ヤブにらみスポーツ講座9
極真空手とパワー・トレーニング
月刊ボディビルディング1981年5月号
掲載日:2020.05.25
国立競技場〈矢野雅知〉
1978年の全日本選手権に続き、1979年の第2回世界選手権大会でも、巨漢中村誠選手に三瓶選手は決勝で敗れ去った。
「三瓶はワザやスピードで負けたのではない。中村の人間離れした体力・パワーに敗れたのだ。打倒中村誠を果さなくては、4年間も優勝を目指してトレーニングをやらせてきた自分の男が立たない。こうなったら、中村を破るまでは男として後には引けん!」
阿久津先生は厳しい口調で語っており、三瓶選手本人もそのことは痛いほど分っている。だが、中村選手の体重は100kgをゆうに超える。この体力の差、パワーの差が延長戦で著われてくる。
そして、二度の決勝とも勝負が決したのは一本勝ちではなく、優勢勝ちであった。体重86kgほどの三瓶選手では実際には体重110kgを越えるという中村選手を相手にしていては、延長になるとパワーが衰えてくるのはいたしかたない。かといって、見事に「一本!」を決めるだけの実力差があるわけではないのだ。
ことに中村選手は、並みの選手なら「ワザあり!」「一本!」となるような攻撃を受けてもマユひとつ動かさない、という強さをもっている。極真空手ではご承知の通り、寸止め空手ではない。素手による顔面攻撃等以外は、すべてが自由。まともに顔面を蹴られてアゴの骨を砕かれるという事態まで起こる。いや、一撃必殺をスローガンにする本物の空手になるほど、まともに顔面に蹴りが入れば、その衝撃力からいって、頭蓋が破壊されることは十分に起りうるはずである。
ところが、実際にはそうは簡単に一本が決まるものではない。一発決まるたびに骨折していてはたまったものではない。寸止め空手では外見上は「一本!」となっても、ボディ・コンタクトを許される極真空手では、その攻撃が実際にダメージを与えうるものでなくては、「一本!」や「ワザあり!」とは判定されないことが多い。見た目には、うまく相手の虚をついて攻撃を加えたつもりでも、それが十分に一撃必殺をスローガンとするに足るだけのものでなくてはならないのだ。
このことは、「打たれ強い選手は有利」ということにもなってくる。体力のない女性のような相手なら、一撃を加えただけでダメージを受け、そういう表情を見せ、体勢を崩してしまうから「一本!」に取られるケースが多くなる。だが、同じ攻撃をプロレスラーのようなものに加えてもビクともしないし、ダメージを受けないから有効なものとはならないので、「一本!」と判定されないことになろう。
そして、この打たれ強いということが、中村選手をひじょうに試合では有利にさせている。ふつうなら体勢を崩したり、ダメージを受けた苦しさが表情に現われるのに、中村選手はまずそういうことがない。効かないのだ。
世界大会のときも、スウェーデンの強豪と対戦した中村は、側頭部から回し蹴りをバシッと入れられ、一瞬、決まった―かに見えた。しかし、彼はビクともしない。そのためか「ワザあり!」にもならなかった。
三瓶選手の得意のローキックは、世界大会などでは外国選手に一撃しただけで、ビッコをひいて戦闘不能となるほどの破壊力がある。だが、中村選手にいくらローキックを入れても、ダメージがまるで表情に現われてこない。つまり、中村選手を倒すには、急所にしかも破壊力十分の完ペキな攻撃を決めなければ、とても「一本勝ち」は望めないのである。
「中村から一本を取ることはムズかしい。勝負の分れ目は、やはりパワーとスピードの持続―スタミナになろう。それも並みはずれたスタミナが必要である。ノーマルなトレーニングではダメだ。常識を超えたトレーニングをやっていかなくては、あの中村は破れん!」
阿久津先生の言葉には、人をグイグイと引っぱってゆく力がある。この感力に応えて指導下に加わってきたのは三瓶選手をはじめとして、世界大会に出場し、全日本でも上位入賞を果している国士舘大出身の三好一夫選手、それに、本部指導員で、疾走する車に向ってジャンプして飛び越える極真アクションをテレビなどで幾度も演じている金田和美選手、そして芳賀選手といった極真空手家に加えて、東洋医学の研究が高じて、現在は西洋医学の勉強に取り組んでいる医学生の名嘉真選手の5人であった。
