やさしい科学百科 エアロビクスの矛盾<4> (酸素は両刃の剣)
月刊ボディビルディング1983年11月号
掲載日:2020.12.24
畠山晴行
<1>エアロビクスの変化
「ネェー、あなたエアロビクスやってるんだって」
「そう、最近始めたのよ」
「あのレオタード姿がいいわね」
近ごろ、エアロビクスといえば、レオタードでカッコよくおどるものだと思っているミーチャン、ハーチャンが多いようです。
そもそも「エアロビクス」は1968年に、アメリカのクーパーさんが発表したもので、日本語では「有酸素運動」と訳されております。
そして、クーパーさんは、その手段として、ランニング、水泳、サイクリングなどを推奨しておりました。
「いずれも酸素を十分に使う運動だから、体によい。酸素をあまり使わない無酸素運動(?)はよくない」という考えを世界の知識人にうえつけてしまいました。
クーパーさんの「エアロビクス」によれば、一定の距離を走るのに必要なエネルギーは、人によりあまり差がないということです。
考えてみれば、あたりまえのことです。基本的には、水平移動ですからそれほど多くのエネルギーは必要ではなく、水平移動のために起る多少の上下運動と、体重差をかけあわせた分だけが個人差として現われるのですから。かなり大ざっぱな表現ですが、走り方が同じだとすれば、まちがいありません。
さて、クーパーさんは「エアロビクス」発表の10年後、1777年に「エアロビクス・ウェイ」を著しております。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、この本には「減量のために、あまり減食をして、エアロビクスと組み合わせるのは危険であり、正しい食事を摂ることが重要である」との意味が記されております。
減量といえば「カロリー計算をおぼえなさい」というのは、今のお医者様の言う言葉。そして「毎日運動をくりかえすのがいい」というのが一応の常識です。
確かにバッチリとカロリー計算をして正しい(すべての栄養素を含んだ)食事を摂ることができれば、それにこしたことはありません。
ところが、カロリー計算に気をとられすぎると、必要な栄養素のうちの何かがこぼれてしまいます。これが短期間なら別に影響はでないかも知れませんが、長期間にわたった場合は、クーパーさんが言うところの危険におそわれるかも知れません。
朝日新聞社発行の健康雑誌「フットワーク」の10月号、トピックのページに、クーパーさんの“歩く健康法”が紹介されておりました。
それによると、30才代の場合、1日3マイル(4.8km)を、42分30秒で歩けばいいそうです。これを週4回実行すれば32点。そして30点台を維持すれば「健康でいられるそうです。ちなみに、1点とは、酸素消費量7mmlとのことです。
この“歩く健康法”は、前に記した「エアロビクス・ウェイ」にあるものです。さて、これを「エアロビクス」発表時のものと比べてみましょう。
3マイルを43分29秒~30秒で走った場合6点で、1週間5回走ったとして合計30点となるのが「エアロビクス」発表時の点数です。
つまり「週5回、30~40分の軽いジョギングを行わなければ健康でいられない」というのが最初の説で、「1日、約5㎞を、ちょっとスピードをつけて週4回歩けばいい」というのが最近の説です。
「フットワーク」の“歩く健康法”と同じページには「スポーツ人間、必ずしも健康人間とは限らない」というコラムもあります。
これは日本医科大学の酒巻敏夫助教授の調査結果を記したもので、併記されている解説には「スポーツ・エリートのオリンピック選手は案外短命だ.......スポーツ嫌いの横着人間には朗報か」とあります。
どんなスポーツであれ、ふつうの生活以上に酸素を消費します。そういえば、アメリカでは減量後、原因不明で死んだ人が続出したことがあります。
「クーパーさんの説を支持する人たちの「酸素はとればとるほどいい」という考え方に落し穴がないかどうかを、今月は考えてみたいと思います。
「そう、最近始めたのよ」
「あのレオタード姿がいいわね」
近ごろ、エアロビクスといえば、レオタードでカッコよくおどるものだと思っているミーチャン、ハーチャンが多いようです。
