なんでもQ&Aお答えします 1984年4月号
月刊ボディビルディング1984年4月号
掲載日:2021.02.01
ボディビル歴1年、効果のみられない原因とサム・アップ・カールの運動法
Q ボディビル歴1年です。自宅で1人で行なっています。現在、下記のスケジュールでトレーニングしているのですが、やっている割には筋肉がついてきません。どうしたらよいでしょうか。よろしくご指導ください。
≪トレーニング・スケジュール≫
(月曜から金曜日までの週5日実施)
≪トレーニング・スケジュール≫
(月曜から金曜日までの週5日実施)
[註]トレーニング後は疲労を感じ、週末が近づくにつれてひどくなる。≪現在の体位≫
最後にもう1つ質問があります。それは、サム・アップ・カールの運動法とその効果について知りたいのです。よろしくお願いします。
(山梨県 佐藤末次 店員 23歳)
(山梨県 佐藤末次 店員 23歳)
A トレーニング・スケジュールについての意見から申し上げます。まず、あなたのトレーニング・スケジュールには、問題とすべき点が2つあります。それは、トレニングの頻度が多すぎることと、運動の順序に問題があることです。
<1>トレーニング頻度について
トレーニングの効果というものはトレーニングを行なっているときに得られるのではなく、トレーニング後に休養することによって得られるのです。つまり、トレーニング後の休養中に、トレーニングで消耗したからだが元の状態に回復し、その後で超回復というかたちで得られるのです。
したがって、トレーニングの正当な効果を得るには、休養が不可欠であるといえます。それも、トレーニングによる消耗を解消し、超回復を得るのに十分な休養が必要だということです。
あなたは現在、月曜日から金曜日まで5日間ぶっ通しでトレーニングしていますが、これはボディビルのセオリーから考えるとやり過ぎということがいえます。ボディビルのセオリーからすればトレーニングの正常な効果を得るためには、通常、1~2日おきにトレーニングを行うのがよいとされています。
あなたの場合「週末が近づくにつれて疲れがひどくなる」ということから考えても、オーバー・トレーニングであることは間違いないので、この際、すみやかに1日おきのスケジュールに改められるのがよいと思います。しかし、今までの蓄積疲労があるようであれば、新たなスケジュールを行う前に、一応、レイ・オフする必要があると思います。
<2>運動の順序について
運動の順序というものは、どのような順序で行なったとしても間違いであるとはいえません。しかし、トレーニングの効果をより高めるためには、効率のよいと思われる順序があります。
したがって、どのみちトレーニングを行うのであれば、やはり効率のよいと思われる順序でトレーニングを行うのがよいといえます。
それでは、一応、その点を考慮して、あなたのトレーニング・スケジュールの運動順序を組み直してみることにしましょう。
≪トレーニング・スケジュール例≫
①シット・アップ
②ベンチ・プレス
③インクライン・プレス
④スタンディング・プレス
⑤スタンディング・ロー
⑥ベント・オーバー・ローイング
⑦ツー・ハンズ・カール
⑧コンセントレーション・カール
⑨スクワット
⑩スティッフ・レッグド・デッド・リフト
では次に、サム・アップ・カールに関する質問にお答えします。
サム・アップ・カールとは言葉の示す通り、サム(親指)を上にして行うダンベル・カールのことです。普通のダンベル・カールの場合は、ダンベルを水平か、または水平に近い状態に保持して運動を行いますが、サム・アップ・カールの場合は、ダンベルをタテにした状態でカール運動を行うようにします。
このように、ダンベルをタテにした状態では、親指が必然的に上に位置するようになるので、それでサム・アップ・カールというわけです。
いうまでもなく、この運動は、上腕二頭筋を強化するための運動ですが、普通のダンベル・カールとは効果の面で多少異なってきます。
上腕二頭筋は2つの頭、すなわち長頭と短頭からなり、サム・アップ・カールは、その2つの頭のうち、どちらかといえば長頭の方により強く効く運動であるといえます。
なお、両手にそれぞれダンベルを持って行なっても、あるいは、片手ずつ行なっても、どちらでもかまいませんが、使用筋を意識しやすいという点では、片手ずつ行うほうがよいと思います。
