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ビルダーによる ビルダーのための実戦ボディビル教室<4>
日光浴と出場前のパンプアップ

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月刊ボディビルディング1984年8月号
掲載日:2021.03.09
指導=宮畑豊
サンプレイ・トレーニングセンター会長
 さあ、いよいよ待ちに待ったコンテストのシーズンがやってきました。この時のために着着と力を蓄えてきた人もいれば、出遅れを取り戻そうと必死の追い込みをかけている人もいるでしょう。初めてコンテストに出場する人はもちろんのこと、誰しもが言い知れぬ緊張と心の高ぶりを覚えるのも、この時期ならではです。

 さて、これまでトレーニングをやり込み、調整を進めてきた皆さん。ここに来て最後の“ツメ"が甘くては、せっかくの苦労も報われません。あとは万全の準備と細心の配慮、加えて大胆な戦いぶりこそが勝利の条件。そこで今回は、実力を十分発揮するために欠かせない「日光浴」、そして当日における舞台裏での「パンプアップ」について考えていきます――。

《写真モデル》池上健(1983年度ミスター東京ジュニアの部優勝者)
宮畑豊(みやはた・ゆたか)

 昭和16年8月21日生まれ。42歳。23年のボディビル歴と数々のコンテスト優勝・入賞経験を有す。

 1973年以来ミスター日本コンテストで入賞をつづけ、79年には第3位、81年には第2位と表彰台に登ってきた。その間、81年のNABBAミスターユニバースでショートマン第4位。昨年もアジア選手権ミドル級4位、ミスター実業団壮年の部優勝、ミスター日本4位と、第一線で輝かしい成績を収めている。

 一方、東京・上野のサンプレイ・トレーニングセンター会長として後進の指導にも当たっているが、81・83年度ミスター日本チャンピオン石井直方選手をはじめ多くの一流選手を育てるなど、その指導力には定評がある。
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 今月は、私の話を始める前に、まず皆さんに次の文章を読んでいただきたいと思います。

   ※     ※   

 人ごみをかき分け、選手登録を済ませる。控室に入ると、なつかしい顔が揃っている。皆、異様なほど真っ黒に日焼けしている。

 ひとつ気がかりなことがあった。色の白さである。なにしろ、今年はほとんど日光浴をしていない。連日、学会の準備などに追いまくられた上に、たまの日曜日もほとんど雨にたたられてしまったのである。深夜、恐らくここにいる選手達が皆寝てしまっている時刻に、サンランプをともすのが日課となっていた。

 ボディビル・コンテストにおいては、肌の色はかなり重要な要素である。もちろん、審査基準に「日焼け具合」などという項目はない。しかし、よく焼き込んだ肌は照明を吸収し、カットを深く見せてくれる。その上、日光浴は、皮下脂肪を落とすのに少なからず効果があるだろう。肌にも「張り」が出るし、「ツヤ」も良くなる。ミスター日本くらいのコンテストになると、顔の焼け具合でその選手の仕上がりの程度がわかるといっても過言ではない。

 青ざめた顔で控室へ入ってきた私に、ある選手が「今日はゲストですか?」と真面目に問いかけてきたのも不思議ではない、しかし、「多少色が白くとも……」と、私は自らに言い聞かせた。「この仕上がりなら勝てるはずだ。」

 (本誌1983年12月臨時増刊『第29回ミスター日本コンテスト・第1回ミス日本ボディビルコンテスト特集号』より)

色の白さは実戦での落とし穴

 昨年のミスター日本コンテストで2度目の優勝を遂げた石井直方君。彼によって書かれたこの手記には、多くの考えさせられる内容がこめられています。いま紹介したのはその中のごく一部分ですが、実は今回のテーマを考えていく上で、その要点がここに見事に集約されているのではないか、そう考えたわけです。

 1981年のミスター日本、翌82年のミスター・アジアで優勝を果たしてきた石井君ですが、昨年のミスター日本に臨んだ時点では、さらに彼の体は進歩を示していました。その点は、本人の考えも私や周囲の評価もほぼ一致していたといってよいと思います。ところが大会のフタをあけてみると、戦いは意外な方向に展開していったのです。彼の文章を借りると、そのときの状況はこうなります。

