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新ボディビル講座 ボディビルディングの理論と実際<41>
第6章 トレーニング種目

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月刊ボディビルディング1984年7月号
掲載日:2021.02.22
名城大学助教授 鈴木正之

Ⅳ フロアーで徒手による腹筋運動

 腹筋は四肢と違い、負荷をかける場合、自分の体重が抵抗運動をするので、徒手(器具を持たない運動)でも充分に鍛練することができる。しかも、運動種目が多く組めるので、上腹部、下腹部、側腹部など、各ポイント別と、パワー的腹筋力、持久的腹筋力を養成するのにも的がしぼれる特色をもっている。

 以上のことから、腹筋を専門的にトレーニングを行う人はもとより、一般社会人が家庭でもって簡単にできる種目など、適宜、トレーニング方法が処方できる特徴がある。

 トレーニング・システムは、基本的セット・システムを初めとして、スーパー・セットやトライ・セット、シークェンス・セット、サーキット・トレーニングまで幅広く採用できるので、各人の目的とレベルに応じてシステムを選択するとよい。なお、一般的サーキット・トレーニングならば、以下に述べる種目の《1》から順に始めて《10》までそのまま行なってもよい。

《1》 スタンディング・サイド・ベンド(通称:サイド・ベンド、初心者)[図1]

<かまえ>足を肩幅に開き、手を頭の後ろに組んで、胸を張り背筋を伸ばしてかまえる。

<動作①>右側のみを連続して何回か側屈したら、次は左側のみを連続して側屈する。

<動作②>左右交互に側屈する。

<注意点>上体を真横に側屈するところにポイントがあるので、正しいかまえの姿勢から運動に入るようにする。側腹部を集中的にトレーニングしようとする場合は、動作①の片側連続を行い、持久的な目的の場合は動作②の方法でもって行う。また、腹筋の強化が目的であるならば、バーベルを肩にかついで行う、バーベル・サイド・ベンドがよい。

<作用筋>主働筋……内・外腹斜筋。
[図1]サイド・ベンド

[図1]サイド・ベンド

《2》 スタンディング・ツイスト・ニー・ツー・エルボウ (通称:ニー・ツー・エルボウ、初心者)[図2]

<かまえ>両足を軽く開き、手を頭の後ろで組み、胸を張ってかまえる。

<動作①>右肘を左膝に、左肘を右膝につけるように前斜屈をする。反復動作はサイド・ベンドの時と同じく、同一方向に継続する。

<動作②>動作は同じであるが、反復運動を左右交互に行う。

<注意点>前項同様、集中的に行う場合は<動作①>の片側連続反復動作とし、持久的に行う場合は<動作②>の交互動作を行う。両者ともに元の姿勢に正しく戻るように注意する。

<作用筋>主働筋……内・外腹斜筋、補助筋……腹直筋、背筋。
[図2] ニー・ツー・エルボウ

[図2] ニー・ツー・エルボウ

《3》 フロアー・シット・アップ(初心者)(図3]

<かまえ>フロアーに体を伸ばして仰向けになり、手を頭の後ろに組んでかまえる。

<動作>上体をまるくしながら起こし、元に戻す。

<注意点>手を組む位置によって負荷が変ってくるので、各人のレベルで組み変えてよい。それでも運動ができない人は、パートナーに足を押さえてもらう。足を押えてもらうと負荷が軽くなるので、ツイストを入れたり、プレートを持ったりしてバリエーションをつける。

<作用筋>主働筋……腹直筋上部、補助筋……内・外腹斜筋。
[図3]フロアー・シット・アップ

[図3]フロアー・シット・アップ

《4》 フロアー・レッグ・プル・イン(初心者)[図4]

<かまえ>フロアーに仰向けになり膝を曲げてかまえる。

<動作>曲げた膝を伸ばして、元に戻す。膝を伸ばしたとき、足がフロアーに触れないように行う。

<注意点>腹直筋下部に意識集中して膝を伸ばす。そして足はフロアーに添ってまっすぐ伸ばすようにする。腹筋力が弱いと伸ばした足がフロアーに着くので注意する。なお、腹筋力が弱くてバランスのとり難い人は、手を頭の後ろで組むとよい。