運動のやり方については、[写真・1]を参考にしてください。
<1>トレーニング頻度について
トレーニングの効果というものはトレーニングを行なっているときに得られるのではなく、トレーニング後に休養することによって得られるのです。つまり、トレーニング後の休養中に、トレーニングで消耗したからだが元の状態に回復し、その後で超回復というかたちで得られるのです。
したがって、トレーニングの正当な効果を得るには、休養が不可欠であるといえます。それも、トレーニングによる消耗を解消し、超回復を得るのに十分な休養が必要だということです。
あなたは現在、月曜日から金曜日まで5日間ぶっ通しでトレーニングしていますが、これはボディビルのセオリーから考えるとやり過ぎということがいえます。ボディビルのセオリーからすればトレーニングの正常な効果を得るためには、通常、1~2日おきにトレーニングを行うのがよいとされています。
あなたの場合「週末が近づくにつれて疲れがひどくなる」ということから考えても、オーバー・トレーニングであることは間違いないので、この際、すみやかに1日おきのスケジュールに改められるのがよいと思います。しかし、今までの蓄積疲労があるようであれば、新たなスケジュールを行う前に、一応、レイ・オフする必要があると思います。
<2>運動の順序について
運動の順序というものは、どのような順序で行なったとしても間違いであるとはいえません。しかし、トレーニングの効果をより高めるためには、効率のよいと思われる順序があります。
したがって、どのみちトレーニングを行うのであれば、やはり効率のよいと思われる順序でトレーニングを行うのがよいといえます。
それでは、一応、その点を考慮して、あなたのトレーニング・スケジュールの運動順序を組み直してみることにしましょう。
≪トレーニング・スケジュール例≫
①シット・アップ
②ベンチ・プレス
③インクライン・プレス
④スタンディング・プレス
⑤スタンディング・ロー
⑥ベント・オーバー・ローイング
⑦ツー・ハンズ・カール
⑧コンセントレーション・カール
⑨スクワット
⑩スティッフ・レッグド・デッド・リフト
では次に、サム・アップ・カールに関する質問にお答えします。
サム・アップ・カールとは言葉の示す通り、サム(親指)を上にして行うダンベル・カールのことです。普通のダンベル・カールの場合は、ダンベルを水平か、または水平に近い状態に保持して運動を行いますが、サム・アップ・カールの場合は、ダンベルをタテにした状態でカール運動を行うようにします。
このように、ダンベルをタテにした状態では、親指が必然的に上に位置するようになるので、それでサム・アップ・カールというわけです。
いうまでもなく、この運動は、上腕二頭筋を強化するための運動ですが、普通のダンベル・カールとは効果の面で多少異なってきます。
上腕二頭筋は2つの頭、すなわち長頭と短頭からなり、サム・アップ・カールは、その2つの頭のうち、どちらかといえば長頭の方により強く効く運動であるといえます。
なお、両手にそれぞれダンベルを持って行なっても、あるいは、片手ずつ行なっても、どちらでもかまいませんが、使用筋を意識しやすいという点では、片手ずつ行うほうがよいと思います。
運動のやり方については、[写真・1]を参考にしてください。
[写真・1 サム・アップ・カール]
胸と肩の運動を1種目ずつと、ベンチ・プレスのグリップ間隔について
Q ボディビル歴は9ヵ月です。私の現在のトレーニング・スケジュールと体位は下記のとおりですが、次の2つの問題についてお教えいただきたいと思います。
<1>胸と肩の運動を1種目ずつ加えたいのですが、どのような運動を選んだらよいでしょうか。
<2>ベンチ・プレスのグリップ間隔はひとによってマチマチのようですが、正しい間隔というものがあるのでしょうか。あるとすれば、どのぐらいのグリップ間隔で行なったらよいでしょうか。なお、ベンチ・プレスによる効果は、グリップ間隔の広い狭いによって違ってくると聞いていますが、その点についてもお答えいただきたいと思います。
≪トレーニング・スケジュール≫
(月曜・木曜・日曜の週3日実施)
