食事と栄養の最新トピックス(56)
中・上級者のための食事法 <2>
月刊ボディビルディング1985年11月号
掲載日:2021.08.27
たんぱく質のとり方
ヘルスインストラクター 野沢秀雄
1.たんぱく質の意義
人間の体に必要な栄養素のうち、たんぱく質はボディビルダーにとって最も重要な栄養素である。人体を構成する細胞は毛髪から爪先までたんぱく質が主成分である。内臓や血液・骨や腱・ホルモンや酵素の大部分もたんぱく質でできている。
トレーニングで肥大する筋肉もまたミオグロビンやアクトミオシンと呼ばれるたんぱく質が主成分である。
たんぱく質の英語名「プロティン」は、元々ギリシャ語の「最重要なもの」から来ていることが知られている。
たんぱく質といえば誰でも肉や魚、卵などを思い浮べる。戦後まもなくボディビルディングが日本に紹介された頃は信じられないくらい栄養状態が悪かった。「肉や卵はぜいたく品で、週に1~2度しか食べられない」というのが平均的な国民の姿であった。
昭和30年~33年にかけてベースボールマガジン社から発行されていた初代「ボディビル誌」を見ると、先輩ビルダー達が食事法で大変な苦労をしていたことがしのばれる。
「たんぱく質が大切と聞いたので、もっぱら大豆を煮て腹いっぱい食べていました」という体験談が多くのせられている。当時は学校給食のスキムミルクでさえ貴重品であった。イワシやサバが豊漁だったのが幸いだった。
30年たった今日では、経済大国になったお陰で日本は世界中から豊富な食糧を集められるようになった。アメリカやオーストラリアから「もっとも高くて上等な牛肉」を買っている国は日本なのである。
こんなに豊かになりすぎた現在、栄養不足よりも栄養過剰(とりすぎ)が問題になってくるのも当然である。ボディビル界におけるたんぱく質のとり方も不足より過剰が問題である。
このような状況下では「いかに上手にたんぱく質をとるか?」が成功のポイントになる。
トレーニングで肥大する筋肉もまたミオグロビンやアクトミオシンと呼ばれるたんぱく質が主成分である。
たんぱく質の英語名「プロティン」は、元々ギリシャ語の「最重要なもの」から来ていることが知られている。
たんぱく質といえば誰でも肉や魚、卵などを思い浮べる。戦後まもなくボディビルディングが日本に紹介された頃は信じられないくらい栄養状態が悪かった。「肉や卵はぜいたく品で、週に1~2度しか食べられない」というのが平均的な国民の姿であった。
昭和30年~33年にかけてベースボールマガジン社から発行されていた初代「ボディビル誌」を見ると、先輩ビルダー達が食事法で大変な苦労をしていたことがしのばれる。
「たんぱく質が大切と聞いたので、もっぱら大豆を煮て腹いっぱい食べていました」という体験談が多くのせられている。当時は学校給食のスキムミルクでさえ貴重品であった。イワシやサバが豊漁だったのが幸いだった。
30年たった今日では、経済大国になったお陰で日本は世界中から豊富な食糧を集められるようになった。アメリカやオーストラリアから「もっとも高くて上等な牛肉」を買っている国は日本なのである。
こんなに豊かになりすぎた現在、栄養不足よりも栄養過剰(とりすぎ)が問題になってくるのも当然である。ボディビル界におけるたんぱく質のとり方も不足より過剰が問題である。
このような状況下では「いかに上手にたんぱく質をとるか?」が成功のポイントになる。
2.動物実験が基礎になる
「たんぱく質は1日に何g必要か?」「どんな種類のたんぱく質をとると効率がもっとも良いか?」---これらについて栄養学者や運動生理学者は過去より現在に至るまで検討に検討を重ねている。単なる理論ばかりでなく、基本はネズミなどを用いた動物実験の成績に基づいている。
≪3大栄養素のうちたんぱく質を何%くらいにすれば効果が上るか?≫
炭水化物・たんぱく質・脂肪の組成をいろいろ変えてネズミを飼育した。たんぱく質が5%以下の食事内容では当然ネズミの体重は増加せず、発育不良になる。さらにたんぱく質の割合を減らすと病気にかかるネズミが増え、死んでしまう例もふえる。
