食事と栄養の最新トピックス41 食生活赤信号<6>
牛乳はだいじょうぶか
月刊ボディビルディング1984年7月号
掲載日:2021.03.01
ヘルスインストラクター 野沢秀雄
1. どこか変だぞ?
世の中の動きは「当り前だ」と思えば何気なく見過ごせるが、一部の人が「おかしい」「変だ」と指摘すると、「そういわれてみるとそうだ。気付いた以上、気になって仕方がない」ということが多くある。誰かが発言し、それが的を得ていれば波紋は一気に大きくなり、ついには社会を変えることにもなる。
例えば牛乳。以前はヤシ油が混ぜられて、各メーカーから堂々と販売されていた。消費者の多くは全くこれに気付かずに飲んでいたが、「ヤシ油入り牛乳は偽せ牛乳だ」という声がおこると、マスコミがいっせいにこれを取りあげて、ついにヤシ油入り牛乳は発売をやめるに至った。
連載中の「食生活赤信号」シリーズは、一部少数意見ではあるが、健康を考えると「これは変だ。こう注意したほうが体に良い」と思われることを述べるのが目的である。そして読んだ方が「なるほど、こうした方がよいんだな」と参考にしていただければ幸いである。
例えば牛乳。以前はヤシ油が混ぜられて、各メーカーから堂々と販売されていた。消費者の多くは全くこれに気付かずに飲んでいたが、「ヤシ油入り牛乳は偽せ牛乳だ」という声がおこると、マスコミがいっせいにこれを取りあげて、ついにヤシ油入り牛乳は発売をやめるに至った。
連載中の「食生活赤信号」シリーズは、一部少数意見ではあるが、健康を考えると「これは変だ。こう注意したほうが体に良い」と思われることを述べるのが目的である。そして読んだ方が「なるほど、こうした方がよいんだな」と参考にしていただければ幸いである。
2. 昔の牛乳と現在の牛乳
ボディビルを実行する人は普通の人より牛乳を多く飲むのが通例である。「ジュースやコーラなどは糖分がほとんどであるのに対し、牛乳はたんぱく質やビタミン、カルシウムなどがとれる」「プロティンパウダーと相性がよく、味がなじみやすい」などの理由のためだ。
日本人の平均身長が170cmを超え、脚の長さが徐々に伸びているが、これは戦後一貫して、牛乳を飲む政策がとられた結果だと言われている。
カルシウムが豊富で、適度なたんぱく質とビタミンDを含むのだから、成長が早くなるのも当然である。
だが、昔と変わらない外見をしているが、牛乳の中味は昔と相当にちがっている。
①しぼった牛乳を飲みやすい規定の濃度にうすめて、ホモゲナイザーにかけて、クリーム層が分離するのを防いだだけの「普通牛乳」――パックに「成分無調整」という文字が書かれている。たんぱく質2.9%、脂肪3.2%が標準。
②上記は「生乳」と呼ばれるが、その「生乳」40~60%と、残りを脱脂粉乳、無塩バター、添加物(ビタミン剤など)と水でうすめたのが「加工乳」――たんぱく質3.1%、脂肪3.4%が標準。
③「加工乳」にさらに脱脂粉乳とクリームを加えた「濃厚牛乳」――たんぱく質3.2%、脂肪4.0%が標準。
④「生乳」から脂肪を除き、逆に脱脂粉乳を加えた「低脂肪牛乳」(加工乳の一種である。加工乳は別名、還元牛乳とも呼ばれている)――たんぱく質3.6%、脂肪1.5%が標準。
⑤「生乳」は全体のわずか20~25%で残りはブドウ糖・果汁・色素・香料・水でつくられた「乳飲料」――パックや牛乳びんのふたに明記されているのでわかる。いわゆる「フルーツ牛乳」や「コーヒー牛乳」など。たんぱく質1.2~1.8%、脂肪0.1~0.7%が標準。
⑥この他に、乳糖を酵素で処理して下痢をしないよう配慮した特殊牛乳。
このように種類がふえてきて、栄養はバラバラである。スーパーの店頭で見ると「成分無調整」の牛乳は値段が高く、「加工乳」は安くなっている。「パンと牛乳で昼をすませる」という学生の場合、フルーツ牛乳やコーヒー牛乳を飲む人が多いが、これらの牛乳はビルダーに重要な「たんぱく質」が少ないので、同じ値段なら、ふつうの白い牛乳を飲むほうがよい。
