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なんでもQ&Aお答えします 1983年11月号

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月刊ボディビルディング1983年11月号
掲載日:2020.12.23

トレーニング頻度と運動種目の実施順位の変更について

Q 3ヵ月ほど前から市営のトレーニング・センターに通っています。ボディビルの専門コーチがいないので、自己流でトレーニングしています。現在の内容は次のようなものです。

≪トレーニング・スケジュール≫
記事画像1
以上のメニューを、準備体操も含めて約2時間で消化しています。また、トレーニングは勤務の都合上、曜日に関係なく、3日周期とした下記の日程で行なっています。
第1日目......トレーニング
第2日目......トレーニング
第3日目......休み

ところで、ボディビルの指導書などによると、オーバー・ワークは逆効果になるとのことなので、今後は、第1日目にトレーニングしたら、第2日目と第3日目は休み、といった日程で行うようにしようかと考えていますが、いかがなものでしょうか。
なお、トレーニング場には他にも大勢の人が練習しているので、用具の係上、種目の順序を変えてトレーニングを行うこともままあるのですが、さしつかえないでしょうか。その点についてもご意見をお聞かせください。

≪現在の体位≫
記事画像2
(長崎県前田栄二会社員31歳)
A トレーニングの日程に関する質問からお答えします。ごく軽度なトレーニングを行う場合には例外もありますが、通常、ボディビルの基本的セオリーからすれば、同一内容(あるいは同一部位)のトレーニングは1~2日(または2~3日)おきの間隔で行うのが常識とされております。
したがって、あなたのように3日を1周期として日程を組まなければならない場合は、2日続けてトレーニングを行なって1日休むよりは、1日行なって2日休むというようにするほうが妥当であるといえます。

1日行なって2日休むというのは、つまりは、2日置きにトレーニングを行うことになるので、トレーニングの間隔が開きすぎることに不安を感じるかも知れませんが、あなたの場合は、まったく心配がないといえます。
現在実施しているトレーニングのメニューからすれば、むしろ、積極的に2日間くらいの休養を取るようにするほうが、かえってよい結果が得られるのではないかと考えられます。

なお、どうしてもトレーニングの頻度を増やしたいというのであれば、そのときは分割法(スプリット・ルーティン)による方法を採用するようにすればよいでしょう。
ちなみに、現在、あなたが行なっておられるトレーニング・スケジュールを分割法によるスケジュールに組み直せば次のようになります。

≪分割法によるスケジュール例1≫
記事画像3
[註]シット・アップはセット数を少なくして、A、B双方のコースにおいて行うようにしてもよい。なお、現在のトレーニング・スケジュールは背(広背筋)の運動がないので、それを加える場合は下記のようにすればよい。


≪分割法によるスケジュール例2≫
記事画像4
ところで、現在あなたが実施しておられるトレーニング法は、初心者としては、各種目のセット数が多すぎるきらいがあります。セット数を多く行えば効果がそれだけ多く得られるといったものではないので、翌日に疲れが残るようであれば、セット数を少なくすることも考えてみる必要があると思います。
では次に、運動の順序に関する質問にお答えします。結論からいえば、運動はできるだけ同じ順序で行うようにするのがよいということがいえます。
というのは、その日、その日の事情によって運動の順序を変えることは、個々の運動における筋力的なコンディションが他の日のそれと正しく比較できなくなるので、思わぬ無理をしてからだの調子をくずすことにもなるからです。

つまり、同じベンチ・プレスを行うにしても、その日の全般のスケジュールにおいて、前のほうで行うのと、後のほうで行うのとでは、運動で発揮できる筋力に当然差が生じてくるものと考えられるからです。
したがって、ベンチ・プレスならべンチ・プレスにおける筋力的なコンディションをより正確につかむためには、いつも同じ順番でベンチ・プレス行うようにするのがよいといえます。

初心者用のトレーニング・スケジュール

Q 私は26歳の会社員です。これから本格的にボディビルのトレーニングを始めようと思うのですが、仕事の関係で、朝30分と夜1時間ぐらいの2回に分けてトレーニングしたいと考えています。
私は中学時代は体操、高校時代には水泳、また16~20歳にかけて空手といったぐあいに、学生の頃はずいぶんと体を鍛えてきたほうだと思います。

現在は、1日置きにダンベル(片方が6kgのもの)でトレーニングしていますが、今度、バーベルとNEボディビルマシンを購入しましたので、かなり本格的なトレーニングも可能になりました。
それで、初心者用のよいトレーニング・スケジュールをつくっていただきたいと思います。ちなみに、現在の私の体位は次のとおりです。


