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★1982年度ミスター・アポロ・コンテストを目指しての………
私の食事法とトレーニング法 小山裕史

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月刊ボディビルディング1982年10月号
掲載日:2018.11.14
1982年度ミスター・アポロ優勝 小山裕史
生年月日     昭和31年11月14日 25歳
トレーニング経験 10年3ヵ月
職 業      鳥取市で総合トレーニングプラザ“ワールド・ウイング”を経営

≪体位≫

記事画像1

≪パワーの記録≫

ベンチ・プレス     150kg
スクワット       230kg
デッド・リフト     265kg
スタンディング・プレス 100kg
カール         100kg
チンニング回数     30回
[注]私の場合、普通実施しているカールはスコット・カールで、60g×8回を最高としている。変ったところでは、ワン・ハンド・デッド・リフト120kgというのもあります。

≪トレーニング内容≫

 トレーニングの回数は、4日を1サイクルとし、後記のA、B、Cの3コースを3日連続実施して1日休養をとる。
 トレーニングはダブル・スプリット・システムを原則としているが、会員の指導の合間を見はからってトレーニングをしなければならないので、完全なダブル・スプリット・システムとはかなり違ったものになっている。1日当りの合計トレーニング時間はだいたい2時間ぐらいである。
 トレーニング内容は、大会前も平時とほとんど変らず、ヘビー・ウェイトの低回数制を基本にしている。私はどちらかといえば皮下脂肪がつきにくい体質だと思われるが、よく尋ねられるディフィニッションに秘密らしきものがあるとすれば、それは、インターバルが短いことかも知れない。
 各コースのトレーニング内容と所要時間は下記のとおり。なお、昨年から今年にかけて獲得した私の最大の収獲は『大会前の調整』イコール『減量』ではなく『先ず自分自身を知ること』だと判ったことである。

―Aコース―

<肩>――1人のときは30分、パートナーのいるときは40分くらい。
①リア・サイド・レイズ(シーテッド)
 20~35kg 8~10回×6~7セット
②シーテッド・フロント(時々バックに変化)プレス
 45~80kg 5~8回×6セット
③スタンディング・サイド・レイズ
 15kg→40kg→15kg 8~10回
④ダンベル・プレス(もしくはアップ・ライト・ロウイング)
 5~6回×4セット

<背>――私のトレーニングの中で最も時間をかける部分で、以下に記す5種目に、チンニング、リバース・プルダウンを加えた7種目の中から30セット位を実施する。重量を扱えるものにポイントを置き、①を実施しない時は④のセット数を増すというように変化をつける。所要時間はパートナーと実施して1時間~1時間15分くらい。
①デッド・リフト
 100~230kg 8~2回×4セット(時々ベストの265kgまで実施する)
②ラット・マシーン・プルダウン
 80~120kg 12~5回×5~10セット
③Tバー・ロウイング
 55~155kg 10~6回×6~8セット
④ロー・プーリー
 80~130kg 10~6回×5~10セット
⑤ハイパー・バック・イクステンション(首のうしろに重量をつけて)
 0~30kg 最高回数×3セット腹囲

―Bコース―

<上腕三頭筋>――約40分
①ライイング・フレンチ・プレス
 45~70kg 5~10回×5~7セット
②ナロー・ベンチ・プレス
 70~100kg 5~10回×5セット
③ラット・マシーン・プレスダウン
 40~60kg 5~10回×5セット
④ナロー・ディップス
 20~40kg 5~10回×5セット

<上腕二頭筋>――約40分
①インクライン・ダンベル・カール
 20~32.5kg 5~10回×5~7セット
②スコット・ベンチ・カール
 35~65kg 5~10回×5~7セット
 [註]①と②は基本選択種目
③スタンディング・バーベル・カール
 45~60kg
④インクライン・オールタニット・ダンベル・カール
 20~25kg
⑤ゾットマン・カール
 以上の③④⑤から15セット実施。

