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JPA技術入門講座 <12>
パワーリフティング・セミナー

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月刊ボディビルディング1984年5月号
掲載日:2021.02.04

(デッドリフト・パートII)
オリエンタル・スタイル(相撲スタイル)その1

著者=JPA技術委員会委員長・中尾達文  監修=JPA国際部長・吉田 進
 デッドリフトにおけるバーベルを引き上げるときのフォームは、写真A~Dのように、おおむね4~5種類あると思う。そして、それらを大別すればA、Bのような欧米の選手がよく行なうヨーロピアン・スタイル(アメリカン・スタイルとも言う)と、C、Dのような、われわれ日本人選手や東洋系の選手がよく使うオリエンタル・スタイル(相撲スタイル)とに二分されると思う。

 それぞれのフォームには、独特の個性や特徴があるが、今月号では後者の相撲スタイルについて解説していくことにする。
ヨーロピアン・スタイルのかまえのフォーム左上・A 左下・B相撲スタイルのかまえのフォーム右上・C 右下・D

ヨーロピアン・スタイルのかまえのフォーム左上・A 左下・B相撲スタイルのかまえのフォーム右上・C 右下・D

相撲スタイルのデッドリフト。正面と側面から見たフォーム

相撲スタイルのデッドリフト。正面と側面から見たフォーム

 このスタイルのフォームの基本は写真でもお分りのように、両足のスタンスをスクワットのスタンスと同じかそれよりやや広めにとり、その両腿の間に両手のグリップを決める引き方である。

 この相撲スタイルの引き方は、後で述べるヨーロピアン・スタイルの引き方に比べて股関節と両ひざ、及び大腿二頭筋等を含む内転筋群の力と柔軟性に負うところが多い。これに対してヨーロピアン・スタイルでは、固有背筋や広背筋等にかかる比重がより多くなる。

 そこで、相撲スタイルの場合は、ウォーミングアップ時のストレッチング体操等においても、股関節の曲げ伸ばしや、ハードル選手がよく行なう、片方の足を高い所にかけて大腿部の裏側の筋を引き伸ばす等の、両眼の前後開脚のストレッチングをしっかりと行なっておくことが望ましい。そして、整理運動の時にも、柔軟体操をおり混ぜて、体前後屈伸、ハイパー・バック・エクステンション、レスラー・ブリッジ等でこれらの部位の強化をはかるようにすべきである。

 次に、相撲スタイルのフォームでデッドリフトを行なうときの注意点や特徴などについて述べることにする。

<1>頭の位置と視線

 「おしりを下げ、頭を上げろ!!」とよく言うが、デッドリフトに関してこのことの重要さは、いくら強調しても足りないくらいである。この鉄則を守ることによって、パワーリフターが背中のケガから免れられるのである。

 また、おしりを下げることによって、背中にかかる負荷を少なくすることができる。そして、目を天井などの一ヵ所に集中させることによって、正しい姿勢を保つのが楽になると思われる。

<2>相撲スタイルの引き方では、腕力や広背筋や固有背筋等にかかる負荷よりも、両ひざ、及び大腿二頭筋等の内転筋の反発力に負うところが大である。

<3>両足のスタンスのとり方と両手の握る位置についての一応の目安としては、スクワットの時の両足のスタンスを基本にして、自分の両手を拡げたときの手の長さを考慮に入れて(ちなみに私の場合は、身長165cmであるのに、両手のリーチは175cm近くある)自分の大腿部、とくに大腿二頭筋と両ひざが、引き上げに際して同時に最大の反発力が発揮できるような位置を試行錯誤をくり返しながら見つけ出すこと。

 また、両足先の向きは、まっすぐに向けるよりも、やや外側に向けた方が、バーを引き上げる際に両ひざに当たらないでよいと思われる。

<4>バーベルの引き上げに際しては、シャフトの動く軌道は、体の正面にそって下腿部より大腿部へとすり上げるように通過させること。つまりバーをできる限り体から引き離さないように留意すること。

<5>引き上げの態勢に入ったら、背中はできるだけまるめないで、目は天井等の一点を見つめ、胸を張って背筋に意識を集中し、背すじをしっかり伸ばすようにつとめること。

<6>デッドリフトの成否の分かれ道はまさにファースト・プルにある。そのためには、最初にバーベルを引き離すときに、気力、姿勢、タイミング、呼吸法等を含めて、自己の全身全霊をこの一点にのみ集中させること。

<7>相撲スタイルにおいて、バーを握ったときのかまえこそが、前月号で述べた「自然体」のかまえそのものである。すなわち、両手のグリップはしっかりと握っていながら、決して必要以上に両腕や両肩(三角筋)や僧帽筋には力を入れないでいて、下半身、特に両脚と固有背筋を含む腰背部に重心を置き、なおかつしっかりと意識を集中させること。

<8>相撲スタイルにおけるファースト・プルの時の呼吸の仕方は、私自身今だにこれだという絶対的なものをつかみ得ていないが、現在、私が行なっている方法は、ファースト・プルに入る前に3~4回呼吸するタイミングを計りながら、そのわずかの間に気力を最大限に充実させていき「さあ引くぞ」という脳の指令と同時に、一気に息を吸い込んで、その息を止めた瞬間にバーを引くようにしている。呼吸方法としては、やや胸式呼吸に近い方法だと思う。


 最後に、全国の男女ビギナー諸君にお願いしたいことは、私のこの方法をあくまでも一つの基本線として、各自でいろいろと創意工夫を加えていただきたい。特にデッドリフトにおいて大切なことは、諸君の心と体のフィーリングにぴったり合ったフォームと呼吸方法を見つけ出すための努力を怠らないことです。

 来月は「相撲スタイル・その2」をお送りします。
月刊ボディビルディング1984年5月号

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