そもそも「エアロビクス」は1968年に、アメリカのクーパーさんが発表したもので、日本語では「有酸素運動」と訳されております。
そして、クーパーさんは、その手段として、ランニング、水泳、サイクリングなどを推奨しておりました。
「いずれも酸素を十分に使う運動だから、体によい。酸素をあまり使わない無酸素運動(?)はよくない」という考えを世界の知識人にうえつけてしまいました。
クーパーさんの「エアロビクス」によれば、一定の距離を走るのに必要なエネルギーは、人によりあまり差がないということです。
考えてみれば、あたりまえのことです。基本的には、水平移動ですからそれほど多くのエネルギーは必要ではなく、水平移動のために起る多少の上下運動と、体重差をかけあわせた分だけが個人差として現われるのですから。かなり大ざっぱな表現ですが、走り方が同じだとすれば、まちがいありません。
さて、クーパーさんは「エアロビクス」発表の10年後、1777年に「エアロビクス・ウェイ」を著しております。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、この本には「減量のために、あまり減食をして、エアロビクスと組み合わせるのは危険であり、正しい食事を摂ることが重要である」との意味が記されております。
減量といえば「カロリー計算をおぼえなさい」というのは、今のお医者様の言う言葉。そして「毎日運動をくりかえすのがいい」というのが一応の常識です。
確かにバッチリとカロリー計算をして正しい(すべての栄養素を含んだ)食事を摂ることができれば、それにこしたことはありません。
ところが、カロリー計算に気をとられすぎると、必要な栄養素のうちの何かがこぼれてしまいます。これが短期間なら別に影響はでないかも知れませんが、長期間にわたった場合は、クーパーさんが言うところの危険におそわれるかも知れません。
朝日新聞社発行の健康雑誌「フットワーク」の10月号、トピックのページに、クーパーさんの“歩く健康法”が紹介されておりました。
それによると、30才代の場合、1日3マイル(4.8km)を、42分30秒で歩けばいいそうです。これを週4回実行すれば32点。そして30点台を維持すれば「健康でいられるそうです。ちなみに、1点とは、酸素消費量7mmlとのことです。
この“歩く健康法”は、前に記した「エアロビクス・ウェイ」にあるものです。さて、これを「エアロビクス」発表時のものと比べてみましょう。
3マイルを43分29秒~30秒で走った場合6点で、1週間5回走ったとして合計30点となるのが「エアロビクス」発表時の点数です。
つまり「週5回、30~40分の軽いジョギングを行わなければ健康でいられない」というのが最初の説で、「1日、約5㎞を、ちょっとスピードをつけて週4回歩けばいい」というのが最近の説です。
「フットワーク」の“歩く健康法”と同じページには「スポーツ人間、必ずしも健康人間とは限らない」というコラムもあります。
これは日本医科大学の酒巻敏夫助教授の調査結果を記したもので、併記されている解説には「スポーツ・エリートのオリンピック選手は案外短命だ.......スポーツ嫌いの横着人間には朗報か」とあります。
どんなスポーツであれ、ふつうの生活以上に酸素を消費します。そういえば、アメリカでは減量後、原因不明で死んだ人が続出したことがあります。
「クーパーさんの説を支持する人たちの「酸素はとればとるほどいい」という考え方に落し穴がないかどうかを、今月は考えてみたいと思います。
<2>動物の寿命と酸素消費量
「酸素はとればとるほどいい」という考えに対する私の疑問は、動物の寿命と酸素消費量の関係からきています。
ふつう、酸素消費量の多い動物ほどその寿命は短いものです。寿命の長い短いは、酸素消費量ばかりでなく、脳の大きさにも関係する。もともと遺伝子に寿命の長さがプログラムしてあるなど、説もいろいろあります。
しかし、同一種では体の大きい動物ほど、体重1g・1時間あたりの酸素消費量は少なく、寿命は長いというのが生物学的定説となっております。
よく「鶴は千年、亀は万年」とか言いますが、実際には鶴は50~60年ぐらい、亀は約100年(大型のゾウガメでは300年)の寿命だそうです。
