フィジーク・オンライン
Weekly Monthly Shopping

JPA技術入門講座<6> パワーリフティング・セミナー ≪スクワット≫⑥

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1983年11月号
掲載日:2020.12.21
著者=JPA技術委員会委員長・中尾達文 監修=JPA国際部長・吉田進

◇スクワットのまとめ

今回でビギナーのためのスクワット編は一応、最終回をむかえるわけであるが、何分にも、つたない私の文章と写真等を充分に使った解説をほとんど行なっていないこともあって、ビギナー諸君にはずいぶんわかりにくかったのではないかと、深く反省しております。
いずれ機会を改めて、写真や図をふんだんに使用した「これがパワーリフティングだ」というような本を書きたいと思っています。

さて、ビギナー諸君にとって、パワーリフティング競技を目的としたトレーニング方法は、どのように実施すれば一番良いのか、という質問が、私のところへ近頃ひんぱんに飛び込んできます。
それに対する私の回答は、その人の体格や体力、年令、経験年数、あるいはパワーリフティング競技に打ち込む情熱や姿勢によって自ずと違ってくるのですが、私のあくまでも個人的な見解を申し上げるならば、その質問者が将来も永くパワーリフティング競技の選手として活躍したいならば、そしてパワーリフティングの基本をみっちりと自分の心と体にたたき込んでおくためには、やはり、パワーリフティングをはじめて少なくとも1~2年間は、パワーリフティング競技の試合のないシーズンには、同時にボディビルのトレーニングを必ず併用して、重い重量に耐えられるだけの体全体の筋肥大を確実に獲得した体格を創りあげておくことが先ず必要であると思う。

これをおろそかにして、いきなり基礎的な体格も体力もできていない者がパワーリフティング競技の専門のトレーニング方法を採用しても、それは、確かに一時的には記録が伸びるかも知れないが、ケガ等の傷害や事故も当然多くなるし、やがてすぐに記録の向上止まってしまうのは目に見えているのですから......。
従って、ここでは一応、ボディビルの基礎体力づくり的なトレーニングを併用して実施するものと見なして、ビギナー諸君(パワーリフティング競技を始めて1~2年目までの者)にとって、実際の試合におけるスクワットの試技に際して、及びスクワット種目の強化のための最も重要と思われるポイントをいくつか列挙してみましょう。
[1982年度全日本選手権大会における私(中尾)のスクワット]

[1982年度全日本選手権大会における私(中尾)のスクワット]

(A)実際の試合におけるスクワットの試技におけるポイント

①パワーリフティング競技のスクワットは、ひざでかつぐものではない。尻(腰・背筋部を含む)でかつぐものである。(註:九州・住友金属のスクワットの鬼、足立東雄選手の名言)

②スクワットは呼吸(腹式呼吸)とフォームのメリハリのある間合いでかつぐものである。

③スクワットに限らず、パワーリフティング競技の3種目は、すべてすさまじいまでの精神集中力を必要とし常に精神の集中力の養成に努力を怠らぬこと。精神の集中力はすべてに優先する。

(B)スクワット種目のトレーニング方法(補強・補助種目を含む)のポイント

①ウォーミングアップとクールダウン及び脚・腰のストレッチングを毎回必ず実施すること。

②自己ベスト重量の60~70%の重量を使って練習するときの反復回数は、8回~10回を目標とすること。(ただし、女子リフターの場合は、もう少し軽い重量にしても可)

③自己ベスト重量の70~80%の重量を使って練習するときの反復回数は、3回~5回を目標とすること。(ただし、女子リフターの場合は、前項同様、もう少し軽い重量にても可)

④週に1回は必ず自己のベスト重量に挑戦するように心掛けること。

⑤スクワット種目のトレーニング量は1日合計15~20セット以内で充分である。そして体調に合わせて適当にセット数を増減すること。

⑥1週間に最低2日以上はスクワット種目の練習をすること。

⑦練習の試技においても1回1回のフォームを大切にして、メリハリをもった動作で行ない、フォームがくずれた時は、いたずらに回数をくりかえさないようにする。

⑧補強(補助)種目は①レッグ・プレス、②レッグ・カール、③カーフ・レイズ、レッグ・エクステンションの4種目で充分である。
それらを疲労具合いに応じて適当に2~3種目を各3~5セットずつ、スクワットの本練習の後に実施すればよい。
ただしビギナーは、腹筋運動(シット・アップ)は毎回の練習時に10~15回、各3~5セットくらい行なうこと。

⑨シーズン・オフには、必ず週に1~2日は、2~3kmの距離をかなりのハイペースで走るか、自転車こぎを20分以上実施すること。

⑩スクワットの練習に際しては、必ずベルトを着用すること。

⑪スクワットの練習に際しては、必ず左右に2名以上の補助者をつけること。できるならば、実力的に接近した者が3名1組でグループを組んでトレーニングすれば最適である。特にベスト重量に挑戦するときは、絶対にこれを守ること。

⑫心臓、及び肺(気管支)等の呼吸循環器系統に異常ある者は、絶対にパワーリフティング競技、特にスクワット種目を行なってはならない。

⑬練習終了後はできうるならば軽いマッサージ等を施すことが望ましい。

⑭練習、試合のいずれの場合においても、スポーツマンとしての礼儀をきちんとすること。これは人間形成の面から見ても大切なことであるが、事故防止等の面においても必要なことである。

以上、いろいろとスクワット種目のトレーニングを実施する上でのポイントをかかげましたが、あくまでもビギナー諸君は、私がここに書いたポイントを1つの参考意見として、今後スクワットのトレーニングを実施する上での一助としていただければ幸いです。
ここでもう一言、つけ加えておきたいことは、パワーリフターとしてビギナー諸君が、今後一流リフターの仲間の入りをするためには、他人の猿マネではなく、自分が実際にトレーニングを実施していく過程で、体験的に自分自身の体で消化吸収し、しっかりと自分の体で覚えこんだ呼吸法、試技のフォーム、精神集中等が、大会に際して役に立つ大きな財産となることを肝に銘じて欲しい。

今回、スーパースーツ、ニーバンデージについて解説する予定でしたがこれらについては、3種目の解説が終了した後で、パワーリフティング競技を側面から支える用器具類(ベルトくつ、スーパースーツ、バンデージ、くつ下など)について言及する予定ですので、その時にまとめて詳しく解説します。
(次回からはベンチ・プレス種目について解説します)
月刊ボディビルディング1983年11月号

Recommend