名嘉真選手は沖縄空手家であるが、以前はフィジーク・コンテストにも出場しているボディビルダーでもある。彼は10年ほど前に極真会館に1ヵ月ほど入門したことがあり、合宿で大山館長にマッサージをしたり、目の前で150kgのベンチ・プレスをやってのけ、強い印象を与えている。
ここで一つ明確にしておくと、パワー空手、実践空手を信奉する極真会館でも、ベンチ・プレスで150kgも拳上するような選手はほとんどいない。スクワットにしても、名嘉真選手は200kg近くを持ち挙げるが、極真のトップ選手でもこれだけの筋力を持つものはザラにいない。一般の競技者よりは強いといっても、やはり本格的なパワー、スピードづくりとしてのウェイト・トレーニングを十分にやってないのが現状であるようだ。
もちろんパワーを重視しているので体力づくりはかなりハードに行なっている。中途半端な考え方で入門した者なら、3日で逃げ出すほどの練習をさせる。それに、空手には古来より独特の基礎体力づくりの練習法もあって、大いに効果をあげてはいる。
だが、国際的なレベルの空手になると、腕立て伏せをいくらやったところで、立ち打ちできなくなってくる。漸進的過負荷というトレーニングの大原則にのっとったトレーニング法―本格的なウェイト・トレーニングによって、150kg以上のベンチ・プレス、220kg以上のスクワットといったパワーの裏付けを持つことが要求されてきているし、さらにこの傾向は強まるだろう。しかも、能力の最大までスピードも高めねばならない。
スピードといえば、ブルース・リーはたしかにスピードがあって冴えたワザをみせた。しかし、「映画で演じたワザは実戦ではまず通用しない。だから彼は初段の実力もない」と評する専門家もいる。
たしかに映画ではハイ・キックなどの大きく迫力のあるワザを多用しているが、ハデに見せるためにやるのであり、彼自身は実践ではローキックを主体として、しかも小さなワザを使うべきだといっている。相手が強くなればなるほど、見た目にハデなワザは通用しなくなってくるのが現実である。
そのブルース・リーは、寝室のベッドにまでダンベルを持ち込んでトレーニングをやっており、夜中でも思いたつと腹筋運動などを一生懸命にやっていたというから、格闘技における姿勢はたしかに本物であったのだろう。それだけの修練を繰り返していたから、あれだけスピードのある大技を演じることができたものと思う。
それでも極真空手には彼のワザは通用しないだろう。パワーが違いすぎる。寸止め空手ならスピードとワザで勝負ができよう。しかしボディ・コンタクトを許す極真空手では、パワーの大きさが、ハッキリと勝敗に現われてくるのだ。もちろん、現在のカンフー・スターのジャッキー・チェンなどはそのアクロバティックなアクションを演じられる肉体に感心はしても、実戦の格闘技の立場でみれば別問題であって、武道家というよりも体操選手といった方がよいだろう。
今や国際的な格闘技となっている空手には、リフターなみの筋力とパワーに加え、スプリンターなみのスピードと、レスラーなみのスタミナといった高度の体力が要求されている。そのために、レジスタンス・エクササイズとしての本格的なウェイト・トレーニングといったものが不可欠となってきているのである。
だからこそ、すでに全日本の覇者となっていた佐藤勝昭師範が、窪田教授のアドバイスを受けるために国立競技場のトレーニングセンターにきたのであり、三瓶選手が本部道場での指導・練習を終えたあとに阿久津先生の指導を受けにきているのである。
さて、5人の若武者がそろって阿久津先生の指導を受けるのは、週2回、水曜日と土曜日であった。
水曜日のトレーニングは、パワー及びバルク・アップを主体としたプログラムであり、土曜日はパワー・アップと同時に、筋持久力、スピードの持久力といったオールラウンドなスタミナの向上に主眼を置いている。では、それを次に詳しく説明しよう。
「三瓶はワザやスピードで負けたのではない。中村の人間離れした体力・パワーに敗れたのだ。打倒中村誠を果さなくては、4年間も優勝を目指してトレーニングをやらせてきた自分の男が立たない。こうなったら、中村を破るまでは男として後には引けん!」