≪現在の体位≫
記事画像5
(東京都岩崎義昭会社員26歳)
A トレーニングの時間を夜に1時間ぐらい持てるのでしたらあえて朝と夜の2回に分けてトレーニングする必要はないと思います。
あなたは、これまでダンベルの運動も含めていろいろな運動でからだを鍛えてこられたようですが、正直にいって、ボディビルに関しては初心者であるということです。
したがって、夜の1時間だけで充分満足のいくトレーニングができると思います。朝と夜の2度に分けてトレーニングする方法もないではありませんが、経験の乏しい初心者の段階では体調をくずしやすいので、さけたほうがよいと思います。

ましてや、あなたの場合は日中は仕事をするわけですから、そのことから考えても朝のトレーニングはさけるほうがよいでしょう。
1日の仕事を終えた夜に、その日の体調を考慮しながら落ちついた気持でトレーニングをするのが賢明です。

では、トレーニング・スケジュール例を第1段階から第4段階まで記述することにしましょう。
つきましては、せっかくNEボディビルマシンを購入されたことでもあるので、できるだけそれを活用したスケジュールを作ることにします。

≪トレーニング・スケジュール例≫
記事画像6

最初の6ヵ月は面白いほど効果があったが、その後は逆に低下してしまった

Q ボディビル歴は1年です。自宅で1人きりでトレーニングしています。始めてからの6ヵ月はからだの調子もよく、体重も着実に増え、筋力も目に見えて向上していました。開始後6ヵ月目の体重と筋力は次のようです。

●体重60.5kg(開始時56.5kg)
●ベンチ・プレス
52.5kg×10回(開始時35kg)
●スクワット
55kg×10回(開始時35kg)
 そのようなわけで、すっかり気分をよくした私は、その後も調子にのって使用重量をどんどん増やしていったところ、3ヵ月後にはベンチ・プレスは60kgで10回、スクワットは65kgで10回行えるようになりました。
 しかし、どうしたことか、その時を境として急に体調が悪くなり、筋力は低下し、体重も減少しだしました。
それからさらに3ヵ月たった現在は、ベンチ・プレスが50g、スクワット55kgと筋力がほぼ以前(開始後6ヵ月)のレベルに戻ってしまいました。

 以上のように、数ヵ月もの間、意欲的にトレーニングに励んだ結果がこのありさまなので、いまではボディビルに対する自信も失せてしまいました。
このままでは、トレーニングを続ければ続けるほど、ますます筋力が弱くなり、体重もどんどん減ってしまうような気がしてなりません。

 なんとか体調を立てなおし、再び以前のように意欲的なトレーニングが行えるようになれたらと思います。
それで、このような結果になった原因についてご意見をお聞かせいただきたいと思います。なお、参考までに現在の体位とトレーニング・スケジュールは下記のとおりです。

◆現在の体位
記事画像7
記事画像8
[註]トレーニングの疲労感は強。
(愛知県 吉田浩司 商業 24歳)
A 好調な状態から一変して急激に体調をくずすというケースはボディビルダーにはよく見うけられることです。
そして、そのような事態は、たいていの場合、トレーニングを過度に行なったときに生じるようです。とくに、ごく短期間のうちに使用重量や運動量を急激に増やしていったときに起こるようです。あなたの場合もこのケースと考えてまず間違いないでしょう。

ごく短期間のうちに急速に得た身体的効果というものは、修練期間が不十分なので、組織的に不安定であり、真に身についたものであるとはいえない面があります。
トレーニングで得た効果(筋の肥大および筋力)が真に身についたものになるには、それ相応の時間的な経過が必要です。つまり、トレーニングの効果というものは、その効果を得た後にさらにそれをどのくらいの期間にわたって修練し持続させたかによって身につく安定度が変わってきます。

つまり、急速に得た効果というものは、長い期間の修練によって得た効果に比べて、トレーニングをやめてしまったときの減退が早く、また、過度な運動に耐える性質が安定していないともいえます。あなたはこのような新しい効果の性質をまったく考慮しなかったのではないでしょうか。
あなたの場合のように、筋力がごく短期間のうちに著しく向上した場合はいわば、新しい効果の上に、さらに新しい効果が急速につみ重なるといった状態になります。

そのような状態でも、トレーニングの仕方に無理がなければ別に問題は生じません。
しかし、力が急速に強くなることで気分をよくし、調子にのって運動の強度を短期間のうちにどんどん増やしていくと、いつしか運動に余裕がなくなり、やがては、無理が高じて身体の組織のコンディションを損ねてしまうことになります。
そうなると、筋自体のコンディションも、ある時点を境にして正常とはいいがたい状態になってしまい、少しくらいの休養では元に戻らなくなってしまいます。
それでも、そのような筋の状態を考慮して十分な休養を与えるようにすれば、まだまだその時点では、コンディションを元の状態に戻すことができます。

ところが、その時点でコンディションを立て直すためのなんらの処置もしないで次々と無理なトレーニングを重ねていくと、筋の状態は日増しに悪くなり、ついには、あなたの現在のような事態になってしまいます。
そして、それがあなたの場合のようにトレーニングのキャリアが短い場合には、コンディションのくずれによる効果の減退(筋の細化、および筋力の低下)もきわめて速いテンポで進行することになります。