<1>胸と肩の運動を1種目ずつ加えたいのですが、どのような運動を選んだらよいでしょうか。
<2>ベンチ・プレスのグリップ間隔はひとによってマチマチのようですが、正しい間隔というものがあるのでしょうか。あるとすれば、どのぐらいのグリップ間隔で行なったらよいでしょうか。なお、ベンチ・プレスによる効果は、グリップ間隔の広い狭いによって違ってくると聞いていますが、その点についてもお答えいただきたいと思います。
≪トレーニング・スケジュール≫
(月曜・木曜・日曜の週3日実施)
[註]トレーニング後の疲労は、快いもの。
≪現在の体位≫
≪現在の体位≫
(千葉県 沢田勝男 会社員 24歳)
[写真・2 ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング]
[写真・3 スタンディング・ロー]
A まず、<1>の質問からお答えします。胸の運動としてベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング、肩の運動としてスタンディング・ロー(アップ・ライト・ローイング)を加えるのがよいと思います。
◎ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング[写真・2]参照
<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち、ベンチに仰臥し、腕を伸ばして、両方のダンベルを胸の上方で平行にかまえる。
<動作>両腕をいくぶん曲げながら、ダンベルを左右横におろし、おろしきったなら、両肘を下方へできるだけ下げ、胸を張るようにする。
ダンベルをあげるときは、肘の角度を固定したまま(いくぶん曲げたまま)あげ、2/3くらいあげたところから腕を伸ばすようにして、左右のダンベルを合わせる。
<注意点>ダンベルをあげるときに肘の角度を狭めると、胸に与える効果が半減する。また、ダンベルは床面に対して常に水平を保つようにするのがよい。なお、ダンベルをおろしていくときに、頭をベンチからもちあげるようにすると、より十分な刺激を大胸筋に与えることができる。
◎スタンディング・ロー(アップ・ライト・ローイング)[写真・3]参照
<かまえ>バーベルをオーバー・グリップで持ち、立った姿勢で大腿部の前にぶらさげる。左右のグリップ間隔は1~2こぶしぐらいがよい。
<動作>腕を屈し、両肘を左右横上へ引きあげるようにして、バーベルをアゴの下まであげる。
<注意点>上背部を湾曲させて行うと運動の比重が、三角筋よりも僧帽筋の方に強くかかるようになるので注意する。三角筋に効かすためには、胸を張って運動を行うようにするとよい。
では次に、ベンチ・プレスのグリップ間隔に関する質問にお答えします。
ベンチ・プレスのグリップ間隔は、あなたがいわれるとおり、確かに人によってマチマチです。しかしこれは、ベンチ・プレスのグリップ間隔について、これといった基準がないかぎりはやむをえないことでしょう。
その上、ベンチ・プレスの効果というものは、グリップ間隔が広ければ広いなりに、また、狭ければ狭いなりに得られるものなので、どのくらいの間隔が正しいかということも、いちがいには決められない面があります。
したがって、ベンチ・プレスのグリップ間隔の正誤は、どのような効果を期待してベンチ・プレスを行うのか、そのことを考慮して判断すべきであるといえます。
グリップ間隔の広狭によって、効果の面でどのような変化がもたらされるのかについては後ほど述べることにして、たとえば、大胸筋の広範囲な発達を希望する人が、肩幅よりも狭いグリップ間隔でベンチ・プレスを行うとすれば、それは運動としての適切さを欠くことになるので、どちらかといえば誤りであるといえると思います。
大胸筋の広範囲な発達を意図してベンチ・プレスを行うのであれば、当然のことながら、その目的とする効果を得るのに適したグリップ間隔でベンチ・プレスを行うのが正しいということになります。
つまり、ベンチ・プレスにおけるグリップ間隔は、その目的によって決められるべきものであり、また、その正誤は、運動の目的に即したものであるか否かによって判断されなければならないといえます。