――裏審査はすでに終了している。「何か変だ」と、私は感じていた。具体的に何が変なのかはわからない。自信を持って裏審査を終えたつもりではあった。しかし、いくら自信を持って押してみても、何かグニャグニャしているものを押しているようで、いっこうに跳ね返ってくるものがない。「誰かに負ける」という危惧は全くない。しかし、審査が進むにつれて、闇の中でもがいているような心境になっていったのである。

 客席からは思ったような反応が返ってこない。審査員の視線はどことなく冷たい……。彼自身も文中で触れているように、その原因の一つは一度チャンピオンの座に昇りつめた者の持つ宿命、すなわち周囲からの注文の厳しさであったと思います。そして、もう一つは……。

 「色の白さ」―これがあの時の石井君を苦しめた非常に大きな要因であったのです。まわりの選手が異様なほど真っ黒に日焼けしている中で、イヤでも目につく肌の白さ。彼の成長ぶりを確認するはずであった観客が、むしろそのことの方に気をとられ、逆に元チャンピオンの〝勢いのなさ〟を感じとった。そういう状況であったと思うわけです。最終的に彼は優勝を勝ちとったわけですが、もし彼がそれまでのコンテストで見せてきたような日焼け具合であったなら、この時はもっと楽な試合展開ができていたはずです。

 ただ、皆さんに勘違いしていただくと困るのは、「青ざめた顔」と本人が表現するほどに彼の体が白かったわけではないことです。もし言葉通りの青ざめた体を舞台にさらしていたなら、彼は本当に負けていたかも知れません。つまり、ここで言う「色の白さ」とは、〝コンテストで勝負をかけるにしては〟という意味で、一般の人たちから比べれば、もちろん彼の肌は黒かったのです。

 にもかかわらず彼の体の白さが目立った。それはそのままコンテストビルダーに要求される焼き込み具合の水準の高さを物語っているわけで、それほどに、一流といわれる選手になればなるほど〝日焼け〟への取り組み方は徹底してくるのです……。去年のあの大会で第2位に躍進した小沼敏雄君、石井君と対照的に見事な肌の焼き込みぶりを示していた小沼君ですが、その彼をして「日焼けが落ちているのが気がかりだった」と言わしめる、そのことが何といっても極めつけです。
出場前のコンディショニング ――パンプアップの心得――

①まず場所と道具の確認を

 たいていのコンテストでは、パンプアップ用の器具は用意されていない。そこで、会場に着いたら舞台裏の様子を下調べし、椅子や重りなど使える道具を見つけておく。同時に、どの場所でどんな運動ができるかということも頭に入れておくとよい。

②パートナーの助けは大きな力

 2人で組んでパンプアップをする場合、出場選手の中に普段の練習仲間がいれば理想的。しかし、そうでなければ、出場順の近い人と相談して力を合わせるのもよい。困ったときはお互いさまである。また、選手以外の仲間に付き添ってもらえれば、自分が思った通りの運動を遠慮なく行なえる。

③ポージングの復習をパンプアップに利用する

 ポーズをとって筋肉に意識を集中させる。それだけでも相当にパンプアップはできる。とりわけ出場経験の浅い人にとっては、ポージングの点検は気持ちの安定にもつながるだろう。

④タイミングを誤らない

 あまり早くからパンプアップを始めてもよくないし、かといってギリギリのタイミングで始めたのでは時間不足の恐れがある。しかも審査の進行がズレることもあるので、ぶっつけ本番で舞台に立つという最悪のケースもありうる。したがって、遅すぎるよりは早すぎるくらいの方が危険は少ないといえよう。逆に進行が遅れた場合は、パンプアップがさめないように少しずつでも運動を継続する。