―Cコース―

<胸>――約50分
①インクライン・ベンチ・プレス
 75~110kg 5~10回×6~8セット
②ダンベル・フライ
 30~50kg 3~10回×5~6セット
③ダンベル・プルオーバー
 30~50kg 8~12回×5~6セット
④大会直前にのみクロス・オーバーを実施する。

<脚>――約1時間
①レッグ・イクステンション
 30~80kg 7~12回×5セット
②ナロー・スクワット
 100~200kg 3~12回×8~10セット
③スペシャル・レッグ・ランジ(私が特別に考えた運動で、ランジとブリージング・スクワットを組合せたもの)
 60~150kg 20~5回×5セット
④レッグ・カール
 30~50kg 12回×4~5セット

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 以上が基本的なA、B、Cコースであるが、昨年のミスター日本コンテスト終了から今年の4月まではCコースは全く実施せず、A、B、休、というスケジュールでやり、5月からA、B、C、休、のサイクルに入った。ただしCコースのうちの脚は、大会1ヵ月前から除外。
 また、ここに記した反復回数は、ウォーミング・アップ的の回数も含めてあるが、実際には、重い重量にアップした時点で、最高回数×何回というやり方である。

≪食事内容≫

―ふだんの食事内容―

<朝食>―8:30ごろ
 ごはん1~2杯、目玉焼3個、プロティン大さじ3~4杯、野菜

<昼食>―12:00~13:00ごろ
 ササミ・ボイル200g入り野菜サラダ、ごはん茶わん1~2杯、時々チーズ40gプラス

<夕食>―17:00ごろ
 ごはん1杯(どんぶり)、とんかつ180g程度、プロティン大さじ3杯、ヨーグルト2個

<夜食>―22:00ごろ
 ごはん茶わん1杯、野菜、肉または魚(蛋白質が40~50gとれる内容のもの)

―減量時の食事内容―

 朝食、昼食はふだんと全く同じ。夕食はごはんを半分程度に減らし、夜食はごはんをやめ、他は同じ。
 [註]栄養補助食品としては、ふだんも大会前もプロティンパウダー、レバー、アルファルファ、ジャーム・オイルの4品を使っている。
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小山選手の食事診断……野沢秀雄

記事画像3
 筋肉のバルクとディフィニションで躍進が著しい小山選手。「今年度の話題の中心になる」と言われている。
 前回に引きつづき、詳しいトレーニング内容と食事内容を公開してくれたので、二度目の登場となった。
 小山選手は中学時代まで体が弱くて病気ばかりしていた。高校に入って野球部に入り、本格的に体を鍛えはじめた。この過程で、バーベルやダンベルなどのトレーニング器具と出逢ったという。
 「トレーニングを始めて以来、体がみるみる変化して、面白さにやみつきになりました。それで鳥取から大阪へ来て大学に入ったのは良かったのですが、勉強そっちのけでボディビルのジムで夢中でトレーニングしました」と彼は語っている。
 卒業前に兵庫の中田選手と共に約1ヵ月余りと、大阪健康体力研究所勤務時代に挙式をあげた美智子さんと共にボディビルの本場カリフォルニアのサンタモニカへ修業や見学にゆき、一流選手たちの真剣なトレーニング方法を目のあたりに見てきたことが、小山選手にとって大きな飛躍の鍵になったと考えられる。「やはりボディビル発生地のことだけあり、感覚がまるでちがう」と彼は語っていた。
 社会人2年目になった昨年4月に、故郷の鳥取にワールドウイングというトレーニングセンターを開設。2年目に入ったばかりなのに、160名に余る会員に指導をおこなっている。
 情熱をかけた一つのことに集中する性格で、何事にも成功するタイプといえよう。今後の活躍を期待したい。

1.ふつう時の食事内容

 小山選手のすごいディフィニションを見た人は「血管や筋肉のせんいがあれほど明瞭に見える体だから、たんぱく質ばかり食べて、ごはんやパン、麺類は全くとらないのではないか?」と想像しやすい。
 けれども前回(1982年1月号)に紹介された食事法と共通して、今回も結構多く、ごはんを食べている。1日に茶碗6杯を食べているので、ふつうの人と同等か、むしろ多いくらいだ。
 恵まれた体質によるところが大で、ごはんや甘い物を食べても、脂肪になりにくいわけだが、私はそれ以上に、当人が人一倍の努力、トレーニング努力と、ジム経営の努力をしていることに原因を求めたいと思う。週に5~6日、それぞれダブルスプリットでトレーニングを実行している。これだけのヘビートレーニングはなかなか実行できるものではない。そのうえ、気を使う仕事なので、「脂肪がつくひまがない」というのが実状ではなかろうか?