では、上述したことがらをも考慮して、あなたの場合、どのくらいのグリップ間隔でベンチ・プレスを行なったらよいかについて考えてみましょう。
つきましては、現在のあなたの体格を、ベンチ・プレス等の筋力から判断して、いまだ初級者の段階にあるものと考えて意見を述べさせていただくことにします。
あなたの体格を一応、初級者の段階にあるものと決めたのは、初級者と中級者、あるいは上級者とでは、ベンチ・プレスにおける運動目的に多少の相違があると考えるからです。
つまり、基礎的なからだをつくるために大胸筋の大まかな発達を期待してベンチ・プレスを行う初級者と、より以上の発達と細部の発達を目的として行う中・上級者とでは、おのずとベンチ・プレスのやり方自体にも差異が生じてくるであろうと考えるからです。
中・上級者の場合には、ベンチ・プレスで大胸筋を鍛えるのにも、外側の部分とか、あるいは内側の部分とかいったように、大胸部を細分して鍛える場合があるので、グリップ間隔も、ときには広く、また、ときには狭くして行なったりします。
しかし、初級者の場合、中・上級者のようにグリップ間隔を変化させて、なんとおりものベンチ・プレスを行うのは、体力的にもかなり無理がともなうと考えられるので、慎んだほうがよいと思われます。ある程度の重量(体重と同じくらいの重量)が正確なフォームで10回ぐらい行えるようになるまでは、グリップ間隔をいろいろ変えたりしないで、一定の間隔に徹してベンチ・プレスを行うようにするのがよいと考えられます。
では、初級者の段階ではベンチ・プレスのグリップ間隔をどのくらいの幅にすればよいか、そのことについて考えてみましょう。だが、それには、まず初級者としてのベンチ・プレスの運動目的をはっきりさせる必要があると思います。
中・上級者の場合であれば、ベンチ・プレスを腕の運動として行うこともあります。しかし、初級者の場合は、主として胸部の広範囲な発達を促すためにベンチ・プレスを行うわけですから、それがベンチ・プレスを行う理由であり、目的であるということになります。
したがって、初級者がベンチ・プレスを行う場合の基本的なグリップ間隔は、大胸筋を的確に刺激することができる間隔がよいということです。
基本的なグリップ間隔の一般的な基準としては、両腕を真横へ水平に伸ばしたときの両肘の間隔くらいにシャフトを握るのがよいといえます。つまりベンチ・プレスの中間姿勢において、上腕と前腕の角度が直角になるようなグリップ間隔がよいということです。このくらいのグリップ間隔がベンチ・プレスの運動においては、大胸筋の可動範囲をもっとも大きくするので、それだけ広範囲に大胸筋を刺激することが可能になるといえます。
また、このグリップ間隔の場合は、バーベルを胸部におろしたときに、両肘が十分に下がるので、肋軟骨に対する刺激も強められ、たんに大胸筋の発達を促すだけでなく、胸郭の拡張を促すのにも適しています。
さて、それでは、グリップ間隔の広狭による効果の変化について述べることにします。
ベンチ・プレスは、グリップ間隔を先に述べたスタンダード・グリップよりも狭くしていくと、大胸筋の内側に効くようになります。また、上腕三頭筋(主に外側頭)にも強く効くようになります。
その反対に、グリップ間隔をスタンダード・グリップよりも広くしていくと、大胸筋の可動範囲が小さくなり、運動の効果が大胸筋の一部分(やや外側よりの部分)にかたよるようになります。もちろんこのことは、大胸筋の作用の性質から考えて、傾向としていえることなので、他の部分にまったく効かなくなるということではありません。その点、誤解ないように。
大胸筋は、鎖骨、胸骨、肋骨から上腕骨上部に付着する筋で、ベンチ・プ レスのような運動では、肘を下方へ深くおろして筋を長い状態に伸長させるほどに、外側、つまり腕に寄った部分に強く効くようになります。
その反対に、バーベルを挙上し、筋を短縮させていくと、こんどは内側に寄った部分に強く効くようになってきます。端的にいえば、大胸筋の外側の部分の発達を促すにはグリップ間隔を広目に、内側の部分の発達を促すには狭く握るのがよいということがいえます。
しかし、ここでひとつ注意しなければならないことは、あまりグリップ間隔を広くしすぎると、バーベルを胸におろしたときに、両肘が深く下へおりなくなるので、そのぶん大胸部が十分に伸長しなくなり、かえって外側の部分に対する刺激が弱められてしまうことになります。