下の表は、小さなハツカネズミから陸上で最も大きな動物であるゾウまで体の大きさのちがう動物を並べて、それぞれの酸素消費量と体重の関係を示したものです。
ふつう、酸素消費量の多い動物ほどその寿命は短いものです。寿命の長い短いは、酸素消費量ばかりでなく、脳の大きさにも関係する。もともと遺伝子に寿命の長さがプログラムしてあるなど、説もいろいろあります。
しかし、同一種では体の大きい動物ほど、体重1g・1時間あたりの酸素消費量は少なく、寿命は長いというのが生物学的定説となっております。
よく「鶴は千年、亀は万年」とか言いますが、実際には鶴は50~60年ぐらい、亀は約100年(大型のゾウガメでは300年)の寿命だそうです。
下の表は、小さなハツカネズミから陸上で最も大きな動物であるゾウまで体の大きさのちがう動物を並べて、それぞれの酸素消費量と体重の関係を示したものです。
(「動物の生理学」Schmidt-Nielsen柳田為正訳、岩波書店より)
これらは、種の異なる哺乳類ですが、つまり、体重の重い動物のほうが、体重あたりの酸素消費が少ないということが数字の上でみごとに相関がとれております。
そして、それぞれの寿命についてはゾウが約80年、ウマが40~50年、犬が10~12年、ウサギは数年、ハツカネズミは1~2年といったところです。
種による差(例えば、人間やゾウなどは脳が大きい)があるにせよ、寿命に関しては「大きいことは、いいことだ」という結果が表われています。
現存する最小の哺乳動物はトガリネズミ類ですが、体重は約4g(ゾウは4トンですから、その約百万分の1の体重)しかありません。このトガリネズミは毎日、自分の体重と同じだけエサを食べなければ生きていけないのです。
50kgの体重の人が50kgの食事を毎日食べることはできません。(ラーメン1杯500gとしても100枚でやっと50kgです)トガリネズミは、毎日とてつもない量のエサを食べて、そのぶんたくさんの酸素を吸っているのです。そして、トガリネズミの寿命は、1年ぐらいといわれています。
そして、それぞれの寿命についてはゾウが約80年、ウマが40~50年、犬が10~12年、ウサギは数年、ハツカネズミは1~2年といったところです。
種による差(例えば、人間やゾウなどは脳が大きい)があるにせよ、寿命に関しては「大きいことは、いいことだ」という結果が表われています。
現存する最小の哺乳動物はトガリネズミ類ですが、体重は約4g(ゾウは4トンですから、その約百万分の1の体重)しかありません。このトガリネズミは毎日、自分の体重と同じだけエサを食べなければ生きていけないのです。
50kgの体重の人が50kgの食事を毎日食べることはできません。(ラーメン1杯500gとしても100枚でやっと50kgです)トガリネズミは、毎日とてつもない量のエサを食べて、そのぶんたくさんの酸素を吸っているのです。そして、トガリネズミの寿命は、1年ぐらいといわれています。
<3>大きいことはいいことか
からだの大きい動物ほど長生きするからといっても、私たちより、ジャイアント馬場や高見山のほうが長生きするとは言えません。
クーパーさんが言っているように、1マイルの距離を走るのに必要なエネルギーは、人によりあまり差はないのです。
重要なのは体の表面積と、体の表面から外への熱の伝わり具合なのです。
恒温動物の場合、他の動物に比べて体温がかなり高いのですから、それだけエネルギー、酸素を多く消費することになります。
変温動物においては、体温がまわりの温度にかなり左右されるとはいえ、体内では代謝が行われているのですから、外気温よりは、多少なりとも高いのです。
熱は、温度の高い方から低い方に流れるのですから、外気と接している体表面の面積と、その構造(熱を伝えやすいか、伝えにくいか)が重要なのです。
鶴は体温がかなり高いのですが、いのつも羽毛にくるまっているので、熱が逃げにくい構造です。亀は、体温が外気温に左右されるので、逃げる熱も少ないといえるでしょう。
体の大きさと、体表面積の関係は、1kgのパチンコ玉と、1個1kgの鉄の玉をくらべてみればわかるでしょう。小さく分ければ分けるほど、同じ重さでも表面積は広くなります。
