フィジーク・オンライン

なんでもQ&Aお答えします 1982年11月号

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1982年11月号
掲載日:2020.09.17

トレーニング開始から半年経過したが体位がほとんど大きくならないが

Q ボディビル歴は6ヵ月、自宅でトレーニングしています。体位表をごらんいただければ分ると思いますが、6ヵ月で胸囲が1cm大きくなっただけで、他の部分は一向に大きくなりません。6ヵ月もの間トレーニングを行なっているのですから、もう少し体位が増えてもよいのではないかと思います。食事の方もしっかり食べているつもりです。
 このまま継続していても、あまり効果は期待できないような気がしてなりませんので、よきアドバイスをお願いします。私はまだ初心者なので、トレーニング用語にも詳しくありません。その点もよろしくお願いします。

◆体位の経過(平常時に測定)
記事画像1
◆トレーニング・スケジュール
(週2~3回、所要時間約65分)

①準備運動 15分
②スクワット 35kg 15回×3セット
③チンニング 30秒間ぶらさがり 3セット
④ディップス 8回×2セット
⑤フロント・サイド・レイズ 4.5kg 6回×2セット
⑥ダンベル・プレス 26kg 6回×2セット
⑦21カール 6.5kg 21回×2セット
⑧リバース・ディップス 9.5kg 10回×2セット
⑨シット・アップ 20回×2セット
⑩レッグ・レイズ 15回×2セット
⑪整理運動 10分
(神戸市 若山 彰 24歳)
A あなたの身体を直接見ていないので、どれだけ適切なアドバイスができるかわかりません。したがって、あなたの資料を参考にし、できるだけの範囲でアドバイスさせていただくことにします。
 まず、トレーニングに関して、問題があると思われることがらを列挙してみることにします。
①全体のトレーニング量が多すぎると思われる。
②運動種目の選択に問題がある。
③使用重量と反復回数に疑問がある。
 では、それらの問題について、更に詳しく考えてみることにしましょう。

〈1〉トレーニング量について

 正直なところ、あなたの体格は標準よりもかなり細いようです。したがって、同じボディビルの初心者とはいっても、現在のあなたは身体的な資質の面において、普通の体格をした初心者と同じというわけにはいかないと思います。
 そのようなわけで、あなたの場合ボディビルの初心者としてのトレーニングに対する適格度においても、普通の体格をした初心者よりも相当に評価を下げて考えなければならないと思います。
 現在あなたは9種類の運動種目を採用して計20セットの運動を行なっておられます。しかし、それは、あなたの体位から推測される現在のあなたのトレーニングに対する適格度から考えて、かなりオーバーなのではないかと思われます。つまり、種目とセットの数が多すぎると考えられます。現在のあなたでしたら、3~4種類の運動を採用して、全体で6~8セットも行えば十分ではないかと考えられます。
 からだの鍛錬というものは、1つずつ段階を踏んでいくことが大切です。トレーニングに対する適性度とトレーニングの内容にギャップがあるようでは正当な効果が得られなくなります。
 つまり、トレーニングの内容というものは、いかなる場合においてもトレーニングに対する各人の適性度にマッチしたものでなければなりません。そして、適性度が向上するにつれて(筋が発達し、体力が強くなるにつれて)無理のない範囲で段階的により充実したものへと高めていくことが大切です。
 あなたもそのところを十分に自覚して、トレーニングに対する適性度に比較して、トレーニングの内容だけが先走ってしまうことのないようにくれぐれも留意してください。

〈2〉運動種目の選択について

 現在あなたは9種目の運動を採用しておられますが、その選択の仕方についていくつかの問題があるようです。
 その第1は、現在の段階において最も重要と目される基礎的な運動種目の採用が少ないのではないかと思われます。あなたが採用しておられる運動種目を見ると、そのほとんどが補強的な意味合いの強い運動種目であって、基礎的な運動種目はあまり見当りません。
 上級者の場合には、採用する運動種目が補強的な種目であるか、基礎的な種目であるかについてあまりこだわることもありません。しかし、基礎的な運動は文字どおり、からだの基礎をつくるのに必要な運動なので、初心者の場合は欠かさず行うようにする必要があります。
 ちなみに、現在あなたが採用しておられる9種目の中で最も基礎的な運動と考えられるのは、シット・アップとスクワットの2種目くらいのものです。そして、ダンベル・プレスとレッグ・レイズがそれに次ぐ運動であるといえます。したがって、今後、運動種目を採用するに当っては、基礎的な運動をもっと重視する必要があると思います。
 第2番目の問題としては、どのような理由があるのか分りませんが、上体の運動として最も重要なベンチ・プレスが採用されていないことです。
 ベンチ・プレスは上半身を鍛える上において、もっとも重要、かつ、効果的な運動種目です。胸の筋肉はもちろんのこと、肩と腕の筋肉の発達にも多大な効果が期待できます。
 あなたが、半年もの間トレーニングを行なったにもかかわらず、効果がまったくといってよいくらい得られなかったのは、1つにはこのベンチ・プレスを行なわなかったことにも原因があると思います。もしも、フラット・ベンチ(平らなベンチ)がなくてベンチ・プレスを行うことができなかったのでしたら、これからは、板や箱などを利用してでもベンチ・プレスを行うようにしてください。

