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新ボディビル講座 ボディビルディングの理論と実際<42>
第6章 トレーニング種目

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月刊ボディビルディング1984年8月号
掲載日:2021.03.09
名城大学助教授 鈴木正之

Ⅶ バーベル、ダンベルを利用した腹筋運動

 一般に腹筋運動といえばバーベルやダンベルを用いないものと考えがちだが、これらの負荷を利用して行う腹筋運動もある。他の負荷運動と同様、バーベルやダンベルの重さをそのまま抵抗運動として用いる方法と、その器具の特殊性、すなわち加速、惰力、回転などを生かした用途がある。これらの特色を生かして腹筋運動を組むと、シット・アップやレッグ・レイズでは得られない効果を期待することができる。

《1》ヘッド・オン・ハンド・ダンベル・サイド・ベンド (通称:サイド・ベンド、初心者)[図1]

<かまえ>片手にダンベルを持ち、反対側の手を頭の上にのせ、ダンベル側に側屈してかまえる。(バーベル・サイド・ベンドの場合も同じ)

<動作>ダンベルを引き上げるように反対側に側屈する。

<注意点>ダンベルを持たない方の手は体側につけておいてもよいが、頭の上にのせておいた方が筋肉の伸展がよいので、図のようにかまえるのがよい。

 体側にそってダンベルを引き上げるとき、ダンベルに気をとられて、筋肉部に意識集中されない場合があるので、ダンベルが重く感じられる場合はリスト・ストラップを使用するとよい。なお、体側屈の方向は、基本的には真横であるが、後方に捻りながら屈するダンベル・リアー・サイド・ベンドのやり方もある。

<作用筋>主働筋……内・外腹斜筋。
[図1]サイド・ベンド

[図1]サイド・ベンド

《2》プローン・ボディ・ストレッチ(通称:ボディ・ストレッチ、中級者)[図2]

<かまえ>バーベルのセンター、またはダンベルの両端を持ち、足先、あるいは膝をついてかまえる。

<動作>プレートをゴロゴロと回転させながら、ゆっくりと体を伸ばしたら、元の位置まで戻す。

<注意点>体を伸ばすときは、エクセントリックの感じでかまえの姿勢に戻せるところまで、ゆっくりと伸ばすようにする。元のかまえの姿勢に戻れない場合があるので最初は膝つきよりはじめ、馴れてきたら足先つきに移行する。特に女性や初心者は、初めから上肢の肩・肘を全部伸ばしきらないように注意する。なお、上肢を伸ばしきるとプルオーバーと同じ運動になる。

<作用筋>主働筋……腹直筋、補助筋……大胸筋、小胸筋、広背筋。
[図2]ボディ・ストレッチ

[図2]ボディ・ストレッチ

《3》スタンディング・バーベル・ツイスト(通称:ツイスト、初心者)[図3]

<かまえ>バーベルを両手で持ち、肩にのせてかまえる。

<動作>内・外腹斜筋を使ってウエストを捻る。この動作に伴いバーベルが回転運動を起こし、捻りの動作を強くする。左右交互に切り換えながら行う。

<注意点>プレートに遠心力が働き、バーから抜ける場合があるので、カラーをしっかりと固定するか、ユニット型バーベルを選ぶようにする。

 肩にバーベルをのせると、心理的に肩や腕でバーを廻わそうとするが、この運動は肩・腕でバーを廻わすのではなく、必ずウエストの力で廻わし、回転惰力もウエストの力で止めて、反対側に廻わすようにする。また、足をしっかり固定しておかないと、ツイストの意味がなくなるので、足はもとより、下半身を安定させておくことが肝心である。

<作用筋>主働筋……内・外腹斜筋。
[図3]ツイスト

[図3]ツイスト

《4》シーテッド・バーベル・ツイスト(初心者)[図4]

<かまえ>バーベルを両肩にのせ、ベンチまたは椅子に腰かけてかまえる。

<動作>前項同様。

<注意点>器具選択と実施上の注意は前項同様である。この運動の長所としては、腰を下ろすことにより、重心の安定とウエストの捻転力が強化できることである。初心者はこのシーテッドによるツイストから入る方がよい。

<作用筋>前項同様。
[図4]シーテッド・バーベル・ツイスト

[図4]シーテッド・バーベル・ツイスト

《5》オールタネット・バーベル・ツイスト・サイド・ベンド(通称:ツイスト・サイド・ベンド、中級者)[図5]

<かまえ>両手でバーベルを持ち、肩にのせてかまえる。

<動作>斜め下方に向って上体を捻り倒したら、元のかまえの姿勢に戻し、次いで反対側に倒し、元に戻す。

<注意点>バーベルの選択上の注意は《3》項と同じ。運動のポイントは外腹斜筋にあるので、バーを捻るという感じで動作するのではなく、上体を外腹斜筋で捻り倒す感じでもって行う。つまり、バーベルの重量を利用しての運動にならないように注意する。この運動は上体を前倒させたベント・オーバー・ツイストとして行うことができる。

<作用筋>主働筋……外腹斜筋、補助筋……固有背筋。
[図5]ツイスト・サイド・ベンド

[図5]ツイスト・サイド・ベンド

《6》ダンベル・ツイスト・サイド・ベンド(中級者)[図6]

<かまえ>片手にダンベルを持ち、両足を腰幅より広く開いて大腿部の前にかまえる。

<動作>ダンベルと反対側の足にダンベルが触れるように外腹斜筋を捻転させながら前屈する。

<注意点>前屈することに意識が強いとベント・オーバーになるので、あくまでも外腹斜筋に意識集中し、ウエストを捻る感じで行う。片側を何回か連続反復したら、つづいて反対側を行うというようにするが、両手にダンベルを持って左右交互に行えばオールタネット・ダンベル・ツイスト・サイド・ベンドとなる。

