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やさしい科学百科 <9>

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月刊ボディビルディング1984年4月号
掲載日:2021.02.03

プロティンの話

畠 山 晴 行

<11> 生物学からみたタンパク質の質

 私が「植物性タンパク質よりも動物性タンパク質の方が勝っている」というと「動物には動物性タンパク質がよいというのは、あまりにも短絡的ではないか」という意見がはねかえってきたことがあります。

 これは自然食を愛する人からの意見ですが、そのような人の多くは、現在までのタンパク質の評価(プロティンスコアなど)は信用に値するものではないと思っているようです。

 そこで、栄養学とは別の観点から、タンパク質の質について考えてみたいと思います。

 すでにみなさんは、20種ほどのアミノ酸が数珠つなぎになったものがタンパク質であることを知っています。必要なアミノ酸が必要なだけそろっていれば、タンパク質の合成は効率よくできるはずです。

 生命は何万もの化学反応によって支えられており、その化学反応を円滑に進めるためには多くの酵素が必要ですが、その代表的なものであるチトクロームCという酵素を例にあげて、タンパク質の質について話してみたいと思います。

 チトクロームCは、すべての酵素がそうであるように、実体はタンパク質です。そしてこれは、鉄を含む複合タンパクなのです。この酵素は、栄養素からエネルギーを引っ張り出すのに重要な働きをしており、生物全般に広く存在しております。

 人間とチンパンジーのチトクロームCは全く同じ形です。ところが、104個のアミノ酸のつながりをもつこの酵素は、犬と比べると11個のアミノ酸が異なっています。馬では12個、小麦では35個ものアミノ酸が入れかわっているのです。

 同じ働きをする酵素でもこんなですから、からだ全体ではかなりの差になることは明らかです。よく知られるホルモン、インスリンは、人間と豚ではアミノ酸1個が異なっています。しかし代用にはなるということで、糖尿病の患者に使われることがあります。

 前号で、カエルはカエル用のタンパク質、人間は人間用のタンパク質と説明したのは、このような理由からなのです。

 さて、そのようなことから考えれば普通の食肉は筋肉部分がほとんどですから、からだ全体のアミノ酸の要求バ ランスを満足させるとはいえなくなってきます。できることならば、頭から尾まで食べてしまうのがよいということになるでしょう。

 牛肉のステーキ(筋肉の部分だけ)のプロティンスコアは79ですが、さんま、いわしなどはいずれも90以上の値となっています。ただ、魚の種類によっては、内臓に重金属を含んでいるということもありますので、まるごと食べるのが良いということに問題がないわけではありません。

<12> タンパク質の質の向上

 今までは、ある食品のタンパク質の質について考えてきましたが、ある食品に欠けているアミノ酸の種類を別の食品が補い、全体としてバランスがとれていればよいということにお気付きでしょう。

 注目の大豆を例にとれば、これは含硫アミノ酸が少ないということは度々記したとおりです。しかし、米や小麦に不足しがちなリジンをたくさん含んでいます。そこで双方を一緒に摂れば食事全体の質が向上するのです。

 ただしそこには、お互いの量的なバランスがあって、という条件がつくことは言うまでもありません。

 そして、茶わん1杯のごはんには3gほどしかタンパク質が含まれておりませんので、ごはんとみそ汁だけでタンパク質が満足されるといったものではありません。

 以前、学校給食用のパンに不足しているアミノ酸、リジンを添加するかどうかで問題になったことがありますが、タンパク質が質的に向上するという他に、パンの焼きあがりがよいとかいった意見も出されたりで、本当に栄養を考えての策なのか、または他に何かの理由があったものなのか考えさせられたものです。
ごはん(精白米)プロティンスコア78

ごはん(精白米)プロティンスコア78

<13> 大豆タンパクを考える

 悲観的な見方ではなく、大豆タンパクを正当に評価するために、次のような考え方をしてみたいと思います。

 わたしたちは普段、ごはんやパン、麺類を主食としていますが、これを豆や芋などにする場合も考えて、主食で摂れる状態でのタンパク質に関する評価をしてみたいと思います。(なお、ここでは、前項に記したような、他の食品との組合せによる質の向上は考えないものとします)
<表2>主食としてのタンパク質評価

<表2>主食としてのタンパク質評価

<表2>からもわかるように、豆類は多くのタンパク質を含んでおり、特に大豆は質・量ともに満足されます。ただし、味の面や、糖質など、他の栄養素については考える必要があります。

<14> 高タンパクのメリット、デメリット

 「1973年のFAO/WHOでは、タンパク質の安全摂取量が43gである」、「世界の長寿国の老人のタンパク質摂取量はそんなに多くない」ということから、タンパク質の摂り過ぎは害がある、という意見もあります。

 そのような人達の話を聞きますと、タンパク質に含まれるチッ素の害を強調します。タンパク質がアミノ酸に分解され、それがさらにこわされるとチッ素を含んだアンモニアができます。

 魚は、このアンモニアを水中に流し、鳥やトカゲなどは尿酸の形(糞の中の白い部分)で排泄し、人間は尿素という安全物質にして外に出します。「タンパク質は、体重1kgあたり1gは多い。しかも植物タンパクで十分」という意見をある専門家から聞きましたが、「質の悪いタンパク質の場合は無条件に分解されるアミノ酸が多いはずですが、その点は?」という質問に対して答えは得られませんでした。

 無条件に分解されるアミノ酸が多ければ、それに含まれるチッ素を処理しなければならないはずです。

 ただたんに「タンパク質はもっと少なく、植物タンパクで充分」という意見は、説得力に欠けるような気がします。

 特に気をつけなければならないとすれば、繊維の少ない食事では、便通が悪くなり、腸内細菌によってアミノ酸が分解されて生ずるアンモニアやアミン類の害を受けやすいということでしょう。便通が大切であれば、腹筋が弱化しないということも必要条件です。

 正常な腹筋を維持するためには、十分なタンパク質が必要ということになりましょう。

 「日本人は1日に70g程度のタンパク質は誰でも摂っている」という意見は主流ですが、果してすべての人がそうだとは言えません。質の面まで考えた場合は、どの程度になるのでしょう。

 プロティンパウダーを摂取するようになって効果を得たという話をいろいろ聞きます。評価が大きすぎる面がないとは言えませんが、下にその例を記してみます。

 「肌にツヤが出た」「骨折の治りがとても早かった」「精力が強くなった」「視力が回復した」「湿疹が治った」「かぜをひかなくなった」「貧血が治った」「疲れが残らなくなった」等々。

 ※ここでいう高タンパクとは、200gも300gも摂ることではなく、良質タンパクを適量に摂取するという意味です。
月刊ボディビルディング1984年4月号

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