〈3〉使用重量と反復回数について

 あなたのトレーニング表を拝見してみると、運動の使用重量と反復回数との関係に不自然な点があるのが感じられます。つまり、あなたの体位から推測できる筋力をよりどころとして、使用重量と反復回数との関係を考察すると、ほとんどの運動が不完全な動作で行われているものと推察されます。
 運動というものは、すべからく正しいフォームと正確な動作で行うべきものであって、きょくたんに反動を使ったり、また、いいかげんなフォームで行なったりすることは厳に慎むべきです。そして、運動動作の範囲についても、中途半ぱな動きをせずに、できるだけ可動範囲いっぱいに動さを行うように心がけるべきであるといえます。このことは、初心者の場合には、とくに強くいえることです。そのためには、いたずらに負荷を欲ばらないようにすることです。

 以上、あなたのトレーニング上の問題点についていろいろと考えてきましたが、それらを要約すると次のようになります。
①現在の段階においては、自分の身体的な資質が水準以下であることを素直に認める。(註:ここでいう身体的な資質とは、現在のあなたのボディビルに対する適性度を指し、一般的な素質に関することではない。だが、ボディビルの素質について一言付け加えるならば、人のからだにはそれぞれかくれた資質というものがあり誰でもトレーニング次第で立派な体格の持ち主になれる可能性を十分に秘めているといえる)
②自分自身のトレーニングに対する適性度に合ったトレーニングを行うようにする。つまり、あなたの場合は、普通の体格をした初心者よりも、トレーニングの内容をひかえめにすること。
③現段階において最も重要と目される基礎的な運動を行なうようにする。ただし、採用種目の数は最少限(3~4種目くらい)にとどめる。
④ベンチ・プレスを行うようにする。
⑤初心者であることを自覚し、すべて運動は基本を忠実に行うこと。つまり、正しいフォームで、正確、かつていねいに、そして、可動範囲いっぱいに動作を行う。
⑥運動を正しく行うために、いくぶん余裕のある重量を使用する。

◆トレーニング・スケジュール例
(2~3置き、週2日)

①シット・アップ 20回×2セット
②スクワット 10回×2セット
③ベンチ・プレス 10回×2セット
[註]当分の間は上記の3種目のみでもよいと思うが、4種目を行いたい場合には、下記の2種目の中からどちらか1種目を選んで採用する。
④スタンディング・プレス 10回×2セット
⑤ベント・オーバー・ローイング 10回×2セット
[註]現在の段階では、あえて腕の運動を採用する必要もない。腕の運動を採用しなくても、現段階では、他の運動によって腕は間接的に十分鍛えられるものと考えられる。なお、人のからだには「人体一体の原理」といわれる生理的な仕組みがあり、そのようなからだの仕組みは、トレーニング経験の浅い初心者の場合には、かなり強く作用するものと考えられる。

フロアー・プーリー・ローと、ラット・マシーン・プレス・ダウンの代替種目

Q ボディビルを始めてから1年6ヵ月になります。半年ほど前まではジムでトレーニングしていたのですが、現在は事情があって自宅で行なっています。
 ジムで行なっていた頃はいろいろの器具が使えたので、それだけからだも鍛えやすかったのですが、今は器具の関係で思うようにトレーニングできません。自宅にある器具はバーベルとダンベル、それにフラット・ベンチとスクワット・ラックだけなので、行える運動種目も限られます。
 そこでお尋ねしたいのですが、次の2つの運動種目について、自宅でも行うことのできる代替種目があれば教えてください。
①フロア・プーリー・ロー
②ラット・マシーン・プレス・ダウン
(川崎市 髙田豊広 会社員 29歳)
A 動作の面でまったく同じというわけにはいきませんが、できるだけ主要筋に負荷が同じような感じでかかる運動を紹介することにします。