以上、あなたの質問にお答えしてきましたが、最後にもう一言つけ加えておきたいことがあります。
誰でも始めのうちは基本に忠実に運動を行うものですが、運動に慣れてくると、欲が出てくるせいか、つい基本からはずれるようになります。基本的な運動とは、いいかえれば、からだの基礎をつくるための運動ですから、初級者の段階では、あくまでもその点をよく自覚してトレーニングに励むことが大切であるといえます。
◎ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング[写真・2]参照
<かまえ>両手にそれぞれダンベルを持ち、ベンチに仰臥し、腕を伸ばして、両方のダンベルを胸の上方で平行にかまえる。
<動作>両腕をいくぶん曲げながら、ダンベルを左右横におろし、おろしきったなら、両肘を下方へできるだけ下げ、胸を張るようにする。
ダンベルをあげるときは、肘の角度を固定したまま(いくぶん曲げたまま)あげ、2/3くらいあげたところから腕を伸ばすようにして、左右のダンベルを合わせる。
<注意点>ダンベルをあげるときに肘の角度を狭めると、胸に与える効果が半減する。また、ダンベルは床面に対して常に水平を保つようにするのがよい。なお、ダンベルをおろしていくときに、頭をベンチからもちあげるようにすると、より十分な刺激を大胸筋に与えることができる。
◎スタンディング・ロー(アップ・ライト・ローイング)[写真・3]参照
<かまえ>バーベルをオーバー・グリップで持ち、立った姿勢で大腿部の前にぶらさげる。左右のグリップ間隔は1~2こぶしぐらいがよい。
<動作>腕を屈し、両肘を左右横上へ引きあげるようにして、バーベルをアゴの下まであげる。
<注意点>上背部を湾曲させて行うと運動の比重が、三角筋よりも僧帽筋の方に強くかかるようになるので注意する。三角筋に効かすためには、胸を張って運動を行うようにするとよい。
では次に、ベンチ・プレスのグリップ間隔に関する質問にお答えします。
ベンチ・プレスのグリップ間隔は、あなたがいわれるとおり、確かに人によってマチマチです。しかしこれは、ベンチ・プレスのグリップ間隔について、これといった基準がないかぎりはやむをえないことでしょう。
その上、ベンチ・プレスの効果というものは、グリップ間隔が広ければ広いなりに、また、狭ければ狭いなりに得られるものなので、どのくらいの間隔が正しいかということも、いちがいには決められない面があります。
したがって、ベンチ・プレスのグリップ間隔の正誤は、どのような効果を期待してベンチ・プレスを行うのか、そのことを考慮して判断すべきであるといえます。
グリップ間隔の広狭によって、効果の面でどのような変化がもたらされるのかについては後ほど述べることにして、たとえば、大胸筋の広範囲な発達を希望する人が、肩幅よりも狭いグリップ間隔でベンチ・プレスを行うとすれば、それは運動としての適切さを欠くことになるので、どちらかといえば誤りであるといえると思います。
大胸筋の広範囲な発達を意図してベンチ・プレスを行うのであれば、当然のことながら、その目的とする効果を得るのに適したグリップ間隔でベンチ・プレスを行うのが正しいということになります。
つまり、ベンチ・プレスにおけるグリップ間隔は、その目的によって決められるべきものであり、また、その正誤は、運動の目的に即したものであるか否かによって判断されなければならないといえます。
では、上述したことがらをも考慮して、あなたの場合、どのくらいのグリップ間隔でベンチ・プレスを行なったらよいかについて考えてみましょう。
つきましては、現在のあなたの体格を、ベンチ・プレス等の筋力から判断して、いまだ初級者の段階にあるものと考えて意見を述べさせていただくことにします。
あなたの体格を一応、初級者の段階にあるものと決めたのは、初級者と中級者、あるいは上級者とでは、ベンチ・プレスにおける運動目的に多少の相違があると考えるからです。
つまり、基礎的なからだをつくるために大胸筋の大まかな発達を期待してベンチ・プレスを行う初級者と、より以上の発達と細部の発達を目的として行う中・上級者とでは、おのずとベンチ・プレスのやり方自体にも差異が生じてくるであろうと考えるからです。