給食用の大きな鍋に入っている熱いみそ汁と、同量のみそ汁をたくさんのお椀に分けた場合を比べると、たくさんのお椀に分けた方が、熱が逃げて早く冷めてしまいます。
このような身近な例でもわかるように、小さい動物ほど熱が逃げやすいのです。だから、エネルギーも酸素もたくさん必要となります。
このように考えてくると「酸素を摂ることが目的のエアロビクス」に何か矛盾を感じないではいられません。
クーパーさんが言っているように、1マイルの距離を走るのに必要なエネルギーは、人によりあまり差はないのです。
重要なのは体の表面積と、体の表面から外への熱の伝わり具合なのです。
恒温動物の場合、他の動物に比べて体温がかなり高いのですから、それだけエネルギー、酸素を多く消費することになります。
変温動物においては、体温がまわりの温度にかなり左右されるとはいえ、体内では代謝が行われているのですから、外気温よりは、多少なりとも高いのです。
熱は、温度の高い方から低い方に流れるのですから、外気と接している体表面の面積と、その構造(熱を伝えやすいか、伝えにくいか)が重要なのです。
鶴は体温がかなり高いのですが、いのつも羽毛にくるまっているので、熱が逃げにくい構造です。亀は、体温が外気温に左右されるので、逃げる熱も少ないといえるでしょう。
体の大きさと、体表面積の関係は、1kgのパチンコ玉と、1個1kgの鉄の玉をくらべてみればわかるでしょう。小さく分ければ分けるほど、同じ重さでも表面積は広くなります。
給食用の大きな鍋に入っている熱いみそ汁と、同量のみそ汁をたくさんのお椀に分けた場合を比べると、たくさんのお椀に分けた方が、熱が逃げて早く冷めてしまいます。
このような身近な例でもわかるように、小さい動物ほど熱が逃げやすいのです。だから、エネルギーも酸素もたくさん必要となります。
このように考えてくると「酸素を摂ることが目的のエアロビクス」に何か矛盾を感じないではいられません。
[同じ量。同じ目方なら、表面積の大きい方が熱は早く逃げる]
<4>酸素は両刃の剣
エアロビクスの矛盾を追求するためには、体のなかの反応について知る必要があります。でも、これはかなりややこしいので、ここでは大ざっぱに記すことにします。「カロリーが、からだの中で燃える」とよく言います。
食物は消化吸収されて“酸化”されます。糖質や脂質は、炭素(C)と水素(H)と(O)酸素でできています。タンパク質は、以上の3つとチッ素(N)でできています。糖質脂質はCHO、タンパク質はCHONとおぼえればいいと教えてくれたのは雑学家のI氏です。
さて「カロリーが、からだの中で燃える」ための重要な化学反応は水素と酸素から水を作るということです。この反応は、いくつもの酵素の仲介で進行します。その過程でエネルギーが放出され、ATPが合成されたり、熱が出たりする訳です。
これらの体内での化学反応がデタラメでは困ります。ステーキ1枚のエネルギーが、瞬時に熱を放出したら体温は20°Cも上昇してしまいます。
化学反応がデタラメではなく、必要に応じて必要なだけキチンとエネルギーを取り出せるのは、酵素のおかげです。
この酵素をコントロールするのは細胞1個1個のなかにある遺伝子です(人間の細胞は60兆個といわれています)
さて、体内での酸化反応は、いくつもの段階で行われますが、その途中で酸素よりも反応性に富んだ中間体ができるのです。中間体などというとややかしいので、ここでは“あばれん坊”としておきましょう。
この“あばれん坊”は、勝手に酸化反応を起こす性質をもっています。勝手な酸化反応は、遺伝子や細胞膜までも攻撃してダメにしてしまいます。
そこで神様は、ちゃんとその対策を打ってくれました。“あばれん坊”を除去する役目をもつ酵素があるのです。
でも“あばれん坊”除去に失敗がないとはいえません。「頭がよくなるビタミン革命(三石巌著・講談社)」には未熟児網膜症について、次のように記されています。
「未熟児を保育器に入れて、高濃度の酸素を送ることは、その命をとりとめるためには必要な手段とされている。ところが、それがために、未熟児が失明するケースがあるのだ」