以上のような内容の差だけでなく、最近は牛乳そのものに含まれている抗生物質や残留農薬が問題になっている。
昔とちがって、配合飼料や濃厚飼料が牛に与えられているが、この飼料中に薬品や添加物、農薬が含まれ、牛乳中に移行する。
厚生省が以前に調査したデータによると、1ℓ中に0.38ppm(1ppmは100万分の一)のベータBHCが検出された例がある。また、0.0112ppmのペニシリンやストレプトマイシンが検出された例も発表されている。
日本人の平均身長が170cmを超え、脚の長さが徐々に伸びているが、これは戦後一貫して、牛乳を飲む政策がとられた結果だと言われている。
カルシウムが豊富で、適度なたんぱく質とビタミンDを含むのだから、成長が早くなるのも当然である。
だが、昔と変わらない外見をしているが、牛乳の中味は昔と相当にちがっている。
①しぼった牛乳を飲みやすい規定の濃度にうすめて、ホモゲナイザーにかけて、クリーム層が分離するのを防いだだけの「普通牛乳」――パックに「成分無調整」という文字が書かれている。たんぱく質2.9%、脂肪3.2%が標準。
②上記は「生乳」と呼ばれるが、その「生乳」40~60%と、残りを脱脂粉乳、無塩バター、添加物(ビタミン剤など)と水でうすめたのが「加工乳」――たんぱく質3.1%、脂肪3.4%が標準。
③「加工乳」にさらに脱脂粉乳とクリームを加えた「濃厚牛乳」――たんぱく質3.2%、脂肪4.0%が標準。
④「生乳」から脂肪を除き、逆に脱脂粉乳を加えた「低脂肪牛乳」(加工乳の一種である。加工乳は別名、還元牛乳とも呼ばれている)――たんぱく質3.6%、脂肪1.5%が標準。
⑤「生乳」は全体のわずか20~25%で残りはブドウ糖・果汁・色素・香料・水でつくられた「乳飲料」――パックや牛乳びんのふたに明記されているのでわかる。いわゆる「フルーツ牛乳」や「コーヒー牛乳」など。たんぱく質1.2~1.8%、脂肪0.1~0.7%が標準。
⑥この他に、乳糖を酵素で処理して下痢をしないよう配慮した特殊牛乳。
このように種類がふえてきて、栄養はバラバラである。スーパーの店頭で見ると「成分無調整」の牛乳は値段が高く、「加工乳」は安くなっている。「パンと牛乳で昼をすませる」という学生の場合、フルーツ牛乳やコーヒー牛乳を飲む人が多いが、これらの牛乳はビルダーに重要な「たんぱく質」が少ないので、同じ値段なら、ふつうの白い牛乳を飲むほうがよい。
以上のような内容の差だけでなく、最近は牛乳そのものに含まれている抗生物質や残留農薬が問題になっている。
昔とちがって、配合飼料や濃厚飼料が牛に与えられているが、この飼料中に薬品や添加物、農薬が含まれ、牛乳中に移行する。
厚生省が以前に調査したデータによると、1ℓ中に0.38ppm(1ppmは100万分の一)のベータBHCが検出された例がある。また、0.0112ppmのペニシリンやストレプトマイシンが検出された例も発表されている。
3. 問題のLL牛乳とは?
「牛乳は腐りやすいもの」という観念が強い。実際に1ℓのパック入り牛乳を買って、冷蔵庫に保管しても、封をいったん開けると、丸1日くらいしか保存できない。雑菌がはびこって、くさった味になる。
余談ながら、牛乳のようなたんぱく質が腐敗した場合、菌が特殊であるために下痢はモーレツをきわめる。牛乳で下痢をしたという場合、単に腸から乳糖が消化されずに下痢する場合だけでなく、牛乳が古くなっていた例も多い。充分に注意していただきたい。
パック詰めの牛乳や、ビンに入った牛乳は、日付をみて、それからせいぜい1週間くらいが賞味期間(保証期間)である。ところが、LL牛乳といわれるのは、特殊な紙箱に詰った牛乳で、6ヵ月間は異常なしに飲めるという。
ヨーロッパなどでは、牛乳は冷蔵でなく、常温でも流通していて、6ヵ月は日持ちがするという。
なぜ、こんな長期保存が可能になったのだろうか?