中・上級者の場合には、ベンチ・プレスで大胸筋を鍛えるのにも、外側の部分とか、あるいは内側の部分とかいったように、大胸部を細分して鍛える場合があるので、グリップ間隔も、ときには広く、また、ときには狭くして行なったりします。
しかし、初級者の場合、中・上級者のようにグリップ間隔を変化させて、なんとおりものベンチ・プレスを行うのは、体力的にもかなり無理がともなうと考えられるので、慎んだほうがよいと思われます。ある程度の重量(体重と同じくらいの重量)が正確なフォームで10回ぐらい行えるようになるまでは、グリップ間隔をいろいろ変えたりしないで、一定の間隔に徹してベンチ・プレスを行うようにするのがよいと考えられます。
では、初級者の段階ではベンチ・プレスのグリップ間隔をどのくらいの幅にすればよいか、そのことについて考えてみましょう。だが、それには、まず初級者としてのベンチ・プレスの運動目的をはっきりさせる必要があると思います。
中・上級者の場合であれば、ベンチ・プレスを腕の運動として行うこともあります。しかし、初級者の場合は、主として胸部の広範囲な発達を促すためにベンチ・プレスを行うわけですから、それがベンチ・プレスを行う理由であり、目的であるということになります。
したがって、初級者がベンチ・プレスを行う場合の基本的なグリップ間隔は、大胸筋を的確に刺激することができる間隔がよいということです。
基本的なグリップ間隔の一般的な基準としては、両腕を真横へ水平に伸ばしたときの両肘の間隔くらいにシャフトを握るのがよいといえます。つまりベンチ・プレスの中間姿勢において、上腕と前腕の角度が直角になるようなグリップ間隔がよいということです。このくらいのグリップ間隔がベンチ・プレスの運動においては、大胸筋の可動範囲をもっとも大きくするので、それだけ広範囲に大胸筋を刺激することが可能になるといえます。
また、このグリップ間隔の場合は、バーベルを胸部におろしたときに、両肘が十分に下がるので、肋軟骨に対する刺激も強められ、たんに大胸筋の発達を促すだけでなく、胸郭の拡張を促すのにも適しています。
さて、それでは、グリップ間隔の広狭による効果の変化について述べることにします。
ベンチ・プレスは、グリップ間隔を先に述べたスタンダード・グリップよりも狭くしていくと、大胸筋の内側に効くようになります。また、上腕三頭筋(主に外側頭)にも強く効くようになります。
その反対に、グリップ間隔をスタンダード・グリップよりも広くしていくと、大胸筋の可動範囲が小さくなり、運動の効果が大胸筋の一部分(やや外側よりの部分)にかたよるようになります。もちろんこのことは、大胸筋の作用の性質から考えて、傾向としていえることなので、他の部分にまったく効かなくなるということではありません。その点、誤解ないように。
大胸筋は、鎖骨、胸骨、肋骨から上腕骨上部に付着する筋で、ベンチ・プ レスのような運動では、肘を下方へ深くおろして筋を長い状態に伸長させるほどに、外側、つまり腕に寄った部分に強く効くようになります。
その反対に、バーベルを挙上し、筋を短縮させていくと、こんどは内側に寄った部分に強く効くようになってきます。端的にいえば、大胸筋の外側の部分の発達を促すにはグリップ間隔を広目に、内側の部分の発達を促すには狭く握るのがよいということがいえます。
しかし、ここでひとつ注意しなければならないことは、あまりグリップ間隔を広くしすぎると、バーベルを胸におろしたときに、両肘が深く下へおりなくなるので、そのぶん大胸部が十分に伸長しなくなり、かえって外側の部分に対する刺激が弱められてしまうことになります。
以上、あなたの質問にお答えしてきましたが、最後にもう一言つけ加えておきたいことがあります。
誰でも始めのうちは基本に忠実に運動を行うものですが、運動に慣れてくると、欲が出てくるせいか、つい基本からはずれるようになります。基本的な運動とは、いいかえれば、からだの基礎をつくるための運動ですから、初級者の段階では、あくまでもその点をよく自覚してトレーニングに励むことが大切であるといえます。
運動種目を増やして分割法を採用したいが、スケジュールの作り方と呼吸法による効果のちがいについて