①総カロリー3100(体重1kg当り36カロリー)、たんぱく質217g(体重1kg当り2.5g)、脂肪90g、炭水化物365g(全体の54%)という構成になっている。
②前回と比較して、カロリーは大幅にふえているが、体重も一まわり大きくなっているので、全体としてのバランスは変っていない。体重1kg当りのたんぱく質量や、炭水化物の%は、ほとんど前回どおりである。
③午前8時半、午後0時半、午後5時、夜10時の1日4回にわけて、バランスよく食事をとっている。最後の夜食は全体からみると、カロリーが少なく、この点脂肪をつけない配慮が感じられる。
④たんぱく質源として、プロティンパウダーだけでなく、卵・鳥肉・チーズ・ヨーグルト・とんかつなど、種類が多いことは好ましい。
 野菜や脂肪なども同じだが、ある食品だけに偏って食べることはあまりすすめられない。多くの種類を少しずつ食べれば、微量なビタミンやミネラルが補給でき、健康上からも望ましいといえる。
⑤小山選手の場合、野菜を多く食べている点、他のビルダーも参考にするとよい。ともすればめんどうで、抜いてしまいやすい。みそ汁に入れたり、煮て食べると、結構、量を多く食べられる。
⑥サプルメントとして、プロティンパウダーのほか、レバー、アルファルファ、ジャームオイルを採用し、ベストコンディションづくりに役立てている。いずれも微量栄養素を補給するのに有効で、うまい取り方といえる。

2.減量時の食事内容(-2kg)

 ふつう時が85~86kgに対して、減量時は84kgなので、減量そのものに苦しむことはないようだ。むしろ平常から脂肪がつかないよう注意してトレーニングしていることがわかる。体重のうち脂肪は5%くらいで、実質的には、筋肉がほとんどすべてを占めているわけだ。よく鍛えあげたと感心する。
 食事内容も平常時とほぼ変らない。「夕食と夜食のごはんを1杯ずつ減らしている」という点以外、変化はないが、分析してみると次のようになる。

①総カロリー2730(体重1kg当り32.5カロリー)、たんぱく質210g(体重1㎏当り2.5g)、脂肪90g、炭水化物268g(全体の47%)という構成になっている。
②コンテスト前に、脂肪太りの心配をせずに、これだけしっかり食べられる点が、小山選手の秘密の一つといってよい。なぜなら当日出場する選手の中には、減量のために食べるものも食べず、青黒く精気を失なっている人を見かける。これでは試合で力いっぱいパンプアップしたり、ポージングをとることができず、迫力が感じられない。
③その点、小山選手は試合前も元気いっぱいで声も大きい。顔色もツヤがあり、精気や気迫にあふれている。これでは舞台に上る前にすでに勝負が決ってしまっているといっても決して過言ではない。
④大会前の減量期間中も、プロティンパウダー、レバー、アルファルファ、ジャームオイルを採用している。この4品目が小山選手の場合基本になっており、総合ビタミン剤やアミノ酸、スポーツドリンクなどは用いていない。
⑤前回のアドバイスをとりいれて、チーズやレバーなどを食べるようにして微量栄養素をとるよう心がけていることはよいことだ。激しい練習を支えるのが毎日食べている栄養素である。小山選手は栄養の研究もじゅうぶんであり、申しぶんないレベルに達している。「今はどんな誘惑があってもステロイドなどの薬剤にたよったりせず、自力でミスター日本をとり、そして、世界に通用する選手になってほしい」と願ってペンを置こう。
月刊ボディビルディング1982年10月号

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