テトラパックという紙容器包装全社が、高速無菌充填システムを開発し、中味の牛乳は135~150度にて殺菌、紙容器の内部は過酸化水素の溶液に浸して無菌化、この組合せで、現在、自動販売機などで販売されているLL牛乳が実現したのだ。
LL牛乳に対して、消費者団体は次のような理由で反対運動をおこなっている。
①牛乳を高温にすると、特有の加熱臭が出て、味がぐんと落ちる。
②味だけでなく、ビタミンCやB2が破壊される。また消化吸収性の点でせっかくのカルシウムが不利になる。
③過酸化水素は漂白剤として使用されているが、発ガン性が問題になっている添加物である。業者は「蒸気で吹きとばすので残留の心配はない」というが、やはり心配。
④過酸化水素そのものは残留していなくても、同時に使用する界面活性剤と、紙容器の内側にあるポリエチレンが反応して、どんな物質に変り、どんな悪作用を及ぼすか不明。
⑤LL製法だと、古くなった牛乳を高温殺菌するので、菌は完全に死ぬ。したがって、くさりかけている牛乳でも再充填して、市場に出廻る心配がある。
余談ながら、牛乳のようなたんぱく質が腐敗した場合、菌が特殊であるために下痢はモーレツをきわめる。牛乳で下痢をしたという場合、単に腸から乳糖が消化されずに下痢する場合だけでなく、牛乳が古くなっていた例も多い。充分に注意していただきたい。
パック詰めの牛乳や、ビンに入った牛乳は、日付をみて、それからせいぜい1週間くらいが賞味期間(保証期間)である。ところが、LL牛乳といわれるのは、特殊な紙箱に詰った牛乳で、6ヵ月間は異常なしに飲めるという。
ヨーロッパなどでは、牛乳は冷蔵でなく、常温でも流通していて、6ヵ月は日持ちがするという。
なぜ、こんな長期保存が可能になったのだろうか?
テトラパックという紙容器包装全社が、高速無菌充填システムを開発し、中味の牛乳は135~150度にて殺菌、紙容器の内部は過酸化水素の溶液に浸して無菌化、この組合せで、現在、自動販売機などで販売されているLL牛乳が実現したのだ。
LL牛乳に対して、消費者団体は次のような理由で反対運動をおこなっている。
①牛乳を高温にすると、特有の加熱臭が出て、味がぐんと落ちる。
②味だけでなく、ビタミンCやB2が破壊される。また消化吸収性の点でせっかくのカルシウムが不利になる。
③過酸化水素は漂白剤として使用されているが、発ガン性が問題になっている添加物である。業者は「蒸気で吹きとばすので残留の心配はない」というが、やはり心配。
④過酸化水素そのものは残留していなくても、同時に使用する界面活性剤と、紙容器の内側にあるポリエチレンが反応して、どんな物質に変り、どんな悪作用を及ぼすか不明。
⑤LL製法だと、古くなった牛乳を高温殺菌するので、菌は完全に死ぬ。したがって、くさりかけている牛乳でも再充填して、市場に出廻る心配がある。
4. ふしぎな乳成分の舞台裏
日本の牛乳は外国に比べてかなり高い。国内の酪農家を保護するため、乳製品を海外から輸入するとき、高い関税をかけている。牛肉やオレンジ、菓子などと同様なパターンである。
「国内の牛乳は余っている。それなのに外国から牛乳を輸入することはけしからんことだ。政府の決めた乳価は安すぎる」と酪農家が、せっかくの牛乳を川に流してしまうニュースをテレビや新聞がときどき報道している。
不思議なことに、高いはずの乳製品を、成分ごとにわけると、関税はうんと安くなる。
①牛乳の脂肪は、バターや生クリームになる。残ったものは脱脂粉乳となる。
②牛乳の糖分は「乳糖」になって、医薬品の増量剤や基剤に使われる。
③牛乳のたんぱく質は、カゼインやカゼインナトリウムになる。これは糊料という名目で、食品添加物扱いになるため、価格はぐんと安くなる。
成分ごとに分けて安く輸入したあとで、食品メーカーは再び組合せて高く売ったり、分けた成分のまま、利用法を考える。
アメリカなどで、「植物性プロティンでなく、動物性プロティン」と、いかにも高い肉や卵を原料にしているかのように宣伝していても、実際には何のことはない、安いカゼインナトリウム粉末であることが多い。
同じたんぱくでも、卵のアルブミンやグロブリンは、ややちがった評価をされている。カゼインよりもプロティンスコアがそれ自体高いためである。
「国内の牛乳は余っている。それなのに外国から牛乳を輸入することはけしからんことだ。政府の決めた乳価は安すぎる」と酪農家が、せっかくの牛乳を川に流してしまうニュースをテレビや新聞がときどき報道している。