Q ボディビル歴は2年です。以前は6人ほどの仲間とトレーニング・センターでやっていましたが、今は自宅で1人でやっています。自分でスケジュールを作ると、どうしても種目が多くなるので、なるべく種目を少なくしてトレーニングしていますが、この際、種目を増やして分割法でトレーニングしてみようと思っています。
そこで、おそれいりますが、トレーニング・スケジュールを作っていただきたいと思います。ちなみに、僕が所有している器具は次の通りです。
①バーベル
②フラット・ベンチ
③Wバー
④プッシュ・アップ専用バー
⑤ディッピング・バー
次に、僕はいろいろな運動を行うときに、呼吸法を実行しないことがあります。正しい呼吸法を実行するのと、適当に呼吸をするのとでは、効果の面で違いが生じてくるものでしょうか。
≪体位の変化≫
そこで、おそれいりますが、トレーニング・スケジュールを作っていただきたいと思います。ちなみに、僕が所有している器具は次の通りです。
①バーベル
②フラット・ベンチ
③Wバー
④プッシュ・アップ専用バー
⑤ディッピング・バー
次に、僕はいろいろな運動を行うときに、呼吸法を実行しないことがあります。正しい呼吸法を実行するのと、適当に呼吸をするのとでは、効果の面で違いが生じてくるものでしょうか。
≪体位の変化≫
≪現在のスケジュール≫
≪現在のスケジュール≫
[註]火曜と木曜日は休み。(福岡市 石野 宏 学生15歳)
A 体位表に身長が記されていないのはどうしたことでしょうか。身長が判らなくては、あなたがどのような体格をしているのか判断しようがありません。記入もれとは思いますが、次の機会には注意してください。
では、トレーニング・スケジュールに関する質問からお答えすることにします。
現在、あなたはスプリット・ルーティーンにおける3分割法を採用しておられますが、2分割法についても考えてみたいと思います。なお、トレーニング・スケジュール例においては、各種目の反復回数とセット数を省略させていただきますので、その点についてはご自分で任意に、無理のない範囲で定めるようにしてください。
≪トレーニング・スケジュール例1≫
(2分割法)
◆Aコース---月曜・木曜
①準備体操
②レッグ・レイズ
③3ベンチ・プレス
④プッシュ・アップ(またはバー・デイップ)
⑤前後プレス(コンビネーション・プレス)
⑥スタンディング・ロー
⑦トライセプス・プレス
⑧レスラー・ブリッジ(またはフロント・ブリッジ)
⑨整理運動(ストレッチング)
◆Bコース---火曜・金曜
①準備体操
②シット・アップ
③スクワット
④カーフ・レイズ
⑤ベント・オーバー・ローイング
⑥ツー・ハンズ・カール
⑦Wバー・カール
⑧リスト・カール
⑨整理運動
≪トレーニング・スケジュール例2≫
(3分割法)
◆Aコース---月曜・木曜
①準備体操
②ベンチ・プレス
③プッシュ・アップ
④バー・ディップ
⑤前後プレス
⑥スタンディング・ロー
⑦トライセプス・プレス
⑧整理運動
◆Bコース---火曜・金曜
①準備体操
②レッグ・レイズ
③ベント・オーバー・ローイング
④ワン・アーム・ローイング
⑤ツー・ハンズ・カール
⑥Wバー・カール
⑦リスト・カール
⑧整理運動
◆Cコース---水曜(または水曜・土曜)
①準備体操
②シット・アップ
③スクワット
④カーフ・レイズ
⑤レスラー・ブリッジ
⑥フロント・ブリッジ
⑦整理運動
では次に、呼吸法に関する質問にお答えすることにします。
呼吸法を実行しないことがあるとのことですが、そのことがどのような場合を指しているのかよく理解できません。したがって、こちらでいろいろ想定してお答えすることにします。
まず、質問に対して結論を申しあげれば、正しい呼吸法を守って運動を行うのと、無視して行うのとでは、効果の面で差が生じる場合もあり得るということがいえるかと思います。
たとえば、息を吐くべきときに、息を吐かないで怒責(呼吸を止めてリキむ)するといったような場合であれば、効果の面で別にこれといった差異は生じてこないものと考えられます。しかし、呼吸の仕方が逆になる場合には、運動によって多少、問題が生じてくることも考えられます。