阿久津先生は厳しい口調で語っており、三瓶選手本人もそのことは痛いほど分っている。だが、中村選手の体重は100kgをゆうに超える。この体力の差、パワーの差が延長戦で著われてくる。
そして、二度の決勝とも勝負が決したのは一本勝ちではなく、優勢勝ちであった。体重86kgほどの三瓶選手では実際には体重110kgを越えるという中村選手を相手にしていては、延長になるとパワーが衰えてくるのはいたしかたない。かといって、見事に「一本!」を決めるだけの実力差があるわけではないのだ。
ことに中村選手は、並みの選手なら「ワザあり!」「一本!」となるような攻撃を受けてもマユひとつ動かさない、という強さをもっている。極真空手ではご承知の通り、寸止め空手ではない。素手による顔面攻撃等以外は、すべてが自由。まともに顔面を蹴られてアゴの骨を砕かれるという事態まで起こる。いや、一撃必殺をスローガンにする本物の空手になるほど、まともに顔面に蹴りが入れば、その衝撃力からいって、頭蓋が破壊されることは十分に起りうるはずである。
ところが、実際にはそうは簡単に一本が決まるものではない。一発決まるたびに骨折していてはたまったものではない。寸止め空手では外見上は「一本!」となっても、ボディ・コンタクトを許される極真空手では、その攻撃が実際にダメージを与えうるものでなくては、「一本!」や「ワザあり!」とは判定されないことが多い。見た目には、うまく相手の虚をついて攻撃を加えたつもりでも、それが十分に一撃必殺をスローガンとするに足るだけのものでなくてはならないのだ。
このことは、「打たれ強い選手は有利」ということにもなってくる。体力のない女性のような相手なら、一撃を加えただけでダメージを受け、そういう表情を見せ、体勢を崩してしまうから「一本!」に取られるケースが多くなる。だが、同じ攻撃をプロレスラーのようなものに加えてもビクともしないし、ダメージを受けないから有効なものとはならないので、「一本!」と判定されないことになろう。
そして、この打たれ強いということが、中村選手をひじょうに試合では有利にさせている。ふつうなら体勢を崩したり、ダメージを受けた苦しさが表情に現われるのに、中村選手はまずそういうことがない。効かないのだ。
世界大会のときも、スウェーデンの強豪と対戦した中村は、側頭部から回し蹴りをバシッと入れられ、一瞬、決まった―かに見えた。しかし、彼はビクともしない。そのためか「ワザあり!」にもならなかった。
三瓶選手の得意のローキックは、世界大会などでは外国選手に一撃しただけで、ビッコをひいて戦闘不能となるほどの破壊力がある。だが、中村選手にいくらローキックを入れても、ダメージがまるで表情に現われてこない。つまり、中村選手を倒すには、急所にしかも破壊力十分の完ペキな攻撃を決めなければ、とても「一本勝ち」は望めないのである。
「中村から一本を取ることはムズかしい。勝負の分れ目は、やはりパワーとスピードの持続―スタミナになろう。それも並みはずれたスタミナが必要である。ノーマルなトレーニングではダメだ。常識を超えたトレーニングをやっていかなくては、あの中村は破れん!」
阿久津先生の言葉には、人をグイグイと引っぱってゆく力がある。この感力に応えて指導下に加わってきたのは三瓶選手をはじめとして、世界大会に出場し、全日本でも上位入賞を果している国士舘大出身の三好一夫選手、それに、本部指導員で、疾走する車に向ってジャンプして飛び越える極真アクションをテレビなどで幾度も演じている金田和美選手、そして芳賀選手といった極真空手家に加えて、東洋医学の研究が高じて、現在は西洋医学の勉強に取り組んでいる医学生の名嘉真選手の5人であった。
名嘉真選手は沖縄空手家であるが、以前はフィジーク・コンテストにも出場しているボディビルダーでもある。彼は10年ほど前に極真会館に1ヵ月ほど入門したことがあり、合宿で大山館長にマッサージをしたり、目の前で150kgのベンチ・プレスをやってのけ、強い印象を与えている。