⑤適量の水分とエネルギーを補給しておく

 運動の前に、チョコレートなり蜂蜜(はちみつ)なり、胃腸の負担にならず素早くエネルギーに変わるものを補給しておくとよい。また、適量の水分をとると汗が出やすくなる。

⑥体を十分温める

 体が温まると血液の循環がよくなる。これは筋肉の膨脹を助けるし、血管が浮き出ることによってディフィニションも強調される。それだけに、これも汗をかくぐらいまでやり込むことが大切。それとともに、出番のとき以外は熱を逃がさない服装で待機し、体を冷やさないよう心がける。

⑦汗は出しっぱなしにしない

 次の出番まで間があるときは、体の汗をふく、汗でぬれた衣服を着替えるなどの配慮が必要。パンプアップやポージングで汗をかいたまま長時間ほうっておくと、水分の蒸発で体熱が奪われる。体が冷えると、血管が縮んで筋肉もしぼんでしまう。そして、次のパンプアップも起こりにくくなる。

⑧出すぎた汗は逆効果

 汗が適当に出ていれば、肌のツヤは増すし、筋肉の切れ味も引き立つ。しかし、流れ落ちるほどの汗は光を反射させ、かえって筋肉の状態を見にくくする。そのため、そういう場合は、ある程度汗をふきとってから舞台に出た方がよい。

⑨出場前のパンプアップが有益か無益か、部位ごとに調べておく

 部位によっては、パンプアップをさせたためにディフィニションが失われる場合もある。また、いざポーズをとった時に力が入らなかったり、力を入れても筋肉のカットが出てこなかったりすることもある。したがって、パンプアップを覚えた状態でポーズをとり、鏡に映してみる――大会前には、そうした方法でそれぞれの筋肉の状態を確かめておく必要がある。

日焼けも勝負のうち

 それにしても、なぜコンテストビルダーにそれほどの日焼けが必要なのか。その答えは実に簡単明瞭。コンテストで勝つための、それは重要な要素だからです。これも冒頭に紹介した石井君の手記の中に述べられていますので、ここでそれを整理しておきましょう。

①よく焼き込んだ肌は照明を吸収し、カットを深く見せてくれる

②肌に「張り」が出るし、「ツヤ」も良くなる

③日光浴は、皮下脂肪を落とすのに少なからず効果がある。

 ①については、改めて説明するまでもなく、皆さんが日ごろ十分に感じとっているはずです。せっかくのディフィニションも、白い肌では、見る者にそれが伝わってきません。そして②のごとく、よく焼き込んだ肌は、充実した筋肉を表面から一層引き立たせてくれるのです。

 また、③の「日光浴が皮下脂肪の除去を促進する」ということについては、「紫外線が男性ホルモンの分泌を促し、それが体脂肪の燃焼を助ける」という話を聞きますが、何よりもこれは体験的に断言できます。これにはもう一つ、日光浴の最中、多量の熱を浴びつづける、エネルギーを消費する、そんな素朴な効果も含まれていることを付け加えておきましょう。

 そうした効果を認識しているからか、意外なことに、黒人のビルダーたちも日光浴をするのです。そして、その黒人ビルダーの日光浴には、肌の張りやツヤを良くするという狙いも当然含まれているに違いありません。

 それでは、実際に肌を焼くとき留意すべき点としてどういうことがあるのか。これも少し整理しておきましょう。

①せっかく日焼けをしても、皮膚がむけたのでは何にもならない

 最初からいきなり強く焼こうとしても、皮膚がむけてしまったのでは苦労も水のアワ。トレーニングと同じ理屈で、これも段階的に強度を高めていくことが肝要です。特に日焼け灯を用いる場合は、ランプを体に近づけすぎないよう注意しなければなりません。また、その意味でも、オイルを塗るのは必要なことだと言ってよいでしょう。

②全身をまんべんなく焼く

 体の部分によって色の濃さが違ったのでは見苦しくなります。上半身・下半身、前面・側面・背面、右側・左側と、体を動かしながらムラなく焼いていきます。日焼け灯を使わざるを得ない場合、光線の当たる範囲が狭いので、特にその点を注意します。

③焼き残しのないように

 腕や脚の内側など、姿勢を変えながら光線を当てていきます。そして絶対に失敗してならないのは、いざビルダーパンツをはいたとき、足の付け根に白い部分が残らないようにすること。
舞台裏でのパンプアップ ――6つのポイント――