不思議なことに、高いはずの乳製品を、成分ごとにわけると、関税はうんと安くなる。
①牛乳の脂肪は、バターや生クリームになる。残ったものは脱脂粉乳となる。
②牛乳の糖分は「乳糖」になって、医薬品の増量剤や基剤に使われる。
③牛乳のたんぱく質は、カゼインやカゼインナトリウムになる。これは糊料という名目で、食品添加物扱いになるため、価格はぐんと安くなる。
成分ごとに分けて安く輸入したあとで、食品メーカーは再び組合せて高く売ったり、分けた成分のまま、利用法を考える。
アメリカなどで、「植物性プロティンでなく、動物性プロティン」と、いかにも高い肉や卵を原料にしているかのように宣伝していても、実際には何のことはない、安いカゼインナトリウム粉末であることが多い。
同じたんぱくでも、卵のアルブミンやグロブリンは、ややちがった評価をされている。カゼインよりもプロティンスコアがそれ自体高いためである。
5. よい牛乳や乳製品のえらび方
まず第一に、「成分無調整」になっているかどうか、牛乳の表示を確認することだ。人によっては「濃厚牛乳」のほうが栄養価からみて、有利と考えるかもしれない。納得した上のことなら、それでも構わない。
ただし、前述のように、「フルーツ牛乳」や「コーヒー牛乳」はあまり飲まないほうが良い。栄養価が低いためである。
LL牛乳は当分飲まないほうが賢明である。牛乳のブランドがふえている中で、健康上、「これなら良い」と思われるのは、「63パスチャライズ牛乳」と「よつ葉牛乳」である。前者は63度の低温殺菌なので、味がよい。もちろん、農薬や抗生物質についても検査をきびしく受けている。
「よつ葉牛乳」は北海道産で、いろいろの消費者団体で扱われている。成分無調整で、LLパックでないことを確めて買うとよい。
「新しい牛乳ほどサラッとしていて水っぽい」と言われている。1日おくと、コクやうま味が出てくるが、LL牛乳は甘味がさらに強い。「甘いから好きだ」なんて言わずに、舌にサッパリした風味を覚えさせよう。
夏になると、アイスクリームがおいしい。アイスクリームも、成分の表示をよく読まないと、ピンからキリまで種類が多い。牛乳とちがって、植物性脂肪を使用することが法令で認められている。
①高脂肪アイスクリーム(純正品)
たんぱく質3.5%、脂肪12%で、すべて乳脂肪から成り、コクがある。レディボーデンやリーベンデールなどの高級品がこれに相当する。
②普通脂肪アイスクリーム(純正品)
たんぱく質3.9%、脂肪8%。すべて乳脂肪。中級品のアイスクリーム。
③アイスミルク(混合品)
たんぱく質3.4%、脂肪6.4%だが、脂肪のうち3%以上が乳脂肪。残りは、ヤシ油、綿実油など異種脂肪が使われている。1個100円くらいのアイスクリームに多い。
④ラクトアイス(異種脂肪)
たんぱく質が3.1%、脂肪6.0%が規格。例外なく脂肪はすべて乳脂肪以外の植物油。安いアイスクリームは「ラクトアイス」と表示されているはずだ。
――以上の区別は知っておきたいが最近の技術の向上や、フレーバー(香料)が巧妙につけられていて、味や風味は低級品でも結構いける。
栄養の点からみて、動物性脂肪と植物性脂肪とでは、とくに優劣はつけられない。いやむしろ、脂肪酸組成からみて、コレステロールを低減させる効果が、植物性脂肪に期待されるくらいだ。(といってもヤシ油や綿実油はそれほどでない。米油やコーンオイル、小麦胚芽油に効果が大きい)
牛乳の場合、ヤシ油を混入したところ「偽物」と非難されたが、正規の届けもせず、表示もしなかったのが、世間を騒がせた原因だった。
「加工乳」や「アイスミルク」「ラクトアイス」は正規に届けをすませ、表示上も明示している。あとは買う側が、どう判断するかだけである。
食品企業が、加工度を高めるほど、自然からは遠くなる。それに比例して添加物が増えるなら困ったことだが、栄養学からみると、「加工品のほうが天然品より上廻る」という例はよくある。
ビタミンやミネラルを添加した食品や菓子は日常どこにでもある。スポーツドリンクやプロティン、カロリーメイトなどはまさにその典型である。
われわれを取りまく食生活はますます複雑になる。健康づくりの方針を立てるときに、「あくまで自然のものを追及する」という人と、「合理的な栄養がとれるなら加工食品を愛用する」という人の2つにわかれる。あなたなら、どちらをえらぶだろうか?