<作用筋>主働筋……外腹斜筋、補助筋……固有背筋。
[図6]ダンベル・ツイスト・サイド・ベンド

[図6]ダンベル・ツイスト・サイド・ベンド

Ⅷ その他の腕筋運動

 ウエストをシェイプ・アップさせる専用マシンとして、ツイスト・マシンやベルト・バイブレーター、バレル・ローラーなどがある。

 これらは、どちらかといえば女性的なマシンであり、中でもベルト・バイブレーターとバレル・ローラーはシェイプ・アップ・マシンというよりは、リラクゼーション・マシンといってもよかろう。自分自身のエネルギーを使い、筋肉を収縮させるシェイプ・アップに効果的なマシンといえるのは、せいぜいツイスト・マシンまでであろう。

 ツイスト・マシンにも立って行うものと、坐って行うものとがあるが、両者の間にトレーニング的特色はない。また、手で上体を固定し、腰から下を回転させるのがこの器具の特色でもあるが、馴れてきたら手で上体を固定せずに腰と反対方向に逆捻りを加える方法もある。

 その他、ローマン・チェアを利用して、ローマン・ベンチと同じような動作を行うことができる。また、アブドミナル・ボードをシット・アップのときとは反対向きに利用したインクライン系のレッグ・レイズ動作も実践向きの運動として採用するとよい。

《7》スタンディング・ツイスト・マシン・ツイスト(初心者)[図7]

<かまえ>ツイスト・マシンの踏み台に立ち、支えのバーを持ってかまえる。

<動作>上体を固定したまま、足と腰で踏み台を廻し、ウエストを捻る。

<注意点>ウエストを強く捻るためには上体の固定が大切である。しっかりと上体を固定し、強い捻り動作をウエストに加えるようにする。運動に馴れるにしたがい、上体を固定せず、下肢と逆方向に積極的に廻してやる。

<作用筋>主働筋……内・外腹斜筋。
[図7]スタンディング・ツイスト・マシン・ツイスト

[図7]スタンディング・ツイスト・マシン・ツイスト

《8》シーテッド・ツイスト・マシン・ツイスト(初心者)[図8]

<かまえ>ツイスト・マシンの腰掛けに腰を下ろし、支えのバーを持ってかまえる。

<動作>上体を固定したまま、曲げた膝の反動を利用してウエストを捻る。

<注意点>マシンの型によっては、支えの縦バーに膝をぶつけることがあるので、腰掛けに坐るときは深く坐るように注意する。回転の反動はウエストから捻り出される力によって、膝の遠心力を利用すると強い捻り運動が生まれる。

<作用筋>主働筋……内・外腹斜筋。
[図8]シーテッド・ツイスト・マシン・ツイスト

[図8]シーテッド・ツイスト・マシン・ツイスト

《9》ローマン・チェア・ウェイテッド・シット・アップ(中級者)[図9]

<かまえ>椅子に腰かけてローラーに足を固定し、頭の後ろにプレート、またはダンベルを持ってかまえる。

<動作>上体を後ろにゆっくりと倒して起こす。

<注意点>ローマン・ベンチと同じような要素を持っているので、通常のシット・アップからツイスティング・シット・アップやウェイテッド・シット・アップなど、幅広くバリエーションを組むことができる。

<作用筋>主働筋……腹直筋、補助筋……内・外腹斜筋。
[図9]ローマン・チェア・ウェイテッド・シット・アップ

[図9]ローマン・チェア・ウェイテッド・シット・アップ

《10》インクライン・レッグ・レイズ(初心者)[図10]

<かまえ>アブドミナル・ボードに仰向けになり、肋木を持ち、軽く足を上げてかまえる。

<動作>足を顔につけるように引き上げて、ゆっくりと下ろす。

<注意点>腹直筋下部に意識集中し、足をやや浮かした状態よりスタートする。動作初期は膝を伸ばしておくが、後半は曲げてもよい。この運動のポイントは足を下ろすときにある。ゆっくりと下ろし、ボードに触れないようにすることが大切である。

 シット・アップとこのレッグ・レイズを充血法(フラッシング・セット)でもって行えば、腹直筋の上部、下部を強く刺激することができる。

<作用筋>主働筋……腹直筋下部、補助筋……内・外腹斜筋。
[図10]インクライン・レッグ・レイズ

[図10]インクライン・レッグ・レイズ

《11》インクライン・オールタネット・ツイスティング・レッグ・レイズ(中級者)[図11]

<かまえ>アブドミナル・ボードに仰向けになり、肋木を持ち、足をボードの外側に浮かしてかまえる。

<動作>足が腹部をクロスするように反対側に捻るように上げ、捻ったまま下ろしたら、次は反対側に同じように捻りながら上げて、下ろす。つまり、腹の上で8の字を書くように行う。

<注意点>腹直筋下部と内・外腹斜筋に意識集中して運動を行う。最初は8の字形にうまく動作ができないので、片側ずつ連続反復するようにしてもよい。左右交互にできるようになったら、サークル・レッグ・レイズ、つまり足先で大きく円を描くようにやってみる。

 これらレッグ・レイズの特色は、フロアーやベンチでもできる運動であるが、インクライン・ベンチを利用することにより負荷の強さを変えられる利点がある。

<作用筋>前項同様。
[図11]インクライン・オールタネット・ツイスティング・レッグ・レイズ

[図11]インクライン・オールタネット・ツイスティング・レッグ・レイズ

月刊ボディビルディング1984年8月号

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