ここで一つ明確にしておくと、パワー空手、実践空手を信奉する極真会館でも、ベンチ・プレスで150kgも拳上するような選手はほとんどいない。スクワットにしても、名嘉真選手は200kg近くを持ち挙げるが、極真のトップ選手でもこれだけの筋力を持つものはザラにいない。一般の競技者よりは強いといっても、やはり本格的なパワー、スピードづくりとしてのウェイト・トレーニングを十分にやってないのが現状であるようだ。
もちろんパワーを重視しているので体力づくりはかなりハードに行なっている。中途半端な考え方で入門した者なら、3日で逃げ出すほどの練習をさせる。それに、空手には古来より独特の基礎体力づくりの練習法もあって、大いに効果をあげてはいる。
だが、国際的なレベルの空手になると、腕立て伏せをいくらやったところで、立ち打ちできなくなってくる。漸進的過負荷というトレーニングの大原則にのっとったトレーニング法―本格的なウェイト・トレーニングによって、150kg以上のベンチ・プレス、220kg以上のスクワットといったパワーの裏付けを持つことが要求されてきているし、さらにこの傾向は強まるだろう。しかも、能力の最大までスピードも高めねばならない。
スピードといえば、ブルース・リーはたしかにスピードがあって冴えたワザをみせた。しかし、「映画で演じたワザは実戦ではまず通用しない。だから彼は初段の実力もない」と評する専門家もいる。
たしかに映画ではハイ・キックなどの大きく迫力のあるワザを多用しているが、ハデに見せるためにやるのであり、彼自身は実践ではローキックを主体として、しかも小さなワザを使うべきだといっている。相手が強くなればなるほど、見た目にハデなワザは通用しなくなってくるのが現実である。
そのブルース・リーは、寝室のベッドにまでダンベルを持ち込んでトレーニングをやっており、夜中でも思いたつと腹筋運動などを一生懸命にやっていたというから、格闘技における姿勢はたしかに本物であったのだろう。それだけの修練を繰り返していたから、あれだけスピードのある大技を演じることができたものと思う。
それでも極真空手には彼のワザは通用しないだろう。パワーが違いすぎる。寸止め空手ならスピードとワザで勝負ができよう。しかしボディ・コンタクトを許す極真空手では、パワーの大きさが、ハッキリと勝敗に現われてくるのだ。もちろん、現在のカンフー・スターのジャッキー・チェンなどはそのアクロバティックなアクションを演じられる肉体に感心はしても、実戦の格闘技の立場でみれば別問題であって、武道家というよりも体操選手といった方がよいだろう。
今や国際的な格闘技となっている空手には、リフターなみの筋力とパワーに加え、スプリンターなみのスピードと、レスラーなみのスタミナといった高度の体力が要求されている。そのために、レジスタンス・エクササイズとしての本格的なウェイト・トレーニングといったものが不可欠となってきているのである。
だからこそ、すでに全日本の覇者となっていた佐藤勝昭師範が、窪田教授のアドバイスを受けるために国立競技場のトレーニングセンターにきたのであり、三瓶選手が本部道場での指導・練習を終えたあとに阿久津先生の指導を受けにきているのである。
さて、5人の若武者がそろって阿久津先生の指導を受けるのは、週2回、水曜日と土曜日であった。
水曜日のトレーニングは、パワー及びバルク・アップを主体としたプログラムであり、土曜日はパワー・アップと同時に、筋持久力、スピードの持久力といったオールラウンドなスタミナの向上に主眼を置いている。では、それを次に詳しく説明しよう。
水曜日のトレーニング・プログラム
さきにも述べたように、この日はパワー、及びバルク・アップを主体としたプログラムである。まず腕のトレーニングからスタートする。
<上腕屈筋>
以上の5種目をジャイアント・セットに組んで、各エクササイズを10回ずつ連続して行ない、5ジャイアント・セットやる。つまり、10回×5種目×5ジャイアント・セットの計250回もウェイトを持ちあげて屈筋を鍛えるのである。
ときには、スタンディング・バーベル・カールで、マルティ・パウンデッジ・システムを採用し行なうこともある。それは、45kgからスタートして、連続して5kgずつウェイトを減らしながら、もはや筋肉が収縮できなくなるまでやる。これを5セット行なう。