この病気の原因は、例の“あばれん坊”によるもので、新生児の網膜が格別弱い組織であるために、おかされるということです。これはごく最近クローズアップされた問題です。
みなさんは、ビタミンEについて老化防止のビタミンだということを聞いたことがあると思います。老人になると極楽星(老人斑)ができてくる人がいます。これはリボフスチンと呼ばれるもので、過酸化脂質とタンパク質のくっついたものです。
極楽星は長命の証だという人もおりますが、いうなればサビのようなものですから、ない方がよいのです。有害無益な必要以上の酸化は、できるだけおさえた方がよいのです。
ビタミンEは抗酸化作用があるといいます。デタラメな酸化反応は、酸素のムダ使いです。ビタミンEは酸素のムダ使いを防いでくれますから、スタミナがつくでしょうし、老化防止にも一役かってくれるのです。
食物は消化吸収されて“酸化”されます。糖質や脂質は、炭素(C)と水素(H)と(O)酸素でできています。タンパク質は、以上の3つとチッ素(N)でできています。糖質脂質はCHO、タンパク質はCHONとおぼえればいいと教えてくれたのは雑学家のI氏です。
さて「カロリーが、からだの中で燃える」ための重要な化学反応は水素と酸素から水を作るということです。この反応は、いくつもの酵素の仲介で進行します。その過程でエネルギーが放出され、ATPが合成されたり、熱が出たりする訳です。
これらの体内での化学反応がデタラメでは困ります。ステーキ1枚のエネルギーが、瞬時に熱を放出したら体温は20°Cも上昇してしまいます。
化学反応がデタラメではなく、必要に応じて必要なだけキチンとエネルギーを取り出せるのは、酵素のおかげです。
この酵素をコントロールするのは細胞1個1個のなかにある遺伝子です(人間の細胞は60兆個といわれています)
さて、体内での酸化反応は、いくつもの段階で行われますが、その途中で酸素よりも反応性に富んだ中間体ができるのです。中間体などというとややかしいので、ここでは“あばれん坊”としておきましょう。
この“あばれん坊”は、勝手に酸化反応を起こす性質をもっています。勝手な酸化反応は、遺伝子や細胞膜までも攻撃してダメにしてしまいます。
そこで神様は、ちゃんとその対策を打ってくれました。“あばれん坊”を除去する役目をもつ酵素があるのです。
でも“あばれん坊”除去に失敗がないとはいえません。「頭がよくなるビタミン革命(三石巌著・講談社)」には未熟児網膜症について、次のように記されています。
「未熟児を保育器に入れて、高濃度の酸素を送ることは、その命をとりとめるためには必要な手段とされている。ところが、それがために、未熟児が失明するケースがあるのだ」
この病気の原因は、例の“あばれん坊”によるもので、新生児の網膜が格別弱い組織であるために、おかされるということです。これはごく最近クローズアップされた問題です。
みなさんは、ビタミンEについて老化防止のビタミンだということを聞いたことがあると思います。老人になると極楽星(老人斑)ができてくる人がいます。これはリボフスチンと呼ばれるもので、過酸化脂質とタンパク質のくっついたものです。
極楽星は長命の証だという人もおりますが、いうなればサビのようなものですから、ない方がよいのです。有害無益な必要以上の酸化は、できるだけおさえた方がよいのです。
ビタミンEは抗酸化作用があるといいます。デタラメな酸化反応は、酸素のムダ使いです。ビタミンEは酸素のムダ使いを防いでくれますから、スタミナがつくでしょうし、老化防止にも一役かってくれるのです。
<5>あばれん坊除去のために
スポーツはどんなものであれ、ふつうの生活以上に酸素を消費します。しかし、持久力の維持や、正常な筋肉を保つためにも、運動は必要です。ですから“あばれん坊”除去をおこたらないことこそ、大切といえるでしょう。
抗酸化物質としては、ビタミンEの他、ビタミンC、Bカロチン、セレニウム、システィン、グルタチオンがあります。
Bカロチンは、人参の色素で、カボチャや卵黄、さつまいも、ぎんなん、ブロッコリー、ほうれん草などの濃緑色野菜に含まれています。
なお、長寿村の調査の結果、共通した食物はカボチャであったと聞きます。現在では、カボチャの冷凍が手に入りますので、1年を通して食べるとができます。
