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ボディビル講座
ボディビルディングの理論と実際〈17〉

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月刊ボディビルディング1982年7月号
掲載日:2018.12.12

第6章 トレーニング種目

名城大学助教授 鈴木正之

◎レイズ系の肩の運動種目

 トレーニング種目用語としてレイズ(raise)という言葉がよく出てくる。レイズとは「上げる」という意味であるが、プレス(press)の「押し挙げる」という意味とは少し異なり、倒れている物を起こし上げるというような意味である。従って、あお向けに寝て脚を上げる運動の場合、レッグ・レイズ(leg raise)というふうに呼ぶ。

 肩の運動の場合、肩関節の可動範囲が広いため、腕が下の方に垂直にさがっている状態から、前、横、後方という具合に、あらゆる角度、方向に腕を上げて運動を行うことが出来る。

 とくにその持味を生かせるのはダンベルによる運動である。ダンベルの特色を利用し、直接、三角筋に刺激を与えることは、レイズ系運動の大きな特長であり、しかも、補助筋をほとんど使用せずに刺激を与えることが出来るので、補助筋の疲労による肩への刺激不足を補うことが出来るという利点がある。

 そのため、主働筋優先法のトレーニングをするならば、レイズ系運動からバック・プレスやアップライト・ローなどに移行するトライ・セットなどを組めばたいへん大きな刺激効果を得ることが出来る。

◎その1 バーベルによるレイズ系の運動種目

《1》スタンディング・ミディアム・グリップ・バーベル・フロント・レイズ(通称:フロント・レイズ、初級者)(図1)

〈かまえ〉両手でバーベルを持ち、大腿部の前にぶらさげる。バーの握り幅は肩幅くらいとする。

〈動作〉肘を伸ばしたまま、肩の高さより少し高く上げる。これを基本動作として、頭の高さまで上げた場合はフル・レイズ、肩の高さまで上げた場合はハーフ・レイズとなる。

〈注意点〉肘は完全に伸ばしきらなくてよいが、上げる動作においては筋肉に充分抵抗を与えるために、反復初期はストリクト・スタイルで行ない、後半はチーティング・スタイルに移行してもよい。

 とくに注意することは、動作をゆっくり行なうことと、おろす時は上げる時のスピードよりさらにゆっくり動作することが大切である。初心者はハーフ・レイズでのトレーニングで充分である。

〈作用筋〉主働筋……三角筋(前部)
〔図1〕スタンディング・ミディアム・グリップ・バーベル・フロント・レイズ

〔図1〕スタンディング・ミディアム・グリップ・バーベル・フロント・レイズ

《2》スタンディング・ワイド・グリップ・バーベル・フロント・レイズ(通称:フロント・ワイド・レイズ、中級者、上級者)〔図2〕

〈かまえ〉肩幅より広いグリップ幅でバーベルを持ち、大腿部の前にぶらさげる。

〈動作〉動作は前項のミディアム・グリップの場合と同様、肩の高さよりやや高く上げることを基本とし、あとはその高さを変えることによってバリエーションをつける。

〈注意点〉これも前項と同様であるがバーをワイドに握ることによって、三角筋の中央部と僧帽筋に刺激が移行するので、その移行部にコンセントレーション(意識集中)して動作をするとよい。

 この他にフロント・レイズには、手幅を狭くして行なうナロー・グリップ・バーベル・フロント・レイズがある。

〈作用筋〉主働筋……三角筋(中央部)僧帽筋。
〔図2〕スタンディング・ワイド・グリップ・バーベル・フロント・レイズ

〔図2〕スタンディング・ワイド・グリップ・バーベル・フロント・レイズ

《3》ベント・オーバー・ナロウ・グリップ・バーベル・フロント・レイズ(通称:ベント・オーバー・レイズ、上級者)〔図3〕

〈かまえ〉バーベルを持って、上体を前に倒してかまえる。この場合、手幅は狭く握っているが、もう少し広いミディアム・グリップでもよい。

〈動作〉スタンディングの時と同様、肘を伸ばしたまま、前から上に向ってフル・レイズの位置まで上げる。

〈注意点〉この運動の特色は、スタンディング系の運動と違い、上体を倒して背筋を緊張させなければならない。スタンディング・フル・レイズやプレス系の運動の場合は、上腕を肩と同じ高さに上げたときが一番負荷が強く、三角筋を最高に短く収縮したとき、筋に対する抵抗がゼロとなる欠点がある。その点、ベント・オーバーの場合は、最高に収縮したときに最大の負荷がかかるので、この点を理解して採用するとよい。

〈作用筋〉主働筋……三角筋(前部)
〔図3〕ベント・オーバー・ナロウ・グリップ・バーベル・フロント・レイズ

〔図3〕ベント・オーバー・ナロウ・グリップ・バーベル・フロント・レイズ

《4》ベント・オーバー・ワイド・グリップ・バーベル・フロント・レイズ(通称:ベント・オーバー・ワイド・レイズ、上級者)〔図4〕

〈かまえ〉肩幅より広くバーベルを持ち、上体を前に倒してかまえる。

〈動作〉前項と同様、肘を伸ばしたまま、前から上に向ってあげる。

〈注意点〉ワイド・グリップの場合は肩の可動範囲が広くなるため、ナロー・グリップの時より高く上げることができる。このベント・オーバーの長所である最大負荷位置における運動価値を理解し、フィニッシュのところを大切にして、ゆっくりと大きく動作をすること。

〈作用筋〉主働筋……三角筋(中央部)僧帽筋。
〔図4〕ベント・オーバー・ワイド・グリップ・バーベル・フロント・レイズ

〔図4〕ベント・オーバー・ワイド・グリップ・バーベル・フロント・レイズ

《5》ライイング・ミディアム・グリッップ・バーベル・フロント・レイズ(通称:ライイング・フロント・レイズ、上級者)〔図5〕

〈かまえ〉高さ60cmくらいの台に伏臥し、バーベルをぶらさげる。

〈動作〉前項と同様、肘を伸ばしたまま、前から上に向ってあげる。

〈注意点〉ベント・オーバーと同じ要素を持つ運動であるが、伏臥することにより、上体を支持する力を不要とし、三角筋へのコンセントレーションを生みやすい長所がある。適当な台がない場合は、レッグ・カール・マシンの反対側や踏み台を2つ重ねて行なってもよい。

<作用筋〉主働筋……三角筋 僧帽筋。
〔図5〕ライイング・ミディアム・グリップ・バーベル・フロント・レイズ

〔図5〕ライイング・ミディアム・グリップ・バーベル・フロント・レイズ

月刊ボディビルディング1982年7月号

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