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なんでもQ&Aお答えします 1985年8月号

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月刊ボディビルディング1985年8月号
掲載日:2021.06.25

体位が全く増加しなくなってしまったが

Q
27歳の会社員です。三度の食事よりもトレーニングが好きで、すでに3年2カ月継続しています。トレーニングは週5日(土曜日と日曜日は休む)実施し、雑誌などを見て自分なりにいろいろと研究もし、 3ヵ月に一度はスケジュールも手直をしながら現在に至りました。

 しかし、 この半年ほど体重、胸囲とも増加せず、いわゆるスランプの状態になってしまったのではないかと悩んでいます。睡眠も十分にとり、食事にも気を使っており、予定したスケジュールはきちんとこなしていながら、 どうしてこのような状態になったのか全く見当がつきません。

 ただ私なりに原因を考えてみますと①トレーニング時間が少ない②トレーニング内容が悪い ③年齢・体質的な問題④精神的なもの、などが考えられます。

 現在の体位は身長165cm、体重71kg、胸囲105㎝、上腕囲36.5cm、大腿囲59cmです。

 トレーニングは以下のような内容で1日当り 1時間半~2時間、総セット数は45~50セットくらいです。なんとかスランプを脱出する方法をアドバイスしてください。

 (大阪市 西出義春 会社員 27歳)

《現在のスケジュール》
記事画像1
A
 現在のスランプ状態についてその原因をあなたなりに挙げていますが、それらについて1つずつ検討してみましょう。

<1>トレーニング時間が少ない

 この点に関しては、全く問題がないようです。週5日、1日当り1時間半~2時間もやれば十分です。1日で全身のトレーニングを行い、それを5日連続して行うのは、かえってオーバーワークになる可能性があり、よくありません。分割法を採用し、全身を2回に分けてトレーニングした方が、もうあなたの段階では、その日、その日のトレーニングに集中できるので、効果的だと思います。

<2>トレーニング内容が悪い

 実際に、現在のトレーニング法にはよくない点が見られます。まず、種目の順番がよくありません。腕のトレーニングを行なってから背中や胸を行なっていますが、これでは腕が先に疲れてしまい、背中や胸に集中できず、腕もオーバー・ワークになりやすいのでよくありません。なるべく胸や背中などの大筋群から先にトレーニングするほうが有効です。

 次に、腕のトレーニングの使用重量が重すぎるようです。スロー・カールで37.5kgだと肘が後ろに引けすぎたり開いたりしてしまっているのではないでしょうか?フレンチ・プレスについても同様の事が言えます。もっと重量を軽くし、肘を開かないようにして、また肘を前方に突き出さないようにして行なって下さい。

<3>年齢・体質的な問題

 年齢に関しては、確かに一番発達が速い時期はありますが、それ以外でも十分発達します。まして、あなたの場合、まだ27歳で決っしてボディビルを行うのに高年齢ではありません。この点に関してはあまり考える必要はありませんので、頑張ってトレーニングを行なって下さい。

<4>精神的なもの

 確かに精神的なものがトレーニングの効果に及ぼす影響は大きいといえます。ただし、自分から「精神的なものがあってスランプだ」などと消極的に考えず、もっと積極的な思考でトレーニングにも対処して下さい。

 3ヵ月に1度はスケジュールを変えているとのことですが、その時に行なっているスケジュールの効果が上がっていれば、変える必要はありません。逆に言えば、1ヵ月位行なって効果がないと思われるものは3ヵ月を待たずに変えるべきです。また、疲労がたまって来たと思ったら、思いきって1週間くらいのレイ・オフをとることも大切です。

 次にトレーニング・スケジュール例を記しますので参考にして下さい。ここではAコース・Bコースの2外割法を採用してみました。
記事画像2
 一応、月・火・木・金の週4日制ですが、水曜日には腹筋のトレーニングを行なってもかまいません。腹筋は毎日トレーニングしてもさしつかえありませんので、Bコースの日の最後にレッグ・レイズ2セットを加えてもよいでしょう。

体重を増やすためのトレーニング法

Q
 ボディビルを始めて1年になる19歳の学生です。外見は以前より大きくなったように見えるのですが、測定してみるとほとんど増えていません。食べ物も睡眠も十分にとっており、また、運動種目もまんべんなく採用していて、片寄っているとも思えません。なんとか体重をあと10キロくらい増やしたいのですが、効果的な方法をお教えください。

 それともう1つお尋ねします。私はこの1年間ほとんどトレーニング内容を変えていません。やはり変えたほうがよいのでしょうか。変えるとしたら何カ月くらいで変えたらいいか、それについてもお教えください。