①重点を定めて行なう

 実際のコンテストになると、何不自由なくパンプアッブができるわけではない。時間もなければ器具もないので、これと決めた部位を集中的に攻略することが肝要。

②各自の特徴と狙いを踏まえて重点部位を選択する

 欠点を補うために弱いところをやるのもよし、長所を強調するために得意な部分をやり込むのもよし、ラウンドごとに重点を変えたり、アピールしたいポーズに即して部位を選択したり、各自が作戦を立てて取り組めばよい。ただ、極端に長所と短所の格差がある場合、なまじ長所の部分をパンブアップさせると、ますますバランスを悪くしてしまうことがある。

③下半身よりも上半身を優先的に

 個人差はあるが、大腿や下腿はパンプアップさせるとカットが出にくくなる場合が多い。まかりまちがえば舞台上で足がつる恐れもあるし、脚の筋肉が張っていたのでは、足元が安定せずポージングに支障をきたすこともある。

④スーパーセットの方式をとり入れると能率的

 2つ以上の部位をパンプアップさせる場合、状況が許すなら、複数の運動をかわるがわる行なっていくとよい。一方のパンプアップがさめることもないし、出番が早まっても完全なやり残しの部位をつくらなくてすむ。また、ディップスのような、同時に多くの部位へ刺激を与えられる運動を行なう。それも良い方法である。

⑤各場面で全力を尽くす

 スタミナの配分や筋肉の疲労を考えるより、第一次審査から最後のポーズダウンに至るまで、やれるだけのことをやっておいた方がよい。納得の上でなら話は別としても、一度力を抜いてしまうと、往々にして気持ちまで沈んでいくことがあるからだ。また、力を落とした場面で審査員の印象が悪くなる可能性もある。

⑥出来ることをやる

 あれこれ計画していても、実際の舞台裏ではなかなか思った通りの運動はできない。しかし、そこで素早く行動を切り換え、できることからテキパキと実行していく。その場で筋肉に意識を集中させるだけでも効果はあるのだから、あわてず臨機応変に対処することが肝心。“完璧”を求めるよりも、“完全燃焼”を心がけるべきだ。
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胸の収縮に補助者が抵抗を加える

 チェスト・マシンの代わりを補助者が務めるような要領。相手の上腕(ヒジに近い部分)を上の補助者が表から押さえる。補助者は相手が両腕を閉じようとする動きに抵抗を加え、選手は②の状態からさらに両ヒジをぶつけるくらいまで胸をしぼり込む。

 ②から①へは無抵抗で戻せばよいが、可動範囲を広げるため、補助者は①のときに相手の腕をグッと後ろへ引き、胸部を広げてやる。

★胸の運動として最も簡便でポピュラーなのはプッシュ・アップ(腕立て伏せ)であろう。その場合も、負荷を高めるために補助者が体を上から押さえてやると効率的である。
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自己満足ではダメ 持つべきものは執念

 ところで、一口に「日焼け」といっても、一般の人たちが楽しみながら行なうそれとは違って、コンテストビルダーの焼き込みは決して自己満足であってはなりません。先に述べたような細心の注意も不可欠ですし、何よりそのことに対する“執念”が求められます。日光浴をする時間のとれなかった石井君が、せめてそれだけでもと深夜自宅で日焼け灯を当ててきた。それも"執念”のなせる業(わざ)といえます。

 例えば、休日に日光浴する計画を立てて海に行くことを予定していた。ところが出かけようとすると、外は出バナをくじく曇り空。しかし、それでその予定を取りやめるか、あるいは、その後太陽が姿を現わす可能性にかけてとにかく出かけていくか、そこが一つの分かれ目です。

 普段でも、昼休みの短い時間を利用して日光浴をする。わずかな時間でもいいから、朝少し早く起きたり夜寝る前に日焼け灯に当たる……。その気になれば手段はいくらでも見出せるものです。