グルタチオンについては、あまり聞いたことのない名前だと思いますが、グルタミン酸、システィン、グルミンという3つのアミノ酸でできているもので、タンパク質を十分摂っていれば体内で合成されます。
さて次に“あばれん坊”除去酵素の原料ですが、全ての酵素がそうであるように、主酵素はタンパク質です。そして、これにはマンガン、銅と亜鉛、鉄のついたものがあります。
銅は、具のかきや、アーモンド、くるみ、そば粉などに多くふくまれております。マンガンは、アーモンド、そば粉などに多く含まれています。亜鉛は、具のかきに抜群に含まれております。また、卵黄そば粉などにもかなり多いようです。
貝のかき、卵、そばなどは、昔から滋養のあるものだといわれていたものです。
亜鉛は、最近“セックスミネラル”として注目されております。それは、亜鉛欠乏によるインポテンツが発見されてからですが、亜鉛はその他、糖尿病、切りキズ、ヤケドなどの早期回復にも有効とのことです。
米国では、亜鉛不足の人が大勢いるようで(日本はもっと多いかも知れません)、それが注目される原因でもあるようです。
食品会社の明治屋さんに“かきのカンヅメ”の分析をお願いしたところ、バラツキはあるものの平均200ppm(百万分の200)ということです。1缶で(約20㎎)という値になりますので、亜鉛を強化したい場合には安価なサプリメントといえるでしょう。(全米科学アカデミーにおける亜鉛の1日保険量―1974年改訂―成人15㎎、妊娠中20㎎、授乳中25㎎)
高名な食生活コーディネーターの本多京子さんに先日お会いしましたところ「フランスでは、レストランで半ダース、1ダースとかきを食べている人は、性不能者だと昔から言われております」というお話をうかがいました。
抗酸化物質としては、ビタミンEの他、ビタミンC、Bカロチン、セレニウム、システィン、グルタチオンがあります。
Bカロチンは、人参の色素で、カボチャや卵黄、さつまいも、ぎんなん、ブロッコリー、ほうれん草などの濃緑色野菜に含まれています。
なお、長寿村の調査の結果、共通した食物はカボチャであったと聞きます。現在では、カボチャの冷凍が手に入りますので、1年を通して食べるとができます。
グルタチオンについては、あまり聞いたことのない名前だと思いますが、グルタミン酸、システィン、グルミンという3つのアミノ酸でできているもので、タンパク質を十分摂っていれば体内で合成されます。
さて次に“あばれん坊”除去酵素の原料ですが、全ての酵素がそうであるように、主酵素はタンパク質です。そして、これにはマンガン、銅と亜鉛、鉄のついたものがあります。
銅は、具のかきや、アーモンド、くるみ、そば粉などに多くふくまれております。マンガンは、アーモンド、そば粉などに多く含まれています。亜鉛は、具のかきに抜群に含まれております。また、卵黄そば粉などにもかなり多いようです。
貝のかき、卵、そばなどは、昔から滋養のあるものだといわれていたものです。
亜鉛は、最近“セックスミネラル”として注目されております。それは、亜鉛欠乏によるインポテンツが発見されてからですが、亜鉛はその他、糖尿病、切りキズ、ヤケドなどの早期回復にも有効とのことです。
米国では、亜鉛不足の人が大勢いるようで(日本はもっと多いかも知れません)、それが注目される原因でもあるようです。
食品会社の明治屋さんに“かきのカンヅメ”の分析をお願いしたところ、バラツキはあるものの平均200ppm(百万分の200)ということです。1缶で(約20㎎)という値になりますので、亜鉛を強化したい場合には安価なサプリメントといえるでしょう。(全米科学アカデミーにおける亜鉛の1日保険量―1974年改訂―成人15㎎、妊娠中20㎎、授乳中25㎎)
高名な食生活コーディネーターの本多京子さんに先日お会いしましたところ「フランスでは、レストランで半ダース、1ダースとかきを食べている人は、性不能者だと昔から言われております」というお話をうかがいました。
<6>ビタミンCとビタミンE
このごろは、どこへ行ってもビタミンCだ、Eだとさわいでいますが、これについても注意が必要です。