ときには、スタンディング・バーベル・カールで、マルティ・パウンデッジ・システムを採用し行なうこともある。それは、45kgからスタートして、連続して5kgずつウェイトを減らしながら、もはや筋肉が収縮できなくなるまでやる。これを5セット行なう。
<上腕伸筋>
以上の4種目を、各10回ずつのジャイアント・セットに組んで5ジャイアント・セット行なう。
<肩>
以上の5種目を、各10回ずつのジャイアント・セットに組んで5ジャイアント・セット行なう。
<脚>
①
計10セットを休みを短くして行なう。なお、+2とあるところはネガティブで行なう。
②アイソメトリック・スクワット
アイソメトリック・ラックを用いて、3つのポジションで書く10秒間ずつの3セットを行なう。
【註】アイソトニックスとアイソメトリックスの併用は、窪田教授の意見を参考にしている。それは―競技者の筋力トレーニングとして、コンセントリック・トレーニング75%、アイソメトリックス15%、エキセントリック・トレーニング10%の3つのトレーニング形態を組み入れたプログラムが、最も筋力が向上した、というソ連の研究がある。
これが注目されるのは、従来のデータの大多数が、ウェイト・トレーニングの初心者、もしくはそれに近い者を対象としたトレーニング効果の現われやすいものであって、長期間にわたってウェイト・トレーニングを続けていて、トレーニング効果が停滞しているような経験者を対象としたものは多くない。そこで、阿久津先生はこのトレーニング・プログラムを取り入れたのである。
【註】アイソトニックスとアイソメトリックスの併用は、窪田教授の意見を参考にしている。それは―競技者の筋力トレーニングとして、コンセントリック・トレーニング75%、アイソメトリックス15%、エキセントリック・トレーニング10%の3つのトレーニング形態を組み入れたプログラムが、最も筋力が向上した、というソ連の研究がある。
これが注目されるのは、従来のデータの大多数が、ウェイト・トレーニングの初心者、もしくはそれに近い者を対象としたトレーニング効果の現われやすいものであって、長期間にわたってウェイト・トレーニングを続けていて、トレーニング効果が停滞しているような経験者を対象としたものは多くない。そこで、阿久津先生はこのトレーニング・プログラムを取り入れたのである。
③レッグ・イクステンション
ノーチラス・レッグ・イクステンション・マシーンを用いて、マルティ・パウンデッジ・システムで5セット行なう。
④レッグ・カール
ノーチラス・レッグ・カール・マシーンで20回×5セット
<胸>
①ベンチ・プレス
以上6セットを5人で交互に行なう。そのあと、マルティ・パウンデッジ・システムとフォースト・レプスを用いて、
というように1人で連続して行う。
<背>
①ラット・マシーン・プルダウン
アンダー・ハンド・グリップで、手幅の狭い握り方と広い握り方をスーパー・セットに組んで、5セット行なう。
<首>
頭をパートナーに押えてもらい、前後20回、左右20回を3セット行なう。
<腹>
腹筋運動は、通常の空手の練習でもかなりの量をこなしているので、ここでは打たれ強いボディをつくることを目的として、3kgのメディシン・ボールを、あお向けに寝ている腹をめがけて、パートナーが頭上から思い切りたたき込む。これを20回の5セットやる。
余談だが、私も一度このパートナーをやったことがあるが、メディシン・ボールを力いっぱいたたき込んでいく私の方が先に疲れてしまったものだ。彼らは、大声で気合をいれながら腹筋を収縮させて鍛えるが、メディシン・ボールを頭上に振り上げる方も、気合をかけながらやらないと、フラフラになってしまうほどハードなものである。
この水曜日のトレーニングは、腕―肩―脚―胸―背―首―腹という順序で全身を鍛えるコースになっている。腕からスタートして、しかもこれだけのトレーニング量である。ジャイアントセット法を多用するが、これはスペシャライゼーションとして用いるのがふつうである。期間をきめて、鍛える筋群をしぼっておかなくては、オーバー・トレーニングで逆効果にさえなってしまう。