というのは、そのような事態になるまでに得られた効果というものが、ごく短期間のうちに得られたものであるので、筋の組織面での安定度も低くひとたび過度な運動によってコンディションをくずしたとなると加速的に効果が減退(筋が萎縮)していってしまうということです。
ところで、そのような状態にいったんなってしまうと、そう簡単には以前のピーク時の状態には戻せなくなります。休養を与えたからといって、筋の太さや力が以前のピーク時の状態に回復するというものではありません。

いわば“後の祭”で、ある時点に戻ってトレーニングをやり直さなければなりません。したがって、あなたも、今後のトレーニングはそのことをよく自覚して行うことが必要です。
では、今後トレーニングを行なっていく上で留意しなければならない点について述べることにしましょう。分りやすくするために箇条書きにします。

<1>オーバー・ワークの状態がいまだ継続していると判断されるので、まず、完全に疲れがとれるまでトレーニングを休む。

<2>トレーニング再開後は、以前のピーク時のことを忘れて、初心にかえって行う。その際、採用種目は思いきって数を少なくする。
体の各部分のベーシック・エクササイズ(基礎的な運動)のみを選んで行うようにするのがよい。たとえば、
腹......シット・アップ
脚.........スクワット
胸.........ベンチ・プレス
肩.........スタンディング・プレス
背.........ベント・オーバー・ローイング
腕.........ツー・ハンズ・カール

<3>無理のない重量を使用して運動を行うこと。

<4>1セットの反復回数は、力を出しきることなく、常に1~2回程度の余力を残す範囲にとどめる。つまりがんばれば10回行えるとしたら、8回か9回にとどめる。そのような意味では所定の反復回数にあまりこだわらずに臨機応変に運動を行うのがよいということです。

<5>筋力が強くなり、運動に多少余裕が感じられるようになっても、すぐに使用重量を増やさないこと。できるなら、トレーニングの頻度にして3度以上の猶予期間をもうけるようにするのがよい。

<6>使用重量を増やした日は、新たな重量が割合に軽く感じられるものであるが、意識的に反復回数をセーブして運動を行うのがよい。調子にのって行うと、後に疲労が残り、次のトレーニングのときに重量が重く感じられるようになる。

<7>使用重量を増加した次のトレーニングのときに、重量が重く感じるようであれば、そのときは回数にこだわらずに、絶対に無理のない範囲にとどめるようにする。また、かなり疲れが残っていると判断されたならその運動は中止する。

<8>以上の点に留意して、あせらずにじっくりとからだを鍛えていくようにする。

大胸筋下部により強く効かすためのシーテッド・ディップは?

Q 大胸筋下部に有効な運動として、6月号のこのコーナーで紹介されたシーテッド・ディップについてお伺いします。
現在、私はデクライン・プレスと併用してシーテッド・ディップをトレーニングに組み入れていますが、その意外な効果に驚いております。

さて、その運動法についてですが、高さ40cmのベンチとベンチの間に体を入れ、背をまるめ、上半身が両腕より前に出ないように留意して、臀部が床に触れるまで腕を深く屈した状態から運動を行うようにしています。
以上のような方法と、6月号で紹介された低い位置でのディップ運動とでは、どちらが大胸筋の下部により有効でしょうか。
(高知県・土佐TC代表・長岡正樹)
A 運動におけるフィニッシュの姿勢が同じであれば、体の上下動の動作に多少の深浅の差があっても大胸筋の下部に与える効果はほとんど変わりません。
シーテッド・ディップのような運動で大胸筋の下部の発達を促していくには、両肘の角度が90度以上になった体勢からフィニッシュまでの動作が最も大切であるといえます。

つまり、背をまるくし、上半身をできるだけ両腕より前に出さないように留意して、体を完全に押しあげることが肝心であるといえます。
したがって、そのへんのところがきちんとしたフォームと動作で行われていさえすれば、多少深い位置から動作を行なったとしても、大胸筋下部に与える効果に変わりは生じません。
ただ、深い位置から押しあげるのと浅い位置から押しあげるのとでは、大胸筋の下部以外の部分に与える効果に差異が生じてくるといえます。体を押しあげるスタートの位置が深くなり、ディップ運動の可動範囲が大きくなれば、下部以外の部分に及ぼす効果が拡大されます。

ちなみに、6月号で紹介したシーテッド・ディップの方法は、大胸筋下部の発達に重点を置き、大胸筋の下部により的確に、より容易に刺激を与えることのできる方法として紹介したものです。
したがって、下部に効かすためのポイントさえはずれることがなければ、下部以外の部分にも多少効かすために、深い位置からのシーテッド・デイップを行なってもいっこうにさしつかえありません。
(回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内威先生 演技指導は平井トレーニング・センター会長・熊岡健夫先生)
月刊ボディビルディング1983年11月号

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