<作用筋>主働筋……腹直筋下部、補助筋……内・外腹斜筋。
[図4]フロアー・レッグ・プル・イン

[図4]フロアー・レッグ・プル・イン

《5》 シーテッド・レッグ・プル・イン(通称:ニー・ツー・チェスト、初心者)[図5]

<かまえ>フロアーに腰をおろして長座の姿勢をとり、手を後ろ45度の方向についてかまえる。

<動作>膝を曲げながら胸まで引き込んだら、すぐに膝を伸ばす。反復動作中は足がフロアーに触れないように、素早く膝の屈伸運動を行う。

<注意点>フロアーにしっかりと手をついて、上体を45度に安定させる。反復運動に入ると肘が曲がり、上体が後ろに倒れてくるので注意する。下肢の屈伸は、膝が胸に着くように引きつけて伸ばすようにする。

 なお膝を曲げないで脚を上げればシーテッド・レッグ・レイズとなる。

<作用筋>主働筋……腹直筋。
[図5]ニー・ツー・チェスト

[図5]ニー・ツー・チェスト

《6》 シーテッド・レッグ・レイズ・クロス(通称:レッグ・レイズ・クロス、初心者)[図6]

<かまえ>フロアーに腰をおろして長座の姿勢をとり、手を後ろについて片脚をやや高く上げ、一方の片脚はフロアーから浮く程度に上げてかまえる。

<動作>上げた両脚を交互にクロスさせる。

<注意点>一般的なレッグ・レイズと同じ目的であるが、動作のマンネリ化を防ぐバリエーションとして行うとよい。この他、足を水泳のバタ足のように上下に動かすシーテッド・レッグ・レイズ・アップ・アンド・ダウンや、両足や片足をレッグ・レイズの状態で行う文字書き運動、サークル運動など、この姿勢からの腹筋運動バリエーションを何通りか組むことができる。

<作用筋>主働筋……腹直筋。
[図6]レッグ・レイズ・クロス

[図6]レッグ・レイズ・クロス

《7》 ベント・ニー・トランク・カール(通称:トランク・カール、初心者)[図7]

<かまえ>フロアーに仰臥し、膝を曲げ、手を頭の後ろに組んでかまえる。

<動作>ヘソを見るように上体を曲げ起こす。肩がフロアーから上がるところまででよい。背がフロアーから上る動作は、ベント・ニー・シット・アップになる。

<注意点>腹直筋(上腹部)のトレーニングであるから、上腹部の胃袋のへんに意識集中して行うようにする。そのためには目線を腹部に置き、つねに上体をまるく起こすようにする。腹筋の弱い人は、反復動作中に膝が伸びていくから注意する。腹筋力の強い人は、より強度を求めて、シット・アップの位置まで起こし、しかも起こした位置で一時静止(シット・アップ・ポーズ)を入れるかツイスティング動作(ツイスティング・トランク・カール)を入れるとよい。

<作用筋>主働筋……腹直筋上部。
[図7]トランク・カール

[図7]トランク・カール

《8》 ジャック・ナイフ・シット・アップ(通称:V字シット・アップ、中級者)[図8]

<かまえ>フロアーに全身を伸ばして仰臥する。

<動作>上体と脚を同時に素早く起こして、V字になるようにしたら、ゆっくり元の姿勢にもどる。

<注意点>この運動は腹筋のスピードとパワーがポイントである。動作初期に両手で反動をつけ、全身のスピードで行うようにする。上体、または脚のどちらかが早く起きるとV字バランスがとれないので、両者が同時に起きるようバランスに注意する。また、以上の動作中、膝と足首を曲げないようにすること。上級者は体を伸ばしたとき、背と足がフロアーに触れないように反復する。

<作用筋>主働筋……腹直筋。
[図8]V字シット・アップ

[図8]V字シット・アップ

《9》 シーテッド・ベント・ニー・ツイスト(初心者)[図9]