◆フロア・プーリー・ローの代替運動
◎ベント・オーバー・ダンベル・ローイング[写真参照]

[ベント・オーバー・ダンベル・ローイング]

[ベント・オーバー・ダンベル・ローイング]

<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち、バーベルによるベント・オーバー・ローイングの場合と同じようなかまえの姿勢をとる。ただしこの場合は、双方のダンベルをタテ向きにして、左右が並行をなすようにかまえる。
<動作>左右のグリップが常に並行を保つように留意して、ダンベルによるベント・オーバー・ローイングの動作を行う。なおこの運動は、やり方によって広背筋に与える効果が変化するので、下記の点に留意して運動を行うようにするとよい。
①広背筋の上部に効かすためには、かまえの姿勢で図①のように意識的に背を湾曲させ、その姿勢から背を伸ばしながらダンベルを引き上げるようにする。
記事画像3
②広背筋の下部に効かすためには、ダンベルを引き上げたときに、図②のように肘ができるだけ後方へいくように動作を行う。
<呼吸法>この運動においては、呼吸法が大切な要素のひとつでもある。ダンベルを引き上げながら息を吸い、おろしながら吐く。

◎シーテッド・ラバー・プル

<かまえ>あらかじめ自転車のチューブを用意しておき、床に座り、両脚をそろえて伸ばし、背を少し前方へ湾曲させて、チューブを両足のウラに引っかけ、それぞれの端を両手で握る。[写真参照]
<動作>腰の角度は固定したままの状態で、両肩を上方へすくめないように留意して、胸だけを伸ばすようにしながら両肘を後方へ屈曲してチューブを引き伸ばす。
<注意>動作は可動範囲いっぱいに行うようにする。両手を十分に引きつけた状態では、胸を張り、上体が床面に対して垂直になるように動作を行う。上体を後ろへ倒すようにしてチューブを引っぱると、広背筋に与える効果が減ぜられる。
<呼吸法>チューブを引き伸ばしながら息を吸い、縮めながら吐く。
シーテッド・ラバー・プル

シーテッド・ラバー・プル

◆ラット・マシーン・プレス・ダウンの代替運動
◎ケーブル(エクスパンダー)またはラバー(自転車のチューブ)を使って行うトライセプス・プレス・ダウン(ケーブル・トライセプス・プレス・ダウン、ラバー・トライセプス・プレス・ダウン)[写真参照]

ケーブル・トライセプス・プレス・ダウン

ケーブル・トライセプス・プレス・ダウン

<かまえ>エクスパンダー、またはチューブを両手で持ち、写真のようにかまえる。
<動作>まげた方の腕を下方に伸ばし、エクスパンダー(またはチューブ)を引き伸ばす。上腕はできるだけ動かさないように留意し、前腕だけを伸展させるようにして動作を行う。

◎トライセプス・プレス・アップ

<かまえ>適当な高さの台(机でもよい)の上に両手をついて腕立て伏せの姿勢をとり、その姿勢から図のように肘を屈してぶら下がるような感じで、床面の方へからだを鎮める。なお、この場合、両肘を少し内方向へ縮めるようにして、左右の腕が並行をなすようにする。
記事画像6
<動作>左右の上腕を並行に保ち、上腕三頭筋に負荷が十分にかかるように配慮しながら、前腕を伸展させて体を持ちあげる。プッシュ・アップ(腕立て伏せ運動)のような感じにならないように注意する。

2分割法によるトレーニング・スケジュールのたてから

Q ボディビル歴は1年6ヵ月です。勤務先の同好会でトレーニングしています。現在は下記のスケジュールで、月曜・水曜・土曜の週3日実施しています。

◆現在のトレーニング・スケジュール

①シット・アップ(傾斜約30度) 20~15回×3セット
②ベンチ・プレス 7~8回×5セット
③ディップ 10~12回×3セット
④ベント・オーバー・ローイング 8~10回×4セット
⑤プレス・ビハインド・ザ・ネック 7~8回×4セット
⑥ツー・ハンディッド・ダンベル・トライセプス・プレス 8~10回×4セット
⑦ツー・ハンズ・カール 8~10回×4セット
⑧フル・スクワット 8~10回×4セット