 「まとまった時間がとれないので、日光浴ができない」―そんなことを言っていたのでは、コンテストにかける情熱を疑われます。それにまた、二度や三度の日光浴で一挙に焼いてしまおう、そうした方法は効果の面でも得策ではありません。

 というのも、私たちが行なう日光浴の目的を考えれば、「焼いたら焼きっぱなし」というのはマズいやり方です。「まず十分なトレーニングを積んでおくのが先決だから、体を焼くのはコンテスト直前の何日間かで集中してやってしまいます」などと言う人がいますが、この考え方には、実は2つの問題点がひそんでいるのです。

 まず一つは「焼いたら焼きっぱなし」言うなれば「焼きたてのホヤホヤ」がなぜマズいのかということの説明にもなりますが、本当の肌の黒さやツヤというものは、焼いたあと何日間か経過しなければ出てこないものなのです。

 これは皆さんも体験していることでしょうが、日光浴をした直後にはどちらかというと黒さよりも赤さの方が勝っている感じがします。そして残念なことに、この状態では筋肉の十分なカットなりディフィニションが見えてきません。しかし、その赤みも日を追うごとに落ち着いた黒さに変わっていく。その時にこそ、コンテストで勝負をかける本物の肌の色が備わってくるのです。

 しかも、焼いた直後は皮膚がハレたような感じも残りがちで、この肌の〝ほてり〟をおさめないと、張りやツヤは出てきません。ですから、それまでに十分焼き込んでいて抵抗力のある場合は別としても、コンテストの直前になって急激に体を焼こうとするのは間違っています。
一方の肩と他方の胸を刺激する

 右の人がサイド・レイズの動作(肩の運動)を、左の人がクロス・オーバーの動作(胸の運動)をすることによって、お互いにパンプアップができる。この場合、水平の高さで止めるのではなく、①のように腕をいっぱいまで上げると、さらに効果が増す。

 なお、向き合わず、補助者が相手の後ろに立って同じ運動をすれば、サイド・レイズの動作をする人には一層きついものとなる。

★肩のパンプアップのためによく行なわれる運動としては、倒立(さか立ち)をしてのヒジの屈伸がある。
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なじませながら焼き込もう

 それからもう一つ。以前この連載で「調整期間には余裕を」ということを述べたことがありますが、これは日焼けについても全く同じことがいえます。

 最も恐ろしいのは、雨が降ったり曇ったりして、予定していた時期に太陽の出ない日が続くこと。そうなってからあわてて日焼け灯を頼ったり「日焼けサロン」に行ったりしても、もはや手遅れです。

 もしかすると体調を崩して、とても日光浴どころではなくなったり、仕事が忙しくなって、どうしても体を焼く時間がとれなかったり……。人間、予期せぬ出来事はツキモノですし、おまけに〝お天気まかせ〟というのですから、こればっかりは先のことなどアテにはできません。

 私の場合、コンテストの2~3か月前から日光浴を始めています。ですから、コンテストの1か月ぐらい前になると、肌の色に関してはある程度のメドが立っているわけで、あとはそれを維持し、さらに磨きをかけていけばよいという状況です。

 しかも、ジックリ期間をかけて焼いてくると、皮膚には紫外線に対する抵抗力が備わってきます。それだけに強い光線や長時間の日光浴にも耐えうる。そのうえ、焼けば焼くほどその肌は一段と焼けやすくなり、日焼けの効率はさらに高くなってくるのです。

 また、日焼けの方の不安が解消されれば、その分だけトレーニングの方に意識を集中させることができます。コンテストを目前にしながら肌を焼くことで右往左往しているようでは、肝心のトレーニングの方がおろそかになってしまう恐れがあるのです。

 つまり、日光浴はコンテストの直前になって〝まにあわせ〟でやるのではなく、どう考えても早くから余裕をもって行なっていく方がよいということ。そしてコンテストの舞台に立つ日まで、さらに良い色を獲得するため、皮膚にその色を定着させながら、すなわちなじませながら、日光浴を繰り返していく……。