スポーツマンの場合、強化合宿で猛烈な練習の割に食事中のたんぱく質が不足する時、血液中のたんぱく質(アルブミンやグロブリン)まで筋肉増強やエネルギーに廻されてしまい、スポーツ性貧血をおこす。当然体力はついてゆかず、体重もふえない。
たんぱく質が18%~25%の範囲にあるとき、ネズミの発育は順調で、体重がよく増える。活動も盛んである。
ところが、いくらたんぱく質が有益とはいえ、全体の30%を超えたときは、もはや体重の増加は得られない。ムダであるばかりでなく、かえって体調を悪くするネズミさえ現われる。
ボディビルダーやスポーツマンでトレーニング期の者は、当然、一般の人より多くのたんぱく質を必要とするが1日に摂取するたんぱく質の限界は、体重1kg当り2g前後である。これをもとに、たんぱく質が3大栄養素に占める%を計算すると18%~25%の範囲内になる。
[註]「体重1g当り2g」という基準を体重70kgの平均的ボディビルダーに当てはめると、1日あたり「たんぱく質140g、脂肪100g、炭水化物400g」といった数字が想定される。この場合、たんぱく質22%:脂肪16%:炭水化物62%という比率になる。総カロリーは3060kcalで、ほぼ2時間のトレーニングに見合うと考えられる。
筆者は三大栄養素を重量%で算出しているが、カロリー比では「たんぱく質560カロリー:脂肪900カロリー:炭水化物1600カロリー」となるので、カロリー%では18%:30%:52%となる。
現実には体重1kg当りの数字や全体に占めるたんぱく質の割合が、はるかにオーバーしている人が多い。その大部分がいわゆるプロティンパウダーや固型プロティン、液体プロティン、液体アミノ酸、アミノ酸カプセルなどに起因している。
これら栄養補助食品は、あくまでも1日3食の不足を補うために発売されている。にもかかわらず、プロティン製品が主食になっていたり、頼りすぎているビルダーが多い。
スポーツマンの場合、強化合宿で猛烈な練習の割に食事中のたんぱく質が不足する時、血液中のたんぱく質(アルブミンやグロブリン)まで筋肉増強やエネルギーに廻されてしまい、スポーツ性貧血をおこす。当然体力はついてゆかず、体重もふえない。
たんぱく質が18%~25%の範囲にあるとき、ネズミの発育は順調で、体重がよく増える。活動も盛んである。
ところが、いくらたんぱく質が有益とはいえ、全体の30%を超えたときは、もはや体重の増加は得られない。ムダであるばかりでなく、かえって体調を悪くするネズミさえ現われる。
ボディビルダーやスポーツマンでトレーニング期の者は、当然、一般の人より多くのたんぱく質を必要とするが1日に摂取するたんぱく質の限界は、体重1kg当り2g前後である。これをもとに、たんぱく質が3大栄養素に占める%を計算すると18%~25%の範囲内になる。
[註]「体重1g当り2g」という基準を体重70kgの平均的ボディビルダーに当てはめると、1日あたり「たんぱく質140g、脂肪100g、炭水化物400g」といった数字が想定される。この場合、たんぱく質22%:脂肪16%:炭水化物62%という比率になる。総カロリーは3060kcalで、ほぼ2時間のトレーニングに見合うと考えられる。
筆者は三大栄養素を重量%で算出しているが、カロリー比では「たんぱく質560カロリー:脂肪900カロリー:炭水化物1600カロリー」となるので、カロリー%では18%:30%:52%となる。
現実には体重1kg当りの数字や全体に占めるたんぱく質の割合が、はるかにオーバーしている人が多い。その大部分がいわゆるプロティンパウダーや固型プロティン、液体プロティン、液体アミノ酸、アミノ酸カプセルなどに起因している。
これら栄養補助食品は、あくまでも1日3食の不足を補うために発売されている。にもかかわらず、プロティン製品が主食になっていたり、頼りすぎているビルダーが多い。
3.たんぱく質が多すぎると?