それに、腕のあとに続くのが肩の運動であるから、すでに腕が疲労しているから、十分に肩に刺激を与えられる前に腕の方がダメになってしまうのでは・・・という疑問が起る。ことにプレイグゾースチョン・プリンシプルを重視するようになった最近のボディビルディングのプログラムにはまったく逆行することになる。
これについて阿久津先生は次のように言っている。
「空手でとくに重要な筋肉といえば、肩、腹、脚である。上体の肩の筋肉は攻撃でのパワー発現の土台となる大切なものだ。だから、肩のトレーニングから開始したこともあった。
しかし、烈しい試合で腕が先に疲れきったときに、どこまで肩のパワーを発揮できるかは、大きなポイントになる。つねに腕が疲れた状態から肩のトレーニングになり、その苦しい中でも肩の筋肉を極限まで収縮させてしまう能力を身につけねばならない。
とにかく常識や原則論でものごとを見ていてはカベは打ち破れん。打倒中村誠を目指すからには、トレーニングのときから、つねに厳しく苦しい状況に追いやり、それに適応してこなくてはならない。結果は・・・彼らはよく耐えてきたし、肩のトレーニングでもガンガンやれるようになってきた。
とくに強調しておきたいのは、彼らはボディビルダーではない。トレーニングはパワーやバルク・アップを目的にするものではあっても、空手家としての耐久力、適応能力をも同時に高めてゆかねばならないから『量より質』という現代的なトレーニング法を無視して、あくまでもからだ中のエネルギー源すべてを消耗しきるところまで、徹底的にやらせたのである」
これが阿久津先生の考えだが、ちなみに、水曜日の拳上回数は総計およそ1300回となる。(つづく)
余談だが、私も一度このパートナーをやったことがあるが、メディシン・ボールを力いっぱいたたき込んでいく私の方が先に疲れてしまったものだ。彼らは、大声で気合をいれながら腹筋を収縮させて鍛えるが、メディシン・ボールを頭上に振り上げる方も、気合をかけながらやらないと、フラフラになってしまうほどハードなものである。
この水曜日のトレーニングは、腕―肩―脚―胸―背―首―腹という順序で全身を鍛えるコースになっている。腕からスタートして、しかもこれだけのトレーニング量である。ジャイアントセット法を多用するが、これはスペシャライゼーションとして用いるのがふつうである。期間をきめて、鍛える筋群をしぼっておかなくては、オーバー・トレーニングで逆効果にさえなってしまう。
それに、腕のあとに続くのが肩の運動であるから、すでに腕が疲労しているから、十分に肩に刺激を与えられる前に腕の方がダメになってしまうのでは・・・という疑問が起る。ことにプレイグゾースチョン・プリンシプルを重視するようになった最近のボディビルディングのプログラムにはまったく逆行することになる。
これについて阿久津先生は次のように言っている。
「空手でとくに重要な筋肉といえば、肩、腹、脚である。上体の肩の筋肉は攻撃でのパワー発現の土台となる大切なものだ。だから、肩のトレーニングから開始したこともあった。
しかし、烈しい試合で腕が先に疲れきったときに、どこまで肩のパワーを発揮できるかは、大きなポイントになる。つねに腕が疲れた状態から肩のトレーニングになり、その苦しい中でも肩の筋肉を極限まで収縮させてしまう能力を身につけねばならない。
とにかく常識や原則論でものごとを見ていてはカベは打ち破れん。打倒中村誠を目指すからには、トレーニングのときから、つねに厳しく苦しい状況に追いやり、それに適応してこなくてはならない。結果は・・・彼らはよく耐えてきたし、肩のトレーニングでもガンガンやれるようになってきた。
とくに強調しておきたいのは、彼らはボディビルダーではない。トレーニングはパワーやバルク・アップを目的にするものではあっても、空手家としての耐久力、適応能力をも同時に高めてゆかねばならないから『量より質』という現代的なトレーニング法を無視して、あくまでもからだ中のエネルギー源すべてを消耗しきるところまで、徹底的にやらせたのである」
これが阿久津先生の考えだが、ちなみに、水曜日の拳上回数は総計およそ1300回となる。(つづく)
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