ただし、前述のように、「フルーツ牛乳」や「コーヒー牛乳」はあまり飲まないほうが良い。栄養価が低いためである。
LL牛乳は当分飲まないほうが賢明である。牛乳のブランドがふえている中で、健康上、「これなら良い」と思われるのは、「63パスチャライズ牛乳」と「よつ葉牛乳」である。前者は63度の低温殺菌なので、味がよい。もちろん、農薬や抗生物質についても検査をきびしく受けている。
「よつ葉牛乳」は北海道産で、いろいろの消費者団体で扱われている。成分無調整で、LLパックでないことを確めて買うとよい。
「新しい牛乳ほどサラッとしていて水っぽい」と言われている。1日おくと、コクやうま味が出てくるが、LL牛乳は甘味がさらに強い。「甘いから好きだ」なんて言わずに、舌にサッパリした風味を覚えさせよう。
夏になると、アイスクリームがおいしい。アイスクリームも、成分の表示をよく読まないと、ピンからキリまで種類が多い。牛乳とちがって、植物性脂肪を使用することが法令で認められている。
①高脂肪アイスクリーム(純正品)
たんぱく質3.5%、脂肪12%で、すべて乳脂肪から成り、コクがある。レディボーデンやリーベンデールなどの高級品がこれに相当する。
②普通脂肪アイスクリーム(純正品)
たんぱく質3.9%、脂肪8%。すべて乳脂肪。中級品のアイスクリーム。
③アイスミルク(混合品)
たんぱく質3.4%、脂肪6.4%だが、脂肪のうち3%以上が乳脂肪。残りは、ヤシ油、綿実油など異種脂肪が使われている。1個100円くらいのアイスクリームに多い。
④ラクトアイス(異種脂肪)
たんぱく質が3.1%、脂肪6.0%が規格。例外なく脂肪はすべて乳脂肪以外の植物油。安いアイスクリームは「ラクトアイス」と表示されているはずだ。
――以上の区別は知っておきたいが最近の技術の向上や、フレーバー(香料)が巧妙につけられていて、味や風味は低級品でも結構いける。
栄養の点からみて、動物性脂肪と植物性脂肪とでは、とくに優劣はつけられない。いやむしろ、脂肪酸組成からみて、コレステロールを低減させる効果が、植物性脂肪に期待されるくらいだ。(といってもヤシ油や綿実油はそれほどでない。米油やコーンオイル、小麦胚芽油に効果が大きい)
牛乳の場合、ヤシ油を混入したところ「偽物」と非難されたが、正規の届けもせず、表示もしなかったのが、世間を騒がせた原因だった。
「加工乳」や「アイスミルク」「ラクトアイス」は正規に届けをすませ、表示上も明示している。あとは買う側が、どう判断するかだけである。
食品企業が、加工度を高めるほど、自然からは遠くなる。それに比例して添加物が増えるなら困ったことだが、栄養学からみると、「加工品のほうが天然品より上廻る」という例はよくある。
ビタミンやミネラルを添加した食品や菓子は日常どこにでもある。スポーツドリンクやプロティン、カロリーメイトなどはまさにその典型である。
われわれを取りまく食生活はますます複雑になる。健康づくりの方針を立てるときに、「あくまで自然のものを追及する」という人と、「合理的な栄養がとれるなら加工食品を愛用する」という人の2つにわかれる。あなたなら、どちらをえらぶだろうか?
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