 トレーニングを〝やり込む〟ことが大切なのと同じく、日焼けもとことん〝焼き込む〟ことが大事です。

 「一夜づけ」ならぬ「一昼づけ」では、本物の黒さを身につけることなどできません。

 その意味では、今回この『実戦ボディビル教室』で日焼けのことを取り上げたのは、タイミングとしてやや遅きに失した感がなきにしもあらず。この点いささか恐縮していますが、それでも日焼けや日光浴の重要性をこれまで認識していなかった人なら、コンテストをめざす対策の一つとして、この機会にぜひこの事をスケジュールに組み入れていただきたいものです。

 まだ出場する大会までに日数の余裕がある人はもちろん、期日的にせっぱつまった人であっても、いや、そういう人であればなおのこと、さっそく体の焼き込みに取りかかってもらいたいと思うわけです。そして残された期間、骨身を惜しまず最善の努力を尽くしていこうではないですか――。
肩と広背の運動を組み合わせる

 下の人は、補助者が押さえつける力にさからいつつ①の状態からプレスの動作をする(肩の運動)。②まで押し上げたら、今度は補助者の引っ張る力にさからいながら①までヒジを引き戻す(広背の運動)。ちょうどラット・マシンを引くような形である。また、これは補助者側からすればスタンディング・ローの動作となり、肩の運動になる。

 なお、補助者は②まで来たところで相手の腕を引っ張り上げ、十分に広背筋を伸ばしてやる。こうすることで、お互いに可動範囲が広くなるからだ。
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トレーニングを犠牲にするな

 さて、日焼けにも執念が大事だということはすでに述べたとおりです。頼りない紫外線であっても貪欲にそれを求めていく、寸暇を惜しんで日光浴に取り組む……。大切なのは、あきらめず、かといって欲張らず、地道に成果を積み重ねていくことです。

 しかし、いくら執念が肝心だとはいっても、その執念を片寄った方向に向けては失敗のモトです。というのは、気持ちと行動が完全に日焼けの方に乗り移ってしまい、肝心カナメのトレーニングに妥協が生じてしまう可能性があるからです。

 ボディビルはやはり「トレーニングをやっていくら」のものですから、主と従が逆転してしまったのでは何にもなりません。私たちは「黒んぼコンテスト」に出るわけではありませんから、ただ色さえ黒ければいいというものではないのです。

 日焼けの目的は、あくまでも鍛え込んだ筋肉をより良い状態に見せること、日光浴に没頭するあまりトレーニングに振り向ける時間や労力が極端に減ったり、「今日は体がよく焼けたな」などといって悦(えつ)に入りトレーニングがないがしろになる。これでは何のための日焼けかわからなくなってしまいます。

 焼き込みに向ける執念と同じだけの執念を、やはりトレーニングにも傾けるべきだ。決してそのことを忘れてはなりません。

 ただ、そうはいっても、実際にはいろいろと問題もあります。まずもって「時間の配分」です.この問題は相当に深刻なものですが、なにしろ1日が24時間しかないというのは神や仏の力をもってしても変えがたいほどの厳粛な事実。それだけに、これを解決する妙手は残念ながら見つからないと言わざるを得ません。

 しかし、トレーニングがオフの日は何はさておいても日光浴に精を出す。日常生活の中で時間のやりくりを考える。工夫に工夫を重ねたすえ、なおかつトレーニングの時間を削らなければならないなら、これはもうトレーニングの密度と集中力をさらに高めることでカバーするしかありません。ことによれば、それがかえってトレーニング効果の向上につながっていくかも知れません。

 さらにトレーニングと日光浴の関係でいうならば、行動の柔軟性というものも欠かせないでしょう。

 「休日に日光浴を予定していたが、朝起きてみると空は曇っていた。けれども、あとで太陽光線の出てくる可能性はあるのだから、それにかけて何はともあれ出かけてゆくべきだ」――先ほど私はそう述べました。しかし状況が許すなら、これとは別の選択をしてもよいわけです。