牛や馬、羊などは草だけを食べて立派な力強い筋肉をつくっている。草に含まれるたんぱく質は僅かなので、しよっちゅう食べてばかり。牧草成分の炭水化物から脂肪やたんぱく質を合成する回路が働いている。
同様に人間にも炭水化物や脂肪から特定のアミノ酸を合成する回路が備わっている。戦時中の極端な栄養不足で、イモの葉や栗を主食にしていた時代でさえ、意外に肉体は保持できた。
逆に、いくらたんぱく質とはいえ、これを主食にしたり、必要量を超えて食べた場合は、たんぱく質→炭水化物→エネルギーや、たんぱく質→脂肪→貯蔵という回路にゆく。
考えられるケース毎に、具体的な物質名(化学名)で追及してみよう。
同様に人間にも炭水化物や脂肪から特定のアミノ酸を合成する回路が備わっている。戦時中の極端な栄養不足で、イモの葉や栗を主食にしていた時代でさえ、意外に肉体は保持できた。
逆に、いくらたんぱく質とはいえ、これを主食にしたり、必要量を超えて食べた場合は、たんぱく質→炭水化物→エネルギーや、たんぱく質→脂肪→貯蔵という回路にゆく。
考えられるケース毎に、具体的な物質名(化学名)で追及してみよう。
≪ケース1:カロリーも充分で、たんぱく質をとりすぎている場合≫
広くボディビルダーに見られる。肉や魚・卵など充分にたんぱく質をとっているのにかかわらず、さらにプロテインパウダーを多く食べすぎている。あるいはプロティンパウダーを1回に50gくらいずつ、朝食・昼食・夕食・間食というように食べている。これらの場合3大栄養素中、たんぱく質が明らかに30%を超えてしまっている。人によっては50%~60%にも達している場合さえある。
せっかく高い費用を出して無理に食べても結局は脂肪に変ってしまう。いや単にそれだけではない。上記の体内回路図は単純に一直線で脂肪合成までのルートを示したが、実際には正規のルートで尿素まで変化し、排泄されたり、ぶどう糖からエネルギーに変り消耗されるルートなどが複雑にからみあっている。これらのルートの途中で好ましくない影響が出る。これについては次項で述べる。
せっかく高い費用を出して無理に食べても結局は脂肪に変ってしまう。いや単にそれだけではない。上記の体内回路図は単純に一直線で脂肪合成までのルートを示したが、実際には正規のルートで尿素まで変化し、排泄されたり、ぶどう糖からエネルギーに変り消耗されるルートなどが複雑にからみあっている。これらのルートの途中で好ましくない影響が出る。これについては次項で述べる。
■カロリーもたんぱく質も過剰
食品中のたんぱく質→ポリペプチド→トリペプチド、ジペプチド→アミノ酸→αケトグルタール酸、ピルビン酸等に変化(糖質の1種に変化)→TCAサイクルによりグリコーゲンに合成(完全な糖質になる)→ぶどう糖→解糖系によるアセチルCOA、グリセロール(脂肪合成の中間体)→トリグリセライドに合成(完全なる脂肪になる)→脂肪
≪ケース2:全体のカロリーが不足している中で、たんぱく質の占める%が多すぎる場合≫
ボディビルダーやパワーリフターが試合前に食事制限をおこなっている際にしばしば見られる。というよりは、普通化され、誰でも試合前におこなっている。極端な人では、ごはん・パンはもちろん、アルコールや野菜・果物までカットして、プロティン類を多くとりすぎている。
すなわち「筋肉の成分を失なわないように」と願ったり、「筋肉のみは減らさずに大きさが大きくなるように」と望んで、たんぱく質をいくら多量に食べても、1日の活動に必要なエネルギー(総カロリー)が不足していると、せっかく食べたたんぱく質が空しくエネルギー源として消耗されてしまう。体の内外に付着した余分な脂肪が分解されるのはその後である。