 現在実施しているトレーニング法は次のとおりです。なお体位は身長167cm、体重58kg、胸囲93cm、上腕囲31㎝、太腿囲52㎝です。

《現在のトレーニング・スケジュール》
〔註〕トレーニングは週に4回。1日当りの所要時間は1時間半。そして3カ月に一度、10日間くらいのレイオフをとります。(多摩市 T・F 19歳 学生)

〔註〕トレーニングは週に4回。1日当りの所要時間は1時間半。そして3カ月に一度、10日間くらいのレイオフをとります。(多摩市 T・F 19歳 学生)

A
 コンテスト・ビルダーにも言えることですが、筋肉の外見と、測定した体位とは、必ずしも一致しません。つまり、同じ40㎝の上腕でも、脂肪のない、よくカットアップされた腕の方が太く見えます。ですから、あなたの場合も「測定してみるとほとんど増えていません」とありますが、外見は大きくなっているようですので、多分、脂肪が落ちて。筋肉質の体になったのでしょう。手紙に書いてある体位表に、皮下脂肪のひとつのめやすとなる腹囲が記入されていませんでしたので、ハッキリとは分りませんが……。

 というわけで、これからは単に体位を測定して判断するのではなく、ヘソの横や脇腹を指でつまんでみて皮下脂肪を計り、体位と皮下脂肪の両方で、実質の筋量の増加を知るようにしてください。皮下脂肪は普通、10ミリ位を保つようにするとよいでしょう。

 このように、筋肉は急につくものではありませんので(初心者の段階を過ぎると特に)短期間で10kgの増量は難しいですね。脂肪をつけてもよいのなら別ですが。それよりも脂肪はあまりつけず、あせらずにじっくりと筋肉をつけるようにしましょう。

 それには現在のトレーニング法にも一考を要します。「運動種目もまんぺんなく採用していて……」とありますが、確かにまんべんなく採用はしていますが、種目の配列のしかたに問題があります。胸なら胸、背中なら背中とくっつけてトレーニングを行なってください。トレーニング・スケジュール例については後述します。

トレーニング頻度は、超回復を考慮して1日おき週3回(月・木・金とか火・木・土など)がよいでしょう。トレーニングをやりすぎるのも、かえってよくありません。体重を増やしたい場合には、オーバー・ワークに特に注意しなければいけません。

 トレーニング内容の変更については今までのトレーニングで効果が上がっていて、マンネリ化せず、毎回意欲的にトレーニングができるなら、変える必要はないでしょう。ですから、逆に言えば、一般的には、トレーニングの効果を上げ、マンネリ化を防ぐために3~6ヵ月に1回くらいスケジュールを変えるのもよいでしょう。ただし、よいトレーニング・スケジュールを無理に変える必要はありません。

 ではトレーニング・スケジュール例を示します。
記事画像4
 上腕三頭筋の種目がありませんでしたので、ダンベル・プレスを除き、フレンチ・プレス・ライイングを加えました。

 食事に関して一言つけ加えておきますと、各栄養素をまんべんなく摂り、特にたんぱく質は体重1kg当り2g前後摂るようにしましょう。

生まれつき骨格が細いが、なんとか逞しい体になれないか
Q
 私は17歳の高校生で、ボディビル経験は1年です。生まれつき骨格は細いほうで、肩幅も友達と比べてかなり狭いようです。なんとか筋肉質のいい体になろうとしてボディビルをはじめたのですが、大して効果がみられません。特に腕、大胸筋、広背筋の発達が悪いようです。そこで、現在の私のトレーニング状態と体位等の資料に基づいて、効果的なスケジュール、食事等のアドバイスをお願いしたいのです。

 現在、下記のスケジュールを1日おきに1時間実施しています。

《現在のスケジュール》
〔註〕学校で体育の授業のあるのは水曜・木曜・金曜の3日で、このうち水曜と金曜がボディビルのトレーニング日と重さなります。

〔註〕学校で体育の授業のあるのは水曜・木曜・金曜の3日で、このうち水曜と金曜がボディビルのトレーニング日と重さなります。

 体位は、身長171cm、体重65~67kg、パンプアップ状態で胸囲1m、上腕囲33cm、腹囲76cm、大腿囲56cmです。食事はごく普通の食事のほかに牛乳1~3本、卵2~3個を追加しています。

