受けますが、体に良い脂肪を減量中でも適切にとり、重たい重量を扱っても関節が滑らかに動くようにしておくのが大切との事です。怪我だらけのロニー・コールマンに対し、20年間のボディビルのキャリアでほとんど怪我なしで過ごした41歳のジェイは、引退宣言はしていませんが、2013年のオリンピアを最後に事実上引退しました。しかし今も非常に健康的で、フレッシュな感じを受けました。

 ジェイは、ロニーに比べると多少神経質な所もあるので、プレッシャーが常にのしかかった現役を退き、今現在はロニーと同じく、サプリメント会社の社長として、世界中を飛び回っているのを心から楽しんでいるようでした。
印象が変わったジェイ・カトラー

印象が変わったジェイ・カトラー

エキスポの3週間前に事故でなくなった グレッグ・ピット

エキスポの3週間前に事故でなくなった グレッグ・ピット

フィギュアオリンピア、ニコール・ウィルキンス

フィギュアオリンピア、ニコール・ウィルキンス

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 昨年のミスターオリンピアで、50周年記念の18金で出来たトロフィーと賞金3000万円(1ドル120円換算)を賭けてカイ・グリーンと世紀のバトルを繰り広げた35歳のフィル・ヒースは、オリンピア4連勝のオーラをあたり一面に輝かせながら、セミナーでスピーチをしていました。

 前日、中東のクエートでのゲストポージングを終え、地球を1周し、そのままロサンゼルスに着き、エキスポに参加していたにも関わらず、全く疲れた顔はなく、自分のブースでファンサービスをしていました。

 フィルは、現役オリンピアでありながら、昨年自分自身のサプリメント会社『ギフティッド・ニュートリション』を興し、ボディビル界だけでなく、アメリカで有名な経済誌フォーブスなどでも、注目されました。彼のニックネーム、〝ギフト(天賦の才能)〟は、彼の非の打ちどころがない完璧な体から付けられました。一見フィルの体は、天賦の才能のように見えますが、それは、実は努力の賜物であり、ミスターオリンピアになるまで、自己疑心との戦いが日々あり、今でこそ不動のミスターオリンピアと皆思っていますが、オリンピアになるまでは多くの人に「ミスターオリンピアなんて無理だ」と言われながらも、最後まで自分自身を信じオリンピアになった事を語っていました。 また「ギフティッド・ニュートリション」は食品医薬品局の規定に沿った高品質のサプリメントを売りに、ボディビル界だけでなく水泳のオリンピック金メダリストのコナー・デュワイヤーも愛用していることから、今現在非常に好調な売れ行きを見せています。現役ミスターオリンピアが社長のサプリメント会社と言えば、それだけで宣伝になり、経営が上手くいくのも当然と言う声もあるかと思いますが、現役オリンピアでありながら、競争激しいサプリメント会社の社長もこなすのは、「二兎を追うものは、一兎も得ず」で皆からさんざん絶対無理だと言われながら、そこでも自分を信じ、社長業とミスターオリンピア4連勝の両立を成し遂げたと話していました。
極太の腕と入れ墨でエキスポの人気者、リッチ・ピアナ

極太の腕と入れ墨でエキスポの人気者、リッチ・ピアナ

昨年のビキニオリンピア優勝者のアシュリー・カルワッサー

昨年のビキニオリンピア優勝者のアシュリー・カルワッサー

セミナーを行う現役ミスターオリンピアのフィル・ヒース

セミナーを行う現役ミスターオリンピアのフィル・ヒース

 LAフィットエキスポ会場では、次なるミスターオリンピア、ミスオリンピアを目指すアマチュア選手達のコンテストが行われており、ビキニ35歳以上で、サチエ・ソンキン選手が自慢の細いウエストを魅せ付け、見事総合優勝を掴みました。

 ソンキン選手は、背骨のずれから、4年前起き上がる事も出来ないくらいの背中の痛みを感じ、お医者さんから「ウエイトトレーニングをしたら背骨の周りに筋肉が付き、背骨のずれは治らないけど、筋肉が骨を支え、今より健常体になるよ」と言われたのをきっかけに、日本でトレーニングを初めたとの事です。日本の大学でアートとデザインの博士課程を卒業したソンキン選手は、ボディデザイン、ボディアートとファション性も要求されるビキニ競技に魅せられ日本からアメリカに渡ってきたとの事です。優勝し大きなトロフィーを手にした事も嬉しいと思いますが、トレーニングとダイエットで、健康な体を手にしたのは、トロフィー以上の物があるでしょう。

 大手サプリメント会社メトレックスでは、昨年4回目のフィギュアオリンピアに輝いたニコール・ウイルキンスが、丁寧にファンサービスをしていました。またメトレックスの代表アスリートと言うより、アメリカで一番のフィットネスカバーモデルとして知られるグレッグ・ピットの看板が高々と掲げてありました。
アマチュアビキニ35 歳以上で優勝したソンキン選手と筆者

アマチュアビキニ35 歳以上で優勝したソンキン選手と筆者

 実は、ショッキングな出来事が、LAフィットエキスポの3週間前に起こりました。グレッグが、エナジードリンクのコマーシャルの撮影中、電車に跳ねられ亡くなりました。グレッグは、アメリカ陸軍の将校養成学校の中でもエリート中のエリートが行く、ウエストポイントを卒業し、陸軍の特殊部隊のレンジャーに5年間在籍した後、フィットネス業界に入ってきたので、礼儀正しく、常にポジティブで笑顔で振舞い、フィットネス業界だけでなく、映画やテレビでも引っ張りダコでした。今回のエキスポでもグレッグ・ピットの追悼式が行われ、たくさんのファンが訪れました。37歳で人生を終えたグレッグですが、彼の笑顔と美しく刻み込まれた体は永遠に人々の心に受け継がれるでしょう。

 ボディビルのメッカ、ロサンゼルスで行われたLAフィットエキスポは、ボディビルディングを中心に毎年確実に規模が大きくなっており、2日間で5万人もの人が訪れました。年齢、性別に関係なく誰もが、健康で、理想の体型になりたいと思う21世紀においてボディビルが果たす役割は、無限大だと感じました。
月刊ボディビルディング2015年5月号

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