だから賢明な食事法を考えると次のようになる。
①全体的に栄養素を減らしたメニューにする。減量期間を多くとり、段階的にカロリーを落としてゆくのが理想であるが、1週間の減量を1ヵ月くらいかけて、ゆっくり実行してゆく方法もよい。
②この場合、たんぱく質は体重1kg当り1.5gを下廻らず、また2gを上廻らない程度がよい。そして3大栄養素中、たんぱく質が20~30%にするとよい。
③減食により、体に貯臓されていた脂肪がとれはじめ、目標に近づいたならカロリーをややふやして、体重が増えもしなければ減りもしないようなバランスメニューをとり、コンディションを維持する。
④体の皮下脂肪をチェックして、増えないことを確認しながら、たんぱく質をやや多くしてゆく(30%)。これによりサイズアップ、パワーアップをはかる。
⑤こうして最終的な段階で、皮下脂肪5ミリ前後(パワー選手なら10ミリ前後)となり、体重が維持できるならコンディションづくりに成功といえる。
⑥逆に皮下脂肪5ミリ以下になっているのに、さらに無理に減量することは体に危険である。たんぱく質ばかり多い食事内容を続けることは以下のようにひじょうに危険である。
すなわち「筋肉の成分を失なわないように」と願ったり、「筋肉のみは減らさずに大きさが大きくなるように」と望んで、たんぱく質をいくら多量に食べても、1日の活動に必要なエネルギー(総カロリー)が不足していると、せっかく食べたたんぱく質が空しくエネルギー源として消耗されてしまう。体の内外に付着した余分な脂肪が分解されるのはその後である。
だから賢明な食事法を考えると次のようになる。
①全体的に栄養素を減らしたメニューにする。減量期間を多くとり、段階的にカロリーを落としてゆくのが理想であるが、1週間の減量を1ヵ月くらいかけて、ゆっくり実行してゆく方法もよい。
②この場合、たんぱく質は体重1kg当り1.5gを下廻らず、また2gを上廻らない程度がよい。そして3大栄養素中、たんぱく質が20~30%にするとよい。
③減食により、体に貯臓されていた脂肪がとれはじめ、目標に近づいたならカロリーをややふやして、体重が増えもしなければ減りもしないようなバランスメニューをとり、コンディションを維持する。
④体の皮下脂肪をチェックして、増えないことを確認しながら、たんぱく質をやや多くしてゆく(30%)。これによりサイズアップ、パワーアップをはかる。
⑤こうして最終的な段階で、皮下脂肪5ミリ前後(パワー選手なら10ミリ前後)となり、体重が維持できるならコンディションづくりに成功といえる。
⑥逆に皮下脂肪5ミリ以下になっているのに、さらに無理に減量することは体に危険である。たんぱく質ばかり多い食事内容を続けることは以下のようにひじょうに危険である。
■カロリー不足でたんぱく質過剰
食品中のたんぱく質→ポリぺプチド→トリペプチド、ジペプチド→アミノ酸→αケト酸類→TCAサイクルか、解糖系のいずれかの成分に変化(乳酸、ピルビン酸、ぶどう糖などに変る)→エネルギーとして消耗
4.たんぱく質とりすぎの危険
たんぱく質は有用な栄養素であるが、同時に大きな危険性をもつ栄養素である。どこが危ないか、考えてみよう。
たんぱく質の特徴は、炭水化物(糖質)や脂肪とちがい、チッ素(N)、リン(P)、イオウ(S)を内部に持っている。チッ素はNH2というアミノ基になってアミノ酸の一部を構成している。たんぱく質は数万~数十万個のアミノ酸からできているので、これと同じだけのアミノ基を持つことになる。
たんぱく質が体内で分解したり、合成したり、さまざまな化学変化を受ける過程で、最終的には尿中や便中、あるいは汗や毛髪にまじって処分されるわけである。