<かまえ>フロアーに腰を下ろし、上体を45度後方に倒して手をつき、膝を深く曲げてかまえる。

<動作>ウエストを支点として上体と膝を反対側に捻り、次いで逆の反対側に捻る。

<注意点>内・外腹斜筋による捻り運動である。膝を捻り倒すことにこだわらず、ウエストを捻ることにポイントを置いて行うようにする。

<作用筋>主働筋……内・外腹斜筋。
[図9]シーテッド・ベント・ニー・ツイスト

[図9]シーテッド・ベント・ニー・ツイスト

《10》 ライイング・サイド・レッグ・レイズ(初心者)[図10]

<かまえ>フロアーに横向きになり、下側の手で上体が倒れないように支持し、上側の手は腰にあててかまえる。

<動作>脚を上げて、ゆっくり下ろす。

<注意点>殿部の運動にならないように、内・外腹斜筋を意識し、横腹を引きしめるように行う。動作中、足が下の足に触れないように反復を行い、負荷が継続するようにする。片側が終ったら反対側を行う。

<作用筋>主働筋……内・外腹斜筋、補助筋……大殿筋。
[図10]ライイング・サイド・レッグ・レイズ

[図10]ライイング・サイド・レッグ・レイズ

《11》 ライイング・レッグ・クロス・オーバー[図11]

<かまえ>フロアーに仰向けになり、しっかりとしたバーを両手で握って両肩を支持し、片脚をフロアーの上に伸ばし、もう一方の脚を真上に上げてかまえる。

<動作>上げた脚を反対側のフロアーに足が着くまで下ろして、元の真上に戻し、伸ばした脚に添えるように下ろす。次いで反対側の脚を真上に上げて、同じようにくり返す。

<注意点>ウエストを捻ることにポイントがおかれるが、問題は両肩の支持である。ウエストを捻るとき、両肩が動かないように肋木のバーやバーベルのバーなどをしっかりと握って固定することが大切である。

<作用筋>主働筋……内・外腹斜筋。
[図11]ライイング・レッグ・クロス・オーバー

[図11]ライイング・レッグ・クロス・オーバー

《12》 ジャック・ナイフ・ジャンプ(通称:ドルフィン・キック、初心者)[図12]

<かまえ>フロアーに腕立て伏臥の姿勢をとり、腰を下に落として腹筋を伸ばし、顔を上げてかまえる。

<動作>膝と肘を曲げずに、腹筋だけで腰を浮き上がらせるように空中にとび上がり、逆V字を作ったら元のかまえの姿勢にもどる。

<注意点>体を腹筋力でもって空中に浮き上がらせることが要点になる。そのためには、スタートの姿勢で腰を下げ、膝を曲げないことである。そして、腹筋力のスピードとパワーでジャンプするようにする。ジャンプを確実にするためには、閉脚でジャンプし、開脚で着地する交互運動をとり入れるとよい。

<作用筋>主働筋……腹直筋、補助筋……内・外腹斜筋。
[図12]ドルフィン・キック

[図12]ドルフィン・キック

《13》 スクワット・スラスト(初心者)[図13]

<かまえ>フロアーに腕立て伏臥の姿勢をとり、腰を軽く下におろして腹筋を伸ばし、顔を上げてかまえる。

<動作>肘を曲げずに腹筋力で腰を浮き上がらせるようにジャンプし、膝を胸まで引きつけ、脚のバネで元の姿勢にもどる。

<注意点>サーキット・トレーニングの代表的種目でもあるこのスクワット・スラストは、動作が簡単なので初心者からでもなじみやすい種目である。高齢者や女性でうまくできない人は、片足ずつ交互に引きつけるオールタネット・スラストに変えて行なってもよい。

<作用筋>主働筋……腹直筋、補助筋……内・外腹斜筋。
[図13]スクワット・スラスト

[図13]スクワット・スラスト

月刊ボディビルディング1984年7月号

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