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新ボディビル講座
ボディビルディングの理論と実際〈48〉
第8章 トレーニングに際しての注意事項

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月刊ボディビルディング1985年3月号
掲載日:2021.05.18
名城大学助教授 鈴木正之

第8章 トレーニングに際しての注意事項

1.体力と体位サイズの確認

 トレーニングをはじめるに当って、その効果を確認するために、まず機能的体力と形態的体力を測定しておく。測定方法は第5章に述べてあるので参考にするとよい。
 体位サイズは、一般にコンテストで発表される体重、上腕囲、胸囲、腹囲、大腿囲くらいを測定しておくとよい。サイズの測定にあたっては、同じ条件(つまり最初にトレーニングの前に測定したら、以後も同じようにトレーニング前に測定するとか、測定部位を変えないといったようなこと)で測定することが必要である。また、最近は女性ビルダーも多くなったので、皮脂厚計で体脂肪も測定しておくとよい。
 測定にあたっては、まずトレーニング開始時に測り、その後は、1ヵ月ごと、3ヵ月ごと、あるいは6ヵ月ごとというように定期的に同一条件で測定する。この測定を継続することが大切で、それによりその期間の効果と成績が比較でき、次からのトレーニング・スケジュールの作成にあたって、それを有効に生かすことができると共に、トレーニングへの興味と継続性がでてくる利点がある。

2.トレーニングと栄養

 トレーニング効果を高めるためには、必要なカロリーと血となり肉となる栄養素を摂らなければならないが、基本的にはバランスのとれた食事が何よりも大切である。それには、次にあげる五大栄養素をまんべんなく、バランスよく摂取することが必要である。
 ①炭水化物-米、麦、いも類などの主食となるもの。
 ②脂肪-植物油、動物油、バターなどの脂質。
 ③蛋白質-肉類、牛乳、大豆製品などの身体をつくるもの。
 ④ビタミン-肝油、胚芽油、野菜、果物などに含まれるからだの機能を高める物質。
 ⑤ミネラル-カルシウム、燐、鉄などの物質で、血液や骨の成分であると共に体の代謝作用を高める。魚貝類、海草類、野菜、果物などに多く含まれる。
 ただここで問題になるのは、ボディビルを始める各人の目的、体質の違いがあるので、全ての人が同じように基本的な原則を守っていればよいというものではない。そこには2つの大きな特徴がみられると思う。つまり、体重を増量したい人と、反対に減量したい人である。

◇減量と栄養
 肥満ぎみの人がボディビルでシェイプ・アップしようとするケースが増えているが、この場合は体脂肪を落とし、体質改善をねらっているのであるから、炭水化物と脂肪の制限は当然必要になってくる。炭水化物はカロリー・オーバーとなれば体脂肪として皮下、及び体内に貯蔵されるので、避けなければならない。炭水化物の中でも特に糖質の純度の高い糖分が中心となる砂糖や菓子類は避けるべきである。
 脂肪は最もカロリーが高いので、減量の場合は特に注意する必要がある。その他、蛋白質、ビタミン、ミネラルは体を構成し、新陳代謝を促す物質であるから、たとえ減量中であっても欠かすことのないように注意する。

◇増量と栄養
 体重を増量したいという場合は、次の2つのケースが考えられる。1つはたんに体重を増やしたいという場合で、もう1つは、筋肉でガッチリ太りたいという場合である。
 単純に体重を増やしたい場合は、消化吸収しやすい高カロリー食品を多く摂り、疲労が残らない程度の軽いトレーニングをする。筋肉で増量したい人は、高カロリーを摂ると共に、高蛋白質の食品を摂り、ある程度ハードなトレーニングをしなければならない。
 以上、減量、増量の両者を比較すると、炭水化物と脂肪が決め手になり、蛋白質とビタミン、ミネラルは減量、増量とも不可欠な物質であることに注意する。

3.トレーニングと休養(超回復)

 トレーニング効果をあげるためには、各筋群がある程度疲労するまで行わなければ効果は得られないが、そうかといって疲労しすぎると効果は得られなくなる。そこで休養という問題が起こってくる。
 ヘッティンガーらの研究によれば、1日にある筋肉部位に最大刺激を与えたならば、引き続きその部位に同じように刺激をくり返し与えても、刺激効果は変らなかったと発表している。つまり、毎日同じ部位にくり返し刺激を与えることは、疲労を重ねるだけで効果は頭打ちになり無駄なトレーニングを行なっていることになる。ときには疲労が蓄積してマイナス効果を生むこともある。【図参照】
超回復(トレーニング時と休息時の活動能力の推移)

超回復(トレーニング時と休息時の活動能力の推移)

 早く効果を得ようとして、毎日最大刺激を同一筋肉に与え続けている人をよく見かけるが、これでは疲労と消耗の現象をたどり、筋肉の活動能力は低下の一途をたどり、筋肉の発達を期待することは出来ない。
 超回復を合理的に得るために生まれたトレーニング・システムがスプリット・ルーティンである。週5とか6回トレーニングする場合でも、連日同一筋肉に負荷がかからないように、腕とか胸、脚というようにいくつかの部位に区分して交互に日を変てトレーニングしたり、トレーニング種目、システムを選択して、疲労回復期間を考慮する必要がある。
 また、その反対の場合、つまりトレーニングが10日に1回とか、15日に1回というようでは、せっかく超回復で得た効果が、トレーニング開始前と同じ水準に戻ってしまい効果が消えてしまうので、少なくとも各部位に対して1週間に一度は刺激を与えるとか、強いトレーニング日、軽いトレーニング日などを設けて、うまく刺激と休養をくり返しながら、合理的な超回復を引き出すようにトレーニングすることが必要である。

4.トレーニング時の服装

 トレーニング時の服装は、基本的には身体運動が充分に行えるものであれば何でもよいわけであるが、最近のトレーニング・ウェアーは種類も多く、カラフルになってきている。特に運動種目によっては、トレーニング・ウェアーというよりもファッション化したコスチュームがある。これは女性がトレーニングの分野に進出してきた現われであろう。
 そんな中で男性ボディビルダーの服装は、今だにトレーニング・パンツにトレーニング・シャツ、あるいはTシャツといったスタイルが多いが、デザインや色彩を考慮したもっとカラフルで楽しい服装があってもいいのではないかと思う。
 そして、なによりも大切なことは、つねに清潔なものを着用することである。また、夏などはたいへん汗をかくので、トレーニング中の着替え用として2~3枚は用意しておくことが、他のメンバーに不快感を与えないエチケットでもある。
 女性は男性と同じようにトレパン、トレシャツの服装でもよいが、レオタードやタイツなどを着用し、スマートにトレーニングするのも楽しいと思う。従来のボディビル・スタイルにこだわらず、楽しみながらトレーニングできるファッション・ボディビルがあってもよいと思う。
 その他、シューズをはかないで、素足でトレーニングしている人をよく見かけるが、シューズはしっかりしたアップ・シューズとか、上ばきシューズをつけ、スマートに安全にトレーニングしたいものである。
 特殊なウェアーとして減量用服装がある。トレーニングしながら減量しようとする場合、減量ウェアー(サウナ・スーツ)や普通のトレーニング・ウェアーの重ね着もあるが、外気の温度に合わせて着用するようにする。
月刊ボディビルディング1985年3月号

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