チッ素(N)は尿素サイクルで尿に混じりアンモニアとなって直接排出される。誰でもトイレのツーンと鼻につく臭いは嫌いである。実際に化学実験上アンモニアは有害薬品類である。
イオウ(S)も全国の温泉地に行くと強烈な悪臭を発している。大便にも同様の臭いがあり、好きな人はいないだろう。またリン(P)自体も有毒物質として扱われている。
アンモニア・イオウ・リンなどの有毒物質を人間は本能的に避ける。なるべく臭いをかがないように逃げる。それにもかかわらず宿命的にたんぱく質はN・S・Pを成分中に内蔵しているわけだ。言いかえれば、N・S・Pが含まれること自体がたんぱく質である証明になっている。(たんぱく質の定量にもNの量をはかり、ふつう6.25を掛けてたんぱく質量としている)
N・S・Pは体の成分として重要なことはわかるが、同時にまた処理されて生ずるアンモニア化合物・イオウ化合物・リン化合物は体内で有害な作用をおこなうのである。
たとえば欧米で死亡順位が上位にランクされる直腸ガン。腸ガンは肉類を食べる人に多く発生する。腸の途中でつかえて腐敗した部分からアンモニア化合物やイオウ化合物が生じ、腸の組織を痛めつける。また「ガン細胞にとって高たんぱくは絶好の栄養物」ともいわれている。
小柳達男著「ガンにならない食事法」の本の中に、
①たんぱく質の量が少ないと、体力がつかず、ガンになりやすい。適当量のたんぱく量はガン予防に有効
②しかしながら、たんぱく質の過剰も体内に負担をかけ、胃ガンや腸ガンにかかりやすい。とりすぎは危険。
と、はっきり示されている。
たとえてみれば、たんぱく質中のN・P・Sは都会の公害物質と同じである。盛んにたんぱく質を食べると、処理すべき物質としてN・P・Sが必然的に増加し、問題になってくる。
そのうえ、前述の回路に一例を示したが、正規ルートを上廻る余分なたんぱく質を処理するには、複雑な、長いルートをとらねばならない。これらは肝臓をメインに、膵臓や腎臓など体内の器官に負担をかけることになる。
肝臓病もまた「たんぱく質が足りない時になりやすいが、同時に過剰のときになりやすい」といわれる。腎臓病もまったく同じである。
心にとめておきたい最重要な言葉は「たんぱく質は食いだめができない」という事実である。多く食べてもエネルギーに変って消耗されたり、脂肪に変ってイヤな皮下脂肪や内臓のまわりにコッテリ付着する内部脂肪に変化する。血管壁につき、高血圧の原因になったりする。
したがって、毎日の活動量に応じて(性別・年令もあわせて考え)、適切なたんぱく質量をとってほしい。それには自分のメニューを分析し、カロリー計算をおこない、体重1kg当り2g前後になっているかどうかチェックすることである。少ない人はプロティンパウダーなどで不足分をカバーすることは良いことだ。逆にプロティンなしでも充分にとれている人はそれ以上食べる必要はない。またプロティンパウダーを使っている人は摂取量が多すぎないかどうか、これを機会に厳重にチェックしてみよう。
---------------------------
「中上級者のトレーニングでは比例的にたんぱく質必要量がふえるのか?」と誰でも興味を持つだろう。次回は筋肉発達のメカニズム、たんぱく質の代謝率、良質のたんぱく質VS劣質のたんぱく質等について検討する予定。
たんぱく質の特徴は、炭水化物(糖質)や脂肪とちがい、チッ素(N)、リン(P)、イオウ(S)を内部に持っている。チッ素はNH2というアミノ基になってアミノ酸の一部を構成している。たんぱく質は数万~数十万個のアミノ酸からできているので、これと同じだけのアミノ基を持つことになる。
