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JPA技術入門講座<14> パワーリフティング・セミナー

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月刊ボディビルディング1984年7月号
掲載日:2021.02.18
(デッドリフト・パートIV) ヨーロピアン・スタイル(アメリカン・スタイル)

著者=JPA技術委員会委員長・中尾達文
監修=JPA国際部長・吉田進
 これまで2ヵ月にわたって、デッドリフトのフォームのうち、オリエンタル・スタイル(相撲スタイル)について解説してきましたが、今月号では、もう1つのフォーム、というより、デッドリフトの本来あるべきフォーム、すなわち最もオーソドックスなフォームとも言うべきヨーロピアン・スタイル(アメリカン・スタイル)について解説することにします。

 このフォームは、アメリカは言うに及ばず、ヨーロッパ各国のパワーリフターの大部分の選手が好んで用いるフォームである。

 体型、体質的に言うならば、身長が高く、リーチが長いうえに、しかも脚が長く、胴が短い体型の選手がこのフォームには向いているようである。

 そして、やはり一番重要なことは、固有背筋がよく発達していて、抜群に強いことである。そのうえ、僧帽筋や三角筋を含めた上半身の筋力が相当に強いタイプの選手が多いようである。その反面、このフォームで強い選手は体質的に体が堅く、股関筋や膝も堅いきらいがある。

 まず写真①のように、足幅を肩幅程度に拡げ、その両足の外側に両手をまっすぐ下におろし、逆グリップでバーをしっかりと握る。

 このフォームでは、オリエンタル・スタイルと違い、ウェイトを持ち上げて上体をかえす際に、背筋をはじめ背中の諸筋肉に依存する率が非常に高いので、背すじをピンと伸ばして、お尻を下げ、頭をあげる姿勢をとってバーベルを引き始めるわけであるが、このお尻を下げることによって、背中の諸筋肉にかかる余分な負担が軽減できるのである。

 このフォームにおいては、ファースト・プルの際に、とくに両足裏にも充分に力を注がなければならない。

 そしてこれは、ヨーロピアン・スタイル、オリエンタル・スタイルを問わず、いずれのフォームにも共通していることであるが、爆発的なまでの意識の集中力をもって、まずファースト・プルに全力集中することである。

 すなわち、写真②~⑤のように、背筋を主体として、背中の諸筋はもちろん、大臀筋、及び大腿四頭筋等の力を駆使してウェイトを引き上げるのである。

 最初の「かまえ」の時の両足先の向きは、前に平行に向ける方法と、オリエンタル・フォームの時ほどではないにしても、両爪先をやや外側へ向ける方法とがある。

 ジム・キャッシュ(100kg級世界記録保持者)によれば、彼は500ポンド(約225kg)までは爪先はまっすぐ前に向けておくが、それ以上の重量になるとやや外側に向けると言っている。彼はそうすることによって、上半身にかかるウェイトの負担が分散され、バーを引き上げる際に後方へ倒れにくくなる、というのがその理由である。

 なお、このヨーロピアン・スタイルにおいても、バーを引き上げる際には「すね」をできる限りバーに近づけて大腿部をバーがこすっていく位の感じでじっくりと、上体をあまりあおらないで引き上げていくようにすることが肝心である。

 デッドリフトにおいては、ファースト・プルと同様に、最後(フィニッシュ)の動きも非常に重要である。

 あまり勢いをつけすぎない程度に、それでいてしっかりと力強い引き上げを行いつつ、両肩を後方に引っ張り、膝をまっすぐに伸ばしきるようにすることである。その時、もう1つ注意しなければならないのは、とかく上半身にばかり力が入りすぎて、両足裏をしっかりと踏みしめておくことを忘れないように。

 このデッドリフトの後半からフィニッシュにかけての上体をかえす力を養成するためには、ハイ・ラットのプルダウン、及びベント・オーバー・ローイング等を行なうのがよい。

 また、三角筋が弱いと、フィニッシュでバーベルを持ち上げたときに、肩が前にそれて、バーベルを保持していられなくなってしまうことがあるのでダンベル・プレスやラタラル・レイズなどを肩の強化種目としてぜひとり入れるべきであろう。

 さらに、このヨーロピアン・スタイルのフォームで練習する時も、連続して何回か引き上げる際に「タッチ・アンド・ゴー」つまり、床にバーベルをはずませてリバウンドを使って引き上げるやり方をしないように心がけて欲しい。このようなやり方は、ファースト・プルの時に動員される諸筋のトレーニング効果を下げてしまうからである。

 ビギナー諸君が日常行なうデッドリフトのトレーニングの週間頻度、及び目標重量については、その人の体力や体質、及び男女差によっても差はあるが、練習の回数は1週間に最低1回、できれば2回は実施すべきであると筆者は考えている。そして重量の目標は男子ビギナーは自己体重の2.5~2.7倍を1回、女子は自己体重の1.5~2倍を1回、リフトできることを目標にするとよいでしょう。

 また、1回の練習で行なうセット数は10セット前後で充分だと思います。このセットと反復回数、重量の関係は次のようにするのがよいでしょう。

セット 反復回数
1セット 7~10回
2セット 3~5回
3セット 3~5回
[註] 1~3セットは、重量を徐々に上げていく。

4セット 2~3回
5セット 2~3回
6セット 2~3回
[註] 4~6セットは、ほぼベストに近い重量を使用する。

7セット 3~5回
8セット 3~5回
9セット 7~10回
10セット 7~10回
[註] 7~10セットは、重量を徐々に下げていく。
記事画像1
 デッドリフトのトレーニングを終えた直後には、背中の筋肉を助ける小さな筋肉や大腿部の筋力を強化する補助種目も毎回実施するとよい。レッグ・エクステンション、レッグ・カール、ハイ・ラット・プルダウン、ベント・オーバー・ローイング、バーベル・シュラッグ、ハイパー・バック・エクステンション、カーフ・レイズ等の種目の中から5種目ほど選んで、1セット8~10回×3~5セットずつ実施するようにしてください。

 来月号からは、パワーリフターとしての食事法、試合に向けてのコンディショニング等について述べる予定です。
[参考図引用文献]マッスルフィットネス誌1983年9月号、ジム・キャッシュ著「力強いデッドリフトで成長を最大限に伸ばす」より

<1>正しいスターティング・ポジション

 デッドリフトは全身の力を高めるための運動である。また、この運動はボディビルダーの背中と肩の筋肉を発達させるのに最適だ。
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<2>中間ポジション

 効果をあげるためには下の図を勉強し、正しい姿勢とテクニックをおぼえることが大切だ。
記事画像3

<3>フィニッシュ・デッドリフト・ポジション

 正しいフォームを崩すほどの重いウェイトは絶対に使わないこと。バーを床にはずませる「タッチ・アンド・ゴー」もさける。
記事画像4

<4>まちがったスターティング・ポジション

 下図のような姿勢をとると、背中に必要以上に負担がかかり、ウェイトを背中だけで持ちあげる結果になってしまう。これは背中のケガのもとになる危険な姿勢である。
記事画像5
月刊ボディビルディング1984年7月号

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