 以上のような状態ですが、どのような点に注意してトレーニングすればよいかアドバイスしてください。

(品川区 吉村直人 17歳 高校生)
A
 あなたのお手紙に「生まれつき骨格が細く……大した効果がみられません」とありますが、身長171cmに対して体重63~65kgと、17歳の高校生としては、決して細くはありません。腹囲が76㎝ということは、皮下脂肪で体重があるというわけでもなさそうです。

 手首囲、足首囲などが記されていませんので、ほんとうに骨細か骨太か分りませんが、各部のサイズから推察して、そんなに骨細とも思えません。太腿囲などを見ると、かなり太いようですが……。

 さて、トレーニング・スケジュールについてですが、まず種目の順番に問題があります。現在、ワン・ハンド・ロー、ベンチ・プレス、ベント・ローの順で行なっていますが、ベンチ・プレスの後にベント・ローとワン・ハンド・ローを行なって下さい。つまり、広背筋の種目はくっつけて行うというわけです。

 次に、ベント・ローの重量が、その他の種目に比べて重すぎるのではないでしょうか?多分正しいフォームで行なわれていないものと思われます。あと5~10kgぐらい軽くし、充分広背筋を伸ばした状態から、バーが腹部に来るようにひじを引きます。

 では、以上の事を考慮してトレーニング・スケジュール例を作成します。
 
《トレーニング・スケジュール例》
記事画像6
 大胸・腕の強化を考えて、ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイングとフレンチ・プレス・ライイングを加えました。(やり方は後述します)

 食事に関しては「ごく普通の食事のほかに牛乳1~3本、卵2~3個を追加しています…」といった簡単なものでなく、もう少し考えて摂取しましょう。

 ウェイト・トレーニングをして、筋肉質の体になりたいのなら、1日に体重1kg当り2gのたんぱく質を摂るようにします。ですからあなたの場合は、1日に約140gのたんぱく質が必要です。ただし1回に消化できるたんぱく質の量は30g前後ですから、いっぺんにまとめて摂ることはよくありません。1日5食くらいの感じで、間食を充実させましょう。

 たんぱく質を多く含む食品としては、肉類・魚介類・納豆・豆腐・牛乳・チーズ・ピーナツなどがあります。間食にはプロティン・パウダーを利用するのもよいでしょう。

 また、たんぱく質だけでなく他の栄養素もバランスよく摂るようにして下さい。特にビタミンやミネラルを含む野菜・果実類をしっかりと食べるとよいですね。

《種目説明》

◎ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング

 両手にそれぞれダンベルを持ってベンチに仰臥し、左右のダンベルを胸の上方に挙上してかまえる。その位置から両腕を少しまげながら、真横へ広げるようにして下ろし、十分におろしたなら、つぼめるようにして元の位置へ戻す。このとき、肘の屈折度を増さないように注意する。[写真参照]

◎フレンチ・プレス・ライイング

 ベンチに仰臥して、バーベルをオーバー・グリップで持ち、腕を垂直(または垂直に近い状態。肘が足の方向には行かず、やや頭の方に傾斜するのなら可)に挙げ、上腕三頭筋が十分に作用するように、肘を支点にして前腕を屈曲、伸展させる。なお、その際に肘が開かないように注意する。また、カーリング・バーの狭い方を握って行うと動作がしやすい。〔写真参照〕
〔ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング〕

〔ベント・アーム・ラタラル・レイズ・ライイング〕

〔フレンチ・プレス・ライイング〕プロレスラーは高回数性でトレーニングしていても、デフィニッションがないが

〔フレンチ・プレス・ライイング〕プロレスラーは高回数性でトレーニングしていても、デフィニッションがないが

 高回数制と低回数制でトレーニングを行なう場合、一般には軽い重量で高回数制でトレーニングした場合にはデフィニッションがつき、重い重量で低回数制のトレーニングをした場合はバルクがつくと言われ、私の経験でも現実にその通り効果が得られていると思います。

 そこで、このことに関して私が疑問に思うことは、プロレスラーについて当てはめると、彼らのトレーニングのやり方は、ボディビルは補助的とはいえ、プッシュ・アップやスクワットなど、1000回単位で、ほとんど毎日行なっていると聞きます。つまり、これはボディビルにおける高回数制そのものです。

 とすれば、プロレスラーの体はデフィニッション型にならなくてはいけないのに、大きくて柔らかい筋肉がついているのはどうしてでしょうか。その原因の第一に考えられるのは食事だと思うのですが……。