 「ヨシ、今日は日光浴をあきらめてトレーニングに変更しよう。そのかわり明日晴れていれば、トレーニングを後回しにしてでも日光浴に励むぞ」 あるいは逆に、日光浴を予定していなかった時「さあ、体を焼いて下さい」と言わんばかりの日差しが照りつけてきた。その時は「ヨシ、何はさておき、まずは日光浴だ。トレーニングはあとで取り返す」といった調子に思い切って決断を下す。――こうして気持ちをうまく切り換えていくのが肝心で、常に決断の鋭さとテキパキとした行動が望まれます。
お互いの広背を伸縮させる

 向きあった2人が腕を交差させて手を握り合い、相手の引っ張る力にさからいつつ左右交互にヒジを曲げ伸ばしする。つまり、双方が両側とも、常に引っ張る方向に力を入れているわけだ。

 広背筋を完全に収縮させるべく、ヒジは十分に引きつける。逆にいえば、片側は十分に広背筋を伸展させるということである。なお、腕の引っ張り合いにならないよう、腰を入れ、しっかりと広背筋を意識して行なう。

★広背のパンプアップにはチンニング(けんすい)をする場所があると理想的だが、何かつかまるものがあれば、重心を後ろに置いて両手でそれにつかまり、広背筋を意識しながらヒジの曲げ伸ばし(広背の伸縮)をしてもよい。
<この項3ページ目の写真参照>
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日光浴の疲れは最小限に

 さて、残る問題として「日光浴によって生じる疲労」のことを考えなくてはいけません。

 ハタから見ればずいぶん気楽そうに思える日光浴ですが、これだって当人はけっこう大変です。なにしろ相当の熱を浴びつづけるわけですから、身体にとってもかなりの負担になっているはず。ジリジリと焼かれるままに、ひたすら辛抱する。退屈なうえに、この苦しさ。日光浴を終えたときには、もうグッタリ……。きっと皆さんにも、そんな経験があるでしょう。

 その疲れはトレーニングにも尾を引き、ひどいときは練習に取りかかる気力さえ失ってしまう。そうなったのでは最悪です。

 そこで考えるべきことは、日光浴によって生じる疲労をいかに少なくしていくか。それには、前提条件として次のことを踏まえておく必要があります。

①無理な我慢はすべきでない

②苦痛に耐える精神力は、極力トレーニングに振り向けるべきだ

③費やしたエネルギーは補給する

④発汗によって失われた水分は補給する

⑤熱をもち、ほてった体はさましてやる

 何度も繰り返すように、体を仕上げる上での最大の眼目は、充実したトレーニングを行なうことです。ですから、他のことで大切なトレーニングに支障をきたすような事態は、できる限り避けることです。

 しかも、日光浴の最中に自分を痛めつけたところで、さして得るものはありません。ですから、日焼けを阻害することでさえなければ、むしろこの時には自分をいたわってやることです。

 私などは日光浴の途中で水につかって体をさましてやりますし、ノドが渇けば水を飲む、いや、ビールを飲むことだってあります。おかげで日光浴でそれほど苦しんだという記憶はありませんし、それだけトレーニングには全力を投入してきたつもりです。

 日光浴の最中に自分をいたわってやる。それは、あくまでもトレーニングの量や内容が落ちることを防ぐ一つの方策にしか過ぎません。前号でも述べたように、トレーニングにおいてどれだけ苦しさにぶつかっていけるか。そこが一番の勝負であることは、変わることのない鉄則だからです。

  ※     ※  

 次回は、ポージングとトレーニングとの関わりについて話を進めていく予定です。
双方の上腕に効かせる

 右の人は手のひらを上に、左の人はそれを下に向けている。右の人がカールの動作(上腕二頭の運動)、左の人がプレス・ダウンの動作(上腕三頭の運動)をすることによって、お互いの上腕をパンプアップさせることができる。

★簡単にできる上腕三頭の運動としては、手幅を狭くしたプッシュ・アップ(腕立て伏せ)、椅子などを利用したリバース・プッシュ・アップなどがある。また、一人でできる上腕二頭の運動としては、カールの動作をする一方の手にもう一方の手を使って抵抗を加える方法があげられる。
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月刊ボディビルディング1984年8月号

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