とくに、ベンチ・プレスやラタラル・レイズ・ライイングのような胸部の運動においては、息を吸うべきときに息を吐き、吐くべきときに吸うといった仕方で呼吸をすると、それなりに効果が得られるにしても、多分に損失的な要素がともなってくるものと判断されます。ことに、胸郭の発達(拡張)を促す面でのロスが大きくなると考えられます。
また、他の部位の運動にしても、呼吸の仕方を逆にするということは、運動のかたちとして、筋力の発揮がいくぶん妨げられることになるので、運動としての効率がそのぶん低くなるということもいえるかと思います。
なお、運動によっては、呼吸の仕方を逆にすると、スジを痛める場合もあるので、とくにその点に注意する必要があると思います。
では、トレーニング・スケジュールに関する質問からお答えすることにします。
現在、あなたはスプリット・ルーティーンにおける3分割法を採用しておられますが、2分割法についても考えてみたいと思います。なお、トレーニング・スケジュール例においては、各種目の反復回数とセット数を省略させていただきますので、その点についてはご自分で任意に、無理のない範囲で定めるようにしてください。
≪トレーニング・スケジュール例1≫
(2分割法)
◆Aコース---月曜・木曜
①準備体操
②レッグ・レイズ
③3ベンチ・プレス
④プッシュ・アップ(またはバー・デイップ)
⑤前後プレス(コンビネーション・プレス)
⑥スタンディング・ロー
⑦トライセプス・プレス
⑧レスラー・ブリッジ(またはフロント・ブリッジ)
⑨整理運動(ストレッチング)
◆Bコース---火曜・金曜
①準備体操
②シット・アップ
③スクワット
④カーフ・レイズ
⑤ベント・オーバー・ローイング
⑥ツー・ハンズ・カール
⑦Wバー・カール
⑧リスト・カール
⑨整理運動
≪トレーニング・スケジュール例2≫
(3分割法)
◆Aコース---月曜・木曜
①準備体操
②ベンチ・プレス
③プッシュ・アップ
④バー・ディップ
⑤前後プレス
⑥スタンディング・ロー
⑦トライセプス・プレス
⑧整理運動
◆Bコース---火曜・金曜
①準備体操
②レッグ・レイズ
③ベント・オーバー・ローイング
④ワン・アーム・ローイング
⑤ツー・ハンズ・カール
⑥Wバー・カール
⑦リスト・カール
⑧整理運動
◆Cコース---水曜(または水曜・土曜)
①準備体操
②シット・アップ
③スクワット
④カーフ・レイズ
⑤レスラー・ブリッジ
⑥フロント・ブリッジ
⑦整理運動
では次に、呼吸法に関する質問にお答えすることにします。
呼吸法を実行しないことがあるとのことですが、そのことがどのような場合を指しているのかよく理解できません。したがって、こちらでいろいろ想定してお答えすることにします。
まず、質問に対して結論を申しあげれば、正しい呼吸法を守って運動を行うのと、無視して行うのとでは、効果の面で差が生じる場合もあり得るということがいえるかと思います。
たとえば、息を吐くべきときに、息を吐かないで怒責(呼吸を止めてリキむ)するといったような場合であれば、効果の面で別にこれといった差異は生じてこないものと考えられます。しかし、呼吸の仕方が逆になる場合には、運動によって多少、問題が生じてくることも考えられます。
とくに、ベンチ・プレスやラタラル・レイズ・ライイングのような胸部の運動においては、息を吸うべきときに息を吐き、吐くべきときに吸うといった仕方で呼吸をすると、それなりに効果が得られるにしても、多分に損失的な要素がともなってくるものと判断されます。ことに、胸郭の発達(拡張)を促す面でのロスが大きくなると考えられます。
また、他の部位の運動にしても、呼吸の仕方を逆にするということは、運動のかたちとして、筋力の発揮がいくぶん妨げられることになるので、運動としての効率がそのぶん低くなるということもいえるかと思います。
なお、運動によっては、呼吸の仕方を逆にすると、スジを痛める場合もあるので、とくにその点に注意する必要があると思います。
回答は1959年度ミスター日本、NE協会指導部長・竹内 威先生
演技指導は平井ボディビル・センター会長・熊岡健夫先生
演技指導は平井ボディビル・センター会長・熊岡健夫先生
月刊ボディビルディング1984年4月号
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