(土佐清水市・清水TC・長岡正樹)
A
 結論から申しあげれば、確かにその原因は食事の摂り方にあるのです。プロレスの試合を見ればわかるように、30分とか60分間、あの烈しい格闘技をつづけるということは物凄いスタミナがなくてはできません。プロレスラーが高回数制でウェイト・トレーニングをする理由はこのスタミナを養成するためで、ボディビルダーのようにデフィニッションを出すためではありません。

 そしてもうひとつ、大相撲の力士やプロレスラーにとって大切な武器は大きな体とパワーです。そのため彼らは激しいトレーニングのあとで、一般人の数倍もの栄養を摂って、スタミナとパワーのある大きな体をつくるのです。

 ボディビルダーでも、デフィニッションを出そうとして、いくら高回数制でトレーニングしても、まったくダイエットしなかったら、筋肉と同時に体脂肪もつき、ボディビルダー特有の鋭いカットは出ません。

 このように、同じバーベルやダンベルを使ってするウェイト・トレーニングでも、競技の種類によって、当然、その目的とやり方は違ってきます。

トレーニング・スケジュールの診断を
Q
 昭和44年以来、ずっと貴誌を拝読している、一ボディビル愛好者です。ボディビルは18歳の時に30kgのバーベルを購入してトレーニングを始め、大学を卒業するまではかなり一生懸命やりました。

 その間にぼつぼつプレートも買い足したり、スワクット・スタンドやベンチも購入し、貴誌を参考にして自分でスケジュールを立てながらトレーニングを続けた結果、下記のような体位になりました。

 しかし、就職してからは、時折、思い出してやる程度で、せいぜい1カ月に3~4回やるかどうかという状態で今日に至っております。

 33歳になる現在、これでは中年肥りになる恐れがあると思い、約2カ月前からトレーニングを再開しました。スケジュールは下記のとおりですが、その診断をしていただき、今後に生かしたいと思っています。

 コースはABCの3コースで、1週間にそれぞれの部位を2回(腹筋だけは毎日)トレーニングしています。所要時間はどのコースも1時間ぐらいでトレーニング終了後は、肉体的にも精神的にも充実しています。食事は普通(ごはんドンブリ1杯、おかず2~3品……必ず魚か肉を1品と汁類)で、夜食にプロティンパウダーを牛乳にとかして飲んでいます。現在のトレーニング・スケジュールについて、改善すべきところがあるかどうか診断していただきたいと思います。

《体位の変化》―――クール時に測定
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《トレーニング・スケジュール》
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(盛岡市 吉村孝司 33歳 公務員)
A
 開始時に比べて、体重19kg、胸囲17cmと大きく発達されています。その反面、腹囲も10㎝大きくなっていますが、これはよくありません。これからは腹囲を増加させないよう、できたらもう少し減少させるようにトレーニングしましょう。

 さて、トレーニング・コースについてですが、現在あなたが実施している分割法よりも、次のように分割した方が、一般的に言って効果的です。

Aコース――胸・上腕三頭筋
Bコース――背・上腕二頭筋
Cコース――肩・脚・下背

 この分割法では、Aコースで上腕三頭筋、Bコースで上腕二頭筋というようになり、腕がオーバー・ワークにならずにすみます。あなたの現在の分割法では、Aコースでの胸・背の際に、補助筋として上腕三頭筋・上腕二頭筋を使い、さらに翌日に腕のトレーニングを行なっているので、あまりよくありません。

 また、現在、多種目・少セットで行なっていますが、もう少しセット数を増し、種目を減らした方が集中してその部位を鍛えられるでしょう。

では、具体的に各コースの内容も記します。
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 以上のように腹筋はトレーニングの最後に目一杯やるのがよいでしょう。そうすれば、他の筋肉は十分にトレーニングに集中でき、最後に腹筋を集中的に鍛えられます。

 次に食事に関しては、もう少し注意を払いましょう。なかずも魚か肉を1品以外に、納豆・豆腐・卵などの高たんぱく食品も必ず加えるようにして下さい。ただし、中年太りにならないためにも余分なカロリーは避けなければいけません。朝食・昼食はしっかり食べ、トレーニング後のカロリーの過剰摂取は特によくないので、夕食がトレーニング後の場合は、カロリーの少ない高たんぱくのものを食べましょう。また、プロティン・ドリンクは夜食にするより(成長期の人や体重を増やしたい人は夜食を含め、1日3回飲むとよいのですが……)トレーニングの30分位前とトレーニング終了後に飲むようにすると効果的です。

〔回答はトレーニング・プラザ代々木・野沢秀雄先生、工藤悦弘先生演技指導は平井トレーニング・センター会長・熊岡健夫先生〕
月刊ボディビルディング1985年8月号

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