 ところで、最近、上記のトレーニング量を消化するのに体力的に少々負担を感じるようになりました。といっても、別に体調をくずしたわけではありません。全体的に筋力が強くなり、反復回数とセット数は変わりませんが、以前より重い重量を使って運動を行うようになったからだと思います。
 そのようなわけで、この際、思いきって分割法でトレーニングを行なってみようかと考えています。現在実施している前記の8種目を20種目以上に増やし、2分割法による方法にしたいと思うのですがいかがでしょうか。
 採用を希望している運動種目は下記のとおりですが、どのように分割したらよいか、2分割法によるスケジュールを2つほど作成していただきたいと思います。

◆採用を希望している運動種目

<胸>
①ベンチ・プレス
②ディップ
③ダンベル・ベンチ・プレス
④バックライイング・ラタラル・レイズ
<背>
①ベント・オーバー・ローイング
②ワン・アーム・ローイング
③エンド・オブ・バー・ローイング
<肩>
①プレス・ビハインド・ザ・ネック
②オールターニット・プレス
③スタンディング・フライ
<上腕二頭筋>
①ツー・ハンズ・カール
②ダンベル・カール
<上腕三頭筋>
①トライセプスス・プレス・スタンディング
②ワン・ハンド・トライセプス・イクステンション・ライイング
③ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
<前腕>
①リスト・カール
②リバース・リスト・カール
<腹>
①シット・アップ
②レッグ・レイズ
<腰>
①ワン・ハンド・デッド・リフト
<大腿・下腿>
①フル・スクワット
②ワン・レッグ・カーフ・レイズ
<顎>
①レスラー・ブリッジ

◆現在の体位
身長   167cm 上腕囲 34cm
体重(食前) 62kg 前腕囲 29cm
胸囲(拡張) 105cm 大腿囲 54cm
腹囲    75cm 下腿囲 36cm
顎囲    36cm
(千葉県 渡辺健二 会社員 24cm)
A あなたの要望に添って、一応23種目すべてを採用したトレーニング・スケジュール例を作成することにします。しかし、たとえ分割して行うにしても、初めからいきなり23種目もの運動をすべて行うのは正直いって、いまのあなたには荷が重すぎるのではないかと思います。
 実際問題として、トレーニング・スケジュールというものは、消化できればよいといったものではありません。たとえ消化できたとしても、そのために身体が過度に消耗してしまうようでは、筋の超回復にさしさわりが生じるので、せっかくのトレーニングの効果が得られないということになります。
 したがって、その辺のところをこちらで適当に判断して、いまのあなたに妥当と思われるトレーニング・スケジュール例も参考までに付け加えておくことにします。

◆スケジュール例1(23種目採用)

[註]◎印の種目はA・B双方のコースにおいて重複して採用する種目。
<Aコース>―月曜・木曜
◎シット・アップ
◎レッグ・レイズ
○ベンチ・プレス
○ダンベル・ベンチ・プレス
○バックライイング・ラタラル・レイズ
○ディップ
○プレス・ビハインド・ネック
○オールターニット・プレス
○スタンディング・フライ
○トライセップス・プレス・スタンディング
○ワン・ハンド・トライセプス・イクステンション・ライイング
○ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
<Bコース>―火曜・金曜
◎シット・アップ
◎レッグ・レイズ
○フル・スクワット
○ワン・レッグ・カーフ・レイズ
○ベント・オーバー・ローイング
○エンド・オブ・バー・ローイング
○ワン・アーム・ローイング
○ワン・ハンド・デット・リフト
○ツー・ハンズ・カール
○ダンベル・カール
○リスト・カール
○リバース・リスト・カール
○レスラー・ブリッジ
[註]このトレーニング・スケジュールでは、腹部の運動がA・B双方のコースに重複して組み込まれているが必ずしもそのようにしなければならないというわけではない。

◆スケジュール例2(16種目採用)

[註]◎印の種目はA・B双方のコースにおいて重複して採用する種目。
<Aコース>―月曜・木曜
◎シット・アップ
◎レッグ・レイズ
○ベンチ・プレス
○ダンベル・ベンチ・プレス
○ディップ
○プレス・ビハインド・ネック
○オールスターニット・プレス
○トライセプス・プレス・スタンディング
○ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス
<Bコース>火曜・金曜
◎シット・アップ
◎レッグ・レイズ
○フル・スクワット
○ワン・レッグ・カーフ・レイズ
○ベント・オーバー・ローイング
○エンド・オブ・バー・ローイング
○ツー・ハンズ・カール
○ダンベル・カール
○リスト・カール
[回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生
演技指導は平井トレーニング・センター会長・熊岡健夫先生]
月刊ボディビルディング1982年11月号

Recommend