ビタミンCは、先ほどの“あばれん坊”のひとつを除去してくれますが、その結果、次の“あばれん坊”が生まれますので、ビタミンCとEはペアでとるべきでしょう。
TBSテレビの番組取材で、マッハ文朱さんとビタミンEについて話をしましたが「最近のビタミンEについてどうお考えですか?」の問いには「あちこちからビタミンEが売り出されているので、なにを選んだらよいか迷っている人が多いようです。中には何種類ものビタミンEを買わされた人もいるようです。やはり、使う以上、自分で選ぶ目をもつことが大切ですね」と答えておきました。
「特にどのような場合に使ったらよいのでしょうか?」との問いには、「短期間で減量する場合には、過酸化脂質が増えることが考えられますので、そのような場合、ビタミンEが有効だと思います」と返事しました。
私がビタミンEを選ぶ場合のポイントは、天然アルファトコフェロールの含有量(1g中か、1粒中かを確認)と値段です。これだけ確認すればまずまちがいないはずですが、それでもいいかげんなものが多いようなので、できればそれ以外の成分も明らかに記してあるもの(または分析表のあるもの)を選べばよいと思います。
今月は“酸素”を中心に考えてきましたが、寿命を決定したり、突然死の原因は今回記したものばかりではありません。
例えば、減量後の原因不明の死については、カリウム不足ということも考えられますし、まだまだ想像のつかない神の領域のナゾがあるでしょう。いずれにしても、必要以上の酸素の摂りすぎは決してよいことではありません。
「酸素ボンベを買ってきて、毎日それを吸えば健康でいられるのではないか」というアイデアを何人もの人から聞きましたが、このようなことはたいへん危険なことです。
スポーツマンは、つとめて栄養に注意をはらう必要があると思います。トレーニングと正しい食事が健康体をつくってくれると信じております。
本文をお読みいただければわかると思いますが、皮下脂肪はうすければうすい方がいいという考えも、必ずしも正しいとはいえません。
ビタミンCは、先ほどの“あばれん坊”のひとつを除去してくれますが、その結果、次の“あばれん坊”が生まれますので、ビタミンCとEはペアでとるべきでしょう。
TBSテレビの番組取材で、マッハ文朱さんとビタミンEについて話をしましたが「最近のビタミンEについてどうお考えですか?」の問いには「あちこちからビタミンEが売り出されているので、なにを選んだらよいか迷っている人が多いようです。中には何種類ものビタミンEを買わされた人もいるようです。やはり、使う以上、自分で選ぶ目をもつことが大切ですね」と答えておきました。
「特にどのような場合に使ったらよいのでしょうか?」との問いには、「短期間で減量する場合には、過酸化脂質が増えることが考えられますので、そのような場合、ビタミンEが有効だと思います」と返事しました。
私がビタミンEを選ぶ場合のポイントは、天然アルファトコフェロールの含有量(1g中か、1粒中かを確認)と値段です。これだけ確認すればまずまちがいないはずですが、それでもいいかげんなものが多いようなので、できればそれ以外の成分も明らかに記してあるもの(または分析表のあるもの)を選べばよいと思います。
今月は“酸素”を中心に考えてきましたが、寿命を決定したり、突然死の原因は今回記したものばかりではありません。
例えば、減量後の原因不明の死については、カリウム不足ということも考えられますし、まだまだ想像のつかない神の領域のナゾがあるでしょう。いずれにしても、必要以上の酸素の摂りすぎは決してよいことではありません。
「酸素ボンベを買ってきて、毎日それを吸えば健康でいられるのではないか」というアイデアを何人もの人から聞きましたが、このようなことはたいへん危険なことです。
スポーツマンは、つとめて栄養に注意をはらう必要があると思います。トレーニングと正しい食事が健康体をつくってくれると信じております。
本文をお読みいただければわかると思いますが、皮下脂肪はうすければうすい方がいいという考えも、必ずしも正しいとはいえません。
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