たんぱく質が体内で分解したり、合成したり、さまざまな化学変化を受ける過程で、最終的には尿中や便中、あるいは汗や毛髪にまじって処分されるわけである。
チッ素(N)は尿素サイクルで尿に混じりアンモニアとなって直接排出される。誰でもトイレのツーンと鼻につく臭いは嫌いである。実際に化学実験上アンモニアは有害薬品類である。
イオウ(S)も全国の温泉地に行くと強烈な悪臭を発している。大便にも同様の臭いがあり、好きな人はいないだろう。またリン(P)自体も有毒物質として扱われている。
アンモニア・イオウ・リンなどの有毒物質を人間は本能的に避ける。なるべく臭いをかがないように逃げる。それにもかかわらず宿命的にたんぱく質はN・S・Pを成分中に内蔵しているわけだ。言いかえれば、N・S・Pが含まれること自体がたんぱく質である証明になっている。(たんぱく質の定量にもNの量をはかり、ふつう6.25を掛けてたんぱく質量としている)
N・S・Pは体の成分として重要なことはわかるが、同時にまた処理されて生ずるアンモニア化合物・イオウ化合物・リン化合物は体内で有害な作用をおこなうのである。
たとえば欧米で死亡順位が上位にランクされる直腸ガン。腸ガンは肉類を食べる人に多く発生する。腸の途中でつかえて腐敗した部分からアンモニア化合物やイオウ化合物が生じ、腸の組織を痛めつける。また「ガン細胞にとって高たんぱくは絶好の栄養物」ともいわれている。
小柳達男著「ガンにならない食事法」の本の中に、
①たんぱく質の量が少ないと、体力がつかず、ガンになりやすい。適当量のたんぱく量はガン予防に有効
②しかしながら、たんぱく質の過剰も体内に負担をかけ、胃ガンや腸ガンにかかりやすい。とりすぎは危険。
と、はっきり示されている。
たとえてみれば、たんぱく質中のN・P・Sは都会の公害物質と同じである。盛んにたんぱく質を食べると、処理すべき物質としてN・P・Sが必然的に増加し、問題になってくる。
そのうえ、前述の回路に一例を示したが、正規ルートを上廻る余分なたんぱく質を処理するには、複雑な、長いルートをとらねばならない。これらは肝臓をメインに、膵臓や腎臓など体内の器官に負担をかけることになる。
肝臓病もまた「たんぱく質が足りない時になりやすいが、同時に過剰のときになりやすい」といわれる。腎臓病もまったく同じである。
心にとめておきたい最重要な言葉は「たんぱく質は食いだめができない」という事実である。多く食べてもエネルギーに変って消耗されたり、脂肪に変ってイヤな皮下脂肪や内臓のまわりにコッテリ付着する内部脂肪に変化する。血管壁につき、高血圧の原因になったりする。
したがって、毎日の活動量に応じて(性別・年令もあわせて考え)、適切なたんぱく質量をとってほしい。それには自分のメニューを分析し、カロリー計算をおこない、体重1kg当り2g前後になっているかどうかチェックすることである。少ない人はプロティンパウダーなどで不足分をカバーすることは良いことだ。逆にプロティンなしでも充分にとれている人はそれ以上食べる必要はない。またプロティンパウダーを使っている人は摂取量が多すぎないかどうか、これを機会に厳重にチェックしてみよう。
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「中上級者のトレーニングでは比例的にたんぱく質必要量がふえるのか?」と誰でも興味を持つだろう。次回は筋肉発達のメカニズム、たんぱく質の代謝率、良質のたんぱく質VS劣質のたんぱく質等について検討する予定。
月刊ボディビルディング1985年11月号
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